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『シェアハウスに美女が四人……何も起きないわけもなく』第0部&第1章|愛夢ラノベP
第零部 エピローグ
――俺の人生にラブコメの四文字はない。
――4月下旬、時刻は不明。もちろん、場所も不明。
今、俺は椅子に拘束されている。身動きが取れない。当然、声も出せない。
椅子の周囲には四人の美女が武器を持って立っている。俺を取り合っているが、全くもって嬉しくない。
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「あら、シュガーも目が覚めたのデスね」とシニーが俺の首に鎌を掛ける。
シニー――身長百四十三センチ、推定Aカップ、語尾が不吉、大食い、オカルト、ロリータ幼女、ぐうたら。俺をシュガーと呼ぶ。
地面を撫でる程の長い白髪に丸い童顔。
奈落の底を思わせる底無しの不気味な黒い瞳。
夜空で染めたのかとツッコミたくなる漆黒のマントを身に纏っている。
なぜか肩に黒猫を乗せている。理由はまだ知らない。
「ちょっとシニー、蓮は僕の物さ。僕が殺るる」と神々廻がポーチをまさぐる。
神々廻――身長百七十五センチ、推定Bカップ、語尾が独特、料理好き、整理整頓が得意、家具に名前をつける。俺を蓮と呼び捨てにする。
茶髪に金色のメッシュが入ったショートボブ。
ハート型の可愛らしい瞳が特徴的で、お洒落なピンクのポーチを右肩から左に提げている。
「二人とも退いて。レンレンを奪われたら、チョベリバよ。私が彼を貰うわ」とランバダが拳銃を構える。
ランバダ――身長百六十二センチ、推定Fカップ、アニメ好き、コスプレ好き、時代遅れの見た目と表現。俺をレンレンと呼ぶ。
肩にかかるライトグリーンのツインテール。
アイドルにいそうな可愛い系の顔立ち。
黄色極超巨星を想起させる黄色い瞳が印象的だ。
「邪魔」とボーナが吐き捨てる。
ボーナ――身長百八十一センチ、推定Dカップ、短い単語で会話、怪力女、スポーツ万能、読書家。俺を佐藤と呼び捨てにする。
藤紫色のセミロングを靡かせ、ロボットのように無表情なスレンダー美女。
バイカル湖を思わせる透き通った美しい水色の瞳。
なぜか頭にカチューシャのようなヘッドギアを装着しており、それが七色に点滅している。
――今、この四人の美女に命を狙われている。
事の顛末も気になるが、まずは美女から狙われた経緯を説明したい。だから、今から一ヶ月ほど前の上京シーンに時を戻そう。
第一章 シェアハウスは唐突に
俺の青春にラブコメはない――これが俺の座右の銘。
大切なので二度言おう、冴えない俺の人生にラブコメの四文字は存在し得ない。
中学生の恋愛でモテないと悟った。
一年生の頃、クラスメイトのマドンナに罰ゲームで告白。もちろん、フラれた。
二年生の時、部活の可愛らしい先輩に思いを伝えるも、既に彼氏がいた。
三年生になり、不細工の幼馴染みへの愛情に気づいて想いを伝えた。彼女は「遅いのよ」と言葉を残して卒業と共に別れた。
後で聞いた話だが、一年生の頃から三年生のクリスマスまで俺の告白を待っていたらしい。
「あぁ、俺の人生はラブコメと無縁だ。俺が恋路を歩むことはない」
過去を振り返って後悔をする。だから、もし俺が四人の美女とハーレムをする姿を期待するのなら、その期待に沿える事はないだろう。
本当に申し訳ないが、俺の至って平凡な容姿では美女と付き合えない。ましてやシェアハウスでのイチャイチャなど皆無だ。
身長は百六十五センチ、短い黒髪、足が短く、スポーツはそこそこ、学力は学年の真ん中。その他、全てにおいて平均値である。
「なんて気持ちが沈んでいたが、まさか高校入学を期に親元を離れて、シェアハウスで暮らすことになるとは……」
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――三月二十五日、午後五時の東京某所。
目の前に果てしなく伸びる真っ白な鉄柵。
その柵に囲まれた豆腐のような形の豪邸。
