2020/08/20 →→→ 2020/08/11 「宮崎正弘の国際情勢解題」 💕👓🐧
三峡ダム洪水 世界一高い楽山大仏が浸水 👆 長江洪水5号 大都市広範囲浸水 - YouTube
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和2年(2020)8月20日(木曜日)弐
通巻第6626号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~楽山の大仏、洪水で足が水没。三峡ダム危険水位を突破
新たに十万人が避難。すでに洪水で家屋流失は二百万人
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中国ではまだ揚子江流域の洪水被害が続いている。しかも三峡ダムの上流域のほうが状況は深刻である。8月19日、三峡ダムの水位が危険水位150メートルを越え、166メートルになった。こうなると水圧でダムが決壊する懼れがある。
毎秒48000立方メートルもの放水を続けているが、入水量が、毎秒76000立方メートル。だから放水が追いつかず、上流域に水が溜まっていく。激しい量が、上流地域に押し戻される。
揚子江流域ではすでに二百万人が家屋を失い避難生活に追い込まれている。農作物の被害は、90億ドル(およそ一兆円弱)。
習近平が「食べ残しをするな」とのたまわったのも、むべなるかな。
緊急輸入の穀物、こめ、庶民は買いだめに走っている。豚肉などは値上げされたまま。レストランは武漢コロナ災禍で、日本同様に客が寄りつかないから、高級魚や食材はさばけない状態も続いている。
揚子江流域に支流の眠江、青衣江、大渡江の三つが合流する地域が楽山市だ。ここに世界遺産の楽山?仏がある。蛾眉山も近い。そして三峡ダムの上流に位置する。
楽山?仏は高さ71メートル。奈良の大仏の五倍以上。西暦803年に完成した。崖を削っての難事業で、創始者は途中でなくなったが、付近の人々が崖を掘り続けた。なぜそれほどの情熱をこめたかと言えば、洪水をなくす祈りの場所でもあったからだ。
中国の揚子江流域に降り注ぐ豪雨は依然としておさまらず、8月19日に?仏の足の部分が水に隠れた。見物台は、その下。足の部分だけでも百人は乗れるから、被害の想像がつくかもしれない。
筆者も十年ほど前に船から見学した。見事な彫刻で、中国では珍しくゴテゴテしてはおらず、仏面は慈悲を顕しているかのようだった。洪水を収めることが出来るか?
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OINIONS 読者之声
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(読者の声1)貴誌6621号8月17日)ならびに6624,6625号と三回連続でベラルーシにおける「ホワイト革命」の可能性を論じられています。
欧州最後の独裁者といわれるルカシェンコ大統領の政治声明もおしまいという印象を持ちますが、さて、この国と中国はいかなる関係でしょうか?
(KY生、茨城)
(宮崎正弘のコメント)中国は、ルカシェンコが六選された直後に、まっさきに祝意を表わした国です。2019年だけでも中国は4億5000万ドルを投資して、ミンスク郊外に工業団地の建設をしています。
地政学的にも要衝であるベラルーシを、「一帯一路」の拠点化を狙ってのことですが、ロシア依存を減らしたいルカシェンコとしては中国を牽制球のツールとして利用したい。
さて不正選挙、やり直し、政治犯釈放を求めるベラルーシの抗議集会、デモ、そして野党は「ルカシェンコと中国の怪しい結び付き」を問題にし始めました。
中国が問題として浮上した直近の動きに注目しています。
EUは不正選挙に拘わったベラルーシ政府高官らを制裁すると発表しました。
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(読者の声2)朝日新聞朝刊で8月から始まった連載小説「また会う日まで」(池澤夏樹)は、「あの戦争」が舞台であり、主調のようですね。
私は、図書館で朝日新聞を読んではいるのですが、気がつくのが少し遅くて、直近の10回分ぐらいしか読んでおりません(本日・8月19日で連載18回)。
主人公は、戦前戦中に海軍水路部で海図の製作などを担った秋吉利雄元海軍少将ということで、作者にとって縁故者のようです。
作者によると、「秋吉利雄を主人公にすると決めた理由は、三つの資質があるから。まず子どもの頃から敬虔なキリスト教徒。次に海軍軍人。そして天文学者でした。これらが、いかに彼の中で混じり合っていたか、あるいは戦いあっていたか。親族から提供された手紙なども含め、膨大な資料があります。ファクトを尊重しながらその隙間を創作で埋める。いかに彼の内面を推察するかが工夫のしどころです。」(7月23日朝日新聞朝刊・作者の言葉)ということです。
私は、この池澤夏樹という作者のこれまでの著作、言動については不知ですが、今後、この連載小説において、はたしてどのような主題が主張、展開されていくのか、かなり興味を引かれます。
今年は、9月にミッドウェー海戦をテーマにした米国映画も公開されるようで、真珠湾奇襲、ミッドウェー海戦等についての関心が一般的に高まることは歓迎するべきではないかと思います。
(椿本祐弘)
(宮崎正弘のコメント)池澤夏樹はたいへん力量のある作家ですが、個人で文学全集を編むなど文壇でも重鎮ですね。父親は福永武彦、死ぬ前に「息子が私を越える」と予言していました。父が『日本書紀』の現代語訳に、息子の池澤氏が『古事記』の現代語訳に挑み、また小説のなかには古代史を舞台に「ワカタケル」がありますが、まだ単行本にはなっていません。
池澤夏樹は中島敦を尊敬していて、その南洋時代の三年間を克明に追跡し、サイバン、テニアンなどを旅した記録もあります。戦争への視点は、おそらく同じでしょう。ただし 政治的発言はリベラル、左翼的な傾向が強く不快な発言もありますが、文学者としては読むに値する人と思います。
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和2年(2020)8月20日(木曜日)
通巻第6625号 <前日発行>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~「ハバロフスクの乱」を抱えるプーチンはベラルーシに介入できない
根っこは同じ、反モスクワ感情が民主化デモを過激化させている
*************************************ロシアにも野党がある。
与党「統一ロシア」を率いるプーチンは憲法改正の国民投票を行い、実質的に2036年まで権力のトップに居座るつもりだが、反対票がもっとも多かったのが、シベリアなど極東地区、とくにハバロフスク、そしてウラジオストック地区だった。
与党に対抗する野党は「自民党」と「ロシア共産党」。前者は「極右」と言われるジリノフスキーが党首。後者は年金、恩給裨益組が多く、ソ連共産党の正式な後継政党をなのるが、哲学博士のジュガーノフが委員長。いまや党員16万人しかおらず、政治的影響力は殆どない。
極東部では、三人の知事が自民党所属である。
ハバロフスク知事だったセルゲイ・フルガル知事が、7月9日に十五年前の殺人事件に関与した容疑で唐突に逮捕された。そして予定されていたかのように、7月20日にプーチンによって更迭された。知事代行はモスクワから派遣されたミハイル・デグチャイル下院議員である。
爾来、およそ七週間にわたってデモが続いている。ときにハバロフスク市内は三万人のデモ隊が広場を埋め尽くし、警官隊と衝突した。数人の逮捕者もでている。
地図を拡げると、ハバロフスクはモスクワより遠く、むしろ中国とはアムール川を挟んだ対岸、日本からは直行便がある。同じロシア語を喋るが、この極東地区は中国、韓国、日本との交易のほうが盛んであり、以前から反モスクワ的な行動をとった。イルクーツク、チタなどは西シベリアで、あまり反モスクワ感情はない。
さて極東シベリア地区の反プーチンの動きが、ベラルーシと絡むのである。
モスクワにとって連邦を形成するスラブの三兄弟は、ウクライナ、ベラルーシ、ところが西ウクライナは西側に傾斜しており、ますますベラルーシが重要なのだが、近年はルカシェンコ大統領がモスクワに楯突くことが多く、ロシア・ベラルーシ関係はすきま風が吹いていた。
東ウクライナへ、事実上のロシア軍派遣と軍事衝突、クリミア半島併呑で、西側から制裁を受けているロシアは、下手にベラルーシに介入すると西側の関係はさらにギクシャクする。
だから口では軍事支援を言いつのりながらも、時間稼ぎに徹し、プーチンは国内の背中にあるハバロフスクの反乱も、時間を掛けて抑え込むという流儀になる。
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~エジプト大統領の側近が、じつはイスラエルのスパイだった
最高の機密を掴んで、戦争の準備状況をエルサレムに知らせていた
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ウリ・バル=ヨセフ著、持田鋼一郎訳『モサド最強のスパイ』(ミルトス)
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事実は小説より奇なり。
エジプト大統領の最側近が、イスラエルのスパイだった。
嘗てはシリアの参謀総長の親友が、やはりイスラエルのスパイだった。
世界にはよくある話、FDR政権はおびただしいソ連のスパイがいた。ノモンハン師団長の小松原はソ連のスパイだった。
日本でも以前は有能な愛国的スパイがいたが、いまは制度的に日本人スパイは存在しない。ところが外国のスパイになっている日本人がかなりいる。平和惚け日本では、これを取り締まる法律がない。だから日本はスパイ天国と言われるのだが、じつはさほどの機密がないから、スパイにとってもつまらないのではないか。
在日の外国人スパイにしても、殆どの情報はおおやけにされており、政治家は気軽に会えるし、機密、最高機密の区分けもないのでペラペラ喋る。なにしろ日本の政治家には国家安全保障という概念が欠如している。
冗談は措くとして、さてエジプトの英雄だったナセル大統領の女婿が、じつはイスラエルのスパイだったという世紀の大事件を本書は克明に追及し、年月を掛けて仕上げた現代史の舞台裏を詳述する記念碑的作品である。
ナセルはアラブの英雄として、いまも高い評価があり、シシ現職大統領もナセルを尊敬している。スエズ戦争など失敗の多い政治家だが、ナショナリズムを鼓吹した。
この物語はナセル死後から本格化する。
暗号名「エンジェル」。
1966年、アシュラフ・マルワンはナセルの愛娘で次女のモナと結婚した。大統領側近として世界の社交界に人脈を拡げ、また利権も多く、マルワンは大実業家になった。
1970年にロンドンでイスラエルのモサドと接触した。ときのエジプト政権はサダト。もちろん、マルワンはサダトに深く食い入り、軍事情報を、それも最高機密情報を掴んだ。エジプトがイスラエルと戦争を準備していた。イスラエルは単なる軍事演習とみていた。
マルワンはイスラエルのスパイだったが、同時に二重スパイでもあり、その複雑怪奇な、緊張感が連続するサスペンスは本書のお楽しみ。
しかし「用済みとなってスパイは消される」。
マルワンは2007年、ロンドンで死んだ。謎の死だった。
本書の解説を佐藤優氏が書いている。
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 2119回】
──英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港1)
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橘は大正期で切り上げ、次は北一輝の『支那革命外史』に転ずる。これが当初の腹積もりだった。だが武漢国民政府崩壊まで進んで来ると、このまま読み続けるのもアリかと考えるようになった。
それと言うのも、これ以後の中国は国共両党の再編を経て国共激突に移り、やがて満州事変(1931年)、上海事変(1932年)、満洲国建国(1932年)、盧溝橋事件
(=支那事変/1937年)と続く激動の中で、再び国共両党が合作し抗日戦争体制へと移る。中国には?介石・国民党(重慶)、毛沢東・共産党(延安)、汪精衛・国民党(南京)に加え、以上の三者のいずれにも与しない政治勢力が生まれては消え、激動は1945年8月15日で終止符を打たれることなく、1949年10月1日まで続くことになる。もっとも、その日を境に中国人に平穏な日々がもたらされたというわけではないが。
こう見てくると、当初の目論見に従って橘を中途で終わって北一輝に移るより、このまま『元祖チャイナ・ウォッチャー』たる橘の仕事を追い続けるのも一興かと考えるようになった。それというのも橘が見せた紆余曲折・千変万化する中国情勢との格闘を通じて、日本における中国認識の変化を捉えることが出来ると考えたからだ。
そうと決まったらグズグズしてはいられない。とは言うものの、急いては事を仕損じるとの教えもある。やはり些かの「仕込み」が必要だろう。
なにせ中国・台湾側の研究も進む一方、日本でも最近では『対日協力者の政治構想─ 日中戦争とその前後』(関智英 名古屋大学出版会 2019年)など一読驚嘆の研究も現れて来たことだから。
ここで突然だが、20世紀初頭の孫文と宮崎滔天を始めとする日本側支援者の関係を思い出した。孫文は日本側支援者の動きが短兵急に過ぎ、慎重さを欠いていると批判する。これに対し滔天らは一気呵成こそが最善策と考える。
最善策のみならず次善策、その次善策の次善策。二枚腰から三枚腰、いやn枚腰で清朝打倒と言う最終目的達成に向けて画策する孫文の目には、「焦りはすべてを水泡に帰させてしまう」と映ったに違いない。
宮崎滔天自らが説くように「一気呵成の業は我人民の得意ならんなれども、〔中略〕急がず、噪がず、子ツツリ子ツツリ遣て除ける支那人の氣根には中々及ぶ可からず」(「暹羅に於ける支那人」『宮崎滔天全集(第五巻)』(平凡社 昭和52年)ということだ。
そこで「一気呵成の業」に突き進むのではなく、ここで少しく方向転換し別の角度から「急がず、噪がず、子ツツリ子ツツリ」と「支那人の氣根」を考えて見ることにしたい。じつは「支那人の氣根」のナゾを解くことが、我が長年のテーマでもある。
──初めて香港を体験したのは、今から半世紀前の1970(昭和45)年の秋だった。以来、殖民地時代のHong Kong生活を、5年ほどの時間をかけて「急がず、噪がず、子ツツリ子ツツリ」と満喫させてもらった。すべては「香港で学んだ」と言っておこうか。
当時の香港はイギリス人総督に率いられた政庁の下で、政治的自由に一定の制限はあったものの言論の自由は保障されていたし、なによりも経済はレッセフェールと呼ばれた自由放任体制によって繁栄し、それなりに落着いた日々を送っていた。
多くの人々は中国を嫌って香港に移り住んでいたが、だからといって街中に現在のように激烈な反中・嫌中の雰囲気は感じられなかった。
香港も昨年来の混乱が物語るように、今や米中激突の戦場と化した。往時を振り返れば、やはり寂しくもあり悲しくもある。一般香港住民にとっては「愁嘆場」と言えるような現在の香港を包むとげとげしく、ささくれ立ち、ざわつき、いたたまれないような雰囲気からすれば、往時の長閑さの片鱗なり求めるのは、ないものねだりというものだろう。
そこで橘小休止を機に、往時の香港での体験を振り返りながら、現在の香港を考えてみたい。どれほど続くかは未定だが、先ずは時計の針を1970年秋に戻してみたい。
●(宮崎正弘のコメント)香港留学を含め、香港での生活の長い樋泉さんの香港物語、どんな展開になるのか、愉しみにしております。
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OINIONS 読者之声
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(読者の声1)貴誌6623(8月18日)で、バイデンの支持率が下がり、トランプとの差が4%に縮まったとありました。ということはトランプが逃げ切って、再選される可能性が高まったのではないですか?
(JJセブン)
(宮崎正弘のコメント)CNNの調査に応じる人でも、消極的なバイデン支持、このうちの多く、とくに若者は投票に行かないと思います。
一方で、トランプ支持層は熱狂的であり、必ず投票に行くというパッションがあります。それがバイデン陣営にはない。
多くの民主党支持者は、「仕方がないからバイデンにでも入れるか」と消極姿勢では追い込むエネルギーが欠乏していますね。
世論調査で4%というのは、事実上トランプが逆転しているとも考えられます。
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(読者の声2)21日(金曜)夜に放送予定の「フロント JAPAN」は、ホスト浅野久美さん、ゲスト宮崎正弘さんでお送りします。テーマは「香港安全法とベラルーシ騒乱に通底するもの」ほか、です。(日本文化チャンネル桜)
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和2年(2020)8月19日(水曜日)
通巻第6624号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ルカシェンコ当選に祝電を送ったのはロシア、中国、そしてカザフスタンだった
ベラルーシ野党、EU、「大統領選挙の早急なやり直し」を要求
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野党の有力候補三人を逮捕し、選挙管理委員会に一般国民は参加できず、申し込んでも「もういっぱいです」と言われ、せめて開票の立会人、観察要員を申請しても、すでに決まっているとの返答だった。
最初からルカシェンコと書いた投票用紙が用意されていた。
それでも投票に行った国民が多かったのは西側メディアの出口調査に期待したのだ。ロシアの『プラウダ』ですら書いた。
「選挙はルカシェンコの敗北だった」と。
ところが、開票結果はルカシェンコが80%、野党のスベトラナ・チハルフスカヤは9・9%だった。(逆だろ)。
「そんな莫迦な」。激昂したベラルーシ市民は街頭に飛び出した。催涙ガス、放水、ゴム弾。そして特殊部隊がデモ隊弾圧に動いた。
16日にも、首都ミンスクで十万人があつまってルカシェンコ六選に不満をのべた。「ルカシェンコはすぐにやめろ」「不正投票だ」「彼が当選するはずがない」。
18日もミンスクの中央公園に数万があつまって「票の再集計」などを求めた。この集会ではメディア数人が拘束された。
選挙終了から十日になるが、騒ぎは収まるばかりか拡大の一途である。
国有企業トラクター工場では視察にきたルカシェンコに「やめろ」と罵声が飛んだ。国有のテレビ、ラジオ放送局からもデモの参加者が目立ち、おどろくべし!「オーメン」(OMON)の部隊員が制服を脱いでデモに加わった。
国有企業の幾つかではストライキに入った。こうなると未曽有の事態である。
東欧でも連帯集会がワルシャワとプラハなどで開催され、またEUは首脳同士の電話海外、プーチンも頻繁に電話外交を展開している。ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領もプーチンと電話会談。プーチンは「ベラルーシの内政に干渉は許されない」と不満を述べたが、EU首脳らは早急の選挙やり直しを求めた。
トランプ大統領も記者団に「適当な時期にプーチンと話し合う。ベラルーシには民主主義が足りないようだ」と語った。
ルカシェンコ体制を守る特殊部隊「オーメン」は黒づくめに覆面、特殊エリート部隊で嘗てはソ連のOMONがバルト三国に軍事介入したことでも有名だろう。警官も制服を脱いで市民側に駆けつける者がいるという。
ルカシェンコは選挙やり直しではなく、新憲法採択を待って身を引くと発言した。時間稼ぎである。
ベラルーシ国内は、すでに33都市にデモが拡大し、死者二名、負傷数百。逮捕者3000名余。収容所は満員となっている。女性らは白い服に、白い花を掲げて、集会を開催し、この騒擾は収まる気配がない。
▼ルカシェンコ体制の終わりが見えた
NATO軍はリトアニア国境付近に展開され、国境は閉ざされた。ベラルーシ軍は、西部国境に展開しており、軍隊がにらみ合っている。先日もトランプは、駐独アメリカ軍を削減するとしたが、そのうちの千名をリトアニアへ移動させている。
ならば軍のクーデタは起こるか?
