⭕『グレゴリオ《JKゲーム開発部のヒットの法則》』|第一部第五章 行動開始のメルたん 第一節 座礁
第一部 女子高生ゲーム開発部
第五章 行動開始のメルたん
第一節 座礁
八月中旬、ギンギラギンのお日様が日本に真夏を告げる。
砂漠を放浪する旅人がオアシスに辿り着くように、私も這うように部室へ着く。八月上旬から伝説のゲーム開発のため、宿題には目もくれずに黙々と企画書を練っていた。
「めっちゃ暑い……もう死にそうやわ!」
命からがら部室に着くと、クーラーの効いた部屋に声豚とレイヤーが机に突っ伏していた。この二週間の疲労は彼女たちも襲う。
依頼の手紙を貰った私たち三人は、お盆が明ける頃に部室へと集まった――会議をするために。
「タイトル……どうしよう? 良いものが思い浮かばない。インパクトがあって、それでいて覚えやすい誰もが知っている名前がいいのよね」
私は、ふと雲ひとつない青天井を見上げた。真昼の太陽は白光を放ち、誰よりも何よりも耀く。あの日輪のように人々を明るく照らす……そんな希望の光となる名称はないんかな?
「たしかに、ゲームでも小説でも楽曲でも、タイトルは大切ですよね。いや命ですよ! タイトルだけで流行るか決まると言っても過言ではないです」
「タイトルの謎が明かされた時に、そういう意味だったのか……と思わず、タイトルを確認したくなる作品をアタシも開発したいだぜ!」
「まぁ、それを言い始めると、キャラクターの名前やサブクエストも特別な意味があった方が目を引くわね」
「まぁまぁ、タイトルは全体を見ても決められるから置いておくとして、ストーリーはどうするつもりですか?」
「そうだ……ストーリーも考えないとダメだ……圧倒的に時間が足りない」
でも、弱音を吐いている場合ではあらへん。男の子にゲームを届けなアカン、やると決めたら最後までやるで!
「アタシは既に忠告したが、投げ出すのだけはダメだぞ。一度やると決めたら、最後まで走り抜けなアカンねんで!」
何で関西弁やねん……あれ、その台詞も姉がよく使っていた気がする。まぁ、たまたま同じ言い回しになる事もあるか。
「ソラに言われなくても分かっているわ。絶対に最高のゲームを完成させてみせるわよ。そうだ、異世界転生を題材にしたら良いんじゃない?」
「「ありきたりすぎるわ」」
「やっぱりダメよね。ゲーム転生も古いし、パッと奇抜なアイデアなんて出ないわよ」
途方に暮れた私は、ヲタクだったらどうするかを思案した。誰も思い付かない奇抜な発想をしそうやね。
『だったら、僕にいい考えが! いっその事、ログインすると別の惑星に飛ばされちゃう、なんてどうよ』
ヲタクの声が頭の中で響く。何それ……惑星転移? どんな原理でプレイヤーが何光年も先に飛ばされるねん!