たまたま受けた進学校に合格したため、俺は関西から東京に来た。ただ、俺の実力で合格したわけではない。
今年三月、受験生を乗せた電車の脱線事故があった。その電車には、俺を含めた中学生が鮨詰め状態であった。その結果、多くの学生の命が失われ、たまたま俺は生き残った。
つまり、繰り上げ当選のように、進学校に合格したに過ぎない。運が良かっただけである。
「こんな屋敷に格安で住めるなんて……母さんも良い物件を見つけてくれたぜ。しかし、どこから入ればいいんだ?」
「あら、もしかして君が今日から入居する男の子デスか?」
突然、後方から声をかけられる。驚いて振り向くと、そこにはロリータ美女がいた。
デスの発音が『死』を意味する英単語を連想させた。たぶん帰国子女なのだろう。
「えっ、誰ですか?」
「ちょっと敬語なんて止めて、今日から一緒に住むんデスよ。私はシニー」
シニー――身長百四十三センチ、推定Aカップ、地面を撫でる程の長い白髪、丸顔の童顔。
夜空で染めたのかとツッコミたくなる漆黒のマントを身に纏っている。ブラックホールを思わせる底無しの黒い瞳が不気味である。
何よりも右肩に掴まっている黒猫が気になる。
「しっ……シニーは敬語なのに、俺には敬語を禁じるのか?」
「私のデスは口癖デス。それに佐藤蓮くんと私は同い年だ死ね」
あれ……自己紹介をしてないのに、なぜシニーは俺の名前を知っているのだろうか?
そして、語尾の『だしね』が死を連想させる発音に聞こえた。
「そっそうなんだ。これから宜しくね」と手を差し出す。
シニーは「はいデス」と俺の手を握った。彼女と握手をした瞬間、無気力になる。思わず手を振りほどく。
一瞬、生気をシニーに吸われる感覚がしたのだ。
「あっ、強く握りすぎたのデス」
「いっいや、俺の方こそ手を離してしまったよ。ごめんな!」
「そうだ、他の子にもシュガーを紹介したいデス」
「シュガー?」と聞き返す。
「はい、佐藤だからシュガーと呼ぶのデス。美味しそうだ死ね」
シニーはジュルリと舌舐めずりした。真っ赤な舌が蛇のように動く様子は気味が悪い。
「シニーは食いしん坊だな。俺を食べんといてや」
「フフッ、まだ食べたりはしないデス。それと噂の関西弁が素敵デスね」
「良い判断や、俺は美味しくないからな。ところで、入り口はどこにあるねん?」
「こっちデス」
シニーは、したり顔で道案内をしてくれた。俺はキャリーバッグを引きながら後に続く。暫く歩くと、立派な門扉を潜った。
「ここがシェアハウス『メイドハウス』デス」
シニーが両手を広げた。精一杯に大きく見せようと頑張る幼女の姿は愛らしいモノがあった。
メイドハウス……何て素敵な響きだ。美女との数奇な出会いを予感させた。
「三階建てなんやな」
「はい、ここに五人で住むのデス。もう四人は入居済みデス。あとはシュガーだけなのデス」
「五人……それだと家が広すぎる気もするけどな?」
「一階が生活スペース、二階が各自の部屋、そして三階がアクティビティルームになっているのデス」
「凄い、この家には全てが揃っているんやね」
「はい、後は地下に拷問……いえ、今のは忘れて欲しいデス」
シニーは言葉を区切ると、玄関のドアを開けてくれた。
今、拷問と聞こえた。その時、ふと頭にメイドハウスの当て字が浮かぶ。メイドとは、冥土を意味するのかもしれない。
「シュガー、扉が重いのデス。はやく入って……外は寒いんだ死ね」と顔を赤くしたシニーが扉を押さえている。
「あっ、あぁ」と俺は悪寒を感じながら、キャリーバッグを引いて家に入った。
後方でバタンと扉が閉まる。振り向くとシニーが俺の背中を押した。また力が抜ける。
「皆さん、シュガーが来たのデス」
シニーがリビングへと俺を押し出した。そこには、髪をタオルで拭く裸の少女がいた。
「ふぁー、気持ち良いお湯だったわ。なかなか設備が整ったシェアハウス……ね。キャー!」
俺の目の前で、初対面の少女がタオルで体を隠す。まさか風呂あがりの美少女に出会すなんて想定外だ。
身長百六十二センチ、推定Fカップ、肩にかかるライトグリーンのセミロング、アイドルにいそうな可愛い系の顔立ち。
