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文化は資源か?

お盆も終わってまもなく、我々某大学のゼミナール生たちはとある場所へ赴いていた。その土地の名は……

青森県野辺地町

ご存知でしょうか。
ちょうど青森県をフタコブラクダさんだと思うと、首の付け根あたりの海に面した町です。
かつては北前船で京都との交易で栄え、その名残からかは諸説あるが「野辺地祇園祭」という、山車を作り、笛を吹き、太鼓を叩き、鐘を鳴らす祭りが夏に行われる。
最近、日本遺産に登録されたことで、詳しい実態調査を行いたいと考えた市のほうからわたしたちに声がかかり、今回祭りを調査させていただくことになったのだった。
正直、津軽生まれ津軽育ちのわたしは、同じ県内だけど名前しか知らなかった。そもそもそんな祭りがあること自体、このことではじめて知ったくらいだ。ていうか、大学に入って、青森県という土地について学んで、地方の文化というものを改めて認識するまで青森県なんてださくてたまらんと思っていた。早くこんな場所出たくてたまらなかった。店に入れば顔見知りがレジをすることに耐えられなかったし、演劇も音楽も美術も何も見られないここには文化がないと思っていた。文化のものさしを一本しか持っていなかったのね。都会にあわせたものさしのほかに、「この土地を見る」というものさしを手に入れられたことや、それに興味をもてたということはわたしが大学に入ってよかったと思う理由の一つです。大学に行くか迷っている人がもしこれを読んだとしたら(あんまり行くか、を迷う人はいないのかもしれないけど)参考にしてください。大学で手に入れられるのは、知識と言うより「見方」「知り方」であるとわたしは思います。
まあ、それはいいとして、今回野辺地に行くということで、きちんと2ヵ月ほどみんなで野辺地についての勉強もしていきました。過去に他の大学によって書かれた報告書を読み(ちょっと古いのだけど)、ふうん〜なるほど、くらいにはして行ったんですけど、文を読んでもさほど興味は湧いていませんでした。
帰ってきた今だから言えます。
本当に、野辺地祇園祭はいいぞ。
野辺地祇園祭は、8月中旬に行われます。6月頃から各町会ごとに山車を作り、祇園と呼ばれる少女達の上品な太鼓・三味線・笛と、神楽と呼ばれる力強い太鼓・笛・鐘の囃子のふたつの音楽もそれぞれ練習されています。本番は前夜祭と、夜間運行、会場渡御と町内運行、そして最終日の昼運行と合戦の計4日間。これが町民の夏の一大イベントです。もちろん全員がさんかするわけじゃないけど、仕事で忙しい人や健康面で出られない人はお金を寄付することで、ほの活動を支援しています。だってこれ、全部運営するのに一組150万はしてますよ、たぶん。わからないけど、祭りって華やかなだけあって莫大なお金がかかっています。その苦労を分かっているから、そして自分たちの大切な祭りを存続させてほしいから、寄付金をきちんと渡すわけですね……。
祭りって、囃子とかをやっている人だけがあたかも作っているように見えちゃいますけど、お金を寄付してくれる住民とか、運営している事務とか、誘導してくれるおにいさんとか、囃子を継承して教えている先生とか、着付けしてる子供の親とか、仕事休んでいいって言ってくれる同僚とか、ご飯作って待っててくれるお母様方とか、そういう人達みんなの熱い想いでできているのね。
そして、祭りっていうのは、縁を繋ぐ場にもなっているみたいだ。今って色んなところに働きに出てて、意外と田舎だとしても近所の人と会うことってない。年齢や性別が違ったら尚更。でも、こうやって年に一度みんなで顔を合わせるから、「ああ、去年からこんな成長したのか」って思って全然知らない人になることがないし、大人になっても過去の年長者のことを思い出して祭りを継承していったりする。そういう、地域コミュニケーションを繋いでいくシステムなんだなって気付かされました。
祭りは、その地域の住民のためにある。
わたしは地元がねぷた祭りをする地域なので、ほかの県から来た人達によく「ねぷたって地元の人が楽しんでるだけで、座ってゆっくりも見られないし、つまらない」とか言われるんですけど、当たり前じゃないですか???
別に誰かに見てもらうために(見てくれた方がテンションあがるけど)やっている訳じゃなくて、自分たちがこの文化を楽しむためにやっているんですよね。祭りって。
年に何度も会えない人達と、会話して、作業して、ご飯食べて、来年も頑張ろうねって言うためにやっているんです。そこに「観光マインド」を無理矢理入れ込むのはあまりに分かっていなすぎる。そりゃ、観光に思いっきり寄せることで継続可能になったり、恩恵が大きいから地域のためになるということもあるでしょう。でも、その判断も住民がすべきことで、外部が「自分たちのおかげで得をしただろう」とドヤ顔になるのはナンセンス、恥ずかしいことだとわたしは思います。
地域の人達が楽しんでいる祭りっていうのは、「地方創生」とか言われてるこのご時世どんどんなくなっていってしまうのではないかと、危惧しています。文化は資源として消費させるべきものでしょうか。魅力に気付く人が増えるのは嬉しいけど。

今のところ、野辺地祇園祭は本当に楽しくやっていて、みんなあったかくて、最高のお祭りでした。
ぜひ、来年行ってみてください。お待ちしています。
わたしたちは2年間調査して、報告書をつくるのですが、いいものを作らなきゃって思います。

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