アメニティはどこにも
高校の友人たちと4人で広島県尾道市の因島に行ってきた。
目指すは「因島アメニティ公園」だ。アメニティの名を冠するくらいだから、決して満足に泡立つことのない歯磨き粉とか、むしろ歩行時の足への衝撃が増幅したのではと錯覚するほどペラッペラのスリッパとか、ありえないほど美味しい梅昆布茶とか、きっとそういうものがたくさん置いてあるのだろう。
そう思っていたが、見渡す限りそんなものはどこにも無かった。名前と見た目が一致していないという意味では完全に銀閣寺と一緒だ。もしかしてこれが侘び寂びというやつなのだろうか。すごいぞ、日本の侘び寂び! Wabi-sabi is cool!
それはさておき、いま因島ではポルノグラフィティのデビュー25周年を記念して「島ごとぽるの展」が開催されている。25周年というと、僕と同い年である。僕らの生まれてくる丁度その年にポルノグラフィティはアポロを歌ったのだ。そして翌年、僕らが歩行を覚える丁度その年にサウダージを歌い、さらに翌年、僕らがイヤイヤ期に入る丁度その年にアゲハ蝶を歌った。こうして並べてみると、並べる意味はどこにも無いことがハッキリわかる。
今回僕たちは、「島ごとぽるの展」の一環で開催されている謎解きイベント「そらいろの約束」に参加した。公園内を歩き回りながら謎を解いていく、いわゆる周遊型の謎解きゲームだ。
ポルノグラフィティのツアーTシャツを着ている人が多い中、特別ファンというほどでもない僕は、青いニューバランスのランニングシューズに青いニューバランスのランニングシャツという、その名もブルーニューバランスコーディネートで参加した。
僕たちは午後2時にゲームをスタートし、炎天下を歩き始めた。4人それぞれに謎を解き、お互いの進捗度合いを確認しながら先へ進んでいく。申し訳ないことに僕は問題を解くのが遅いため、いつもみんなを待たせてしまった。
こんなことを言うのもあれだが、実のところ僕は大学時代に謎解き制作サークルに所属していたため、問題を解くより前についつい作問者の努力に思いを馳せてしまうのだ。それだけならまだしも、この日は意識の水面下でアメニティについてずっと考察を続けていたため、思考のリソースを奪われてフルパワーを発揮できなかった。あと、友人と遊びに行けることへのワクワクで前日よく眠れなかったため、頭が非常に疲れていた。あと、疲れと暑さで脳が混乱してゲシュタルト崩壊が頻発し、文字を認識するのに時間がかかってしまったのだが、こうやって言い訳を繰り返して生きていくのはもう終わりにしないといけない。
僕が足を引っ張りながら、結局およそ2時間でクリアした。想定所要時間が2時間と書いてあったから、運営の思う壺にまんまとハマったようなものだ。
17時前には因島アメニティ公園を後にして宿へ向かった。この日の宿はAirbnb(民泊サービス)で予約したものだったので、ここにもアメニティはなかった。