彼女の黄色極超巨星を想起させる黄色い瞳が印象的である。
「ちっ違うんだ。これは何というか……事故やねん!」
「この変態野郎!」と素っ裸の少女が投げたシャンプーのボトルが俺に命中した。
そのまま俺は卒倒して、女の子が走り去る音だけがした。やがてピシャリと扉が閉まった。
「シュガー、大丈夫デスか?」
シニーが体を揺する。不思議な事に、シニーに触られている方が力を奪われる感じがする。
「平気や。ただ、あの子のメンタルが心配やな」
俺は額を触りながら、少女を心配する。どうやら出血はしていないようだ。
「それは良かったデス。危うくシュガーが死んだかと心配したのデス。それは私の仕事なんだ死ね」
「えっ」と俺がシニーを見ると、彼女は「いえ」と口を両手で覆った。
今、明らかに不自然な事を言われた気がした。ただ、空耳のような気もする。
「あの子、名前は何て言うんだ?」とシニーに尋ねる。
「知らないデス。今日、私も来たところだ死ね」
「そうか、後で自己紹介がてら誤解を解かなアカンな」
俺が起き上がった時、リビングで本を読んでいた少女と目が合う。
彼女は身長百八十一センチ、推定Dカップ、藤紫色のセミロング、ロボットのように無表情だ。
バイカル湖を思い出させる透き通った水色の瞳が美しい。なぜか頭にカチューシャのようなヘッドギアを装着しており、それが七色に明滅していた。
「あっ、ずっと居ましたか?」と思わず敬語で尋ねる。
すると、読書家の彼女は「居た」と二文字で答えた。
「喧しかったよね。すまんな」
「別に」と彼女は厚みのある本に目を落とす。
そのタイトルは『タイムトラベルによって生じる可能性があるタイムパラドックスをアインシュタインの相対性理論を応用することにより回避する蓋然性の模索』と書いてある。
目が回る。俺とは無縁の分厚い論文から目を背ける。見なかった事にする。
「シニー、あの本を見ている少女の名前は何ていうねん?」
「知らないデス。今日、私も来たところだ死ね」
シニーは意外と使えない。僕がシニーを見限ったとき、キッチンから美味しそうな薫りが漂ってきた。
まな板をトントンと包丁が叩く音も聞こえる。聞き耳を立てると、不思議なやり取りが聞こえた。
「あら、ナンシーが消えたわ。それに美智子さんもいないわ。あっ、澤村さんに水を入れないと!」
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僕は不思議に思う。キッチンの声の主を含めると、既に五人が登場している。
シニーは五人でシェアハウスに住むと説明していた。つまり、明らかな定員オーバーだ。
「なぁ、シニー。キッチンには何人いるんだ?」
「知らないデス。今日、私も来たところだ死ね。気になるなら、シュガーが確認するべきデス」
忘れていた、シニーは頼りないのだ。仕方なくキッチンに歩み寄ると、物陰からこっそり様子を伺う。
「えっ!」と思わず小声を漏らしてしまう。
「あら、ここにナンシーは隠れていたのね。澤村さんも水をたくさん飲んだわね」
たった一人の少女が独り言を話していた。信じられるか……一人で誰かの名前を呼んでいるのである。
「あら、誰かいるる?」
彼女は包丁を手に俺に近づいてきた。やたらと、『る』が多い語尾が気になるものの、取り敢えず姿を見せた。
「すまん、キッチンから声がしたから、つい盗み見てしまった」と謝る。
「あなた……誰よ?」
「俺は佐藤蓮。今日からシェアハウスに引っ越す事になってんねん」
「あぁ、君がターゲットか。僕は神々廻、今日から宜しくね」と声のトーンが下がった。
「シシバって珍しい名前だな?」と俺が感想を述べると、神々廻は「そうね」と返事をした。
神々廻――身長百七十五センチ、推定Bカップ、茶髪に金色のメッシュが入ったショートボブ。
ハート型の瞳が可愛らしい。お洒落なピンクのポーチを、右肩から左に提げている。フライパンとフライ返しを手に料理を作っていた。
「宜しく……その初対面で何なんだが、誰と話していたんだ?」と恐る恐る聞く。ただ、神々廻とはコミュニケーションを取れる気がした。