ルカシェンコの独裁体制はベラルーシ版のKGBと「シロビキ」でもっている。この二つの権力構造を破壊しない限り、体制転覆は難しいとされる。
1991年のゴルビー監禁クーデタは失敗し、かえってソ連の崩壊を早めた。
2016年のトルコのクーデタも失敗に終わり、アンチ・エルドアン勢力およそ十万人が軍隊、行政機構、教職員からパージされた。クーデタの動きをひそかにエルドアンに知らせたのはロシアの諜報機関だった。
ベラルーシにおいても、軍の少壮幹部らはクーデタによる政権強化には消極的で、求心力が失われつつある。同時に軍はロシアの介入をもっとも嫌う傾向がある。
ルカシェンコ当選に祝電を送ったのはロシア、中国、そしてカザフスタンだった。
エストニアに逃れたチハルフスカヤは「政治犯全員の即時釈放」と「大統領選挙のやり直し」をもとめるとSNSで表明した。
ほかの野党とEUは、「大統領選挙の早急なやり直し」を要求している。まだまだ解決のめどは立っていない。
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OINIONS 読者之声
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(読者の声1)宮崎正弘先生独演会『米中激突、鎖国ニッポン、さようなら習近平』
https://www.kokuchpro.com/event/a802defef41c3c2d09302832ba5314d0
記
【日時】令和2年9月5日(土)14時30分~16時30分(開場:14時)
【会場】文京区民センター2F 2-A会議室(文京シビックセンター向かい側)文京区本郷4-15-14番地。(交通:都営三田線・大江戸線「春日駅」A2出口から徒歩10秒、東京メトロ丸の内線・南北線「後楽園駅」5番出口から徒歩3分)
【参加費】事前申込:2000円、当日申込:2500円、事前申込の大学生:1000円、高校生以下無料
【申込先】9月4日21時迄にメール又はFAXにて下記で受付(当日受付も可)
FAX 0866-92-3551
E-mail:morale_meeting@yahoo.co.jp
【主催】千田会 https://www.facebook.com/masahiro.senda.50
https://twitter.com/Masahiro_Senda
(千田会)
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(読者の声2)「李登輝先生を偲ぶ会」のご案内です。
アジアの誇る大政治家、日本精神を説く先生に日本人はどれだけ勇気つけられたでしょうか。
偉大な政治家を偲び、日台関係の明日を考える会です。
記
とき 9月5日(土曜日) 1830-2030
ところ 文京シビックセンター 26階スカイホール
講師 宮崎正弘「李登輝先生を語る」
柚原正敬「李登輝先生とともに歩んだ歳月」
藤 重太「李登輝先生の遺志を継ぐ人たち」
参加費 おひとり千円
主催 英霊の名誉を守り顕彰する会
連絡先 (090)6709-9380(佐藤)
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和2年(2020)8月18日(火曜日)弐
通巻第6623号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~民主党大会直前のCNN調査。トランプが明瞭に巻き返した
バイデンとの差が14%から4%に劇的に縮小(CNN)
*************************************あの「トランプ叩き」で悪名高きCNNの世論照査が8月17日に発表された。
トランプとバイデンの差が4%に縮小していたことがわかった。六月の同調査は14%の開きがあった。通常、5%から6%程度の差は誤差の範囲だが、14%もの開きではさすがにトランプ選対に赤信号がともった。
そのうえバイデン陣営はハリス上院議員を副大統領候補に指名し、左翼メディアは「素晴らしい選択」と褒めあげた。したがって支持率はもっと上がる筈だった。
ハリス女史は父親がジャマイカ、母親がインド人。このためインデでは多くのメディアが騒いだ。
バイデンがハリス上院議員を選んだ理由は(1)女性(2)非白人(3)マイノリティ出身という三代原則によるもので、彼女の政治的資質も政治的哲学、思想、政策履歴もなにも問わなかった。
ここでリアルを有権者がみることになった。
アルツハイマーのバイデンは途中で降りることになる。大統領という激務にも耐えられないが、自宅の地下室からテレビを通じてだけの選挙戦。失言を怖れて録画する。
18日から始まる党大会にも出席せず、テレビ会議方式になる。ということは、もちバイデンが当選しても、四年も大統領職を続けることは考えにくいから、途中からハリスが、大統領になる可能性が高まる。
それが不安を?きたてることになったのではないか。
とはいえ、ミズーリ、ウィスコンシン、フロリダ州などで、共和党と民主党はデッドヒートを繰り広げており、とりわけ中西部農業州とラストベルト地域で、トランプはひとつでも落とせば、再選に距離ができる。
もとより西海岸とハワイ、ならびに進歩派とリベラルが圧倒的な東海岸の北東部は共和党が弱く、NY州、ワシントンDC、ハワイもバイデンに行くだろう。
このあとの決戦はテレビ討論になる。
惚け老人のようなバイデンと、かたやエネルギッシュなトランプの舌戦が展開されると、一般的印象としても、パワフルな候補者が有利である。
そこで民主党支援のアジビラ的なNYタイムズが、このテレビ討論会を中止しようと言い出したのだ。
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~「我是不之我的我」(わたしは私でないわたしだ)
哲人政治家の裏の秘術。政敵を追い詰め、改革を使命として断行
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河崎真澄『李登輝秘録』(産経新聞出版)
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これまでにも多く出版された李登輝評伝と本書はいささか趣が異なる。
もちろん李登輝元総統の台湾民主化を評価することは前提としてあるが、本書を読み進めていくと、これまでわからなかった歴史の謎、台湾の現代政治の闇の部分に光りが当てられていること、これが第一の特徴である。
著者の河崎真澄氏と評者(宮崎)は、氏が台湾特派員のときにもよくお目にかかったが、その後、十年間にわたって産経新聞上海支局長を務められ、じつは上海へ行くたびに会うチャンスがあった。珍しいレストランにも、連れて行って貰った。
運命とはわからないもので帰国後、河崎氏に廻ってきた大仕事が李登輝秘録だった。
意気込みも違うが、アングルが異種である。李登輝の哲学や日本的情緒や、日本語の流暢さを褒める正面からの書き方ではなく、むしろ李登輝の秘めた政治力、その権謀術数の妙を書き込んでいるのである。
1995年、中国は台湾沖合にミサイルをぶち込んで脅した。しかし、李登輝は平然としていた。
空砲であることを予め知っていたからだ。
それには秘密コネクションの背景がある。
李登輝の密使だった曾永賢のもとに電話がかかった。「極秘伝言」で、「近くミサイルを飛ばすが、慌てなくて良い」というメッセージだった。曾永賢は90年代のはじめから李登輝の指示で極秘裡に共産党幹部と接触を続けてきた。
米国が台湾海峡に空母を派遣するほど緊張が続いたが、台湾は報復することもなく落ち着き払っていた。
その謎が解けた。
曾永賢が最初に極秘行動を開始したのは1992年だった。香港で中国側密使と接触するうちに、突然、北京へ飛ぶことになり、そして曾が驚かされたのは会見場に突如現れたのが楊尚昆・国家主席だったのだ。
評者も、何回か曾永賢にあったことがあるが、こんな話は聞いたことがなかった。
以後、中国側で台湾との秘密のパイプは葉選寧だった。当時、葉は軍の総政治部連絡部長という重要ポストにあった。いうまでもなく葉選寧は、毛沢東と革命戦争を戦った葉剣英将軍の次男である。
こうして中台の極秘ルートが存在していた。この曾永賢は、李登輝と同じく客家人脈、世界に散った客家は四千万人とも言われる。曾もまた日本語が流暢だった。
李登輝の武士道は新渡戸稲造的であり、つまりキリスト教的コモンセンスを重視するのであって、評者は前にも、李登輝さんの武士道は、「山本常朝の武士道とは死ぬることとみつけたり」とは異なると論じたことがある。
本書によれば、李登輝は『論語』の「いまだ生を知らず、いずくんぞ死を知らん」という言葉に釈然としないで、探し求めていた青年期に出会ったのが新渡戸の『武士道』だった。これに深い感銘を受けて、京都大学へ進学を決意した。新渡戸が京大で教えていたからだ。
黄文雄が説いたように「死生観」と「生死観」の違いということになる。
いかに生きるかを迷うが、そうではなく、いかに死ぬかを考えれば、人生の行き方が決まる。自分の使命を自覚できる。
ミサイル危機がむしろ中台の雪解けムードを作り、89年天安門事件で西側から制裁され、孤立を深めていた北京が、気味悪い微笑を浮かべて台湾企業の誘致に乗り出した。年金生活に入っていて退役軍人も、大陸へ通い現地妻をおくようになり、やがて台湾企業の中国進出ラッシュがやってくる。
この傾向を苦々しく思っていた李登輝はフィリピンと交渉して、スビック湾の跡地に工業団地を建て、台湾企業の加工区とする『南向』政策を進めた。
ところが台湾企業は同じ言葉が通じる対岸の福建省めがけて、まっしぐらに進出を続け、やがては足抜きが出来ないほどの蟻地獄に嵌った。
李登輝は大陸進出の象徴となる「台湾プラスティック」の計画をなんとしても阻むことに熱意を向けた。当時、評者もたまたま「台湾の松下幸之助」と言われた王永慶・台湾プラスティック会長にインタビューしたことがあり、『本気で中国に進出するのですか。ミサイルを台湾に向けているのに?』と尋ねたことがあった。
李登輝は急ぐな、慌てるなと訓戒し、大陸への投資上限を5OO0万ドルとした。
その決定があって、評者のインタビューに王永慶は「米子会社と分けて、複雑な形での投資をする」と言っていたが、結局、計画を撤回した。
退任後、心臓手術のために来日予定を立てた李登輝に日本の外務省は首を縦に振らなかった。そこへ降って湧いた事件が米偵察機の海南島不時着。中国は「人道的立場から乗員を米国に還した」。
これだと日本政府は「人道的理由」で李来日にヴィザを発給した。
こうした姑息な態度に終始した日本政府に李登輝は「日本政府の肝っ玉は鼠より小さい」と記者団に語った。
何回目かの来日では周囲の反対をよそに敢然として実兄のいる靖国神社を参拝した。
阿川佐和子さんがエッセイで言っている。
「李登輝さんが日本の首相だったら良かったのに」
リーダーシップ欠落、武士道精神皆無、滅私奉公消滅の日本人政治家をみて絶望を拡げる日本人は、李登輝に仮託して強い指導者像を描いたのだ。
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(読者の声1)貴誌書評にあった「ノモンハン事件」について
1.情報;ソ連崩壊後、元ソ連の将軍が産経紙でノモンハン事件について語っている。
2.スターリンの目的:複数あった。
支那事変:負け続ける蒋介石への張鼓峰事件に続く支援。独ソポーランド分割を控えて東部国境の日本の牽制。粛清で弱体化した赤軍の実戦訓練など。
3.開戦責任:日本責任論については、元ソ連将軍は、支那事変の収拾に苦しむ日本軍がソ連を攻撃するなど、どんな間抜けでも思いつかない愚論、としている。日本の著名歴史作家は皆間抜けということである。
4.戦争経過: ソ連は1939.2頃からタムスク基地に数千輛の軍用車両、兵器、銃弾などを蓄積していた。しかし日本側は全く気がつかなかった。
五月のソ連の挑発に対して、辻政信参謀が反撃を主張した。彼は戦後反省し戦死者に謝罪している。現地は十月になればマイナス50度になり戦闘不能になる地域だった。
戦闘は当初日本が有利だったが、次第に物量に押されて8月20日の大攻勢で日本の戦線は崩壊した。ソ連は重砲の最大射程範囲(20Km)に到達すると停止した。
5.諜報関係:(イ)偽情報工作:ソ連は満洲のソ連領事館に逆スパイを配置して、日本側に情報を流していた。しかし8月20日の大攻勢は隠した。それまでの情報が正しかったので日本側は引っかかり、大打撃をうけた。近年ロシアは情報担当の甲谷少佐のサインのある文書を見せてバカにしている。
(ロ)クロダ教授説:この人物は在米で、小松原将軍がソ連スパイだったという説を発表した。モスクワ駐在時代にKGBの女にひっかかった醜聞を隠すためにスパイになったという話しだ。にわかには信じられない。
ソ連が西側の人物を籠絡するのに女を使ったことはよく知られている。米英の軍人やマスコミ記者がひっかかった。しかし戦闘中の小松原将軍にはソ連に便宜を図っても利益がない。ソ連の重砲弾が頭上に降ってくるからだ。ロシア常套の分断工作だろう。
3)ロシアの対日諜報攻勢:最近ロシアの諜報が活発化しているようだ。杉原千畝神話もその一つでイスラエルの研究者は戦前からのソ連スパイとみている。
6.慰霊:今も原野に遺骨が散乱している。まさに古代ギリシャのヘロドトスが記したペルシャ戦役の古碑文を想起させる。「見知らぬ旅人よ、祖国に行きて伝えよ、我等国の命に従い、ここに斃れたりと」
これらは拙著「黒幕はスターリンだった」ハート出版にまとめてあるのでご参考まで。 (落合道夫)
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和2年(2020)8月18日(火曜日)
通巻第6622号 <前日発行>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~イスラエルとUAE国交、続く中東諸国はすでに数ヶ国が視野に
カタール、バーレン、オマーン、そしてサウジアラビアさえも前向き
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UEAとイスラエルが国交を開き、中東政治に突破口が開かれたと西側メディアは積極的に評価した。
UEAに続きそうなアラブ諸国の筆頭はドバイとバーレンである。水面下の接触どころか外務担当の高官らの相互訪問も繰り返されている。
ついでカタールだ。アルジャジーラ放送局のような、ややリベラルなメディアを誇るカタールは、国際的な平衡感覚があり、イスラエルとの関係改善に前向きと観測されている。
オマーンもイランを目の前にホルムズ海峡を扼し、イランの動きを慎重にみながらも、積極的な外交チャンネルを拡げてきた。タイミングを見計らっているかのようである。
このような鵺的な行動を取るのは、国内要因、政治家の資質もさりながら、イランとの関係からくる打算である。
モロッコはユダヤ人コミュニテイィもあって、セファルディの移民はモロッコからボロ船で地中海を横断してイスラエルに移住した。モロッコはポンペオ国務長官が仲立ちして、第三国でイスラエルとの交渉を進めているという噂がある。
阻害要因は汎アラブ人に共通するユダヤ人嫌い、イエーメンはイラン系「フウシ」の武装集団が「イスラエルに死を!」と叫んでいる。レバノン、シリアはシリアの代理兵が蠢き、イスラエルとの国交回復など当面はあり得ないし、アルジェリア、スーダン、リビア、イラクなどもイスラエルを敵視する頑固な姿勢に変わりがない。
ただしチュニジアを例外として、いずれも国も内戦もしくは部族紛争が続いており、国内事情で、それどころではないというのが実情だ。
こうなるとサウジアラビアがどうするのか。
じつはイランとの敵対という基本構造があり、アラブの団結の必要があるため、最期に名乗りを上げるだろう、と観測されている。
リヤドはじっとアラブ国家の動静をみているのだ。いま一つはトランプ政権との関係もすこぶる良好で、足繁く大統領女婿のクシュナーがサウジアラビアを訪問している議題のなかには、イスラエルとの関係改善が討議されている
近くUEAに続く国がでる。
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樋泉克夫のコラム
@@@@@@@@ 【知道中国 2118回】
──「ポケット論語をストーブに焼べて・・・」(橘78)
「武漢政府失敗の二大因由」(昭和3年/『橘樸著作集第一巻』勁草書房)
△
「純粋にして唯一の革命勢力──美しい言葉を弄さず、学識を自慢せず、妥協せず、疲れを知らず、屈することのない、いかなる有産階級からも独立した非政治的な人民的社会革命勢力」と、匪賊を革命勢力の一翼として称賛していたのは、ロシア無政府主義者のバクーニンだった。
毛沢東もまた「これらの人々(兵士、匪賊、盗人、乞食、売春婦たち)には勇敢に闘う力が潜んでいて、適切な指導があれば革命勢力の一翼を担うことが出来る」と、バクーニンと同じように無頼漢を革命勢力と声高に語っている。
やはり都市のインテリ革命家でないからこそ、毛沢東が頼みとしたのは広大な地方農山村に屯す無頼漢であり、彼らを“無産者革命の前衛”に変身させることが毛沢東式暴力革命成功のカギだったはずだ。
青年毛沢東にとっての愛読書であった『水滸伝』は追い詰められた貧農の武装蜂起という史実を下敷きにして描かれた小説であり、梁山泊の実態は匪賊の塞だった。毛沢東の口癖は「梁山泊の英雄を見習え」であり、主著『矛盾論』では梁山泊の指導者である宋江の振る舞いを題材に中国が抱えた病弊を哲学的に説いていた。
人民解放軍の生みの親とされる朱徳は自らが参加した哥老会について、「軍閥連中に較べればずっと正義感もあり、尊敬すべき同胞であった」と回想しているが、窮すると直ちに寝返ったり退却したりする匪賊の振る舞いを「革命勢力としての限界」と見抜いてもいた。
だが匪賊上がりで共産党の軍事指導者となった賀龍は、次のように匪賊を肯定的に捉えている。
「野蛮ではあるが、連中にも取柄はある。生真面目で、威勢よく、鼻っ柱が強い。表面を取り繕うようなことはしない。だが、ひとたび人を信頼すると、死をも地震をも恐れずに信頼を貫こうとする。官職であれ金品であれ、なにを差し出そうが、もはやそういう男を買収することは不可能だ。兎も角も勇敢であり、わたし一人につき従って、命を捧げてくれた者がたくさんいる」(フィル・ビリングズリー『匪賊 近代中国の辺境と中央』筑摩書房 1994年/アグネス・スメドレー『偉大なる道 朱徳の生涯とその時代(上下)』岩波書店 1977年)
結論的に言うなら毛沢東率いる共産党は、それ以前の革命勢力とは異なり匪賊を利用した。匪賊と友好関係を結び、匪賊固有の戦術戦法(ゲリラ戦)を取り入れる一方で、党の組織原理で彼らを縛り付け、共産党軍(紅軍)に同化させ、組織に組み入れることに成功した。
もちろん、その前提に共産党自らが匪賊のような存在であったことも指摘しておきたい。彼らの根拠地は匪賊の塞と同じような地理的環境に築かれていた。その象徴が「革命の聖地」と呼ぶ井岡山や延安だ。共産党が見せる匪賊性は、生まれながらのものだろう。
革命が成功するや、共産党が匪賊に論功行賞を与える訳でも、社会でのさばらせておいた訳でもない。ぶちのめし、容赦なく使役し、反革命分子として抹殺した。建国前後の土地改革、1950年代初頭の数年間に連続的に行われた反革命分子鎮圧、抗米援朝運動、三反五反運動などによって、“元匪賊”は窒息させられていった。匪賊も敵わぬ超匪賊性!
