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第7話:米国の品目別非特恵原産地規則《機械、エレクトロニクス、自動車、精密機器等分野(HS第84類~第90類)》

(2021年3月、JASTPRO令和2年度 調査研究報告書『非特恵原産地規則 ~ 米国、EU及び我が国における主要製品分野に適用される非特恵原産地規則の概要と比較~』第3編第1章として公開。2022年1月3日、note に再掲。)

 日・米・EUの非特恵原産地規則の中で品目別規則を有するのはEUと米国のみです。そのうち、EUの品目別規則は法的拘束力のある附属書22-01とそうでない調和規則提案とに分かれます。一方米国は、NAFTAマーキング・ルールとして北米域内の貿易にのみ適用される表示用の規則とそれ以外の地域との貿易に適用される実質的変更に係る判例法とに分かれます。例外的に極めて簡素な規則を維持している我が国では、完全生産品に加え、原則としてHS項変更を伴う加工によって原産性を付与します。

 機械、エレクトロニクス、自動車、精密機器等(第84類~第90類)の特徴は、製品及び使用される部分品の大小、多寡、工程の複雑さに差異はあるものの、いずれも組立工程によって生産されることにあります。本製品分野におけるHS分類も、部分品から製品への変更においては項又は号の変更があるのに対し、部分品から部分品への変更には多くの場合に関税分類の変更がありません。したがって、部分品から製品への関税分類が組立工程によって比較的容易に生じるために、製品の組立てを実質的変更とする原則を採用すれば、製品の項・号には項変更又は号変更ルールが的確にその役割を果たします。一方、部分品の生産においては、グローバル・バリューチェーンが展開されて、製造工程が細分化された今日においては、粗原料から機械等の専用部品を一貫生産することは稀で、部分品から部分品が生産されることになります。したがって、関税分類変更基準は適格性を欠き、付加価値基準又は加工工程基準に頼らざるを得ない状況になっています。

1. 実質的変更に係る判例法・事前教示事例

《米国税関による判断事例》 (米国税関のオンライン検索システム「CROSS」から引用)

(1) 射出成型機(日本国及び中国で製造されたコンポーネンツから日本国で組み立てられた射出成型機):2019年4月3日付、N302772、CLA-2-84:OT: RR:NC:N1:104

事実関係

 本件射出成形機は、中国と日本国で製造されたコンポーネンツで構成される。特定の組立工程は、両国で行われる。中国では種々の構造部品が生産・調達されている。加えて、日本国で製造された4つのコンポーネンツは日本国から中国に出荷され、構造部品として組み立てられる。組み立てられたコンポーネンツは、その後、さらなる製造工程のために中国から日本国に戻される。日本国では、国内で製造されたコンポーネンツがさらに中国のコンポーネンツ取り付けられる。同時に、技術的な取付け、配線、ソフトウェアのインストールが行われる

判断内容

 日本国で行われる加工作業は、種々のコンポーネンツを実質的に射出成形機へと変更している。最終的な試験及び品質管理検査の後、完全に機能する射出成形機が日本国から米国に出荷される。以上のことから、日本国で行われる加工の性質は単純なものではなく、複雑な作業は、個々の部品は個々の特質を失わせ、新たな製品、すなわち射出成形機を出現させた。したがって、射出成形機の原産国は日本国である。

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我が国との二国間貿易のみならず、第三国間のFTAの活用を視野に入れた日・米・欧・アジア太平洋地域の原産地規則について、EPA、FTA、GS…

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