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第5話 USMCA協定(原産地手続き)
(2019年1月10日、第26話として公開。2021年12月15日、note に再掲。)
前回(第1話)に引き続き、USMCA協定の概要をお伝えしたいと思います。今回は、USMCA協定第5章(原産地手続)です。ページ数が多くなってしまったので、当初予定していた第6章(繊維及び繊維製品)は次回にまとめることにします。前回にならって、条文の配置から全体像を把握していただき、各条文を見ていくことにします。原産地手続章は、ほぼTPP11と同じ構造、条文、文言が使用されていることが特徴として挙げられます。
手続規定の章であることを勘案し、解説は必要と思われる部分に限定し、条文の文言をそのまま活かすようにしました。その方法は、以下のとおりです。
① 貿易実務の従事者向けに重要と思われる条文: 全文に仮訳を付し、TPP11と類似した骨格をもちながら一部で異なる部分を太字で記載しています。
② 全訳を要せず、条文の各項目の概要把握で足りると思われる条文: 当該項目毎に骨子を記載しています。
③ 条文全体の概要把握で十分と思われる条文: 例えば、条文タイトルで条文の内容が判明するようなものに対しては、特段の解説を加えていません。
④ 読者の便宜を考え、括弧書き( )で概要骨子を書き下しています。
【原産地手続章・繊維章の構造】
第5章: 原産地手続き
本体規定:
第5. 1条: 定義
第5. 2条: 特恵待遇の要求
第5. 3条: 原産地証明書の根拠
第5. 4条: 輸入に関する義務
第5. 5条: 原産地証明書の例外
第5. 6条: 輸出に関する義務
第5. 7条: 軽微な誤り又は表現の相違
第5. 8条: 記録の保管に関する義務
第5. 9条: 原産品であることの確認
第5.10条: 原産品であることの決定
第5.11条: 輸入後の還付及び関税上の特恵待遇の要求
第5.12条: 秘密の取扱い
第5.13条: 罰則
第5.14条: 原産地に関する事前教示
第5.15条: 審査及び上訴
第5.16条: 統一規則
第5.17条: 取扱いの通知
第5.18条: 原産地規則及び原産地手続委員会
第5.19条: 原産地確認小委員会
附属書5‐A: 必要的記載事項
【各条文の概要】
第5.2条: 特恵待遇の要求
(通関手続きにおける輸入申告において特恵関税の適用を受ける際に必要とされる手続、書類を規定。TPP11の規定とほぼ同じ)
1. 輸入者は、輸出者、生産者、輸入者が作成したCertification of Origin(原産地証明書)を基に特恵待遇の要求を行うことができる。(メキシコについては、輸入者の自己申告は協定発効の日から3年6ヵ月以内に実施する。)
2. 輸入締約国は、
(a) 自己申告を行う輸入者に対して原産地証明書を裏付ける書面又はその他の情報の提供を求めることができる。
(b) 国内法において、輸入者が自己申告を行うための資格要件を定めることができる。
(c) 輸入者が(b)の資格要件を満たさない場合は、当該輸入者が自己申告を行うことを禁止することができる。又は、
(d) 自己申告を行う輸入者に対して、(i)輸出者・生産者の原産地証明書又は証明文書をベースとして自ら原産地証明書を作成すること、及び(ii)同一の輸入に関して輸出者・生産者が作成した原産地証明書をベースとして再度特恵待遇の要求を行うことを禁止することができる。
3. 原産地証明書は、
(a) 特定の様式に従う必要はなく、
(b) 附属書5‐Aに規定される必要的記載事項を網羅し、産品が原産品であり本章の要件を満たしていることを記載するものとし、
(c) インボイス又はその他の文書上に記載することができ、
(d) 当該原産品を特定できるように十分詳細に記述し、かつ、
(e) 統一規則に定められた要件を満たすものとする。
4. 締約国は、特恵待遇の要求をインボイスが非締約国で発出されたという理由のみで否認してはならない。しかしながら、原産地証明書は非締約国で発出されたインボイスその他の商業文書上に記載されてはならない。
5. 原産地証明書は、英語、仏語又はスペイン語で記載することができる。原産地証明書が輸入締約国の言語以外で記載されている場合、輸入締約国は輸入者に自国言語への翻訳を要請することができる。
6. 原産地証明書は電子的な方法で作成、提出することが認められ、電子的又はデジタル方式での署名も認められる。
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