/ 発酵雑感 / ペットの納豆
今年は5回ほど家で納豆を発酵させた。
納豆の他に白菜や大根を乳酸発酵させて楽しんでいる。
なにかを発酵させることは小さな生き物と触れ合っているような気持ちにもなる。
なので、自然と言葉をかける。「おはよう」とか「寒いか〜?」とか。当然向こうから人間の言葉は返ってくることはないが、すごく柔らかくてふわふわしたものを触れているような感じがあって、慈しみの気持ちが溢れてくる。多分猫飼ったり推し活したりってこんな感じなんだろうなあと。人間と話すより癒される。
健康のために始めたわけでもなく、ただ単純におもしろいし、可愛いから育てている。びっくりするくらいおいしいし。
そんな大好きな納豆の育成や乳酸発酵について面と向かってあまり人に話したことがない。
いや、おもしろく切り出す自信がない。
「わたし最近納豆づくりにはまってましてね…」とかいって、ぽかんとされるのもつらいし、変に食いつかれてもきつい。ちなみに納豆づくりは葉っぱから菌を採取するバージョンじゃなくて、市販の納豆を種につくるやり方なのでそこまで熱量を持っているわけではない。手軽にできたらいいなくらいの好奇心から始めた。今のところは。しかし、ここ最近では慣れたもので分量も計らず適当に失敗なく作れるようになった。
ここまできたら研究発表したい。
発酵にまつわる驚き、喜び、慈愛等々。
記録に残しておいたほうがいいなと思った。わたしがそうであったように、発酵の方法についてインターネットで検索していくつかのページをみることで原理を理解しようとする人がいるはずだ。そして、同じ熱量くらいの人がみつけてくれたとき「あ〜それ思ったわ〜」くらいの気持ちの共有ができたらうれしいと思う。
では、今日は愛しの黒豆納豆についてお話ししようと思う。
まず初めにこのお話でお伝えしたい研究成果を発表しておく。
●黒豆でも納豆はつくれる
●市販の納豆を種に使う場合は、パックの容器に残ったねばねばに豆の煮汁を混ぜれば納豆菌が採取できる
●わたしは『謎のアジア納豆』以前より高野秀明さんのファン
最後のは研究成果じゃないけど、一応いっておきたい。
ここで興味が湧かなかったらそっとページを閉じてもっとあなたにとって大事なことに時間を充ててほしい。
以下、わたしの発見の喜びである。
そもそも初めて納豆を作ったのは2017年。写真のデータが残っている。
高野秀明さん著『謎のアジア納豆』のなかに市販の納豆を種に納豆を作る方法が載っていたからだと思う。わざわざ大豆を買いに行こうとは思わなかったらしく、好きで常備していた黒豆で作ったようだ。7年近く前のことなのでよく覚えていない。が、自分の行動パターンはわかる。すぐにやってみたくなってあるものでやろうとしたのだと思う。
結果は成功だった。黒豆でも納豆はできる。ただ粒が驚くほどでかく、拍子抜けするほどアンモニア臭がしない納豆が出来上がった記憶がある。
やり方は高野さんの本に載っていたことをそのまま参考にしたかインターネットで検索したうちのひとつのレシピを忠実に再現したかのどちらかである。とにかく、原理がいまいちわかっていなかったので、適当にというよりきちんとレシピに従ってつくった。
たぶんそのときはそれで満足してしまって、繰り返し作らなかった。
◆2024年1回目 夏
そして、2度目は今年(2024年)になった。しかも、思い立ったのが夏だった。なぜやろうと思ったのかいまいち思い出せない。気まぐれに少し高い納豆を買ったので増やそうと思ったのかもしれない。しかも、またもや家にあったのは黒豆だけだったので黒豆でつくることにした。
すっかりやり方は忘れていたので、レシピをいくつか検索した。市販の納豆半パックをお湯に溶いて採取した納豆菌を煮た豆にまぶして常温で置く。
結果、失敗した。半日くらい置いておいたが、様子を見るためラップを外してみると凶悪なアンモニア臭がした。納豆の臭みの嫌なところをもっと強烈にしたような臭い。そして、唐突に思い出した。高野さんの本に納豆づくりは寒いときに行うと書いてあったような気がすることに。おそらくで高温で短時間に発酵が進んだために臭いがきつくなったか、どこかで雑菌が入って腐敗したのだと思う。種として使った高い納豆、豆自体も無駄になってしまって悲しかった。しかし、逆に満足することなく、いろいろ試してやろうという気持ちになった。
◆2024年2回目 秋
そのあと少し涼しくなってからまた作ることにした。これもまた黒豆。だって家にいつもある。しかも、すっごい高級黒豆がセールワゴンで半額になっていたやつだった。作り甲斐がありそうだと思った。
それまで作ったレシピは種となる納豆に少量のお湯をかけて、そのお湯に溶けた納豆菌だけを採取する方法だった。とろとろになったお湯を煮豆にまんべなくまぶすという感じなのである。なので、種になる豆自体は混ぜない。しかし、それじゃもったいないじゃないか。お湯に溶いた後、種の豆を分離させずにそのまま煮豆にぶちこむことにした。
これは半分成功で半分失敗だった。
豆ごとの発酵のばらつきがでて、アンモニア臭が強くなった。ただ、冷蔵庫で熟成させると落ち着くという情報もあったので、やってみると食べれないことはない納豆になった。なかには酢をかけると臭いが軽減するという情報もあったが、わたしはそうは思わなかった。酢は納豆の生臭さを助長すると思う。個人的に。
◆2024年3回目 冬
それで、やっぱり種として使う豆は混ぜずに納豆菌だけを煮豆に混ぜるほうがおいしくなるんだろうなということを学んだ。
しかし、種になるお湯に溶かれるだけの納豆がもったいない。ので、納豆のパックに残ったねばねばに豆の煮汁をかけて、お湯がトロトロするまでかき混ぜて納豆菌を採取することにした。
結果は成功だった。
初めて作ったときくらい臭いがない(豆の香りはある!)、おいしい納豆ができた。まったく神秘的だった。
ということで、黒豆納豆づくりは無事成功した。
何度かトライしたおかげでどうしたらおいしくなくなるかまでも身をもって知ることとなった。さらに回数を重ねて要領もわかったので、分量も適当、時間も適当。それでもちゃんと納豆になるようになった。
そして、わたしの次なる興味は自家製納豆の容器に残ったねばねばからも納豆菌を採取できるのでは?ということと、それが可能なら納豆を買わずに大豆を買って家で作り続けることも可能になるのか。ということである。これはまだ実験に至っていない。もし実験したら結果を報告したいと思う。
次回は確立した自家製納豆作りについてレシピ風な発表したいと思う。
ここまでお付き合いどうもありがとう。