ひと山越えた先の静寂に感じるもの
5月以来、久しぶりの感染者に、少し緊張感が漂った。人口700人に満たない小さな島で、感染者が数人出ようものなら、それは「プチ災害」に近い。
今や沖縄本島は「災害」レベル。感染した「被災者」に溢れている。リソースが圧倒的に不足していて、僕の知る医療者の間では「命の選別」すら起きている。。
津波や地震といった「目に見える災害」と違って、目に見えない分、特に僕の住むような離島では今ひとつ実感が湧きにくかったけど、そうでもなくなった。
離島は医師は1人だ。看護師も1人。感染者が数十人出ようものなら、酸素投与が必要な人が数人出ようものなら、一気に手は回らなくなる。
だから「早期発見」「早期隔離」が大事だけど、これまで追跡調査を担ってきた保健所や、県のコロナ対策本部は手一杯で、以前のように頼りにできなくなった。
通常診療に加え、濃厚接触者の追跡や検査に先週は追われた。先週末は、人生で最も沢山電話したんじゃないかな。。数人の陽性者への聞き取り、数十人の濃厚接触者やその関係者への聞き取りや体調確認、自宅療養における指導などを行った。
10人ほどのPCR検査を済ませ、全員が陰性だったと知り、ひとまずはホッとした。
プライマリ・ケア医として、今ほど地域のために踏ん張っているという実感は、これまでの医師人生の中でないと思う。今ほど、医師として地域と一丸となって目の前の「災害」に対処している実感はこれまでなかった。
つい先日は、迅速な情報共有と普及啓発のために、村の要職とLINEグループを立ち上げ、これがコロナ対策にとても役に立った。島の高齢者や社会的弱者に感染が拡大しないよう、介護や福祉に従事する人らとも日々情報共有している。
ありがたいことは、地域の人は皆、協力的であることだ。この離島に来て2年と半年に満たないけど、島の人と積み重ねてきた信頼関係が小さくなかったことを実感する。地域医療ってつくづく「関係性」だなと思う。
目の前の一つの山を乗り越え、一段落した週末の今日、いつものように妻と散歩した先には、穏やかな海と、空と、大地が広がっていた。自然はこんなにも穏やかだけど時に不条理で、でもとてつもなく愛おしい。