/発酵雑感/ミキによる無塩漬物研究会●第一回
お米とさつまいもの発酵飲料ミキは乳酸菌の塊である。
味は甘さ控えめ酸味ありのさわやか甘酒という感じでそのまま飲むだけでもおいしいのだが、それだけにとどまらなかった。というのが今日の話の大事なところである。
発酵について調べているうちに夏休みの自由研究ではまったく発揮されなかった探究心がなぜか湧き上がってきた。
⬛︎ミキを使えばすんき漬けのような無塩の漬物が手軽に家でも作れるのではないか ⬛︎
乳酸発酵の原理がわかると上記の仮説が思い浮かんだ。
すんき漬けとは長野県木曽地方の名産で赤かぶの葉の無塩漬けものである。山葡萄などをすり潰して種につかうこともあったらしいが、今では古漬けと新しい葉を交互に重ねて漬けるのが主流という。
仮説を証明するためにはまずミキを作った。
さて、今日の本題の「ミキで無塩の漬物が作れるのか」
結論からいうと「作れる」。厳密にいうとミキのみで野菜を発酵させることは可能だった。
ただどのくらい保存できるかについては断言できない。今のところ自分しか食べないので保存期間を調べることに興味を持てない。理論上は密閉して管理すれば腐敗しない。自分の漬けたもので今のところ腐敗はないし体調不良も起こしていない。異臭がしたり、どろどろに溶けていたら食べないようにはしようと思っている。
試しに色んな野菜をミキで漬けてみたが、毎度味見の瞬間はわくわくする。
使うミキの状態によっても仕上がりが左右されることがわかってきた。
以下、ミキ漬けの記録
まず記念すべき第一回は白菜を漬けようと思った。
出来上がりの予想は酸っぱい白菜である。なぜならすんきは酸っぱい。だから、白菜も酸っぱくなるんじゃないかと思った。
試験的に作ったので量はそんなに多くない。数枚の葉っぱとミキ大さじ1、2杯だった。
すんき漬けの作り方を参考に、白菜をさっと湯通ししてから密閉袋にミキと和えていれた。湯通しするのは野菜の乳酸菌が外に出やすいように細胞を破壊するためだと思うが、茹ですぎたら働く乳酸菌の数が減ることになる。すんきに倣っているので、詳しくはわからないがわたしはそう想像しながら10秒くらいでぱっぱと引き上げている。結構ひやひやする。
白菜とミキを和えた密閉袋を保温(保冷バッグに50℃のお湯入りペットボトルをいれる)する。乳酸菌は嫌気性なのでなるべく空気を抜く。保温時間はすんきの場合一日って書いてあったような気がしたのでそのくらいの目安で温めようと思った。ペットボトルのお湯は冷めてしまうので温度管理はゆるゆるなのだが、乳酸菌が活発に働く温度は25℃から30°なので乳酸発酵に関してはそれほど神経質になる必要はない。
そして、一晩保温してから様子見に取り出した白菜がこちら
たぶん酵母がたくさん働いてしまったのか、炭酸ガスを多く放出していた。かすかにアルコール臭のような甘い香りもあったような気がする。
思えば、このときつくったミキが元気よく発泡していたのはアルコール発酵もしていたからだろうか。
ただ同じミキを使って作った小松菜漬けのほうはそれほどガスは発生しなかったので、白菜に生き残っていた酵母が適温で活発になった結果アルコール発酵したことということも考えられる。
そして、肝心の味はなんかほんのり甘くて発泡していた。野菜を噛むとじゅわっと発泡するのだ。すんきのような酸味を想像していたけど、酸味はそれほどなく発泡していたことしか記憶にない。もう少し保温したら酸っぱくなったかもしれないし、やっぱりアルコール発酵していたかもしれないし、よくわからないが、人生初発泡野菜をつくることには成功した。
ご飯のお供として食べる味でもなかったので鍋の具材にして煮込んで食べた。乳酸菌は失活してしまってもお腹の中の善玉菌のエサになるという話を信じている。
愉快な発泡野菜ができたのは残念ながらこのときだけだった。多分いろんな要素が重なって出来上がったのだと思う。初めから予想通りいかないところが微生物の愛すべき点である。しかも、こんなに楽しませてくれるなんて。ますます人間と会わない生活が加速していく予感がした。
この後、赤かぶ、大根菜、人参、きな粉、大豆などもミキで発酵させてみたのだが、そのときの結果報告はまた別の機会に。
今日はここまで。