第5章: 米国の原産国決定事例
第5章では、米中間の緊張の高まりの中で、現実的な問題として中国の生産拠点の一部をアセアン諸国又はNAFTAの後継貿易協定である米国・メキシコ・カナダ協定 (USMCA) の活用を意図したメキシコ・カナダなどの第三国に移転させ、単なる迂回ではない最終製造工程を伴った「第三国製品」の米国への輸出を模索する日系企業の参考となるよう、米国通商法第301条の適用に際して適用される原産地規則に焦点を当て、米国判例及び米国税関の事前教示事例の概要を掲載します。
可能な限り材料輸出国が中国である事例を取り上げますが、実質的変更の考え方は材料供給国が中国以外であっても同じなので、第三国製造で原産国が材料輸出国から移転した事例と、実際の加工・製造を伴う工程を実施したにもかかわらず原産国が材料輸出国のままであった事例を、第5章の「エナジャイザー・バッテリー社 対 合衆国」 略式判例で例示された9パターンに関連付け、極力簡略化した上で掲載します。また、本章では事前教示事例に頻繁に引用される重要判例も紹介していきます。こうした事例の集積によって第三国での現地調達方針の策定、サプライチェーンの組換えの必要性判断の一助になれば幸いです。
事例1:モーターの原産国は、最終組立国がどこであっても、主要部品であるローターとステーターの原産国 (中国) と認定 (エッセンス・テストによる判定)
事例1 (N319464、2021年5月28日、OT:RR:NC:N2:220)[1] は、電動工具又は芝生・ガーデン用器具に取り付けられるブラシレス直流モーター (BLDCモーター) の部品製造と最終組立を異なる国で行った場合の原産国及び通商法第301条の適用の可否について米国税関の事前教示を求めたものです。
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我が国との二国間貿易のみならず、第三国間のFTAの活用を視野に入れた日・米・欧・アジア太平洋地域の原産地規則について、EPA、FTA、GS…
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