「ログインしたら惑星転移……そんな事はありえへんわ」と私は妄想の尻尾の部分を口走る。
「惑星転移……何だよ、その奇抜は発想は? まるでヲタクの発言みたいだな。そんなストーリーは誰も理解できないぜ!」
「たしかに、レイヤーたんの考えも一理ありますね。惑星転移の理屈が説明できないですが、逆にそれくらい奇想天外な方が目立ちますよ」
「それに今まで見たことがない! ナキにしてはいいアイデアな気がする」
「「ここにヲタクはいないだろ!」」
「あっ、こっちの話よ。ハッハッ、今はそんな話よりも惑星転移をゲームに絡める方法を考えないと……」
うっかり妄想を話した私は、笑って誤魔化そうとした。その笑顔を二人は訝しげに眺めている。
「あれですね……惑星転移をしたことに気づかず、異世界転移だと誤解して物語が進み、現実の世界に戻る事を目標にするなんて、どうでしょうか?」
「イザ、それいいかも! でも、もう一味ほしい。もっと何かこう……あっと驚くような設定が……」
ここでもう一度だけヲタクの言葉を借りようと試す。なぜ惑星転移が起きるのか? ここも物語に組み込みたい。
『僕だったら……惑星転移は神々が起こしていて、人間が神の与えた試練を乗り越えると、そのゲームのステータスを貰えるとか何とかにするな』
「惑星転移は神が人間に与えた試練か? ナキの考えることは意味が分からないわね」
「アタシには、お前が言っていることが分からないぜ。さっきからブツブツと一人言が多いぞ」
「たしかに、ここ最近のメルたんは変わりましたよね。まるでヲタクたんみたいですよ」
「いや、私としたことがキャラを間違った。でも、ストーリーが纏まりそうよ。神々は人間に審判を課した。それがとある惑星からの帰還であり、それに気付いた人間が神を探す物語なんてどう?」
「アタシ的には、どこかで聞いた気がするストーリーだな」
「でも、惑星転生を異世界転生だと誤解してゲームをクリアする。その後、元の体に戻るために、神を探す。こういう流れにしたら、斬新な感じがするわ」
「メルたんの話だと、ワールドを一度クリアしていますね。つまり、トゥルーエンドに辿り着くには少なくとも二周はしないといけない事になりますよ」
「イザ、それはナイスアイデアかもね。一度ゲームをクリアしたら、異世界転移ではなく惑星転移だと知る。そして、さらに裏ルートをクリアすれば、神々の目論見が分かる」
「メルたんはゲームを二周させたいわけですか? たしかに、それならユーザーにやり込み要素が渡せますが……」
「膨大な時間がかかるぞ。でも、裏ルートというのはそそられるぜ! なぁ、難易度はどうするんだよ?」
「惑星の構造を二重にすればいいわ」
「「惑星を二重にする?」」
「えぇ、中央にボスがいる塔を置いて、その周囲を二つの惑星の繋がりで囲む」
「ちょっとよく分かりませんね」
「アタシには画が見えないな。どんな状態なんだよ?」
ポカンと口を開ける声豚とレイヤーのために、土星のような惑星を描いた。ただ、全ての星は横で半分に切断され、その上に国や街がある。惑星の輪は二重になっている。
「一周目は外側の大きな円しか行けない。でも、ユーザーは内側の円がずっと見えている」
「アタシなら、内側のルートにどうやっていくのか気になってしまうぜ」
「でも、内側のルートには行けない。気になりながらも、ひたすら外側の惑星だけを探索していく」
「なるほど、クリア後にもう一度ログインをすると、内側のルートも探索できるようになる。そして、そこをクリアすれば……」
「中央の塔に裏ボスが現れて、それを倒すと神々の企てが暴かれる」
「それはいい考えだぜ!」とレイヤーが私を指差す。
「たしかに、メルたんの話なら筋は通りそうですね」
「後、神々の企てを知った主人公は……」
ここで私から出た発案を二人は受け入れてくれた。だから、グレゴリオの攻略後、裏ルートには私の発案したストーリーが追加される事になった。
「ストーリーはできたとして、ゲームシステムはどうするんだよ。単なるロールプレイングにするのか?」
「ソラ、それだと面白くないわね。私たちが今まで開発してきた事をこのゲームに注ぎ込もう。それが私たちの集大成にもなると思うのよ」
「つまり、メルたんが言いたいのは、失敗も成功も全てがこのゲーム開発のためにあったということですね」
「何かいい話だな。失敗は成功の元だ。アタシたちが歩んだ道のりは無意味ではなくて、ちゃんと過去に足跡を残していたというわけだな」
その通りだ、私たちは今まで色んな経験を積み重ねた。たとえそれがゲームだと笑われても、真剣に向き合って努力した功績は消えはしない。どれだけ時が過ぎても、色褪せずに残るはずや!
私の脳内で作品名が過る――ネクスト麻雀、アンノーンソーサー、ポロ、ビレッジ、オルクス、のほほん異世界スローライフ。どれもヲタクと作った大切な宝物や!
