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特集:米国の電気自動車に関する原産国判断

 今回は、通商法第301条適用の可否を問う電気自動車事案を米国税関の事前教示事例検索サイト 「CROSS」 (https://rulings.cbp.gov/home) から数例を取り出してガソリンエンジン車事例とも比較しつつ検証します (事例の翻訳は筆者による仮訳)。
 また、今回の事例検証を通じて輸出入業務に従事する方々への警鐘となる事実も指摘しておきます。事前教示制度は輸入国税関における関税分類・原産地などの判断を事前に知ることができる簡便かつ信頼度の高い行政サービスですが、一般公開が原則となっているので、場合によっては企業秘密の漏洩につながりかねません。今回取り上げる事案は、米国税関が申請企業名、製品名を含めて全面公開する原則への例外として、秘密情報の保護を目的とした情報秘匿 (教示文書では[X]で表記される) がどの程度まで及ぶかについての例証となります。特に公開度の高い米国税関に事前教示を行う日系企業の参考となれば幸いです。

事例:中国で生産されたボディシェル及びバッテリー・電気駆動ユニットなどの部品を、サブアッセンブリーへの組立て、ボディシェルへの取付けなどを行わず、個々にA国に輸出し、A国でサブアッセンブリーへの組立て、A国製部品とともにボディシェルへの取付けを行った場合、電気自動車 (部品の国別価額構成比で中国が全体の75%) の原産国はA国となるか。

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