どうやら橘の語った中国革命は都市のインテリが唱える革命に近く、中国社会を圧倒する農山村の民に目を向けてはいなかった。であればこそ、「中國の社會運動における無頼漢の危險性に對して、深い省察を缺いて居るのだと見ても大過なさゝうに考へられる」などという「大過」を犯してしまったのだろう。
次に橘は「武漢政府失敗の二大因由」と題し、武漢政府崩壊後の国民党、共産党、コミンテルンについて論じている。その後の中国の動きを見る上で興味深いところだ。
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(読者の声1)貴誌前号のベラルーシに「ホワイト革命」の記事、日本のメディアが殆ど伝えないので、興味深く拝読しましたが、なかに「そんなおり、首都ミンスクにはいった」と宮崎さんがさらりとベラルーシを取材されたこと知りました。見聞録は、貴誌のバックナンバーにありますか。是非、拝読したいと思います。
(UY生、横須賀)
(宮崎正弘のコメント)旧ソ連の十五ケ国、並びに旧東欧十五ヶ国、合計三十の国々のいま、を取材した記録は拙著『日本が全体主義に陥る日』(ビジネス社)として、一冊にまとめました。アマゾンで在庫払底の由ですが、キンドル版があります。
https://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%8C%E5%85%A8%E4%BD%93%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E3%81%AB%E9%99%A5%E3%82%8B%E6%97%A5-%E6%97%A7%E3%82%BD%E9%80%A3%E9%82%A6%E3%83%BB%E8%A1%9B%E6%98%9F%E5%9B%BD30%E3%83%B5%E5%9B%BD%E3%81%AE%E7%9C%9F%E5%AE%9F-%E5%AE%AE%E5%B4%8E-%E6%AD%A3%E5%BC%98/dp/4828419292
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(読者の声2)日本で出ている「東方新報」(8月16日)に次のような興味津々の記事があります。
(引用開始)「大手国有企業「中国華融資産管理」の頼小民(Lai Xiaomin)元会長が、収賄・汚職・重婚の罪で起訴され、その腐敗ぶりが中国で大きな衝撃を与えている。受け取ったわいろの総額は約17億8800万元(約275億円)に上り、中国メディアは「収賄額の新記録」と報道。さらに自宅に重さ3トンの現金や高級車を隠し持ち、多数の愛人を囲い込み、会社で縁故採用を続けるなど、「腐敗のかたまり」という実態が明らかになった。
中国国務省の記者会見で、銀行保険監督管理委員会の周亮副主席が頼小民被告の件について、監督と管理を強化すると話した(2019年2月25日撮影、資料写真)。
頼被告は今年で58歳。中国・天津市(Tianjin)第2中級人民法院(地裁)で11日に開かれた初公判によると、頼被告は2008年から2018年にかけて、中国の金融当局・中国銀行業監督管理委員会弁公庁主任や中国華融資産管理の会長兼共産党書記などを歴任。その地位や職権を利用して、企業や個人から不正に金品を受け取ったという。頼被告は公判で罪を認め、判決は後日に言い渡される。
頼被告の自宅からは2億7000万元(約41億5441万円)の現金がロッカーなどから見つかった。重さにすると3トンに上る。当局の摘発を避けるための資金で、これも贈賄側に要求して手にした金だった。頼被告はこの場所を暗号で「スーパーマーケット」と呼んでいた。自宅からはさらにベントレー(Bentley)、メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)、トヨタ・アルファード(Toyota Alphard)などの外車や高級腕時計、絵画、黄金なども見つかった。
中国華融資産管理は不良債権を処理することが主業務だが、頼被告は証券、信託、投資、銀行、先物取引などの子会社を次々と設立し、業務を拡大。会社の幹部は「元会長はとにかく短期の業績を求め続け、3年後や5年後のリスクもお構いなしだった。実際、すぐに資金が焦げ付き始め、不良債権を処理する会社が不良債権を生み出す事態となった。それでも元会長は追加投資をしてその場しのぎをしようとした」と証言する。
中国メディアによると、頼被告は広東省(Guangdong)の不動産開発プロジェクトで、120件の住宅物件のうち100件余りを不正に取得し、100人の愛人を住まわせていたという。かつての中国王朝の皇帝が妃(きさき)や女官を住まわせていた「後宮」のような状態だった。さらにこの愛人たちを、31社に膨れ上がった子会社の幹部ポストに就任させていた。また、自分の出身地の江西省(Jiangxi)瑞金市(Ruijin)出身者を多く登用し、中国華融の幹部は「経営陣から食堂のスタッフまで元会長の同郷人ばかりだった」と証言している。
これまでに「収賄額のトップ」といわれていたのは、山西省(Shanxi)呂梁市(Lvliang)の張中生(Zhang Zhongsheng)元副市長だった。1997年から2013年にかけて石炭業の許認可で絶大な権力を握り「呂梁のゴッドファーザー」と呼ばれ、違法に10億4000万元(約160億円)の資産を得たとして、2018年に死刑判決を受けている。
頼被告の事件は、中国でたびたび起きる汚職の典型的要素が詰め込まれている。まずは「権力の一極集中」。頼被告は国営中国中央テレビ(CCTV)の反腐敗キャンペーン番組で、「私は会社の会長、法人代表、党書記を務めていた。(社内の監査部門の)規律検査委員会書記は私の部下にあたる。だから、誰も私を監督することはできなかった」と自ら語っている。
さらに、「権色交易(権力と色欲の取引)」の問題。企業側が権力者に女性をあてがい、特別な便宜を図ってもらおうとする行為が今も横行している。汚職で逮捕された役人のうち95%は愛人がいたという調査もある。権力者が自ら愛人を囲う場合も多いが、企業側が「取引」として女性を提供するケースも多い。また、自分の身内として周囲を同郷人で固め、それ以外の人間を排除し、異論を封じ込める手法も目立つ。
汚職を取り締まる政府機関の中央規律検査委員会・国家監察委員会の幹部は「今回の事件の原因は多岐にわたり、深刻な教訓として受け止めなければならない」としている(引用止め)」。 (一読者)。
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和2年(2020)8月17日(月曜日)
通巻第6621号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ベラルーシに迫る「ホワイト革命」。ルカシェンコ独裁は26年続いている
反政府デモ、人間の鎖、統一野党陣営は「救国戦線」を結成
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八月九日にベラルーシの大統領選挙が行われ、80%の得票を得て、アレキサンダー・ルカシェンコ大統領の六選が決まった。
すぐさま「不正選挙だ。投票用紙の誤魔化し」と数千の抗議デモが発生し、国営放送の周りを囲んで警官隊と衝突した。デモは連日、激しさを増し、全欧のメディアが大きく報じるようになった。
反ルカシェンコの候補だったのはスベトラーナ・チハノフスカヤ女史で、今後は「救国戦線」を結成し、ルカシェンコ打倒を宣言した。しかし、暗殺を怖れてチハノフスカヤ女史は、子供たちとともに隣国リトアニアへ逃れた。
そもそもチハノフスカヤって、いったい何者?
主婦である。子供を育て、ときどき通訳のアルバイトをしていた控えめな女性に過ぎない。運命が大きく変化したのは、夫が有力な野党候補として立候補準備のさなかに拘束されたため、身代わり候補とされたからだった。しかもほかの野党候補も立候補資格なし、と撥ねられたため、いきなり野党統一候補に祭り上げられた。
選挙が不正投票によるものか、どうかはわからないが、ルカシェンコの人気が急落していたことは確かである。2015年の前回選挙では83%もの高い得票があった。理由は折からのウクライナ問題に助けられたからだ。
ベラルーシとウクライナは同胞意識が強いうえ、たとえばアフガニスタン戦争ではベラルーシ兵が15000名も犠牲になったようにロシアに利用されるのは叶わないという国民感情。しかし安価な石油を供給してくれるロシアとの経済的絆の強化に助けられて、ルカシェンコは楽勝だった。
そんな折だった。筆者はモスクワ経由で首都ミンスクに入った。街は意外に落ち着いており、西欧からの観光客も多く、ちょっとしたレストランは満員。フランスのワインも置いてあり、綺麗に整備された公園に市民が憩う。巨大な戦争記念館には、ロシアが評価しない多くの将軍たちのトルソが並んでいた。
ルカシェンコ体制は国民監視のKGBに支えられた側面があり、KGB創設者ジェルシンスキーの銅像が公園に建立されている。この見えない監視網があるため、市民達もホンネを喋る人は少なく、しかしスマホの発展、若者達の西側かぶれ、音楽の無国籍化など、世界共通の現象が見て取れた。ちなみに書店にはムラカミハルキもあった。
▼ルカシェンコ、突然の不人気はなぜ?
こんかいは事情が異なる。
第一にロシアが原油供給を中断したこと。ロシアにとっては原油価格大暴落で、ベラルーシにいつまでの特典を継続するわけにはいかなかった。
第二にコロナ対策の失態、第三が経済の悪化が進み、GDPがマイナス成長に転落したこと。ルカシェンコは「90年代の亡霊政治家」と言われるようになった。
抗議デモは連日続いており、これまでに7000人が拘束されたほか、死者がふたり。白い服に白い花をもった女性らが「人間の鎖」を組織するなど、往時、東欧諸国でおきたカラー革命の戦術を再現した。そうだ、次は「ホワイト革命」だ、と。
民衆の抗議のおそれをなしたルカシェンコの脳裏を去来したのはルーマニアの独裁者チェウシェスクの最期であり、チェコでおこったビロード革命であり、バルト三国の露西亜支配という暗黒政治を変えた人間の鎖だったに違いない。
8月14日、ルカシェンコはモスクワに電話してプーチンに救援を要請し、モスクワは「出来る限りの支援をする」としたものの、いまもクリミア併呑以降のウクライナ紛争で欧米から制裁を受けており、迂闊なことは出来ないだろう。あるいはルカシェンコの亡命を受け入れるのか。
16日にルカシェンコは政府広場に数千の「支持者」を集め、ベラルーシを守ろうと演説した。参加者は地方からバスで動員された消極的参加者ばかりだった。
EUは同日、ベラルーシの自由と法治が危ういとして再制裁の検討を始めた。
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~こんなことありか。ソ連のエージェントだった男が師団長とは!
ハニートラップにやられた小柳大佐は不明を恥じて割賦自決したが。。。。
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福井義高『日本人が知らない最先端の世界史』(祥伝社文庫)
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何が凄いかと言えば、たとえばノモンハン事件である。当時のスターリンの目的は日本軍を弱体化し、ソ連に近づけないように、中国にその目を向けさせ、さらには南方へ転進させることにあった。
日本はまんまと引っかかった。世紀のスパイ事件といわれたゾルゲ、尾崎秀実らによる昭和研究会の影響力を利用して、日本軍を南進させた。その当時、日本は哈爾浜に特務機関を置き、情報将校らはロシア語を流暢に使いこなした。
そのまえにモスクワの駐在武官だったのが小松原である。同僚の小柳喜三郎大佐とともにハニートラップに引っかかり、小柳は不明を恥じて割腹自決した。しかし小松原はそしらぬ顔で昇進を続け、1932年から三年間、哈爾浜の特務機関長だったのだ。
「公開された旧ソ連機密文書によって、ソ連軍が一定の時期だけ(つまり小松原が特務機関長の時期と重なる)、大量の政治軍事情報を得ていた」(109p)
この小松原がノモンハンでは師団長だった。
ということは日本側の動きはソ連軍に筒抜けである。かれは帰国後、病死したことになっている。
「用済みのソ連スパイが、事故や病気にみせかけて殺害された例は多い」(110p)。
ついでに言えば『命のビザ』の杉原千畝も哈爾浜で情報担当、ロシア人女性と結婚していた。小松原の機関長時代と重なる。
こういう歴史に埋もれてきた真実が本書にも網羅されている。2016年に刊行され、こんかい文庫入りに際して最期のチャプターが加わった。
評者(宮崎)は、嘗てこの本を下記のように書評した。以下に再録する。
「本書のテーマは大きく四つあって、「歴史修正主義論争の正体」「コミンテルンの陰謀説の真偽」「大衆と知識人」「中国共産党政権誕生の真実」である。
いずれも過去に多くの論争があり、左右を問わず、論壇は侃々諤々、議論は輻輳し、今日に至っても結論を得られないポレミックである。著者の福井教授は青山学院大学で教鞭を執られる傍ら、静かに地道に近現代史に挑んで来た。寡作なので一般的にはあまり知られなかった。本書はある意味で、論壇を画期する労作である。
なぜならグローバリズムの波が世界を覆い尽くそうとしているときにトランプが米国に出現し、英国はEUから離脱する。言葉を換えて言えば、これは反グローバリズム、そして反「多文化主義」の流れとは言えないか。
ドイツの場合、論壇にタブーがあると福井氏は指摘する。
「ホロコーストの唯一性を前提にすると、ドイツと比較して日本の謝罪が不十分であるというような議論は、涜神行為とすらいえる。
なぜなら、ホロコーストと日本の通例の戦争犯罪を並べることは、比較を絶するはずの絶対悪を相対化することを意味するからだ。
実際、連合軍の戦争犯罪や非人道的行為とナチスのユダヤ人迫害を比較し、相対化することはホロコーストを『無害化』するとして、ドイツでは厳しく批判される。他の欧州諸国や米国でも同様である」
「法律に名を借りて国家権力で異なる歴史認識を圧殺しようという動きはホロコーストに限らない」
その例はフランスなどで拡大するトルコのアルメニア虐殺論争だが、「論点は虐殺の有無ではなく、(オスマントルコ)帝国政府による国策としてのジェノサイドを主張するアルメニアに対して、戦時中の軍事的必要性に基づく強制移住の過程にともなう不祥事というのがトルコの立場である」
しかし、歴史論争として、これらは修正主義の名において国際主義者、左翼ジャーナリズムから激しく糾弾されるのだ。
「冷戦後の共産主義『無力化』には冷戦期、ソ連共産主義に宥和的であった多くの欧州知識人の自己保身という現実的動機」もある。だが、実態としては、その裏にもっと大きなすり替えの動きが起きている。その典型が「多文化主義」なる面妖な、新時代の化粧を施した、共産主義運動の隠れ蓑である。
福井氏は続ける。米国では「多文化主義は、黒人の存在と密接に関連しており、奴隷の子孫に対する白人の贖罪意識がその背景にある。一方、欧州では旧ユーゴスラビアを除き、殆ど白人キリスト教徒しかいなかったのに、多文化共生を国民に強制するかのように、欧州各区に政府は、冷戦終結直後から、第三世界とくにイスラム圏からの大量移民受け入れを拡大し、その勢いは止まらないどころか、むしろ加速している。
ポストマルクス主義左翼の知的覇権下、欧州国民の大多数が反対する大量移民受け入れを維持推進するためには、ヘイトスピーチ規制に名を借りた、国家による言論の統制が不可避なことは容易に理解できる」。
つまり大衆を扇動する新しい道具であり、「反多文化主義=ファシズムという分かりやすい図式を提供することになるのである」と本質を抉り出す。
ソルジェニーツィンを見よ、と福井氏は言う。
「ソ連圧政に抵抗する自由の闘士として、欧米で英雄視されたソルジェニーツィンは、冷戦が終わると、多文化主義とは真っ向から対立する、そのロシア民族主義ゆえ、逆に欧米知識人の批判の対象となった」ではないか。
日本に輸入された、面妖なイズム「多文化主義」の本質をずばりと捉え直した瞠目するべき著作の登場である」(引用止め)
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(読者の声1)『日本経済新聞』(8月16日)のカラー全面広告を見た読者は多いことでしょう。アメリカが使用禁止として90日以内の売却を命じたTIKTOK。その全面広告ですよ。
スパイ防止法のない日本。国益を損なう中国のスパイ企業が、日本では堂々と、自由に商業活動ができるのです。これでいいのでしょうか?
