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〈随筆〉心 / 東京事変

2月ってなんだかそわそわする。

まだ冬の寒さは残っているけれど、確かに春の気配がする。来るべき新たな春に思いを馳せては期待と不安が入り混じる。独特な浮遊感がある、曖昧な季節だ。

そんなそわそわを感じる頃に聴きたくなる曲がある。東京事変の「心」という楽曲である。メロディは勿論、私はこの歌詞がとても好きだ。

心と云う毎日聞いているものの所在だって
私は全く知らない儘大人になってしまったんだ

頬に注いだ太陽に肖る快感
前を睨んで性を受け直す瞬間
手に取って触るだけで
解った気になっていた私に然様なら

妙な甘えでもう誰も失いたくない
逢って答えをそっと確かめたいけど
触れ合いに逃避するのは禁止
戸惑いつつも変えているんだ

生まれてしまった恥じらいを今日嘲笑わず耐えて居たい
私は何度溺れたとして泳ぐことを選んだんだって

宵の苦悩に苛まれながら覚醒
縦横無尽に感じ剥がしていく行程
此処で見抜いて新しく会って 向き合う私に気付いて

汚れてしまった恥じらいを今日受け止めて添いたい
私は何度堕ちたとして生きることを選んだんだって

雲すらとうに逃げた後の秋ヶ瀬公園は
私の全く知らない様な刺々しい冬を唄う
心と云う毎日聞いているものの所在だって
私は全く知らない儘大人になってしまったんだ

東京事変「心」

心は、いつも自分の中にあるのに、常に浮いたり沈んだりして、振り回されている。何故こうも揺れ動いてしまうのか、自分のことであるはずなのに、分からぬまま心に身を委ねている。そんなまま年だけを重ねて大人になってしまった。

今日も生き恥を晒しながら、日常を生きている。

「私は何度溺れたとして泳ぐことを選んだんだって」
「私は何度堕ちたとして生きることを選んだんだって」

つい忘れてしまいがちだけれど、溺れて沈んでどれだけ苦しくたって、泳ぐことを選んだのは私で、生きることを選んでいるのは私だ。

そのことを思い出させてくれるのが「心」である。

浮きつ沈みつ、「心」を道標に明日へ泳ぎ続ける。

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