「新作は広大なオープンワールドで冒険や探索をする感じがいいわね」
「それなら、スローライフやオルクスで作ったプログラムを改良して、広大な惑星を作れば良さそうですね。とりあえず、表ルートだけは作れそうですよ」
「それだけ広い惑星なら移動手段もあった方がいいだろ。アタシなら、ずっと画面をスライドするのは嫌だぜ!」
「だったら、アンノーンソーサーで作った乗り物のプログラムを使えばいいわ。それで惑星をスムーズに移動させれば良いわよね」
「オープンワールドなら、たくさん人がいますよね。プレイヤー同士のコミュニティなんて作ったら、かなり楽しそうですよ」
「たしかに、だったら……オルクスで作ったギルドのプログラムを入れたら良いだろ? アタシならギルマスをやるぜ」
「もうソラは開発側でしょ。でも、ギルドみたいなシステムは採用ね。情報を交換できるようにチャットも入れておこう」
「あとさ、アタシはミニゲームも欲しいぜ。イベントが無いときも、ユーザーはそれで飽きないよな」
「そうね、ネクスト麻雀とかカードゲームとか、色々と用意したら時間が潰……」
「ちょっと待ってください!」
突然、声豚が愉しい会話を遮った。眉間に皺を寄せて険しい表情をしている。
「「どうかしたの?」」
「二人とも予算の事を考えていますか? そんなにデータを詰め込んだら、開発費用だけで破産しますよ。私が出資できる額も無制限ではないですからね」
この時、私はゲーム開発の難しさを痛感した。そうだ、アイデアをすべて注ぎ込めば良いものはできる。でも、それだけお金がかかる。
お金持ちの声豚でも払えない額のようだ。むしろ、あの金銭感覚が麻痺していた声豚に諭されるとは……私も有頂天になっとったわ!
「そうよね……予算が足りないわね」
軽快な会議は予算の壁という現実にぶち当たって歩みを止めた。ここで会議は終了し、各自で案を考えることになった。
今思い返せば、当時の私は周囲の事が見えていなかった。よくよく考えれば、数年後の出来事なんかよりも不思議な事は既に起きていた。
なぜか赤字が続く中でゲーム開発に投資をしてくる声豚の気持ち。
唐突に姿を消したリセマラビットの正体。
アルバイトと勉強に加えてゲーム開発にも参加するレイヤーの思い。
そして、無理をして笑うヲタクの真意。
人の気持ちは見えない――だからこそ汲み取らなければならない。しかし、ゲーム開発に無我夢中の私はそんな簡単な事すら見えていなかったわけだ。
私に都合のいい出来事は、結局のところ、誰かの計画と不都合の上で成り立っているに過ぎない。幼い私は、そんな事すら気づけないでいた。
朝日ヶ丘高校の帰り道を一人でトボトボと歩く。真正面から橙色の夕陽が世界を照らす。景色すべてがオレンジ色へと変貌を遂げる。
「はぁー、まさか資金繰りでゲーム開発が行き詰まるとは……」
私が美しいマジックタイムに溜め息をついたとき、後ろから声をかけられた。
「おぉ、久しぶりじゃのう。何かお金のことで悩んでおるのかな?」
いつもの帰り道で、普段は会わない老人に声をかけられる。ちょうど馴染みの喫茶店の前だ。
何やコイツ……キモいわ! 私は返事もせずに足早にその場を立ち去ろうとする。
「ちょっと待ちなさい。儂じゃよ、儂……」
自分の顔を指差す老人を睨む。ギロリと視線を向けると、その笑顔はどこかで見覚えがあった。でも、どこの誰かは知らへん。
「すみません、新手のナンパならお断りですよ。いくらお金に困っていても、パパ活なんてしませんから」
私は両手を突き出して、ブンブン手を振りながら、後ずさりしてお爺さんと距離を取る。
「いやいや、ほら……儂じゃよ、喫茶店の……」
「喫茶店…………あっ、マスター?」
お爺さんは古ぼけた和装だったので、パッと見では分からなかったが、その顔と立ち姿はマスターその人であった。
「そうじゃよ、何がナンパじゃ。まぁ、まだまだ現役ではあるがのう」
「いや、もう引退を考える時期ですよ。それにしても、お元気でしたか?」
「あぁ、保健所が来てからは大変じゃったよ」
「そうですよね。まさか喫茶店が違法な食品を提供……」
「違う違う。あれは保健所の勘違いで儂の店は真っ当な商売をしておったんじゃ!」
風に舞う砂煙のザーという音すら聞こえる静寂が、喫茶店のマスターの大声で破られる。いや、どんだけデカイ声で否定すんねん。通行人が全員こっちを向いとるやん。
「あぁ、そうだったんですね。じゃ、すぐに喫茶店も再開できそうですね」
「いや、君と会えたことで喫茶店の目的は終わったも同然じゃ。それにリセマラビットの動画の編集も……」
えっ……コイツ、かなり大事なことを言わへんかったか?