(JJセブン)
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(読者の声2)先月四日、線状降水帯発生に伴う百年に一度の豪雨の影響で、熊本県南部で日本三大急流の球磨川が増水して氾濫。同川流域で六十名以上の犠牲者が出た。居住区域への浸水の多くは球磨川に注ぐ支流との合流部で起こった事が判明している。本流の球磨川が増水して流れが急になり、本来支流から本流へ順調に流れ込む筈の水が、言わば交差点での信号待ちによる交通渋滞の様な形で合流部で留まってしまい、後から流れ来る水が行き場を失い低地に流れ込んだ。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200804/k10012549941000.html
この災害に関して、発生直後から天災でなく「人災」を主張するのが国土強靭化論の藤井聡京都大学教授である。球磨川水系最大の支流である川辺川でダム建設
事業が有り、1966年から始められ七割程度まで進捗していたが、2008年に熊本県知事に当選した蒲島郁夫は自然環境の保護等を理由にダム反対を表明。2009年には
「コンクリートから人へ」を標榜した民主党政権の前原誠司国土交通大臣が川辺川ダム計画中止を表明して建設は凍結。川辺川ダムは中止しなければ住民補償を除くと1100億円の予算で2017年には完成の筈だった。熊本県は先月二〇日、豪雨で損壊した県と市町村が管理する公共土木施設の被害額が概算で1352億円に上ると発表。被害の多くは球磨川流域であり球磨村や小国町の山間部などはまだ未調査で被害額は今後増える。
https://38news.jp/economy/16279
さらに蒲島郁夫熊本県知事は2012年から2018年にかけて球磨川上流に存在していた荒瀬ダムを解体。国内初めての本格的なダム撤去となったが、清流に鰻が戻ったり自然環境回復では良いが、今後予想されるスーパー台風の増加を前に間抜け過ぎる。住居が流され避難所生活を余儀なくされた人が炊き出しでうな重を支給されても嬉しくはない。住民のダム反対があっても最終決断の責任は知事に有る。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%92%E7%80%AC%E3%83%80%E3%83%A0
知事で言えば、蒲島郁夫熊本県知事が蒼ざめる位に愚かなのが、佐竹敬久秋田県知事である。
六月十五日に日本に於ける中共代理人河野洋平の息子である河野太郎防衛大臣が突然地上配備型迎撃ミサイルシステム『イージスアショア』の配備計画撤廃を公表した。これは河野太郎個人の暴走で米国に事前連絡も行っていない。今まで上手く猫被り続けた河野はいつか何かやると思ったが案の定である。ちょうにち新聞などは一貫して(スパイ防止法の無い)日本国家の核ミサイルに対する防衛に反対して来たので大喜び。
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/40251.html
日本政府がイージスアショアの秋田と山口両県への配備撤回を決めたことを受け、佐竹敬久秋田県知事は六月二十五日に県庁で報道陣に「県民の不安がなくなり
良かった」と発言。「え~え~!北朝鮮が核ミサイル破棄でもしたのか?」と混乱。落ちるかどうか分からない迎撃ミサイルのブースターは怖くて、迎撃しないと確実に落ちる核ミサイルは怖くないのか。安心どころか「ぞっ」とした、おらとはどうも思考回路が全然異なる人が世の中には居る。また、(三年前に靖国神社で握手して頂いた)鍛冶俊樹氏などはイージスアショア配備撤廃は北朝鮮と密約が出来たと推測してますが、金正恩死亡予測に続いて「外れ」では。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60779890V20C20A6L01000/
経済評論家ながら安全保障にキチンと発言する高橋洋一氏は夕刊フジ電子版で、「(引用開始)再利用もしないブースターの回収に期間とコストをかけるのは意味
がないと筆者も思うが、イージス・アショアの計画が停止になるのはかなり違和感がある。イージス・アショアの配備が予定されていたのは、秋田県新屋演習場と
山口県むつみ演習場だ。新屋演習場は海に面しているのでブースターを海に落とすのは問題ない。むつみ演習場は海まで10キロほどあり、演習場内にブースターを
落下させると説明してきた。はっきりいって、ブースターの落下はイージス・アショアの遂行目的と比較すれば、大した話ではない。イージス・アショアは北朝鮮の核攻撃に対処するものであり、数十万人から数百万人の人命を救う。それに比べると、軽乗用車と同程度の重量数百キロのブースターの落下被害は、山中に軽飛行機が墜落した程度であり、イージス・アショアの防衛による日本全体のメリットとは比較にならないほど軽微だ。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200620/dom2006200004-n1.html
各国にもそれぞれ防衛システムがあり、ブースターを使うものも少なくないが、ブースター落下を問題として、配備を見直すというのは聞いたことがないし、そもそも防衛システム配備においてブースター落下は考慮すべき問題ではない(引用終了)」。
要はブースターなど海に落とせという事で全く同感。秋田県民や犬以下の知能しかない知事は近海に北朝鮮のミサイルが何度も落ちた事を忘れたのか。県民や他の国民を守る気が無い知事など不要で是非とも秋田県知事職は廃止して名誉県知事に賢い秋田犬に就任して貰いたい。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200620/dom2006200004-n2.html
そもそもイージスアショア配備の主目的は海上自衛隊のイージス艦の負担軽減であった筈である。最近では何ヶ月もスマホが使えないという事で海上自衛隊を志望する若者が少ないと言う。さらに新型コロナなど感染症で米空母が機能不全に陥った様に、海上保安官や海上自衛隊員にも感染が出ている。今後も様々な感染症の流行が予想されるが、船舶は感染症には脆弱であるという事もイージス艦だけではなくイージスアショアを配備すべき理由である。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200721/k10012526231000.html
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020052100686&g=int
また、笑えるのは威勢の良い自民党議員達による敵地攻撃論。首相復帰前あれほど任期中の靖国神社参拝を誓いながら、2013年末に一度きりしか行かないのが党きってのタカ派安倍晋三首相なら、どの首相が敵地攻撃の政治判断など出来るか。
現憲法下でそんな決断が出来る首相など今後も現れないのは確実である。イージスアショア配備撤廃したのでしばらくネタで誤魔化しているに過ぎない。核ミサイル防衛で一番合理的なのは日本国家が自身で核武装する事であるが、それはクーデターでも起こらない限り不可能である。頼みのクーデターにしても、その中枢になる「日本のディープステート」がまだ姿を現していない以上は夢物語である。
オバマ以上にハト派で平和主義者のトランプ米国大統領の任期期間に北朝鮮は核弾頭を三十発にまで増強し、固定燃料完成でミサイル即時発射体制を構築し、最近では核弾頭の小型化に成功してしまった。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62259950U0A800C2MM0000/
また北朝鮮がロシアのイスカンダルミサイルの技術で開発した蛇行ミサイルを迎撃するのは困難なのでミサイル防衛自体に意味が無いという考えもある。結局これも生存に対する国家意思の強弱の問題になる。日本国家は一体何の為に世界一のスーパーコンピューターを持っているのか。これはデーターの収集とソフトの開発の問題である。現在世界で最もミサイル防衛のデーターを持っているのは、今まで数千発のミサイルに対処して来たイスラエルである。そして、そのデーターはアメリカと共有される。
毎日の様にガザ地区などからイスラエルに向けられるカッサムやカチューシャロケット、さらにそれらの改良版など短距離ミサイルはあっという間に着弾する。
それを短い時間で判断し無人地帯に落ちるのは敢えて無視して着弾させ、住民居住区域に落ちるもののみ迎撃する。それもわざわざロケットに当てずに近くで迎撃ミサイルを自爆させ敵側ミサイルを爆破する。さらに攻撃ミサイル一発に対して二発セットで防衛するので取り逃がす事はほとんどない。それらの経験の蓄積を基にレーダーによる防衛技術や中距離や長距離ミサイル防衛も進化する。技術は最初から出来ないと言うのではなく、工夫して使い勝手の良いものに改良すべきである。
日本国家は戦後七十五年間安全保障を度外視して軍隊を持たず金儲け(つまり経済)オンリーで来た。対して、イスラエルは独立後七十二年間経済を無視して生き残り(つまり安全保障)オンリーで来た。その結果どうなったか。2014年に「経済大国だった」日本は一人当たりのGDPでイスラエルに抜かれた。「何か間違ってる」と気付き修正するのは今しかないのではないか。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS25H4Z_V21C15A2EE8000/
(道楽Q)
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和2年(2020)8月16日(日曜日)
通巻第6620号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~高雄市長選挙、民進党が70%で圧勝
国民党は25%だが、民衆党は4%の大惨敗
*************************************高雄市長は、親中派のシンボルだった韓国諭(国民党)が、あまりの北京よりの政治姿勢に反発した住民のリコール運動の結果、失職したために行われた。
民進党の奪回は予測されたことだが、得票率が注目された。国民党は全党あげて、市長職ポストの維持を目指していた。
「台風の目」とされたのは何文哲・台北市長が率いる「台湾民衆党」で、第三党が躍進すれば、漁夫の利で国民党に勝利の女神が微笑むというシナリオもあった。また何文哲は穏健だが親中派であり、じつは高雄市民には反台北感情が強い。
8月15日の投開票の結果は、
陳基邁(民進党)が70・3%
李眉蔡(国民党)が25・9%(高雄市議、女性)
呉益政(民衆党)が 4・0%だった。呉も高雄市議。
この数字が端的に表すことは、台湾がアンチ北京で固まったことである。
蔡英文総統が、1月の総統選で圧勝したのも、香港の大混乱と中国共産党が学生らを弾圧する暴力を目撃した結果だった。
そのうえアメリカが台湾支持を、鮮烈に態度でも示し、台湾旅行砲、TAIPEI法、武器供与、そしてアバー厚生長官の訪問と続き、くわえて台湾の大手企業が陸続と中国に見切りをつけて台湾へ、あるいは米本土へ工場を移転したこと、つまり中国投資ブームが冷え切ったという背景がある。
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樋泉克夫のコラム
@@@@@@@@ 【知道中国 2117回】
──「ポケット論語をストーブに焼べて・・・」(橘77)
「國民黨の再分裂」(昭和2年/『橘樸著作集第一巻』勁草書房)
△
国民党左派の「首領」である汪精衛が、南京国民政府を率いる?介石を「(軍司令官としての)本來の任務及び職權を越えて政治に干渉し、更に進んで政權を壟斷する」「軍閥的存在」と非難することに間違いはない。
だが、その汪もまた湖南や江西の軍閥に頼らざるを得ないのだから、仲間や孫文夫人からも「三下半を叩き付けられるに至つたのではないか」──こう、橘は武漢国民政府崩壊の背景を見ている。
なにやら「目クソ、鼻クソを笑う」の構図と言ってもよさそうだ。そこで思うのだが、目クソと鼻クソの双方を生んだ孫文とは、いったい、なんだったのだ。
国民党左派の重鎮として農民運動を指導した?演達は「農民運動は革命運動であり、農民の解放を要求するものである」と説く。
?は自らの失敗を「農民と密接な關係を結ぶことが出來ず、從つて農民の實際要求を了解し得なかった」からであり、「我々は自ら農村の中に入込まなくてはならない」と反省する。まさにロシア革命の「フ・ナロード(民衆の中へ)」の二番煎じのような態度を、橘が「(国民党左派の)農民運動に於ける急進派の小児病的過失」と切り捨てるのは正しい。
だが「湖南・湖北は惡質なる哥老會の根強い勢力を擴げた地方であり、從つて革命的社會運動が動もすれば無頼漢の掠奪を目的とする暴動に陷り易い傾きがある」との見解を示しながら、「運動の中から無頼漢を排斥する努力を殆ど全く打忘れて居るものゝやうに見える」と?を批判する。
また「帝國主義者や軍閥や土豪劣紳の重なり合つた搾取を受けて落ちぶれた失業農民である。換言すれば惡勢力の犠牲となつた農民無産階級である」との「無頼漢」に対する?の「議論は大體正しい」としながらも、「中國の社會運動における無頼漢の危險性に對して、深い省察を缺いて居る」と苦言を呈す。
とどのつまり「運動の中から無頼漢を排斥する」ことを求めているようだが、このような橘こそ「小児病的過失」であり、同時に中国社会の根本構造についての「深い省察を缺いて居る」と言っておきたい。無頼漢は中国社会の日常の外にはみ出しているわけではなく、じつは内側に組み込まれた存在と見做すべきだろう。
はたして橘は「運動の中から無頼漢を排斥する」ことで、革命にとって有利な状況が生まれるとでも思っていたのか。革命をキレイゴトと捉えてい過ぎではないか。
毛沢東は「革命とは、客を招いてごちそうする事でもなければ文章を練ったり、絵を描いたり、刺繍をしたりすることでもない。そんなお上品でおっとりとした雅やかなものではない。革命とは暴力である。一つの階級が他の階級を打ち倒す激烈な行動なのである」と見做している。
まさに一切のタブーを排し、敢えて「無頼漢の掠奪を目的とする暴動」を利用してでも目指そうというのが革命だろう。だから革命無罪を掲げるに違いない。
中国の革命史を紐解けば、革命勢力は哥老会のような会党や馬賊など無頼漢(アウトロー)との連携を模索した。たとえば湖南派の重鎮として辛亥革命を指導した宋教仁は、1904年10月末から1907年4月初までの3年半ほどの東京における活動を記した『我之?史』(中國現代史料叢書・第一輯 建国民國/文星書店 1962年)の末尾で、概略次のように綴っている。
「明末、清朝軍が中国本土に闖入し、明朝を遥かに超えた苛烈な暴政を布いた。そこで馬賊団体が反清朝に決起し力を持ったことから、北方では彼らに身を投じ、身の安全を守ろうとするものが多かった。今、彼らの力量が清朝軍を遥かに上回るから、彼らと手を携えることで北京を危機に陥れることができる。革命にとって、これ以上の好機はない。南北が小事に拘らず連携することが、中国4億同胞にとっての幸というものだ」と。
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(読者の声1)貴誌前号コメントに「拙著『神武天皇以前』(育鵬社)のなかで、卑弥呼神社がないのは不思議と書きました。また魏志倭人伝を金科玉条の如く、まるで聖書扱いしているのも、おかしな風潮ですね。単に伝聞を集めただけのものですから。そういう歴史学者に限って古事記、日本書紀を軽視しています」(引用止め)。
素人考えで普通に考えて、外国向けの国史で当時の国際語の漢字で書かれた日本書紀や日本各地に実存する土地の固有名詞を含む古事記よりも、魏志倭人伝を重視する歴史学者が理解できません。「IGIP」の一種ではないでしょうか?
魏志倭人伝は三国時代後の西晋の陳寿というシナ人によって書かれたものですが、シナ語の発音は王朝が変わるたびに異なるそうです。日本でも青森と沖縄じゃかなり違いますから、巨大なシナならなおさらです。そして、西晋の時代の邪馬台国のシナ語の音は「ヤマド」だったそう。
参考: http://akkiy.o.oo7.jp/dokusyo/01-gyakusetsu01.htm
アマテラスオウミカミは太陽神の主神ですが、世界各地に太陽神は存在します。アメン(エジプト)、アポロン(ギリシャ)、ミトラ(ヒンズー)など。女神の主神は珍しい。日本では男性より女性の方が重要なんです。だから、英霊は母や奥さんや娘を守るために戦ったのだと思います。また、卑弥呼は素直に読めば、ヒノミコ(太陽の命・神)と考えるのは当然でしょう。私は小学生6年のときに「卑弥呼って卑しいってかいてあるけどシナ人が日本人を蔑視して当て字したの?」と質問したのを明確に記憶しています。
だって、普通に読めば、日の御子だって小学生でも気づくんですから。シナ人は劣等感の強さから、ヒノミコを卑弥呼と当て字しただけでしょう。昔からなんにも知らない利己主義で固まった文化ですから、日本人が怒る価値もありません(笑)
(R生、逗子)
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(読者の声2)貴誌前号「読者の声」(2)の「ミネナガ氏」の見識に対して、大いに賛同します。また宮崎先生の『ヒミコを祭る神社はない』という、卓見に対し、私も、拙著に引用するつもりでいます。ありがとうございます。
拙著の目的は、研究では無く、小説に近い物を書いています。記紀と万葉集を主軸に、書き進めています。小説の読者は7割が女性だというので、女性にも理解していただくよう、論を進めていますので、皆さまとは多少、異なります。この観点から、以下に、申し上げます。
書紀の、神功皇后摂政三十九年(239年)の条に、《魏志に曰く、明帝の景初三年六月、倭の女王、大夫難斗米らを遣わし、韓半島北の帯方郡である郡に至りて、天子に朝献せむことを求む、云々》とあります。景初三年は239年です。
これは、明らかに、神功皇后が朝献したと、暗示しています。ではなぜ、卑弥呼としなかったのか。それは、『邪馬台国』『卑弥呼』難斗米の『難』は、固有名詞で明らかに蔑称だからです。
余談だが、習近平の現代でさえ、ニュースで堂々と、『華夷共?』(?は栄と同義)と、堂々と、官営テレビで流しています。中味が日本の実情とは大きく異なるので、参考にしなかったのだと、思っています。
また、書紀を書いた奈良時代は、唐留学生が多く帰朝しています。当然、華夷中華思想の意図を知っています。だから卑弥呼とは引用しなかったと思っています。
また、岡田英弘氏は、魏志倭人伝など、どこまで信頼できるか、心細い限りである、と言って居ます。だが、安本美典氏は、魏志倭人伝は日本を記した最古の書であるので、無視するわけにはいかないと、申しております。
書紀には、神功皇后が三韓征伐後、筑紫の樫日宮から倭にむかったとあるので、神功皇后は筑紫から東国までを支配していた証である。権藤正勝氏訳のFBI捜査官ジョー・マクモニーグル氏『邪馬台国発見』には、卑弥呼は夏は倭の纏向あたりに住み、冬は本州最西端の下関に住んだ。岡田英弘氏『日本史の誕生』でも、下関を邪馬台国としています。
神功紀を書いた書紀は、乙巳の変において、中大兄皇子が蘇我入鹿を殺害した時、古人大兄皇子が、「韓人、鞍作臣を殺す、われ心痛し」
と叫んだとあります。韓人という解釈は種々ありますが、書紀は、全くの出鱈目を書いていないのです。
これと同じように、方々の箇所に、どこかに、真実を潜ませています。また日本書紀は、藤原不比等が、藤原氏の為に編んだと言いますが、不比等自身は、左大臣が闕けても、遠慮して左大臣にはならず、右大臣で生涯を終えています。そのような人物が、自家の為だけに書紀を編んだとは、思えません。
中国の歴史は史記以外、出鱈目だと、よく言います。
日本だって、中国ほどではないが、歴史解釈において、時流というものを、無視できません。戦後は、皇国史観が戦争を導いたとの反省から、記紀は疎外されてきました。出雲王朝は無かった。出雲は、創作された神話だと言われて来た。それが、荒神谷で銅剣が358本出土して、出雲王朝の存在が確定した。
アメリカも戦後まもなく、オズマ計画という、宇宙に電波を送って宇宙人と交信しようと試みている。それなのに長らく、UFOの存在を隠していた。それが、最近、ついに、UFOの存在を認めました。再現性がないのは科学と認めないという、戦後日本の科学を、根底から覆す驚天動地の出来事です。
これも、今、発表しないと、中国が宇宙人と交信して、アメリカより優れた物を造ってしまう。それを防ぐ為に発表したとあります。このように、歴史も、時流によって解釈が異なるのです。
