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第4話:EU英国FTA原産地規則の展望

(2020年9月16日、第46話として公開。2021年12月15日、note に再掲。) 

 今回は大変良いニュースと少し心配なニュースを同時にお知らせすることになります。まず、大変良いニュースですが、2020年9月11日夕刻に、日英包括的経済連携協定(日英EPA)が大筋合意に至ったとの待望のニュースに接しました。後の新聞報道では、10月中に署名が行われる見込みである由。外務省ホームページに掲載された大筋合意に関する資料の「主な内容:ルール分野」によると、原産地規則関連では、
  EU原産材料・生産を本協定上の原産材料・生産とみなすことを規定
とあります。協定条文の詳細が公表されるのは署名後になるでしょうから、少なくともあと1ヵ月ほど待たねばなりません。これまでの経緯を勘案して推測するに、「拡張累積」が規定され、日EU・EPA又は日英EPAで原産資格が得られる産品であれば、我が国でそれを材料として使用する場合に原産品として取り扱われ、またEU域内での生産行為も日本国の生産行為とみなして日英EPA原産地規則を適用することができるという意味であると思います。しかしながら、EUの材料を英国で使用する場合に、EUの原産品と判断する根拠がEU英国FTA原産地規則になるのか、或いは日EU・EPA又は日英EPAの原産地規則になるのかについては明らかではありません。

 少し補足しますと、日EU・EPA原産地規則の付録3-B-1(特定の車両及び車両の部品に関する規定)第5節(第三国との関係)においても、すでに「拡張累積」規定は盛り込まれておりますが、適用されうる産品が限定的(第87.03項の乗用車の生産に使用される第84.07項のガソリンエンジン、第85.44項の絶縁ケーブル等、第87.08項の部分品・附属品)であり、次の3つの条件をすべて満たさなければなりません。

 (a)  各締約国が、当該第三国との間において1994年のガット第24条に規定する自由貿易地域を構成する貿易協定(効力を有するもの)を締結していること。
 (b)  一方の締約国と当該第三国との間においてこの節の規定の完全な実施を確保する十分な行政上の協力に関する取極が効力を有していること及び一方の締約国が他方の締約国に対し当該取極について通報すること。
 (c)  両締約国が他の全ての適用可能な条件に合意すること。

 次に少し不安なニュースをお伝えすると、EUと英国との離脱協定交渉が不調に終わるかもしれないとのことです。英国庶民院(House of Commons、「下院」とも呼ばれる)ライブラリーのウェブサイトから関連記事を仮訳すると、概要は以下のとおりとなります。

《 2020年9月1日付、「英国-EUの将来における関係:合意は期限までにまとまるか?」》

 英国-EU離脱協定の移行期間の延長期限は7月1日に到来した。これは12月31日に移行期間が終了することを意味する。この時点で英国はEUの単一市場及び関税同盟から離脱する。新たな連携が構築されなければ、英国-EU貿易関係はWTOルールに戻り、その他の分野の協力関係は終了する。下記の図表は英国とEUの交渉がいかに始まり、本年末までに何が期待されているかを示している。

欧州4図1

 もう一つ、英国庶民院(下院)ライブラリーの「ブリーフィング・ノート」として掲載された記事の原産地規則に関連する部分の仮訳を以下にご紹介します。

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我が国との二国間貿易のみならず、第三国間のFTAの活用を視野に入れた日・米・欧・アジア太平洋地域の原産地規則について、EPA、FTA、GS…

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