私の鋭い視線を感じ取ったのだろう。マスターは真夏であることを加味しても、尋常ではない汗を吹き出す。あまりの量に道路に水溜まりができている。
そして、無風になってシーンと静まり返った夕暮れ時に、二人の質問が交錯する。おそらく二人の疑問点は同じなのだろう。
「喫茶店の目的が私とはどういう意味……」
「儂はリセマラビットではない……」
「は?」と私が口を開くと、マスターが「え?」と白を切る。
あれ、このマスターとは息が合わないようだ。いや待てよ。リセマラビットは儂ではない……この言い方は自白したようなものではないか?
そもそも、なぜマスターは自身がリセマラビットではないと否定したのか? それは……マスターが私に正体がバレたと思い、事実を否定しようと試みたんやな。
「マスター……もうバレてますよ。いつも私たちが放課後に喫茶店で頑張っている事を動画で話していましたよね」
私は鎌をかけた――もちろん老人は引っ掛かるはずもないが。
「そうか……儂がリセマラビットだとバレていたのか。そうじゃ、儂こそゲームの評価をしていた張本人じゃ」
「いや、認めるんかーい!」
私の伸びやかな右腕がマスターの左肩をポンと叩く。軽やかな動作で繰り出されたツッコミが夕陽に照らされて美しい。
この時、私は喫茶店の出来事を思い出す。マスターの告白で、事実が次々に繋がっていく。
動画の声を加工していたのは正体を隠すためか。
ハッ……もしや私たちがリセマラビットの話をする度に皿を落としていたのは、自分の正体や嘘がバレる事への恐れで手が震えたからなんやな!
それに動画で私たちの頑張りに触れたのも、喫茶店での様子を見ていたからか。
リセマラビットの活動が止まったのは、喫茶店のいざこざに巻き込まれたのが原因か!
「いや、アンタがリセマラビットの正体かーい!」
「なぬ……気づいておらんかったんか? 口の硬い儂とした事が騙されて喋ってしまった。それと……お姉さんと同様のキレッキレのツッコミじゃのう」
いや、マスターの口は軽いだろ。あと、私の姉を知っているような口振りやな!
「マスター、色々と疑問が……なぜユーチューバーなんかをしているんですか?」
「その話は長くなる。もしかしたら、深夜になるかもしれないぞ」
「そうですか……では、また今度聞きますね!」
そそくさと立ち去る私にマスターが慌てた様子で声をかける。
「手短に話す。だから、聞いてくれ! 頼む、君にとっても大切な話なんじゃ!」
「マスターの話が私にとって大切なはずはないですよ。ただ、気になるので少しだけ聞きます」
「では、単刀直入に話そうか。ただ、その前に一つ確認をしたいのじゃ。君の姉についてだ」
「何故ちょくちょく私の姉が出てくるねん!」
思わず脈絡のない姉の事に驚いて関西弁が放たれる。
「それは……儂の勘違いでなければ、君は神々廻ミルルの妹さんじゃな?」
「そうですが……」
私は困惑した。なぜなら、親しくないマスターが私の姉のフルネームを知っていたからである。
私にとっては当たり前の事だから、いちいち姉の名前は出さなかったが、姉の本名は神々廻ミルルだ。
いや……そんな事よりも、どこで姉はマスターと関係を持ったんや!
