大人という幻想
午前一時。
いつも通り眠れない僕は、いつも通りその原因を自分の日常の不完全燃焼にあると決めて、いつも通り何か意味があることをしようとまた、意味なんてものはないのに、いつも通り言い訳を始めた__
僕は、僕の人生において、ずっと若い。子供かもしれない。
大人。というものがある。
親、先生、お隣さん、友達の親。それらは皆大人と呼ばれていた。そして僕は、僕たちは大人とは呼ばれず、子供と呼ばれた。小人ではない。
人、と呼ばないことに対して、疑問を持っていたが、それはさておく。
その、僕の周りにいる大人は、強いものとして、存在していた。また、その大人と言われだす域から、負方向の延長線上に年上・先輩というものもまた存在していた。同じく強いものとして。
その強さは多くは憧れに、時に嫌悪感になった。
月日を重ねていくうちに、自分も誰かの年上になることが増え、いわゆる大人に近づいて行った。
大人といわれる人たちも、自分に対してだんだん子供ではなく、小人・中人とでもいう感じに、扱いが変わっていくのを感じた。
私は、まだ若いが、成人は経た。
ここでも、成人と表すことに疑問は覚えていた。さておくわけにはいかなかった。なぜなら、その時気づいたから。いや、ずっと前から気づいていたのかもしれない。
大人というものは幻想だったんだ。成人しようが子供と呼ばれなくなろうが、結局僕は僕のままで、子供と呼ばれていたころの僕と、考え方は変わっちゃいなかった。
むしろ、大人と呼ばれるようになった瞬間、周りの大人は皆子供となんら変わりないように見えた。
車を運転していれば、皆憤っている。店で少し体が触れるとにらみ始める。電車の中は個人の紛争地帯と化している。身に着けたもので人を区別する。わけのわからない屁理屈を捏ねる。正直にものを言わない。陰湿ないじめも当然ある。
幻想だ。何一つ大人なんてものはなかった。
そこにはただただ個人がいるだけだった。いい人も悪い人もいた。なぜ、子供に伝えなかったんだ。大人も子供も別に変わらないと。社会は小学校の力関係のようなまま大きくなっただけで、全員を尊敬すべきじゃないと。
大人と呼ばれる、ただ地球で時を過ごした時間が多いだけの存在全体に憧れてしまった。そして、その憧れは、無残に打ち砕かれた。
みんな子供を続けているだけだった。
返してくれよ。憧れを。尊敬を。何が、大人は偉い、舐めるな、尊敬しろ、だ。 ___馬鹿が___
大人は別に大人じゃないと気づきかけていたが、非行に走りかけた子供な僕の反抗心を、あなたたちは、強さと、憧れと、尊敬を持たすことで。留飲を下げた。親も、先生も、警察も、全部、お前らがそうさせたのに。勉強をした。いい大学に入った。常識という偏見の刺々しいかたまりを精いっぱい飲み込み続けた。
なれると思っていたんだ。このまま年を取れば。大人に。人に。
成人した。大人だよ、と言われた。あたりを見回した。景色は変わらず、全員子供だった。僕も。
大人がないと気づいた。ならもう、子供も存在しない。
僕は、もう、ただ頼りない僕でしかないことに気づいて、また別の憤りを感じるだけで精いっぱいだった。
___煙草に火をつけた。子供と言われていたときに吸ったのと同じ。親父からくすねたものだった。変わらず、頭が浮遊する。僕は一層その思いを強めた。
イラスト:コピーライトガール、さん
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