ルーズソックスなパンツ
仕事中、履いているパンツがズボンの中でずり落ちてくる。旧友くらい古い付き合いのパンツが、お尻の割れ目も気にせずルーズソックスみたいにたるんでいる。もうゴムが死んでいて、足を通すところに二つ穴が開いた布製の筒を履いてるのと同じだ。
制服のズボンもスラっと体に密着するタイプではなく、ダボっとお尻辺りに空間があるため、このエアポケットにパンツがくつろいでくる。そのたびお尻の割れ目が日の出のようにこんにちわして、仕事中にも関わらず半ケツで動き回ることになる。半ケツ出して接客、半ケツ出してクレーム処理、半ケツ出してありがとうございました。何をしているんだ。特殊性癖が開花してしまったら誰が責任を取るんだ。トラブルが起きて焦ってるのに半ケツで、上司に報告しながら半ケツで、ヒートアップした二人を仲裁しながら半ケツで。自分が動くたびに半ケツが付いて回るから、誠意が感じられない。
仕事終わりにズボンを脱ぐと、股間の膨らみがストッパーになり、なんとか最後までずり落ちることはなかった。上から見下ろすとパンツがロッククライミングしてるみたいに、股間を岩に見立てて掴んでぶら下がってる。こいつも必死なんだな。むしろ最後まで奮闘してくれた結果が半ケツで、パンツのやる気が完全に死んでいたら男の象徴まで顔を出していたかもしれない。
どうやらもう君とはお別れになるけど、この思い出は日記にして永遠に残すよ。ルーズソックスパンツ。ルーズソックスで衣類の一つ使ってるのに、そこにパンツが付いてくるんだから贅沢な名前だなと思ってたけど、ある意味戒名みたいなことだな。あばよ、ゴミ箱でもたるんでくれよな!
享年10歳。たぶん。