第8話:米国の品目別非特恵原産地規則《時計(HS第91類)》
(2021年3月、JASTPRO令和2年度 調査研究報告書『非特恵原産地規則 ~ 米国、EU及び我が国における主要製品分野に適用される非特恵原産地規則の概要と比較~』第3編第1章として公開。2022年1月3日、note に再掲。)
日・米・EUの非特恵原産地規則の中で品目別規則を有するのはEUと米国のみです。そのうち、EUの品目別規則は法的拘束力のある附属書22-01とそうでない調和規則提案とに分かれます。一方米国は、NAFTAマーキング・ルールとして北米域内の貿易にのみ適用される表示用の規則とそれ以外の地域との貿易に適用される実質的変更に係る判例法とに分かれます。例外的に極めて簡素な規則を維持している我が国では、完全生産品に加え、原則としてHS項変更を伴う加工によって原産性を付与します。
1. 実質的変更に係る判例法・事前教示事例
時計の原産国決定における税関の判定事例は、時計の原産国がムーブメントの原産国であるとの判断です。世界的に見れば、WTO調和非特恵原産地規則の議長提案に沿った我が国、EU等が採用するムーブメントからの時計の組立てを実質的変更とするルールが一般的であるように思いますが、時計の機能だけを勘案すればムーブメント単独でも「時を告げる」ことはできるわけですので、一理あると言えます。
《米国税関による判断事例》 (米国税関のオンライン検索システム「CROSS」から引用)
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