昭和の名曲にみるシンセ・電子楽器の名機たち(その10
カジャグーグー「君はTOOSHY」
電子楽器の登場によりポピュラーミュージックのサウンドが変化した以上に、80年代は従来の型に捕らわれない様々なジャンルやバンドのスタイルが進化しました。シンセポップの源流の一つである「ニューロマンティック」これはサウンドというよりは《ビジュアル》を重視したアイドル的な要素を全面に出したアーティストを指し、80年代MTVブーム黄金期を支える要因の一つとなりました。中でも見た目だけでなく演奏テクニックも兼ね備わったカジャグーグー「君はTOOSHY」(アルバム原題:White Feathers)で使用されている2つの電子楽器に注目したいと思います。
ウェーブテーブル音源の元祖「PPG Wave 2.x」
80年代に入り「Fairlight CMI」しかりコンピューターやデジタル制御の電子楽器が登場し始めましたが中でもドイツの「PPG Wave」はデジタルで合成・記録した波形を用いた《ウェーブテーブル》音源を採用した初めてのシンセで、従来のシンセでは再現しづらかった金属的で鋭いサウンドが特徴的です。自動演奏機能も搭載され、拡張音源「WaveTerm」を繋げるとサンプラーとしても使える点もユニークです。カジャグーグーのアルバムでは名機「Jupiter-8」と共に「PPG Wave」を活用し極上のポップサウンドに仕上がっています。
80年代に一世を風靡したエレドラ「Simmons SDS5」
シンセポップグループ「ランドスケープ」のリチャード・ジェームス・バージェスはシンセドラムのサウンド強化を目論み、シモンズ社と共同で「SDS5」を開発しました。従来のシンセドラムと異なり、3つの異なる音を重ねる事で音に厚みを加え、パッドも従来の“丸”から《六角形》という、かつて見た事も聴いた事もない斬新で迫力あるサウンドとビジュアルは瞬く間にブームとなり各社より模倣品が登場したほどです。もちろんカジャグーグーの楽曲でも「SDS5」は大活躍しその演奏する姿は印象的です。
なお国内では《和製カジャグーグー》をコンセプトとした「C-C-B」のおかげでお茶の間で「SDS5」は馴染み深いものになりましたね。
まとめ
デジタルをキーワードに登場した「PPG Wave」でしたが、程なくし低価格のデジタルFM音源シンセ「YAMAHA DX7」が注目されるようになり「PPG」は1987年に閉鎖しましたが、そのノウハウは「Waldorf Music」社に引き継がれ現在も新モデルを発表し続けています。一方「Simmons」社は「SDS5」以降どんどん高性能な新モデルを発表しましたが徐々に飽きられたのか?昭和の終わりと共にそのサウンドを耳にする事はほぼなくなりました。ブームというのは火が付きやすく消えやすいものなんですね。(≧▽≦)