台湾の、亡くなった李登輝氏は「日本人よ、誇りを持て」と言ったと、ネットで言われています。時代の流れと共に、誇りを復活させるべきだと、強く、念じる次第です。いや、誇りを復活させよ、と私は強く叫んで、この項を終えたいと思います。 (斎藤周吾)
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和2年(2020)8月15日(土曜日)
通巻第6619号 <前日発行>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~「香港市場は地獄に堕ちるだろう」(トランプ大統領)
ドル交換が不能となれば、市場の継続的発展は難しい
*************************************トランプ大統領はFOXニューズのインタビュー(8月13日)に答えて、
「香港市場は地獄に堕ちるだろう。香港市場でドル交換が出来なくなれば、國際金融都市としての市場機能の継続的発展は難しくなる」と明快に述べた。
番組はハリス女史がバイデン民主党大統領候補の副大統領候補に選ばれたことをどう思うかという主旨だったが、派生的に香港問題を言及した。
「香港を中国が統制下におけば市場の自由は規制され、市場の機能を失うだろう。香港が繁栄して来られたのは米国の特別待遇の恩恵によってであり、ドルペッグ制が、それをささえたのだ」とトランプは続けた。
また香港と米国の貿易は、今後「MADE IN CHINA」として扱われるから、品目によって高関税となり影響を受ける。香港は大陸の製品輸出を、香港で積み替え、MADE IN HONGKONGとしてきたので、高関税を免れてきた。しかし香港から米国への輸出は37億ドルでしかなくGDPの2%以下である。
また香港居住市民と中国本土の中国人とはヴィザ条件をわけて発給してきたが、これも同一条件で扱うことになり、犯罪者引き渡し条約も撤廃となる。フルブライト奨学生も廃止される(これまで173名が選ばれた)。
ただし政治亡命はみとめるとしたものの、具体的な亡命者の立件など詳細に関しては8月末まで発表するとした。昨秋の香港民主人権法、7月の香港民主法がいよいよ効力を発揮し始めている。
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(読者の声1)香港問題がメディアの大きな関心事。とくに「民主の女神」=アグネスさんの逮捕は、アニメしか知らない日本の若い世代に衝撃を運んだようですね。
昨秋に先生が出された香港大乱のルポ、未来予測的な『CHINAZI(チャイナチ) 崩れゆく独裁国家・中国』(徳間書店)を、この機会に再読しました。
同時中継的な当該書、現場感覚が活き活きと伝わりましたが、改めて読み直すと、デモ隊の報告より、宮崎先生が展開された近未来の香港、まさにそのとおりの進行になっています。書店にはもう置いているところが少ないようですが、もっと読まれるべきと思いました。
(HG生、大和市)
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(読者の声2)卑弥呼が天照大御神であるという論が展開された。私は古神道を奉ずるものとして、この論に一石投じたい。
論者の生涯をかけた研究に異論を挟むのはやや躊躇するものではあるが、声は挙げるべき時に挙げるべきであると思う。
私は考古学や歴史学に疎いものであるから精緻を極めた歴史書の研究を日々重ねている方々に反旗を翻すのは僭越かも知れないが、だからと言って西暦247年に死んだとされる卑弥呼(姫御子、あるいは姫巫女が転訛したとの論もある)が天照大御神というのは理に適わない曲論であると思う。
論者は神の実在を信じているのかいないのかわからないが、神の実在を認めないならば言論の自由とはいえ、そこから卑弥呼を皇祖神とする論証は無意味だと思う。現代日本では神の実在を信じているとカミングアウトすると学界追放の憂き目を見るとか、実に非科学的偏向世界(あるいは不科学的か)のようで、これを反映して一般世間でもそのように言い出す人間は敬遠されるようである。悪くすると黙殺非難される。
私は神々の実在を固く信じるものである。論証の前に自分の立ち位置を闡明にしておきたい。
ただ神の実在などは証明のしようがないものであるから、これはもう先験的に信じるとしか言いようがない。形而上的なものは一般化出来ない。故山本夏彦氏は分かる人には分かるというような言い方をされていたが正にそうだと思う。ただ物理学の世界でも平行宇宙論とかダークマターとかを論じる学者も出てきているというのが(神の実在についての)消極的根拠の一つと申し上げておく。
私は毎月、ある神社に参拝をしているが、これは神道人の信念として神社参拝は必須と思うからである。
この神社は十年ほど前にご鎮座1900年祭を行っている。現在から計算するとご鎮座は西暦110年頃となる。つまり卑弥呼の死の137年前である。そして、この神社は倭建命(日本武尊)と縁が深い。由来書きではここで富士山を遥拝されたと伝えられる。倭建命(日本武尊)は第12代景行天皇の皇子であり、景行天皇は西暦51年即位で在位60年と言われる。
つまり最晩年が西暦111年となるので倭建命の遥拝された時代とほぼ一致するのである。厳密に言うと倭建命(日本武尊)の遥拝の時点は正確には分からない。世の中には倭健命(日本武尊)の実在を疑う学者が多いが、命のゆかりの地、命に関する伝承が非常にたくさん国内各地にあることは誰もが知る所である。実在しない人物にこれだけゆかりの地、伝承がある事実について、これを実在しない人物と説明できる材料はあるのだろうか。
初代天皇は勿論、神武天皇(神日本磐余彦命)であって、その皇祖神が天照大御神であるのだから、明らかに西暦247年の卑弥呼と同一視するのは無理があると言えよう。少なくとも皇紀元年(2680年前)の神武天皇即位とも9百年以上違う。卑弥呼の日食遭遇が西暦247年なら神武天皇即位をはるかに遡る天照大御神の岩戸隠れとの巨大な時間的差異はどう説明するのか。(参考だが、ある伝承では天孫降臨は約1万2千年前と言われている。)
更に、卑弥呼の生きた時代に皆既日食があったとしても、当日が雨か曇りであったならば当然日食は見えないことになる。今でも天候次第で見えないことを経験的に我々は知っている。
勿論晴天であったかもしれないがその証明は出来ない。皆既日食があったという事実と、それが観測できたという事実は別けて考えなければならないはずである。
またたとえ快晴で皆既日食が観測できたとしても、精々30分程度の真っ暗闇に驚きはしても、それで翌日朝が来ないかもしれないという危惧を持ったというのも大いに疑問である。
皆既日食であろうと部分日食であろうと徐々に欠け始めて、皆既日食の場合は真っ暗闇になってまた徐々に光を取り戻してくる。電気のスイッチを切って突然暗闇になるのとは違う。全過程を観察すれば時にこんな事も起きることはごく自然に了解できるはずである。さらに言えば日食の存在を古代人が知らないわけがないではないか。
何十年に一度くらいの頻度で自分のいる所でも起きる。月食も観測しているだろう。古代人がそんなに無知であるわけがない。古代の人々の天文学を過小評価し過ぎではないだろうか。卑弥呼だけが皆既日食に腰を抜かして、恐怖に慄き、全世界の地上の王たちは腰をぬかさなかったのか。ちなみに2050年までに日本列島では金環日食は2回、皆既日食は1回あるそうだ。勿論これは列島の一部で見られる現象である。
それと古事記・日本書紀などの天照大御神の岩戸隠れの段には様々な神々の名前が出てくる。
思金神、天津麻羅、伊斯許理度売命、玉祖命、天児屋命、布刀玉命、天手力男命、天宇受売命などであるが、これらの神々の存在は卑弥呼の物語のどこに登場するのか。
断言したいが、岩戸隠れは神界で起きたことであって人間界で起きたことではない。神典(記紀)では人間界のことか神々の世界のことか判然としないように書かれている。
したがって地名にも高天原とか岩戸とかいわれる地があるが、これはある種の反映・反響であって、そこが神々の世界という事ではない。神典を認めない方々にとっては権力者に都合よく書かれた歴史書まがいというだろうからここは折り合いが付かない所であろう。
卑弥呼や邪馬台国などの字は、卑しい、邪(よこしま)、馬などと実に失礼な漢字を充てている。東夷伝も東の夷で人間ではない。日本人はエビスと漢人の中華思想では言って恬として恥じないのは不思議である。
そのような歴史書紛いを恭しく戴く意味はどこにあるのか。三国志魏書烏丸鮮卑東夷伝倭人条という極めて小さなというかどうでもいい扱いの文章のように思う。こう書けば倭人伝を認めないのは非学問的だと非難されるだろうが、少なくとも参考程度で良いのではないかと思う。
倭というのはチビという意味だそうだが、なぜか倭建命は今のNBAのバスケット選手みたいに巨人である。身長は1丈(約197cm)という巨漢であった。これは蛇足だが。
それとここはいわゆる保守といわれるサイトのはずである。私ごときがここで言い募るのは管理者のご意向をきいていないので申し訳ないが、保守派はまずご皇室を尊ぶのが大原則である。
反皇室の保守など日本の保守ではない。日本の保守と諸外国の保守とは根本的に違うはずでする。尊皇の一点がない保守は日本の保守ではない。Conservativeとは違うのだ。そういえば以前、日本共産党は保守を保守反動とうわごとのように繰り返したが最近は聞かないが反省したのかな。
宮崎先生であったか卑弥呼を祀った神社がないと言われたのは卓見である。皇室と言えども時代の推移するに従い衰微することもありえるが、日本人の総本家である皇室の皇祖神である天照大御神を畏敬することはあっても卑弥呼と同一視などということは止めて頂きたい。
倭建命(日本武尊)は伊勢の斎宮であった倭姫様から神剣を頂いている。伊勢の内宮は言うまでもなく天照大御神をお祭りしている。少なくとも倭建命(日本武尊)が生きた時代には(伊勢)神宮は存在していることがこれでわかる。それよりも百年以上も下る卑弥呼が祭神である神社が(伊勢)神宮なんて論理上ありえないではないか。
歴史学、考古学、科学に根拠を求めて論証する方々には私の考え方こそ暴論とされるかも知れないが、自称だが一神道人の意見として留意して頂ければ幸いである。 (ミネナガ)
(宮崎正弘のコメント)拙著『神武天皇以前』(育鵬社)のなかで、卑弥呼神社がないのは不思議と書きました。また魏志倭人伝を金科玉条の如く、まるで聖書扱いしているのも、おかしな風潮ですね。単に伝聞を集めただけのものですから。そういう歴史学者に限って古事記、日本書紀を軽視しています。
林房雄『神武天皇実在論』(ハート出版、解説は小生が書きました)は神武天皇以前にウガヤフキアエズ朝五十一代があったという仮説も展開されています。
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和2年(2020)8月14日(金曜日)
通巻第6618号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~累積債務は82兆円。おかまいなく、また70兆円
中国新幹線、3万5000キロを2035年までに二倍に
*************************************発作的刺激策、というより無謀を承知の景気刺激策。
もはや見渡す限りの廃墟、砂上の楼閣なのに、また新幹線プロジェクトを二倍にする。中国の経済政策というのは、原則がない。コスト無視。ひたすらGDP拡大のために、ノルマを課して、いずれ積み上がる不良債権のことなど、誰も責任を取らないのである。
2019年度末に中国新幹線の赤字は82兆円に膨らんでいる。営業キロ数は3万5000キロ。日本の11倍。
武漢コロナ禍によって、優秀企業とまで言われたJR東海が赤字転落となった。もちろん中国の新幹線も第二四半期は巨額の赤字だった。
国内プロジェクトを拡大する理由はGDP成長率をプラスにもっていく工夫でもあり、同時に現在の従業員や関連企業の雇用維持、下請け産業の倒産防止である。
もう一つは海外の新幹線プロジェクトが軒並み破綻し、その象徴はインドネシアだが、トルコのイスタンブール ─ アンカラ間高速鉄道など少数の例外をのぞいて、失敗の終わり、海外需要が望めなくなったこと。
たとえば、ファーウェイは西側から排斥されたため、中国国内での強引にスマホ販売を強化しているように、新幹線二倍計画の考え方は同じであろう。
中国は2030年までに新幹線を5万キロ年、2035年までに合計7万キロとする。建設予算は最低見積もって70兆円。しかも、主要都市には新幹線が既に開業しているので、新しい路線は辺疆、山奥、寒冷地、砂漠地帯になる。
それにしても、資本主義社会では考えられないことをやるんだ。
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樋泉克夫のコラム
@@@@@@@@ 【知道中国 2116回】
──「ポケット論語をストーブに焼べて・・・」(橘76)
「國民黨の再分裂」(昭和2年/『橘樸著作集第一巻』勁草書房)
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かつて国民党をレモンに譬え、スターリンは「国際共産主義者はそれを搾り切っても構わない。搾り切ったら後は、自由に投げ棄ててもよい」と呟いたらしい。だとするならスターリンの「箴言」のままに、国民党左派は破滅の途に迷い込んだことになる。だからこそ、孫文は連ソ容共によって国民党をレモンとして国際共産主義者に提供し、搾るがままに任せた張本人と言っても強ち的外れでもなさそうだ。
じつは孫文の右腕としてソ連、共産党との一連の交渉を担当していた廖仲凱が1925年に暗殺されて以降、国民党は労働・農民運動の指導者を欠いたままだった。加えて「孫文以來、國民黨の傳統なる政權病が祟を爲し」たことから、共産党の跳梁を招いてしまった。
「國民黨の傳統なる政權病」とは言い得て妙だ。だからこそ「今頃になつて共産黨の無産者間に扶植した勢力及びその當然の結果を呪ふのは、全然間違つて居ると見ねばなるまい」と、橘は詰る。
国民党は共産党に対して不用心が過ぎたと考える橘は、国民党左派の中心人物である汪精衛の言動に注目する。
じつは汪は、1926年11月にコミンテルンが発した「中國革命は勞働者・農民及び小資産階級を基礎とする」との宣言を「これは正しい」と認めたうえに、「三民主義の目的は、個人資本主義を国家社會資本主義にするにあ」り、国民党が目指す本来の政治体制は「全黨員の意思に從ひ民衆の利益を代表して一切を執行する」ところの「党国政治」でなければならないとした。かくして汪は?介石が南京に構えた国民政府を、軍が国を治める体制──いま風に表現するなら北朝鮮の「先軍政治」となろうか──として否定したのである。
橘に依れば、以上に見える汪精衛の政治姿勢は「孫文の晩年の思想及び方法を標準とする限り」、「總て正しいとせねばならぬ」ものであり、その一方で?介石は「國民黨の異端者であり、レーニンやスターリン氏は國民黨の同志である」とも皮肉った。
どうやら当時の汪精衛は国民党左派のさらに左に位置するだけでなく、なにやらコミンテルンの傀儡と言えそうだ。その後、共産党と手を切って?介石と手を組んだり袂を別ったり。後に日本側は汪精衛を?介石から切り離し「和平工作」を進めるが、その政治的遍歴からして“政治的情緒不安定”と判断するしかなさそうだ。
一貫不惑というよりは、一貫惑々とでも表現すべき性向を、日本は意に介さなかったのか。汪精衛を巡る一連の「和平工作」についてはいずれ考えることにして、「國民黨の再分裂」を先に進みたい。
汪精衛による?介石批判は「當つて居る」。だが彼は自らの足元を見失っていると、橘は批判する。それというのも汪精衛らの権力基盤を支えているのは、国民党内部の唐生智(湖南軍閥)と馮玉祥(西北軍閥)ら軍閥だからだ。国民党左派を支え武漢国民政府の後ろ盾となっていた軍閥にとって、やはり軍閥を目の敵にする共産党と手を組むわけにはいかない。だから唐生智や馮玉祥は共産党と手を切れと国民党左派に逼った。彼らの後ろ盾を失ったら、武漢における国民党左派の影響力の激減は避けようがない。
唐生智が動く。麾下軍隊内の共産党員を排除し、武漢総工会を武装解除した。
ここから事態は国共合作崩壊に向け急に動き出す。
1927年6月30日には汪精衛と共に国民党左派を指導していた?演達が「告別書」を、18日には孫文夫人の宋慶齢が「引退宣言」を発表し、国民党左派からの離脱を明らかにした。
7月13日になると、共産党中央は10日にコミンテルンが発していた指示に従って武漢国民政府からの離脱を宣言し、ここに国共合作は崩壊する。
合作と聞こえは良いが、やはり国共両党の間は所詮は水と油でしかなかった。
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(読者の声1)日食と天照大神(最終反論)
私の再反論に対して刮目天ー様から、またご意見がありました。「仮説は検証によってのみ棄却されます。」とのことで全く同意です。前の反論ではあえて述べるのを控えましたが、確率的に高いか低いかではなく、検証に耐え得るかどうかが仮説の生命であると考えます。
と言われる一方で、私から指摘しました3つの疑問点については、一言の説明もなく「的外れである」とのご見解を述べられました。
これでは検証に値せず、正面からの説明はできないから逃げた、と見られても仕方がないでしょう。疑問に対して真摯に向き合うことから検証が始まることを述べて、この議論は終わりたいと思います。
最後に指摘した問題点について私の見解を述べておきます。
1)「卑弥呼以死」については殺害説の場合、不吉だからとして殺しておいて、なぜ大きな冢を作るのか合理的な説明ができないのではないでしょうか。
殺された遺族などが密かに葬るのならば理解できますが、倭人伝には「大作冢」とあり、大々的に冢を作ったと読むことができます。
貴説と倭人伝の記述は明らかに矛盾しており、貴説は成立しないと考えます。
2)BC273年の誰が見ても文句の言いようがない明らかな皆既日食をあえて無視する理由も述べられず、「的外れ」との一言では、それこそ的外れと申し上げておきます。
3)先に完成していた「古事記」が、後にできた「日本書紀」に倣って作られる、というご意見はまさにSFの世界であり、独り善がりという感想を贈らせて頂きます。
また、折角の貴ブログへのお誘いですが、建設的な議論にはならないと予想されますので、遠慮させて頂きます。
(高柴昭)
(編集部より)「最終反論」とありますように、これでお二人の論議は打ち切りとしましょう。
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(読者の声2)良い事なのでしょう。ロシアが世界に先駆けて中華新冠病毒のワクチン開発成功のニュース。十一日にプーチン大統領は同国ガマレヤ疫学微生物研究
所が開発した『スプートニクV』の使用を承認。流石冷戦時代から米国と生物兵器開発競争をして来ただけある(笑)。「何故か」米国のワクチン技術や開発計画
には非常な警戒心を持つロシアシンパで宇野正美の孫弟子筋の元某国大使なども大喜びでしょう。地球人類を救うワクチンや特効薬を待つ一人としてこの喜びを共有したい。一方パンデミック初期に鳴り物入りでワクチン最速開発を宣伝したイスラエルはどうなった(笑)。実は中国からウイルスの生体サンプル入手が手間取りかなり遅れた様。まあテルアビブからエルサレムへの高速鉄道が予定の八年で完成せず二十年かかった国なので、予想通りではある(笑)。
https://www.bbc.com/japanese/53746782
現時点でワクチン開発の最先端を行くのが英国オックスフォード大学のチーム。元々彼らは(当時新型コロナの)SARSのワクチン開発したのを早期収束で中断。その地点から再開出来たのでアドバンテージがある。
(鳥用コロナワクチン作って喜んだイスラエルとは事情が違う)。ブレグジット後に急接近している日英両国という事か、日本政府は既に六千万~一億二千万人分のワクチンを同大学と共同製作する英国の製薬会社から確保。相当無理してでも東京五輪を強行開催する気かな。
https://www.asahi.com/articles/ASN876QG7N87ULBJ00J.html
気になるのは、中華新冠病毒感染での発症回復後に体内に出来る抗体は持続せず比較的短期間で激減など不確定要素が多い事で、当初予想された季節性インフルエンザの様に暖かくなるとウイルスは不活性化するとか、梅雨には流されるとか全くならない。
こうなると、ワクチンを年に四~六回打たなければいけないという様な状況が来るかも。それが個人負担で一回一万円だと膨大な国民の出費となる。断固国産ワクチンを開発しないと、結局安い中国製ワクチンを使い続けるという様なシュールな状況になりえる(笑)。