「人? ここには僕しか居ないけど、蓮には幽霊でも見えるのかい。それとも既に能力が……いや、今のは忘れるる」
「いや、幽霊は見えへん。神々廻がナンシーとか澤村さんとか、人の名前を呼んでいただろ?」
「あっ、ナンシーと美智子さんの事か?」
神々廻はフライパンとフライ返しを持ち上げた。その時、僕は恐ろしい憶測をした。
「もしかしてフライパンが澤村さんか?」
「フライパンはナンシーさ。澤村さんはケトルの事ね」と神々廻は火にかけられたケトルを指差す。
「すると、美智子さんはフライ返しか?」
「正解、蓮は僕と気が合いそうだ」
「いや、合わないよ。何で調理器具に名前を付けとるねん!」
「だって、愛着が湧いたんだもの。ナンシーも澤村さんも美智子さんも、僕の家族なのさ」
風の噂で聞いた事がある。世の中には家具に名前をつける人もいるらしい。神々廻も、その一人である。
「神々廻の考えは分かったよ。ところで、何を作っているんだ?」
「フフッ、もうすぐ完成するる。席に座っているといい」
神々廻は不敵に笑っていた。俺は言われるがままにリビングの席に着く。シニーは右隣で鼻唄を歌い、右斜め前の読書家は本に没頭していた。
これで四人か……変わった美女ばかりだな。でも、これから四人と一つ屋根の下に暮らす。
つまり、恋に発展する事もあり得る!
「まさか裸を見られるとは……チョベリバね」
先ほど俺にボトルを投げてきた少女が向かいに腰掛ける。髪をタオルでゴシゴシと拭いている。
「チョベリバって、どういう意味だ?」と聞き慣れない言葉に戸惑う。
「レンレンは本当に地球人なの。チョベリバくらい常識よ」
すると、論文を読んでいた少女が「死語」とボソリと呟く。隣のシニーが俺に耳打ちをしてきた。
「チョベリバは超ベリーバッドの略デス。九十年代の流行語デス」
あまりに古い言葉を使う少女に興味が湧く。今時、バブル期の言葉なんて使わない。
「さっきは悪かった。仲直りがしたい。名前を教えてくれへんか?」
「名前……まだ決めてないわね」
「えっ!」と予想外の返事に驚く。
「あっ、いや……今のは嘘ぴょーん! 私はランバダ。流行りの言葉に肖って名付けられたのよ」
「ランバダって何やねん?」と聞き慣れない言葉に困惑する。
「あら、地球で流行っているダンスでしょ? 地球人なのに知らないの?」
すると、読書家の少女が「死語」と小さく囁く。隣のシニーが俺にひそひそ話をしてきた。
「ランバダは九十年代に流行ったダンスです。元々はブラジルのエロい躍りデス」
「だから、聞き慣れないのか。今の流行りは虹ダンスやろ」
「虹ダンスって何よ? 死語を使わないで」とランバダは首を傾げる。
「ランバダ……お前の言葉が古臭いねん!」
「えっ、古いわけないでしょ。私が出発した時には最先端の……あっそうか、私が寝ている間にナウくなくなったのか」
「ランバダ、一人で勝手に納得するな。俺にも説明してくれ」
「あれよ、あれ……私は古き良き時代が好きな高校生なのよ。許してちょんまげ」
両手を合わせてウィンクするランバダに、俺は呆れた。追及をする気が失せるくらい哀れに感じてしまう。
「とっところで、さっきから本を読んでいる君は名前を何というんだ?」と俺は話し相手を変える。
専門書を熟読していた少女は俺を見るなり、一言「ない」と告げて会話を終えた。
「いや、嘘をつけよ。名前がない訳ないやろ!」
「ない」と読書家は言い張る。
「落ち着いて聞けよ。出生届を出すときに、名前は必要なんや。名前がない奴なんて、この日本には居ないんや」
「……強いて言えば、シリアル番号トリプルセブン」
本を読んでいた少女は、訳の分からない番号を発表した。
「いや、機械みたいだな」とツッコミを入れる。
この十五年、名前を尋ねて、製造番号を教えられたのは初めてや。電話番号を尋ねて、スマホの製造番号を教えられた事はあるけど……。
「シリアル番号トリプルセブンは呼びにくいデス。長すぎるんだ死ね」
「モチのロンね。こういう時は、ナウいあだ名を付ければ良いわ」
「じゃ、神々廻が飯を作るまでに、シリアル番号トリプルセブンのあだ名を決めようぜ」と俺は提案をする。
