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「テロワールとは、お米、お水、そして人」車多酒造(石川県白山市)訪問記
2024年9月 まだまだ厳しい暑さの残る石川県
白山市にて「天狗舞」や「五凛」を醸す車多酒造さんへ研修で訪問させていただきました。
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木彫家の岩崎努氏が車多酒造創業200周年を記念して作られた木彫りの天狗舞看板。
一本の木から掘り出して作られていて、とにかく凄いという言葉が溢れ出てしまうほどの圧倒的な作品です。
蔵の周りを探索・・・100年の雪解け水をゴクリ
まずは蔵からほど近くの田んぼを見せていただき、周辺の環境や地理的な情報を教えていただきました。
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石川県は曇りが圧倒的に多いそうですが、この日は肌が焼けるほどしっかりと晴れていました。
車多酒造のある白山市は国際的に価値のある地質遺産保護などを目的としたユネスコ世界ジオパークに認定されています。
使用されている仕込み水は、白山に降り積もった雪が約100年の歳月をかけて自然に濾過された雪どけ水を使用。
その過程でミネラルを多く含み、鉄分が取り除かれ、お酒造りに適したお水になるそう。
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仕込水を飲ませていただきました。
硬度は120ほど。数値ほど硬さを感じさせない柔らかい飲み口。
白山がもたらす自然の恩恵を感じます。
日本酒は”人”のテロワール。白山を体現する至高の食中酒へ。
蔵の周りを散策後、母屋にて慶一郎さんから車多酒造の取り組みなどをご説明いただきました。
「白山を体現し、金沢の文化を表現する、金沢の食における至高の食中酒」
をキーワードに、車多酒造さんはお酒造りをされています。
日本酒とは、”土地の恵みと人の技との掛け合わせ”
日本酒とは、”伝統工芸品”である
酒蔵は土地、技、味、伝統を代々と受け継いでいく地域の伝統の守り手でなくてはならない。
そして、日本酒は"人"のテロワール
お水やお米が自然のテロワールなのに対して、日本酒は人の手が加わる部分、麹や酒母や醪など、人の技術で大きく左右される部分が多く、人こそが酒質に大きく影響を与える、つまりテロワールなのではないかというのが慶一郎さんの考えです。
車多酒造のポートフォリオ
<天狗舞tradition>
伝統を継承し哲学と技を守り抜く「天狗舞tradition」
7代目車多壽郎氏と能登杜氏中三郎氏が作りあげた山廃仕込みの天狗舞という作品を、時代に左右されることなく守り抜いていく。
<天狗舞tradition +>
伝統と哲学を守りながらも、次世代の感性や技でさらに進化をさせる「天狗舞tradition +」
”原点回帰+” を理念に掲げ、白山市を表現する旨い酒を目指す。
<五凛>
モダンさフレッシュさを意識した現代の食中酒「五凛」
8代目車多一成氏と杜氏の岡田謙治氏の作品。
モダンではあるものの、時代に流されることはなく車多酒造としての芯のあるお酒を目指す。
車多酒造の哲学がしっかりと伝わってきました。
お待ちかねの酒造内部を見学!
車多酒造では、蔵人の約半数が20代!若手が活躍しています。
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蔵に入ると見上げるほど大きくそびえたつ精米機!
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精米によるブレをなるべく減らすため全量自家精米を心掛けているそう。
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山廃酛はとてもデリケートなため、蔵の中でも決まった人しか出入りできないそう・・・!
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仕込みたてのとてもデリケートな状態ですが、カバーを外し直接拝見しました!
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全部で28本ある
冷蔵室の中にヤブタ(お酒を圧搾する機械)があり、とても清潔な状態に保たれていました。
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今は使用されていない昔の仕込み部屋
昔使われていた道具や酒造りの工程などが展示されているギャラリーとして使用されています。
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お待ちかねのテイスティングタイム!
ひと通り見学させていただいた後はお待ちかねのテイスティングタイムへ
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天狗舞 石蔵仕込 山廃純米 GI白山
天狗舞の代名詞でもある山廃純米!
酒造りで出た酒粕を肥料にして栽培した松任産有機栽培五百万石を使用
濃厚な旨味に力強い酸 熟成による深いコク。
冷酒はもちろん常温から燗まで幅広い温度帯で、しっかりとした味付けのお肉料理などによく合いそうです。
天狗舞 縹 HANADA-Label 山廃純米
石川県が開発した酒米百万石乃白を使用した山廃純米酒。
フレッシュな印象を与える香りが・・・
飲み口から力強い旨味を感じるがとてもクリアな印象も!
シャープな酸で綺麗な余韻が広がります。
脂の乗った白身魚や貝類などのお刺身と◎
五凛 純米酒
兵庫県吉川産特A地区で収穫された山田錦を使用。
速醸仕込みでモダンさとフレッシュさを表現しています。
香りは穏やかで、調和の取れた綺麗な甘旨酸が印象的。
幅広い料理と良い相性を見せてくれそうな味わいで飲み飽きせずに晩酌の最初から最後まで楽しめそうな味わいです。
天狗舞という伝統を守りつつも、現代にもフィットする酒質の追求もする。
そんな今の車多酒造の醸造理念が反映されていることがとても伝わってくる飲み比べでとても楽しかったです。
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7代目の車多壽郎さんと共に「天狗舞」を生み出した現代の名工、能登杜氏の中三郎氏が引退が発表され、若手メンバー主体のお酒造りにシフトしつつある車多酒造さん
レジェンドから受け継いだ伝統というバトンをどのようにして表現し、そして次世代へと受け継いでいくのか、これからの車多酒造さん躍進がとても楽しみで、目を離せません!
お忙しい中酒蔵を見学させていただいた車多酒造の皆様、大変ありがとうございました。