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台湾の李登輝元総統と森元総理の深い関係

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台湾の李登輝元総統と森元総理の深い関係 – ニッポン放送 NEWS ONLINE

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月4日放送)にジャーナリストの有本香が出演。亡くなった台湾の李登輝元総統の功績と日本政府とのこれまでの関係について解説した。

麻生副総理や森元総理らが李登輝元総統を弔問

東京・白金台にある台北駐日経済文化代表処(事実上の台湾大使館に相当)で、7月30日に97歳で亡くなった台湾の李登輝元総統の弔問記帳の受付が8月3日から始まり、麻生太郎副総理や、森喜朗元総理など政府要人の他、関係者らが訪れた。

飯田)会場には生花と李登輝元総統の写真も飾られ、経歴紹介のボードも設置されているということです。

有本)李登輝さんは日本語での著書もたくさんあります。李登輝さんの生涯については、リスナーの方のなかにもご存知の方は多いと思いますが、本当に見事な生涯です。日本でも影響を受けて、李登輝さんを師と仰ぐ人は多いと思いますが、民主主義の台湾にとっては国父と言ってもいい存在です。

飯田)リーダーの指導によって、これほど変わるのかという。

有本)大陸から逃げて来た国民党のもとで、台湾では白色テロなどと言われるような流血がありました。

飯田)2・28事件とかね。

有本)そういうものを経て、李登輝さんは権力の座についてから、守旧派との間で激しい権力闘争はあったけれども、無血で台湾を民主化しました。その後の台湾海峡危機では、中国側がミサイルを撃ってでも、台湾が普通選挙をやって総統を国民が選ぶという事態を阻止しようとしたことに対して、1歩も引かなかったのは見事でした。結果的には、アメリカが空母2隻を台湾海峡に入れて、当時の中国は大人しくなりましたが、私たち日本にいる側も、「これがリーダーか」と感銘を受けました。それから、台湾で地震があったときもそうです。

台湾での葬儀には森元総理が出席か

有本)いろいろなことがあるなかで、台湾でのご葬儀にあたるものに、森元総理が行かれるのではないかという報道もありました。3日、森さんサイドにお話を伺ったら、「まだ何も決まっていない」という答えでした。ただ、政府周りの話を聞くと、森さんしか行っていただく人がいないということです。変な話ですが、元総理という格が必要なのですけれど、他の人たちは台湾に失礼なことをしている人ばかりではないですか。

飯田)元総理の方々を並べると、そうですね。

有本)いまの安倍総理の派閥である清和会は、伝統的に台湾派です。

飯田)もともとは、岸信介さんから。

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森元総理と李登輝元総統、台湾との深い関係

有本)ところが、2001年に李登輝さんが総統を辞め、私人になり1年が経って、ご自分の心臓の治療のために日本へ来たいということを言ったのですが、このときは外務省が嘘までついて、これを止めようとしました。大騒ぎになった当時は、さすがに日本の全メディアが、これはおかしいということで批判をしました。外務省のチャイナスクールと、当時の外務大臣は河野洋平さんですけれども、李登輝さんは危険な人物だから、病気治療や私人だと言っても入れるわけにはいかない、というスタンスでいました。

飯田)中国共産党のロジックですね。

有本)それを森元総理が、「そうではないだろう。私人が病気治療で来たい、と言っているのに、ビザを出さなかったら人権問題だ」と押し切りました。そういう意味で、台湾の人たちも森さんのことは快く迎えるということと、森さんが総理を退いた後、2004年か2005年ごろに台湾に行っています。何をしに行ったかというと、2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップの招致活動を、あのときからされていたのです。

飯田)日本のラグビーに尽力された、奥克彦さんが亡くなられた直後のタイミングですね。

有本)アジアのなかでラグビーをやる土壌があるのは、台湾と日本くらいです。

飯田)カレッジスポーツ、大学のスポーツというところで。

有本)特に台湾は戦前、日本統治時代からラガーがいたそうです。台湾では知る人ぞ知るラグビーの名選手がいて、その人は同志社に留学しに来ていたようですけれども、その方と森さんのお父さんがお友達だったようです。森さんのお父さんが亡くなったときに、その方は来てくださっていたようですが、森さんはその方が亡くなったときに総理をやっていて行けなかったので、お墓参りもしたいということでした。これは台湾の人たちに感銘を与え、本当に義理堅く日本人らしい人だということで、単純に李登輝さんとどうこう、ということだけではなく、台湾との関係を持ち続けて来たという評価があります。

麻生副総理に対する台湾政界の評価は高い

有本)それから、麻生副総理が3日、白金台に弔問に行かれたというのは、私は非常にいいニュースだと思っています。現役の副総理であり、元総理ですから。麻生さんが外務大臣のとき、国会で日本が日中国交正常化をした際、台湾は中国の一部であるけれど、「理解と尊敬を持って」という曖昧な表現を使っています。「これはどういう意味なのですか?」と国会で問われ、「これは外交語彙である」と答えました。つまり、それが意味することは何かと言うと、「台湾のことを一国として認めているという含みだということを、麻生さんは言っている」と台湾の方は受け止めています。

飯田)それを国会で明言したことは大きいです。

有本)ですから、麻生さんに対する台湾政界の評価は高いのです。

飯田)あの表現は、「中国がそう言っているのは知っているよ」くらいの受け止め方です。認めた云々は一切ありません。

有本)政治的な部分で、台湾をきちんと評価するということを、ギリギリのところで表現して来ました。特に今年(2020年)に入ってからは、「1つの国でしょう」ということも言っています。また3月~4月には、台湾がコロナ対策をうまくやっていると評価したり、WHOを批判し、「CHOではないか」ということを言ったりしています。台湾メディアもそこはかなり取り上げています。台湾人からすれば、台湾にずっと思いを寄せてくれている政治家だということです。

慶応大学に李登輝氏が来ることを止めた小泉元総理

有本)一方、安倍さんの派閥である清和会のなかでも、歴代総理で言うと小泉さんや福田さんがいますが、小泉さんの時代でも慶應大学に李登輝さんが来ようとしたのを止めました。福田さんは、2001年のときに官房長官だったのですが、どちらかと言うとチャイナスクール寄りだったので、日本としてもそういう人に行ってもらうわけにはいかないのです。そうすると、がんの闘病中で、人工透析もやっておられるけれど、森さんに行っていただくしかないのかな、という話になります。また、台湾側でどのようなご葬儀の日程になるかはわかりませんが、安倍総理の弟である岸信夫さんが行かれるのではないかと、自民党の関係者が言っています。

飯田)過去にも、総理の名代のようなかたちで行っていました。

有本)台湾メディアも「総理の弟さん」ということで大きく報道しているため、知名度もあります。仮に森さんがいらっしゃって、そこに岸さんがということになれば、とりあえず日本の姿勢は伝わるのではないかと思います。



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