「ラッキーセブンに一票!」とランバダが手を上げる。
「それも長いだろ。それにラッキーセブンと呼ぶ俺も恥ずかしいわ」
「ジャックポットもありデス」
「シニー、それは無いわ。ジャックポットは賭博で大当たりという意味だろ。トリプルセブンを連想しにくいわ」
「じゃあ、ボーナでいいわよ」とランバダが匙を投げた。
「ランバダ、随分と適当やな。ボーナの由来も分からへんわ」
「レンレンは地球人なのに、ボナンザも知らないの? スペイン語で大当たりを意味する単語よ」
「何かボーナの由来が分かると、ランバダの案がよく思えたな」と俺はシニーを見る。
「たしかに、トリプルセブンも幸運の数字だ死ね。ボーナもありな気がするデス」
「……って、大当たりを意味する言葉は、トリプルセブンを連想しにくいんじゃなかったの?」とランバダが首を傾げた。
「いや、ジャックポットよりもボーナの方が短くて呼びやすいやろ」
「シュガーの言う通りデス。我ながらジャックポットは言いにくいんだ死ね」
「よし、シリアル番号トリプルセブン。今日から君をボーナと呼ぶ」と本を読む少女を指差す。
すると、彼女は本を閉じて「ボーナ」と口ずさんだ。無表情な彼女だが、気に入ったように見えた。そこに、神々廻が晩飯を持ってきた。
「お待たせ、料理ができたよ」
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神々廻は俺の前にミートソーススパゲッティを置いた。なぜか他の子には何も提供しない。
「あら、イタ飯ね。私は神々廻の手料理は食べないけど……」とランバダは見向きもしない。
「まぁ、俺は食うよ。メチャクチャ美味しそうな匂いもしているからな」
俺がフォークでスパゲッティを巻いていると、ボーナが「ダメ」とフォークを奪った。
そして、目を見張る怪力でフォークを折り曲げた。
「ボーナ……お前、怪力女やな!」と息を飲む。
「頂くのデス」と俺が目を離した隙に、シニーがスパゲッティを手掴みで食べ始めた。
「シニー、行儀が悪いやろ。というか、それは俺のスパゲッティや!」
「濃厚なミートソースに隠し味のトリカブト……ウマ過ぎて成仏、ウマメシヤ!」
シニーの独特な食レポを聞かされる。いや、ちょっと待てよ。ミートソースにトリカブトなんて入れるのか?
「レンレン、ちょっと来なさい」とランバダが俺を引っ張って二階へと連れていく。
「おい、何だよ。晩飯くらい食わせろよ」
俺は抵抗するが、内心はワクワクしていた。ランバダとの恋の予感がしたからだ。
しかし、この時の俺は未来の出来事なんて露知らない。まさか、この四人に飛んでもない秘密があるなんて想像だにもしてないのだ。
ただ、一つ断言できる事は、俺の青春にラブコメの四文字はないという事だ!
【筆者から一言】
最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。
本作は、佐藤がシェアハウスをする物語なのですが、同居人の美女には秘密があるというストーリーです。
ただ、ありとあらゆる新人賞で一次落ちを繰り返しました。ギャグを多めにしつつ、ヒロインたちに複雑な背景事情をつけたのですが、突拍子もなかったようです。また、初期の作品で文章も平凡であり、後半は奇想天外なので、評価が低くなったと思います。
じゃ、お蔵入りにしろって話なのですが、この作品のヒロインには思い入れがあります。
皆には面白くなくても、私にとっては大切なキャラなんです。ちなみに、この作品では認められなかったですが、他の作品のサブキャラクターとして登場しており、キャラの意思は別の場所で息づいています。
そんな事もあり、今回は冒頭の部分をショートショートにして公開しております。
例のごとく、この物語の結末は、どこかの出版社の受賞作として皆さんに伝えたいと思います(と言いつつ、受賞しない場合は、このアカウントで公開予定です)。
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