話を戻すと、ロシアのワクチンは開発で第三段階(対人臨床)を全く省略したので、接種を受ける人での臨床試験になる。まずは政治犯のジャーナリストや野党関係者、少数民族の指導者らか。それとも国家ぐるみのドーピング立国としてまずスポーツ選手が国家への忠誠心を示すか。独裁国家には実験台が豊富にある(笑)。
https://www.sankei.com/tokyo2020/news/200326/tko2003260008-n1.html
そもそもスプートニクという言葉でプーチン体制が、共産党独裁のソビエト連邦の腹を喰い破って出来たエリツィンの新生民主ロシアの実質的終焉と、ロシアのディープステートである旧KGB系諜報機関人脈などがソビエト帝国の名誉の為の後継国として現ロシアを位置付け地政学的再興を目指すことを示している。ベラルーシでの「民間会社所属の」ロシア人特殊部隊員の拘束劇やジョージア、クリミア、ウクライナ東部の例を見ても、スターリンを崇拝するプーチンに経済的合理性志向は皆無だと分かる。
https://www.ukrinform.jp/rubric-crime/3080143-ukuraina-jian-cha-luwaguna-yong-bingmingno-yin-dushiwoberarushini-yao-qing.html
因みにディープステートという聞き慣れない言葉は、中東で使われ始め元々それぞれの国の国家内国家である軍部や諜報機関などを指す。
「トルコのディープステート」に勝利し抑え込んだのがエルドアン大統領であり、「エジプトのディープステート」に負けて消されたのがモルシ(ムハンマド・ムルシー)である。これをそのまま米国に当てはめると、NSA国家安全保障局やFBI連邦捜査局に相当する。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46226880Y9A610C1000000/
イスラエルの故ラビン首相も1995年までパレスチナとオスロ合意を進め、ヨルダン川西岸地区での国内諜報機関シャバックの公安活動を制限し、シリアとの国交に伴うゴラン高原返還交渉を本格的に進めるなど同国ディープステートの怒りを買った。ラビンの暗殺者イグアル・アミールは早くからシャバックにマークされ監視役エージェントのアヴィシャイ・ラヴィヴは暗殺計画を事前に把握していたが、「何故か」暗殺実行日に姿を消して阻止しなかった。だが、その点を裁判では不可抗力とされた。
https://en.wikipedia.org/wiki/Avishai_Raviv
イスラエルでは要人警護もシャバックの任務の一つで、首相警護の移動チームは通常八人(内務大臣だと二人)である。「何故か」その要員一人がテルアビブ市役所前の広場で暗殺者アミールが首相を狙撃する瞬間に、「空砲だ!(犯人を)撃つな!」と叫ぶ。
警護要員や警官がひるんだ間に実行犯アミールはラビンに三発の銃弾を撃ち込む。直後に別の要員が停車してドアが開いた車に前屈みで首相を押し込み自分も乗り込んだ。車内で何があったのか不明だが、ラビンが当日着ていたシャツには後からの三発の銃弾痕以外に、「何故か」もう一つ前方の穴がある。だが、それはヘビースモーカーだったラビン自身による煙草の焼け跡という事で処理された。
日頃陰謀論信者を茶化しながら故ラビン首相暗殺のイスラエル諜報機関による陰謀を仄めかすのは一見矛盾があるが、妄想同然の「何でも始めに陰謀有りき」の陰謀論は完全に否定するが、国家意思の発動としてのピンポイントの破壊工作は全然否定していない。その工作の専門家集団が諜報機関である。
ところで、いい年をして三十年古い陰謀論に惑わされロシアや中国を理想化してしまった一部の保守派 (逆に大高未希みたいに十代や二十代などごく若い時期に、信じる信じないは別にしてユダヤ教徒や各種秘密結社など「陰謀論ウイルス」に一度感染した人達は良質な「免疫・抗体」が出来て良い感じになってる事がある。
お人好し日本人には国際的戦略思考を身に付ける上でそれもありかもしれないが、知識や情報判断力が充分にある筈の四〇過ぎて根拠無き陰謀論を丸々信じ込んでる様なバカには付ける薬は無いし、死ぬまで直らないだろう)もそろそろ悪党プーチンが最初から北方領土を返す気が無いという事に気づき始めている様である。
それどころかロシアは領土返還交渉の過程で沖縄の米軍基地の存在ばかりか日米安保条約そのものを問題にし始めたり、沖縄メディアへの工作活動や玉城沖縄知事への接近などと非常に怪しい。察するに米軍撤退の暁には地政学価値の高い沖縄を狙う中国から横取りするつもりだろう。従って、今日本に必要なのは阿呆なヘイトスピーチ規制法廃止とスパイ防止法制定と国家的な防諜機関設立である。
まずは各都道府県警察公安部の外事部門を統合して「日本のディープステート」となる統合防諜機関日本版FBIを創設すべきである。
(道楽Q)
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(読者の声3)山本元帥の書の雄渾さについて、
私はかつて、第一航空艦隊司令長官である、南雲忠一の事績を調べようと、国会図書館にいきました。そこには、遺族が寄贈した南雲忠一の、家族宛の手紙があります。
ここで手紙のコピーを披露するのは、著作権に関わると思いますので、遠慮しますが、真珠湾奇襲の帰投時、戦艦長門艦内にある連合艦隊司令部参謀から、「ついでに、ミッドウェー島襲撃を要す」、と打電を受ける。
だが、艦隊司令部は、「優勝した横綱に、途中で大根を買ってこい」というようなものだ、と打電し、攻略しなかった。その時の家族にあてた南雲忠一の筆跡は雄渾であり、枠をはみ出ていた。
だがミッドウェー海戦後、家族にあてた手紙は、枠の中に、小さく収まっていた。サイレントネービーの旧海軍は、妻にさえ秘して語りませんが、長年、一緒に暮らす家族は、何か変事があったと感づいたことでしょう。
宦官にされた司馬遷を評して、勇怯堕はその時の産物とあるように、筆跡は、その時の心理状態を表すようです。その後の南雲忠一は、ミッドウェーの事は、世間には一切秘して語らず、自らサイパン行きを希望した。
最期は、肩章をもぎ取って軍刀を引っ提げて米軍に突撃し、散ったのだろうと、後に亡妻が語っています。
以前、米沢海軍の、南雲忠一の生家を訪ねた時、電気屋になっていました。上杉謙信の遺風を引き継ぐ米沢に、遺族は住めず、鎌倉に引っ越したそうです。
米沢には、進駐軍が持ち去ったのか、南雲忠一に関する書籍はありません。
(斎藤周吾)
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(読者の声4)毎年8月といえば原爆と靖国の話題になる。昨年の8月15日に靖国神社で行われた催しでのジェイソン・モーガン氏の演説がYouTubeにありました。
https://www.youtube.com/watch?v=cgmHY3pOXns
モーガン氏の祖父は海軍の空母で通信士、日本軍は正々堂々と戦い男らしいと尊敬し日本人の悪口をいうことはなかったという。「敵ながらあっぱれ」「アメリカ人はルーズベルトに騙され洗脳されていた」という祖父の言葉。モーガン氏は日本人が戦ったのはアジアから白人の帝国主義者を追い出すためと評価。敗戦国の指導者に対するさらなる侮辱のためA級戦犯としたとアメリカを批判する。
戦犯どころか英雄だったとも。安倍総理が2013年を最後に靖国参拝をしない理由はわかりません。
コロナ対策のドタバタで内閣支持率が低迷するなか、中韓の経済がガタガタな今こそ靖国参拝の好機だと思うのですが。
(PB生、千葉)
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和2年(2020)8月13日(木曜日)
通巻第6617号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~米国の金融制裁に備えよ。トランプ政権は本気だ
中国人民銀行顧問、社会科学院シニアフェローのユー・ヨンディンが警告
*************************************次の米国の中国制裁は金融方面であり、銀行取引停止、世界のドル決済期間からの排除、海外資産凍結などのシナリオが用意されている。
中国当局は警戒態勢にはいるべし、と重大な警告を発したのはユー・ヨンディンだ。かれは2014年のダボス会議でも中国側のパネラーを務めた。
中央銀行の顧問として、世界の顔の一人、現在も社会科学院の上級研究員を務め、その発言は注目されている。彼がいうのは「2012年に雲南省昆論銀行が、イランへの不正送金がばれて制裁されたように、海外との取引関係に於いて、中国の海外資産が凍結される可能性が高い」。
8月15日からファーウェイ、テンセントなどが取引停止となるばかりか、TIKTOKとウィチャットの禁止が通達された。「アメリカが次に何をやらかすか、予測不能だ」とユーは続けた。
「世界の決済のクリーニングをしているCHIPシステム、或いは国際ドル決済システムでありSWIFTから中国が排除される可能性も否定できないだろう」。
中国人民元は香港という國際金融都市が機能を失えば、それで一巻の終わりという自覚がある。香港ドルが米ドルとペッグ制を敷いているからこそ、中国は国際取引ができるのであり、為替、社債起債、送金、貿易決済などを自由に行えた。
その香港に与えてきた特権をトランプ政権は廃止した。
この重大にして深刻な危機を認識していない暗愚の帝王は、香港弾圧強化に踏み切り、自爆装置に手を掛けてしまった。
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~トランプは米国を偉大な国に再生させた
日本もふたたび偉大な国になって欲しいとトランプ側近の期待
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スティーブン・ムーア、アーサー・ラッファー、藤井幹久訳
『トランプ経済革命 ──経済ブレーンたちの証言』(幸福の科学出版)
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トランプ政権の経済政策を表で司っているのはUSTRのライトハイザー代表、ロス商務長官、クドロー国家経済委員会委員長らだが、ホワイトハウスでは国家安全保障担当のオブライエン、ポッテンガー正・副両補佐官が絡む。
背後にあってつねに助言をしているのが、本書が選んだ二人の人物、すなわちスティーブン・ムーア(ヘリティジ財団客員フェロー、元ウォールストリートジャーナル編集員。現大統領経済顧問)とアーサー・ラッファー教授だ。ラッファーはレーガン政権に大きな影響を与えたサプライサイド経済学の提唱でも有名。この二人が「トランプ経済学は成功した」と発言を繰りだすのが本書の特色である。
サプライサイド経済学に触れておくと、減税と供給サイドの強化が強調されてもので、仲間にジュード・ワニンスキー、ロバート・マンデルらがいた。後者二人、懐かしき名前だが、金本位復帰提唱者として著名であり、かれらを総合してのサプライサイド経済学をブッシュ大統領(当時は副大統領)は「ブードーエコノミー」とからかった。だが、レーガン初期とサッチャー前期に、一世を風靡した。
ラッファーは日本版によせて、こう言う。
「日本の将来が非常に危険であるように感じられます。日本経済が勢いを失ってきた理由としては、良い経済学が有益であることを、日本人がよく理解できていない」(中略)「日本が消費税を10%に増税したことは間違いだった」。
ムーアがトランプの経済政策と比較する。
「トランプは減税政策で成功しました。規制政策でも、企業のコスト負担を軽減しました。エネルギー政策でも、アメリカ国内で採掘される石油、天然ガス、石炭などの天然資源の開発を推進しました」。
すなわちトランポノミクスが「アメリカ経済を大発展させたのです」。
二人はローレンス・サマーズとか、ポール・クルーグマンの経済理論が、いかにまちがっているかも熱心に解き明かしている。
日本の官僚たちが「尊敬」しているアメリカ経済学って、インチキに近いのだ。
またピケティは偽物だと論駁している。凝り固まった視野狭窄の学者や官吏が多い日本。メジャーな新聞やメディアは、この本を書評には取り上げないだろうな。
『礼記』に曰く。
「こころ此所にあらざれば 見れども見えず、聴きても聞こえず、食らへども、その味を知らず」
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(読者の声1)貴誌近刊、書評、投書欄への感想です。
宮本武蔵ですが、小生も奥多摩の吉川英治記念館を訪ねたことがあります。吉川英治と宮本武蔵ですが、随筆を読むと、吉川英治の好きな武蔵の歌は
「理も訳も尽くして後は有明の知らぬ昔の無一物なり」
と記しています。求道者であったことを思わせます。
山本五十六元帥を最近あれこれ批判する人がいますが、当時の国際情勢を理解しないと戦争は理解出来ません。
何故、米国は日本を攻撃したのか。著名な軍事指導者も巨大な国際政治の一部にすぎません。敗戦したから非難するというのは不当であり、戦死者への非礼だと思います。
(落合道夫)
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(読者の声2)「国家の一機関が、国家破壊をやっている」。国際政治学者の藤井厳喜氏の動画です。
「反日を掲げる教科書調査官は「前川喜平」の弟子だった? ~知られざる文科省・教科書検定の闇」は下記サイトにあります。
https://www.youtube.com/watch?v=tY2we9cl2OA
(OF生)
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(読者の声3)本日は靖国参拝いたしました。ほぼ20年ぶりに日本へ戻り、ベトナムとの違いに軽いカルチャーショックを受けることがあります。レジの自動化が凄いですね。相変わらずデフレで、クーポン券、なんとかポイントカードが全盛です。
日本人にも色々います。ガスも郵便も宅急便もITリタラシーが必要になっており、リタラシーのないひとにはきつい世の中かもしれません。メガバンク500店舗の半分が閉店し、スマート店舗で半分が要らなくなれば、人員は四分の一。ATM なんて公衆電話と同じ運命が待っています。
ITリタラシーのないひとには難しい世の中でしょう。
靖国では皆、鳥居の下で靖国の英霊にお辞儀していました。素晴らしい光景でした。しかし、靖国を戦犯、軍国主義の象徴と考える日本人は今も多い。少なくとも早くWGIP の呪縛がとれることを祈ります。
(R生、逗子)
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(読者の声4)貴巻第6616号(読者の声2)日食と天照大神(再反論2)を高柴昭様より頂き、心より感謝いたします。以下に意見を述べさせていただきます。
古代史解明にあたり採用した論証方法の仮説的推論(アブダクション)について、確率論を用いて反論されていますが、当方の説明が誤解を与えたのかも知れません
が、確率論によるご批判は全く当たりません。時系列的に配置された史実群について仮説に基づき共通の原因の推論を重ねるわけですから、個々の史実について考えられ得る原因が複数あるのが普通ですが、一連の史実を全体として見た時にはその原因を合理的に説明できる仮説は絞られてきます。つまり、ある史実が起こりうると考えられる原因が複数あるとしても、その一つ前の史実が起こる、複数の考えられる原因の中で、共通する原因の数は少なくなります(もしもそれがゼロならば、二つの史実に因果関係がないという結論になります)。
したがって高柴昭様が主張するような、個々の仮説を採用する確率の累積が、全体から検証によって得られた仮説の妥当性を評価する指標にはなりませんし、「また、仮定が3つ4つと増えるに従って真実から遠ざかっていくものであると考えています。」という主張も全く当たりません。
また、アブダクションを提唱したC.S.ピアスは「理論のすべての説明的内容はアブダクションに由来するものであり、それは、驚くべき現象や複雑な現象を単純で経済的な方法で説明するために、新しいアイデアや外部のアイデアを推測するものである」と述べています(Scientific Method 5.3 Pragmatic Model
https://en.wikipedia.org/wiki/Scientific_method
ですから、高柴昭様の感じたような「思い付き」との印象は当たっていますが、それによってその仮説を棄却する理由にはなりません。仮説は検証によってのみ棄却されます。
さらに、「正史」は正しいものと考えられる方にとっては、「正史」の記述から逸脱する仮説は、合理的でないとの意見を持たれるのだと思います。しかしながら、以前にも日本神話について意見を述べさせていただきましたが、古代の「正史」は権力者の権力を維持するために編纂された歴史書ですので、権力者にとって不都合なことは書かれませんし、歴史の歪曲・改ざん、事実の隠蔽もあり得ます。
疑うべき理由のある内容については考古学などで科学的に検証する必要があります。詳しくは、古代史の謎を推理する <正史と記紀神話の謎>をご参照ください。
https://blog.goo.ne.jp/katumoku10/e/e5f3c79c776262d1ae311988f7e58e3e
以上のことをご理解いただけると、ご提示された三点の反論についても、申し訳ありませんが、全く的外れなものであることに気付かれると思います。
もしもそのご理解がなく議論を続けるならば、膨大なエネルギと時間が必要となり収束しない可能性がありますので、勝手ながらここではこれ以上論争することは避けたいと思います。しかし折角ご提示いただいた疑問については、多くの方のご理解のために拙ブログにて意見を述べさせていただこうかと現在思案中です。
ということで、これに関するここでの議論は終了させていただき、今後は拙ブログにてお願い致します。どうぞよろしくお願い致します。
(刮目天ー)
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(読者の声5)ロスの友人よりご参考まで
Fox の 辛口 Tucker Carlsonはz「中身空っぽの正副大統領候補」と酷評。
Tucker Carlson calls Biden-Harris the 'first entirely hollow presidential ticket in American history'
https://www.foxnews.com/opinion/tucker-carlson-biden-harris-hollow-ticket
取り沙汰されたライスあたりは好むと好まざるに関わらず、それなりに(親中国と言う)自分というものを持っていたが、カマラ ハリスは最も transactional、つまり取引で何とでもなるタイプと。この面ではバイデンも同様でサンダースの様に一貫した信念の様なものがないので、handler達に操られ易い。
確かに、黒人系だがBLM的発言は控えているし、白人層や Wall Streetにも近づいている。本来 CA州のSF地区の地盤から見れば、本来は progressiveに近いリベラルと思われるもprogressiveの連中とはまた肌合いが違う、というどっちつかずのコウモリ。今後3か月でバイデンの認知症が表面化すれば、当選してもいきなりハリスが大統領に昇格(安全保障・外交の経験ゼロにも関わらず)という悪夢も。
(AO生、世田谷)
(宮崎正弘のコメント)居眠りバイデン、最後はヒラリーを選ぶと思っていましたが、ふたりの感情的対立は深かったわけですね。
ハリスだと、ディープステーツは支援しにくいでしょうね。やっぱりトランプのほうが、彼らには裨益すると計算すれば、近く情勢が替わるような気がしています。直感です。ハリスは極左ですから。
♪
(読者の声6)山本五十六について私の経験を述べます。
平成6,7年のことと記憶していますが、大分県竹田市の広瀬神社に参拝しました。小ぶりで無人の宝物館に縦B4ほどの参拝帳が広げて展示されていました。1ページに3名署名するよう罫線が引いてありました。右ページには山本五十六と達筆な墨書。左ページには古賀峰一。山本に勝る達筆です。二人の書風は似ており、細身で緊張感のあるものでした。
問題は書き方です。二人とも1ページを使って右上から左下へ斜めに書いているのです。参拝帳を斜めに置いて書いたのでしょう。字の並びに些かの乱れもありません。即興でこんな芸ができるはずもなく、二人で示し合わせて随分と練習したのでしょう。
二人はどんな性格なのでしょうか。関西弁で言う「ちょけ」ですね。「ちょける」=「ふざける」ということですが、愛嬌を含んでおり、必ずしも悪い意味ではありません。しかし、子供ならともかく、帝国海軍の首脳としてはどうでしょうか?
