バーチャル・マッチング その1
序論
「アザミ」というソングライターをご存知だろうか。敢えてソングライターと書いたのは彼女が「歌を歌うのは得意ではない」などと言うからであるが、一般的にはシンガーソングライターという肩書が最もであろう。基本的に人の声はノイズであると考えている私であるが、唯一と言って良いほど心地よく感じる表現力の持ち主である。
さて、アザミ氏はつい先月に「バーチャル・マッチング」というEPをリリースした。このEPはある企画が元となっている。総勢6名の女性を題材に曲が作られ、ネットを利用した投票で一人を選ぶというものである。「マッチング」という単語がタイトルに含まれていることから分かるように、出会い系のアプリを模したイラストとなっている。
出会い系アプリを模したイラストとは裏腹に、曲そのものはかなり真っ直ぐこちらを突き刺してくるものとなっていることは特筆に値する。(出会い系アプリ即ち軽い女であるという認識が古いものであることは重々承知しているので悪しからず)
歌詞を見ながら曲を聴いていると、冷え切った私の想像力と創作意欲がむずむずと鎌首をもたげ始めた。残念なことに、私には音楽の才が全くと言って良いほど存在しない。しかしながら、一般の人よりは沢山の本を読んできたという自負だけは辛うじて存在している。そこで、私の中にある精一杯の語彙力や想像力を総動員して妄想を垂れ流してみようではないか。
もしマッチングアプリを使わずとも彼女たちと知り合うことがあればどんな物語になったのだろう。