「やはり……では、儂はミルルの頼み事を成し遂げねばならぬようじゃのう!」
姉の頼み事って何やねん!
そして、姉はどこの誰に頼み事を託しとんねん!
「ちょっと待ちぃや、マスターは私の姉をご存じなんですか?」
「それは言えない。ミルルは『絶対に他言無用やからね』と言っておった。儂の口は金剛石より硬いんじゃぞ」
「それはもう独白と同じくらいの発言やん! あとマスター、あなたのお口はマシュマロよりも柔らかいわ」
虚しい風が私たちの間を吹き抜ける。この爺さんはめちゃくちゃ口が軽いわ――まるでヘリウムガスくらいの軽さやで!
「そうか、すまんな……ミルルよ。儂に約束を守るのは無理であった。おや、この星空の瞬き……そうか、星となったミルルが星の煌めきで儂に許しを告げておるんじゃな」
「いや、まだ夕暮れやで。それと妹の前で星になった姉なんて表現はアカンやろ」
「そうじゃのう。すまん、つい動揺してしもうた」
「簡単には許せませんよ。そもそも、何で私を見て姉との関係が分かるんですか? 写真でも見たんですか?」
「いいや、ゲーム好きのミルルは誰にも写真を見せておらん。でも、一度でもミルルと会ったことがあれば、君が彼女と姉妹なのは一目瞭然じゃないか?」
「そりゃ、私と姉は一卵性双生児で、髪の色以外はほぼ酷似していますからね」
「バレてしまった以上、ついでに話すが……」
「やっぱりマスターは口が軽すぎるやろ!」
「……君の姉はゲームで出会った数多のプレイヤーに自分がいなくなった後、妹の面倒を見てくれと頼んで回っていたぞ」
「えっ……」
「だから、儂以外にもお前さんを助けようとする者がおるかもしれんのう。何せゲームの世界では名を知らぬ者がおらぬ『千剣万矢のヴァルキリー』からの直々の願いなのだから」
突然、その言葉を残してマスターは喫茶店へと入っていく。
私の耳の調子がおかしいようで、千軍万馬という四字熟語が千剣万矢(せんけんばんや)と聞こえた。
頭の中がゴチャゴチャしている。突然のカミングアウトに思考が追い付かない。生前の姉は何をしていたんやろ?
疑問で頭が一杯の中、喫茶店からマスターが出てくる。手にはジュラルミンケースが握られている。
「ミルルが儂のために用意した金じゃ。でも、これは……本来お前さんが使うべき金じゃ。まだ諦めるときではないぞ!」
マスターが開いたケースには、ぎっしりと一億円分の札束が詰められていた。
いや、実際のところ一億あるかは知らん。ただ、何となくイメージで一億円はあると思われた。如何せん初めて見る札束の山に言葉を失う。
「どうした……ミルルの金じゃ。持っていくが良い」
「いや……何で姉がマスターにお金を?」
「それは……妹を助ける代わりに喫茶店でも開業しろ、そうミルルから言われた。ちなみに、この金はミルルの優勝賞金の一部じゃ」
たしかに、私の姉は凄腕のゲーマーであった。だから、数々の大会で優勝して賞金をかっさらっていた。
その賞金を渡す代わりに、妹の私を助けるようにマスターに求めていたのか。
「なるほど、私の姉のおかげで、この店の経営は成り立っていたわけですね」
この店は客が値段を決めるというルールがあった。それは姉の賞金があって、経営が安定していたからだ。だから、利益度外視の経営をしていたのか、と私は合点がいった。
「いや、儂はミルルの金に手をつけてはおらん」
「では……どうして杜撰な経営でも店は潰れないのですか?」
「それは金銭感覚がおかしな女子高生がおって……」
あぁ、その声優ファンの眼鏡っ子なら私も知っとるわ!
【NEXT】
第一部 女子高生ゲーム開発部
第五章 行動開始のメルたん
第二節 救世主降臨
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