(赤井新也)
(宮崎正弘のコメント)そのことはともかく、じつは小生も二回、廣瀬神社を参詣しています。何が驚きだったかといいますと軍神・廣瀬の若き日の写真を見たときです。なんと森田必勝と瓜二つでした。写真に合掌しました。
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(読者の声7)昨晩放映されたフロントジャパンは冒頭から香港民主活動家アグネス・チョウの逮捕、釈放、保釈金など、わかりやすい開設でした。
https://www.youtube.com/watch?v=lNRfIspxxNY
宮崎さんが分析されたように、民主運動の中枢はジミー・ライであって、アグネスはスポークスウーマンでしかなく、日本人の反応はまったくヘンだ、と発言されたのには納得です。
(TY生、杉並)
(宮崎正弘のコメント)香港のメディアもビックリしていますね。ジミー・ライの保釈が、香港ばかりか世界のニュースで、合計十名逮捕のうちのひとりがアグネスという書き方です。サウスチャイナモーニングポストも、日本だけ何故? と奇妙な日本人の、それこそ国会議員まで含めて、アニメ少女と運動の本質との乖離を皮肉っていました。
やはり日本人はアニメから日本語を学習しはじめ、さかんに日本語でコミュニケートした女子学生の存在が「民主の女神」と象徴化されて、香港の民主活動といえば、彼女の動静を追うという、日本独特のアングルになったのでしょう。
しかし、アグネスの女神化が日本だけであるからにこそ、香港の実情を多くの日本人が知り得たという功績は素直に評価したいと思います。
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和2年(2020)8月12日(水曜日)弐
通巻第6616号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~香港警察、ジミー・ライ、アグネス・チョウらを保釈
激高する香港市民の抗議、西側の圧力に降参した?
*************************************「逮捕劇は政治的圧力よ」。保釈されたアグネス(習庭)は第一声を記者団にあげた。保釈金は20万香港ドル(およそ300万円)。
「リンゴ日報を支援し呉れ。最後まで支援してくれ」。保釈されたジミー(黎智英)は、モンコック警察署前で記者団に大きな声で言った。保釈金50万ドル(保釈金と担保金を含める=邦貨換算で750万円)。いずれもパスポートを押収された。
市民の支援は「リンゴ日報の株を買おう」だった。月曜から火曜にかけてリンゴ日報の親会社「壱」の株価は三倍になった。また号外を50万部印刷したが、どの売店でも飛びように売れた。ほかに同日逮捕されたジミーの息子二人を含む十名も保釈された。
香港政庁は市民から敵視されている現実が浮かんだ。
結局、この逮捕劇は政治的な圧力を示威したことになるが、逮捕理由の「香港安全法」は7月1日から施行されたわけで、逮捕理由は昨年の違法集会だから事後法の適用となり、裁判を維持できないことがわかったのかも知れない。
また世界中で巻き起こった不満、抗議の声は、香港政庁を越えて、直接的に中国共産党、習近平個人への批判でもあったため、北京は確実に世界の声が聞こえたはずである。
だが、こんご懸念されるのは、保釈金を含み、長い法廷闘争の費用だろう。「香港大乱」の逮捕者は9200名。起訴された者が2000名。裁判を維持し、弁護士を雇用し、PR活動を展開して行くためにはSNSを利用してのクラウドファンディングがますます必要とされる。
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~「慄」と「美」と。武蔵流の文武両道の極意とは
武より文への、めくるめく飛翔だった
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竹本忠雄『宮本武蔵 超越のもののふ』(勉誠出版)
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画期的な宮本武蔵論である。そのうえカラーで武蔵の残した屏風画、水墨画が納められている稀覯本だ。
本書は先にフランス語で書かれ、フランスで最初に出版された。フランスの騎士道とわが武士道を比較する文化論でもある。
基底は精神論。そして美術論である。武蔵はかなり多くの水墨画と屏風画を残しているが、それらが巴里で展示されたこともあるのだ。
本書を通読して、おそらく下記の箇所がもっとも竹本氏が言いたかったことではないかと思った。
「剣聖としてのみならず、画聖としての宮本武蔵が、騎士道を憧憬する西洋によって知られるに値する理由がある。逆にわれわれ日本人にとっては、日本人自身、日本を見失いつつある時代なればこそ、異文化の鏡像が必要とされる」(110p)
フランス文化に通暁し、マルロオの理解者として通訳、翻訳を通して、竹本氏はとことんアンドレ・マルロオを相手に武士道を、三島を、そして騎士道を語り合った。その経歴が本書を生み出す根本となっている。
宮本武蔵といえば、通説に従うと備中美作うまれの暴れん坊、十七歳のときに関ヶ原で西軍についたため以後、浪々の身となる。やがて剣豪として認められ、吉岡一門と闘い、佐々木小次郎と闘い、最後は肥後の洞窟に隠遁し、絵を描き、思索をめぐらした。
しかし、その後の研究で通説より十歳上、関ヶ原の参戦は二十八のとき、また生まれは兵庫県で、五歳のときに美作の宮本家に養子にだされたことが判明した。
生涯、五十数回の真剣勝負に全勝した。巌流島の佐々木小次郎との対決は遅参ではなかった。
なによりも武蔵は思想家だったのだ。そして哲学書とも言える『五輪書』を後世に残した。
『五輪書』は英訳され、仏訳され、世界二十ヶ国語に翻訳されて広く読まれたが、西欧人は、これを孫子の兵法書と並べて読む過ちに傾きかけたこともあった。
『五輪書』は孫子とは正反対の書であり、謀略と卑怯を斥け、正々堂々の魂魄を説いているのである。
だが、多くが誤解し、「毒をもった危険な書」と坂口安吾が評し、司馬遼太郎にいたっては、「武蔵は性格異常者で法螺吹き男、剣法は屠殺剣」と誹った。
日本国内ですら、じつは宮本武蔵は吉川英治の小説が普及した結果、かなりの誤解が広まっている。吉川は劇的効果をあげるために史実を誇大化したうえ、お通という武蔵に憧れてあとを追う美女を創造したが、実在した女性ではない。架空のヒロインである。吉川文学のモチーフは「求道者」としての武蔵だった。
映画にも何回かなった。五十本の映画が作られ、漫画の『バカボンド』は2000万部が売れたという。評者、学生の頃、中村錦之助主演の武蔵をみたが、高橋英樹主演でも製作された。
レーガン大統領が来日し、中曽根首相の「日の出山荘」の囲炉裏を囲んで政治談義。このとき中曽根は吉川英治未亡人を招いていた、英訳された『宮本武蔵』を贈呈するという演出もした。
青梅にある吉川英治記念館は広い庭園、書斎がそのまま残り、評者も一度見学したことがある。吉川英治は評者の父親がつねに愛読していたので、よく読んだ。父は『新平家物語』をよむために毎週、連載の週刊誌を買うことを楽しみにしていた。
高校生時代に、三週間ほどかけて吉川英治の『宮本武蔵』(この時は全四巻だった)を熟読したことを思い出した。この小説は志操、信念、潔癖を人生目標とした物語の設定となっている。吉川英治は辞書にない形容詞をつかうので意味不明の箇所があったり、崖から落ちたお通が、その後、どうなったのかと懸念していたらある日、茶店にいたり、物語の繋がりが不思議な箇所もあった。
「正しい武蔵像」とは何か。
剣豪でもあったが、武蔵は芸術家、思想家だったという重大なポイントが普遍的な武蔵論から欠落しているのである。
本書はひたすら、芸術家、思想家としての武蔵を追っている。ほとんど知られなかった武蔵の自画像が表紙を飾る。
竹本氏が半世紀近く前、巴里から帰国されて、つくば大学教授に就かれる前、渋谷に書斎を借りて評論をさかんに綴っていた時代がある。当時、貿易会社をやっていた評者は、パートナーだったT氏から、「宮崎さんと同じことを言っているひとがいる」と竹本氏の名をあげた。Tは青春時代に米国へわたり各地を浪々とした経験があり帰国後、自衛隊に入って、夜間に横浜の関東学院大学に通った。そのときの講師が竹本氏だったという奇遇。二人して渋谷の書斎を訪ねた。初回は三島論、延々と話し込んでそのまま下町へ降りて食事したものだった。
氏はカンボジアの平和活動にながらく従事していたので、精霊について多くを語った。基本になるのは精神、魂魄、志操である。
マルロオと三島に通底するのは、騎士道と武士道の精神だと竹本氏は熱っぽく語り、人脈的には村松剛氏と繋がっていく。御二人ともマルロオと三島由紀夫の研究家である。
熊本県八代市に松代城代だった松井家の文庫がある。偶然、熊本県の文化関係者の案内で見学したことがある。武蔵関連の展示が幾つかあった。御当主の松井氏が何点か案内してくれたのだが、その時まで松井家が細川家家老であり、武蔵の事実上の保護者だったことを忘れていた。現在、武蔵の画は鶉図、屏風、達磨などが目白台の永青文庫に展示されている。
武蔵の辞世。
「天仰げば実相園満、兵法逝き去りて 絶えず」。
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~コロナショックで世界は地獄と化したが、もっと悲惨になる
「普通の生活」が、こうまで簡単に崩壊するものだったのか
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鈴木傾城『ボトム オブ ジャパン 日本のどん底』(集広舎)
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コロナ以前から、最貧層の困窮ぶりは伝わっていた。日本には「引き籠もり」が70万人もいた。「生活保護」を受ける家庭もまるで減らなかった。
コロナ禍によって、もっと「どん底」に墜ちた一群の人々がいる。ネットカフェにも滞在出来なくなった男たちは路上生活、女性はシェアハウスか、ファストフーズ店で夜を明かす。
とくに悲惨なのはシングルマザーである。非正規雇用の職場も限られてきた。
いまや日本の全世帯の61・5%が平均所得以下となった。わけても年収が百万円以下の世帯が5・5%前後もある。これが『新しい日常』とやらなのか。
住宅喪失者のうち20%以上が、なんと五年、十年とネットカフェ暮らしを続けているという(東京都福祉保険局調べ)。
家賃滞納の支払い督促は2017年度に30万件、コロナ以後の統計はまだないが、おそらく100万件を越えているだろう。
ニューヨークの貧民街、インドの貧困窟、難民のテント村などと、日本でも同質な恵まれない人々が、これほど多いとは。
評者の住む街でも、既に行きつけの居酒屋が閉店、廃業。なにしろ凄いペースである。今後も継続できるのか、どうか。なじみの酒場も、スナックも閉じた。スポーツジムは人がいない。ホテルに客が蒸発している。
本書によれば風俗産業の壊滅ぶりも凄いことになっているようだ。
客が感染を怖れて寄りつかないとなれば、暇をもてあまし、出勤もしなくなり、その女性らは家賃も払えなくなって路頭に迷う。
明日からどうやって食べていくのか、これらの人々を救えないのだろうか。
熊本県人吉の台風被害でも県外のボランティアを断ったら、いきなりボランティア不足になった。コミュニティが崩壊しているから助け合おうにも、どうすることも出来ない。
問題は、なぜこうなったのか。政治の貧困ではない。殆どが中国が元凶ではないか。日本のメディアも、国会も、なぜ、誰も中国を非難しないのか。賠償裁判を起こさないのか、
本書で、そのことに触れているか、気になったが最後にちゃんと指摘があった。
「2020年1月から不気味に拡がり始めた中国発コロナウイルスはやがてパンデミックとなって世界を覆い尽くしグローバル経済をめちゃくちゃにしてしまった」(240p)。
激しい社会矛盾を本書は、「貧困」の視点から抉った。
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(読者の声1)今年も、75回目の終戦祈念日がやって来ます。本来なら、敗戦屈辱日とすべき、8月15日です。臭いものに蓋をしてしまう日本人気質は、終戦としました。
今日8月11日の天気は40度に近い最高気温です。終戦当時、夕雲雀さえあがらないガレキの山からの玉音放送も、平年より1℃高い、31度の猛暑日だったようです。
私が小学校6年の時、担任が連合艦隊が大好きだった事もあり、私の尊敬する人間は山本五十六でした。
先生に、大きくなったら海上自衛隊に入り、敵艦に特攻する、と言って褒められた。後に、これを人に話すと、「君は変人だね」とよく言われたものです。
山本五十六は、戦死して元帥で国葬され、国民全てに惜しまれました。
母が、日露戦争に行く五十六に「きみの為国の為にはつくせかし散りては香るもののふの花」を服に縫い付けて見送ったと言います。日本海海戦で指2本を失った山本は、軍医に、あと一本を何とか残して呉れ。3本失ったら海軍を追われる、と哀願したそうです。堀悌吉と共に反戦を唱えますが、堀悌吉は予備役に回されたが、山本は残った。生き方上手の面があったのでしょう。
反戦を唱えた山本は、アメリカのハニートラップにかかっていると、攻められます。自民党の二階幹事長も、媚中派と攻められています。いつの時代も変わらないようです。
火のない所に煙は立たず。酒は飲まないが女好きだった。もしトラップがあれば、アメリカ駐在武官時代だったのでしょう。駐在当時は、ウィリアムミッチェル少将の空軍優位論を知り、日本でそれを実践したものと思われる。人は新しい事を考えても、科学とは異なり、大量の人を動かすには、信頼できる後押しが必要です。
秋山真之先任参謀も、マハン理論があるために、自信をもって遂行できた。淵田美津雄は戦後、山本を批判して、今まで営々と築き上げた大艦巨砲主義を覆して未熟な航空優先に切り換えた。アメリカに戦法を教えた愚将だ、としている。
だがアメリカは、着々と航空優先に切り換えつつあった。開戦一年後には、どうなったか分からない。当事者には断腸の思いだろうが、永い歴史から見れば、真珠湾だけでも一矢報いたことにより、日本民族の壮大な叙事詩となろう。ゆえにこそ、アメリカは、ゼロ戦をもった日本に一目置いている。
山本は、普通の作戦では、売国奴と言われます。求心力を保つ為、突拍子もない真珠湾攻撃を策した。それをしなければ辞任する、と永野修身軍令部長を口説いたのでしょう。
大戦争には、トップに明治天皇のような人がいないと、人の和が乱れて敗れることの典型です。
二階幹事長も安倍首相がいるから、堂々と媚中しているのでしょう。
真珠湾攻撃の時、宣戦布告をしなかったと言うが、日本の大本営を牛耳るのは、海軍ではなく陸軍です。アメリカとの戦争には海軍が主動権を握るべきなのに、大本営は陸軍部が握っていた。
陸軍にすれば、太平洋戦争ではなく、大東亜戦争だというでしょう。ドイツ参謀メッケルの薫陶を受けた陸軍は、先制攻撃をした後に宣戦布告するのは当たり前です。日露戦争でも宣戦布告前に、旅順港閉塞作戦をやっています。
真珠湾攻撃をアメリカが発表してから宣戦布告をしたのです。ルーズベルト大統領は、『リメンバーアラモ』、『リメンバーパールハーバー』と欣喜雀躍して国民に訴えたのです。虎の子の空母を真珠湾から遠ざけ、古い戦艦のみを囮として停泊させていた大統領のしたたかさでしょう。
奇襲の詳細については、いずれ拙作で書くつもりでいますので、ここでは遠慮いたします。
さて山本は名将か凡将かとは、よく議論されます。敗戦の将、兵を語らずで、負けたのですから、間違いなく、凡将です。
真珠湾奇襲がアメリカを奮い立たせたのだから、最大の敗戦責任者となります。生き残っていれば、南雲忠一と共に、間違いなくA級戦犯で絞首刑でした。大本営陸海軍の上層部は、東京裁判で、死人に口なしで、全ての責任を山本に押し付けた観があります。
(斎藤周吾)
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(読者の声2)日食と天照大神(再反論2)。刮目天一様より、また反論を頂きましたので再反論2として見解を述べさせて頂きます。
まず、刮目天一様の論には多くの仮定が見られ、それを「仮説的推論」として古代の解明には有効だとしておられます。古代の解明には物証などが不足しているため、いわゆるミッシング・リングを埋めるため、仮説を導入することが有効であると思われる場合もあることは否定しません。
しかしながら、その場合、その仮説を導入するに際しての合理的な説明が必要で、刮目天一様の多くの仮定は合理的な説明が殆どなされていないため、思いつきの域を出ていないと言わざるを得ません。
私はそれがどの程度真実に近い仮定であったとしても、仮定を重ねることにより真実に到達する確率はその積の程度のものになると考えています。具体的には、たとえ確率70%の仮定でも、二つの仮定に基づくのであれば確率は0.7x0.7=49%となり5割を切ってしまいます。また、仮定が3つ4つと増えるに従って真実から遠ざかっていくものであると考えています。
今回の刮目天一様の反論で言えば、日本書紀は藤原不比等の創作 従って神話通りの日食でなくても良い、「卑弥呼が247年の日食が原因で殺された」「岩戸
隠れ」神話は卑弥呼殺害伝承から神話の作者が適当に連想して作ったもの、「女神アマテラスは元々「日本書紀」の中で作られた神、「女神アマテラスは持統天皇がモデルだ、「古事記の神話は、基本的に日本書紀に倣って作られている、「不吉な現象を見て伊都国男王卑弥呼殺害を部下に命じた、など、仮説の羅列と言っても過言ではなく、大きなものだけで8つの仮定が導入され、しかもその一つ一つの仮定に対する合理的な説明がないことから、思いつきとするのが妥当でしょう。
大きく譲って、それらの仮定が一つ70%の確率があったとしても、全体では1%あるかどうかという程度の正確性と言わざるを得ないのです。それを「余ほど大きな事実誤認がない限り大丈夫だろうと考えています」とまで自信を持って言われる大胆さには驚愕いたしますが、到底頷くことはできないものです。
仮定の一つ一つに反論は可能ですが、膨大なスペースが必要となりますので、次の3点だけに絞ってポイントを述べさせて頂きます。
1) 倭人伝の「卑弥呼以死」を、殺害されたとしておられますが、「三国史記」などの記述も併せ考えれば、当時卑弥呼はかなり高齢であったと考えられ、その死は老衰による自然死と考えるのが妥当と見ています。
2)「神話通りの日食でなくても良い」とは暴論も極まったというべきで、何百年に渡って神話として伝承された事実を曲げて、一人の人が創作したとしても多くの
人々に容易に受け入れられるはずは無く、無理を通り越した自己撞着と言わざるを得ません。古代の多くの人々に強い印象を残した日食があったからこそ、長い間に
渡って伝えられてきたのであり、それだけのインパクトがある皆既日食は、BC273年9月6日に中国大陸に始まり、北部九州から四国を経由し近畿南部から太平洋に抜けた、広範囲に渡る文字通りの皆既日食ならば該当し、私は、岩戸隠れ神話はこの日食を元に脚色されたものと考えています。もしそうであれば、卑弥呼は天照大神とは全く結びつきません。この日食を外して、わざわざ該当しにくい日食に固執して論を展開するのは我田引水の誹りを免れないものと言わざるを得ないでしょう。
3)「古事記の神話は、基本的に日本書紀に倣って作られている」との仮説が提示されていますが、史書記載の通りとした場合、古事記の成立(712年)は日本書紀成立(720年)よりも古いため、日本書紀成立以降に古事記が成立したとするか、或いは採録された説話は古事記の方が新しいと論証されない限り、貴説は一気に確率ゼロまで陥落することになってしまいます。
(高柴昭)
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和2年(2020)8月12日(水曜日)
通巻第6615号 <前日発行>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~米国のTIKTOK,WECHAT禁止がアメリカにも跳ね返るが。。
トランプ政権は「まるで不動産会社の取締役会だ」(TIME)
*************************************保守思想が強い側からみれば、トランプのTIKTOK,WECHATの米国での使用禁止は政治的な「快挙」だろう。ボルトンならそう言って拍手しただろう。
個人データを盗み出したと理由をつけて、しかし「マイクロソフトあたりに売れ、45日以内に」と条件をつける。あの物件は百万ドルとふっかけて、70万ドルに値切る商談が目の前に展開された。かつてTIME誌は「トランプ政権は「まるで不動産会社の取締役会だ」と書いた。
中国のナショナリスティックなメディア『環球時報』は「まるで白昼強盗」と避難した。
中国側はGAFAのどれかを締め出しにかかる対抗手段がある。
「さしあたって狙われるのはアップルからマイクロソフト、あるいはインテルか」(TIME、2020年8月24日号)。
さて、マカオで立ち往生しているのが米国ラスベガスの御三家ウイン、サンズ、MGMだ。年間2800万人の博徒が中国大陸からマカオへ押しかけ、大金を掛けるので、御三家がウハウハと高笑いが止まらなかった。
コロナ災禍で、博徒が蒸発し、ウィン、サンズ、MGMは真っ青。もちろん地元のリスボアもギャラクシーも真っ青。客がいないのである。日本進出を狙ったサンズは、横浜事務所をたたみ、IRは挫折した。
マカオ再開を前に,WECHAT禁止となると、米国系はこれまで顧客との通信を依存してきたため、連絡網が寸断される。
サンズのCEOアデルセンはトランプ選対最大の金主だった。
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樋泉克夫のコラム
@@@@@@@@ 【知道中国 2115回】
──「ポケット論語をストーブに焼べて・・・」(橘75)
「國民黨の再分裂」(昭和2年/『橘樸著作集第一巻』勁草書房)
△
橘が「中國共産黨農民運動の根本的なる確定政策」と評する農村における土豪劣紳(=地主)打倒方針の背景には、武漢国民政府の影響が及ぶ湖南・湖北・江西・広東など共産党の指導で農民運動が拡大していただろうことは想像に難くない。
だが1927年5月下旬になって、国民党左派系の国民革命軍(北伐軍)の一部が動き湖南省における共産党の農民政策を頓挫させてしまった。だが、「(国民党左派の)中央黨部はこれに對して斷然たる措置を執る勇氣又は權威を示すことが出來なかつた」。
これに猛反発した共産党は、国民党左派に対し共産党に敵対する湖南省内の反動勢力を取り締まると同時に、「勞働者、及び農民組織竝に共産黨が湖南に於て完全なる自由を享受し得る」ような保障を逼った。
橘は「湖南・湖北の無産運動に於ける共産黨の重大な過失」はあるが、共産党の主張は「合理的であり」、「中國現時の實状に適し」、「三民主義的であ」り、「少しも所謂共産主義的臭味を帶びないものである」と見做した。共産党の意向を受け入れたゆえに、国民党左派は北伐で軍功を挙げた唐生智に湖南省における「一切の善後策を任せ」たというのだ。
ところが6月中旬から7月初旬にかけ、情勢は一変してしまった。当初は共産党に同情的だった唐生智だったが、一転して共産党制圧に舵を転じた。それというのも唐生智の容共姿勢に乗じ、共産党が唐は共産党の行動を容認すると強く宣伝し、農民武装組織を動かし始めたのだ。この時点で、湖南省省都・長沙において共産党に対する不安・恐怖の感情が沸き起こり、当然ながら唐は一気に共産党制圧に乗り出すことになる。かくて唐生智の行動は「左翼國民黨と中國共産黨との間に、意外に大きい裂痕を遺すことゝなつた」。
どだい共産党員がそのまま国民党に参加し、?介石に反対する汪精衛らを軸とする国民党左派と共に武漢国民政府という一つの政府を組織・運営することは最初から無理だった。
当時の国民党左派指導者の心情を、「共産黨の壓迫を感じて、心窃かに不滿を抱いていたに相違ない。單に個人的感情ばかりでなく、国民黨の革命指導權を擁護
し、所謂三民主義の完全なる實現を期する爲にも、彼等は今少しく共産黨の干渉から解放される必要があると痛切に考へたことであらう」と、橘は推測する。つまり国民党左派は控えめに過ぎ、共産党はやり過ぎた。これを言い換えるなら汪精衛ら国民党左派は「孫文の遺訓」に縛られ身動きならず、共産党は孫文が踏み込んでしまった連ソ容共を逆手に取って、遣りたい放題に振る舞った、ということだろう。
やはり混乱の根源を求めれば、行き着く先は孫文となるだろう。だが、なぜか橘は「偉人孫文」などと綴り、孫文の責任を追及しようとはしない。不思議だ。今になれば孫文を批判する声は日本でも聞かれる。
だが当時、北一輝以外、孫文を明確に批判した日本人は見当たりそうにない。何故だろうか。あるいは孫文は稀代で壮大な詐話師だったのだろう。いずれにせよ彼が一筋縄ではいかない革命家だったのかもしれない。もっとも革命家とはそういった「人種」なのだろうし、自分で自分を騙せるような摩訶不思議な性向の持主ででもないかぎり革命などは覚束ないに違いない。
連ソ容共にせよ国共合作にせよ、とどのつまりは共産党は国民党の庇を借りて母屋を乗っ取ってしまった。
だから「農民協會及び工會は、名義上國民黨の民衆團體となつて居ても、その大部分は事實上共産黨又は國民黨籍を有する共産黨員の壟斷に歸して居る」。それというのも「國民黨首脳者の中に熱心且つ勇猛な無産者運動の指導者を有して得なかつた當然の結果である」。国民党が自ら敗北の種を播いていた。
ならば自業自得だろう。
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(読者の声1)今年も8月15日が近づいてきたところで、あらためて、大東亜戦争関連の書物を読み返しています。
今年は、9月にミッドウェー海戦を描いた米映画が公開されるようなので、ミッドウェー海戦が、一般でも、話題を呼ぶものと予測されます。そのこともあり、昨年も山本愚将論について本欄で述べたと思いますが、再論させていただきます。
日米戦争史を観て、今さらながらに私が感じるのは、日米戦争は、実質的にはミッドウェー海戦で終わっていたというか、この時点で終戦とするべきであったということです。
ミッドウェー海戦大敗後については、時が進むにつれて、対等性が失われる一方であり、戦記を読んでいても、読むのがつらくなってきます。
最悪でもサイパン陥落、東条内閣総辞職時点で終戦しておれば、戦傷者の数は大幅に抑えられたはずです。
生出寿(以下、敬称等略)によると、ミッドウェー海戦の「前」、昭和17年3月下旬ごろ、「既に」、山本は、「いまがわが国にとって戦争終末を図るべき時機だ。それにはいままでに手を入れたものをぜんぶ投げ出す必要があろう」と語ったりしているようです(『渕田美津雄の戦争と平和』徳間文庫)。
このころ既に山本は戦争の前途に自信を失っていたものと推測されます(その原因としては、真珠湾攻撃についての米国内の反応を知ったこと)。しかし「この時期にこんな泣き言を言うくらいなら、真珠湾奇襲で対米戦をはじめるようなことはやらない方がよかったことになろう」(生出)というほかないでしょう。
山本には、必勝への信念はなかった。山本のカッコをつけた発言は、しょせんは、焦り、小心者の強がり、ブラフであったのでしょう。山本が自賛するポーカーの腕前と同様のように私には思えます。
無意味なIFとは言え、「もし彼(山本)が多少なりとも平和主義的な考え方の持主であり、まともな戦い方ではアメリカに勝てないと知っていたのだったら、ミッドウェー海戦に大敗して、主力空母と優秀搭乗者を喪失した時点で、和平への行動にふみだすべきであった。それが海軍大将たる地位にふさわしい、国家に報いる道であった。しかし彼は全くそういう行動には出なかった」(三村文男『米内光政と山本五十六は愚将だった』テーミス社、2002年)。
生出は、「山本は海軍次官当時(昭和11年12月から14年8月まで)は、『米国の国力、工業力は日本の5倍以上もある。対米戦はぜったいにだめだ』と言っていた。それが連合艦隊司令長官になると、大穴でもねらうように真珠湾攻撃に熱中した。それがミッドウェーで大敗すると、詮ないことを口にしたのである」と述べていますが、要するに、山本には強固な意志というものはなく、常に場当たり的な口先とブラフで泳いできた人物のように、私には思えます。
ミッドウェー海戦「前」に、山本は、既に戦争の前途に自信を失っていたように推測されるのですが、ミッドウェー海戦の最大の原因となった山本の戦略の愚劣さ、愚将ぶりは、あらためて検証されるべきではないかと思います。 山本は、「その判断の誤り、失敗の重大性」からして「天下の愚将」と言うべきである(三村)でしょう。
しかるに、その山本を、「たたえ、粉飾して名将に仕立てる幇間的作家評論家たちはこれまで数知れず、今ものさばっている。
旧軍人の中でも彼を正当に評価する者は少なく、彼をたたえる事によって、国運を傾けた拙劣な戦争指導を糊塗することが多い」(三村)ことを、極めて遺憾であると自分は考えています。
山本擁護論者たちは、ミッドウェー海戦後に和平を持ち出すべきであったなどという論は、事後的な机上論であり、そんな提案をすれば生命が危うかったというでしょうが、少なくとも、自らの戦略の失敗で多くの将兵の命、艦船、航空機を失った重い責任を自覚するならば、生命を捨てる覚悟で実行するべきであったというのは、それほど酷でもなく、現実離れした空論でもないと私は考えます。
そもそもが、開戦前に近衛文麿からの問いに山本が答えた発言内容について、井上成美が、戦後になってからではありますが、「海軍は対米戦争はやれません。やれば必ず負けます。それで連合艦隊司令長官の資格がないといわれるなら、私は辞めますと、なぜはっきりいいきらなかったか」と批判した点もまったく同感です。要するに、当初から、山本には強固な信念も勇気もなかったのでしょう。
人間的に、山本は部下に「優しかった」などと評価する向きもありますが、優しかったのは誰よりも「自分」に対してであったし、他人については自分の身近な者に対してだけであったように思われます。そもそも、軍人、公人としての評価に「優しさ」などが要素とされること自体が疑問です。
真珠湾攻撃の際、連合艦隊主力は瀬戸内海柱島泊地にいたものが、ハワイ攻撃帰りの機動部隊を収容にいくというようなふれこみで小笠原初頭まで進出したり、ミッドウェー作戦の際も、戦艦大和以下大艦隊が出動しながら、戦闘には何ら貢献し得ず、ただ貴重な燃料を浪費しています。
山本自身が戦艦大和に坐乗して出動したことも、作戦遂行上、マイナスの結果にさえなっています。そして、せっかく得られた情報を、『大和』の安全をはかるためか、南雲部隊への送信を取りやめたという処置はいかにも山本司令部らしい感じがします。そして、「日本海海戦での東郷は、砲煙弾雨の中で、捨て身で艦隊を指揮した(が)、山本は安全快適なところで、かっこうよく艦隊を指揮」(生出)したのです。ミッドウェー作戦での山本主力部隊の出動は、草鹿龍之介がいうとおり、「どうでもよい」ことか、「やらずもがな」のことでした。
こうした愚行がなぜ行われたのか。これによって、参加した乗組員に、戦闘参加による加俸や勲章を受ける資格を与えるためだったとも推測されます。山本が、そのような目的、効果を具体的に意識していたかは不明ですが、山本という人物の無内容で、異常な人気取り的気質がうかがえる事実ではないでしょうか。
私心が無かったなどと称える向きもありますが、「もし本当に山本に私心が無かったのなら、彼はミッドウェーはじめすべてのウソを告白懺悔してから死んでいた筈だ。しかし彼はそれをせず、連戦連勝の提督として、格好をつけたまま死んでしまった。今なおその虚像がまことしやかにのさばり、山本神話とまでいわれる所以である」(三村)という指摘には、まったく同感です。
「もしミッドウェー海戦の真相が公表されたならば、世紀の英雄は、たちまち世紀の阿呆に転落したにちがいない」(生出)でしょうし、小心で真の使命感に欠ける山本は、そのような現実に向き合う勇気など、とても持ち合わせてはいなかったのでしょう。
私は、軍人を道徳で評価しようなどとは思わないのですが、ミッドウェー出撃に際して愛人へ向けて書いた手紙など「これで戦運が山本につくのであれば、世の中こんなけっこうなことはないと思われるような内容」(生出寿『凡将山本五十六』徳間文庫)と言うほかないものです。
少なくとも、将兵に対し厳しい軍紀を課し、将兵がその軍紀の下で命を賭け、現実に命を失いつつある中で、その最高指揮官が、愛人に対して「(戦争が終わった後は)万事を放擲して世の中から逃れてたつた二人きりになりたいと思います」などと書くというのは、道義論などの次元を超えて論外というほかなく、国家の存亡を賭した大決戦に臨まんとする将のあるべき「心構え」とは到底言えないと思います。
「山本は軍政にかけては第一級のプロであったが、作戦にかけては岡目八目のアマチュアにすぎず、とうてい第一級のプロとはいえなかった」(生出)、「その作戦
はつねに、内容がともなわないわりにゼスチュアが大きい」(草鹿)、「ミッドウェー海戦からガ島撤退まで、そのつど莫大な損害を出しながら敗北を重ねてき
た責任のほとんどが、山本長官にあるといって、過言ではない」(亀井宏)、「ミッドウェーで敗北した山本五十六提督は凡将中の最凡将といっても過言ではない。・・・・・特にミッドウェーは敗戦の大罪人たるを免れない。軍人が戦場で敗北したのでは、他のなにものをもってしても償うことはできない」(佐藤賢了)、「連合艦隊司令長官は山本にとって、荷が重すぎた」(三村)というあたりが至当でしょう。
(椿本祐弘)
(宮崎正弘のコメント)長岡に三十年前まで、山本五十六記念館はありませんでした。パプアニューギニアの山中から墜落機の翼を運んで、記念館が出来たのは、平成11年です。山本元帥のパスポートや英文の日記なども展示されています。彼の几帳面な性格がわかります。
ガダルカナル視察に赴きブーゲンビリア島で撃墜されたのですが、ラバウルに三泊した塹壕が「ヤマモトバンク」として残っています。
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(読者の声2)貴誌6613号(読者の声1)日食と天照大神(再反論)を高柴昭様より頂き、心より感謝いたします。
247年3月24日北九州で皆既日食、北部九州一帯で深い食が見られたという当方の主張はお認め頂いたと考え、その上で、以下の二点を問題にされているのだと思います。
1点目は、部分日食では、岩戸隠れの神話の内容と違い過ぎるから247年の日食とは結びつかない。
2点目は、卑弥呼暗殺命令を出した伊都国男王が「海に沈む深い食の異様な夕日を見たはずです。とても不吉な現象だと感じたと思います」という推理が、記紀神話とは無関係な(刮目天の)個人的な感想であり、「日食=天照大神=卑弥呼」の論証として成り立たない。
まず、1点目ですが、日本の神話は「日本書紀」完成時の権力者藤原不比等にとって建国の真相を正史に残すことが不都合なので創作されたものと考えています。
その詳細については前回拙ブログを紹介させていただいていますので、そちらをご覧ください。高柴昭様は神話の内容に近いことが現実に起こったはずだとのお考えならば、いつの日食が岩戸隠れの神話になったとお考えなのでしょうか? 当方は、卑弥呼が247年の日食が原因で殺された事件に基づく伝承から、神話の作者が適当に連想して作ったものだと考えています。ですから、神話どおりの日食でなくてもよいのです。
卑弥呼は実在人物ですが、女神アマテラスは元々「日本書紀」の中で作られた神であり、持統天皇をモデルとしていますが、実在人物そのものではありません。古事記の神話は、日本書紀と多少違いがありますが、基本的に日本書紀に倣って作られていると考えています。
2点目ですが、ここでは卑弥呼が殺されたのは何故かを推理しています。つまり倭国に狗奴国が押し寄せてくる情報と丁度重なって不吉な現象と考えられる日食を伊都国男王が見たという前提で、男王の反応を推量して、卑弥呼殺害を部下に命じたと推理しています。
神話から連想される皆既日食とは異なりますが、夕日に沈む部分食を見て衝撃を受けた伊都国男王によって卑弥呼が殺されたと推理したわけです。
論理学上の論証法にはご存知のとおり、演繹法と帰納法がよく知られていますが、結果から原因を推理する仮説的推論(アブダクション)の手法が古代史の解明に有効だということに気付きました。
従来、古代史解明においては、しばしば個々の史実に対してどういう理由で起こったのかなどの問題を、通常は演繹法的に論証する作業が行われます。しかし厳密な意味で公理は存在しませんから、実際は仮説に基づく推論でしかないのです。ですから仮説の数だけいくつもの答えが考えられ、一つには絞り切れないのだと思います。邪馬台国の位置の問題が解決しないのも同様な事情です。
しかし一連の経時的な史実について、予め設定した仮説に基づき原因を推理し、考古学や民俗学などの成果を用いて科学的に検証を繰り返し、仮説の拡張や修正や詳細化をすることにより、その間の史実を矛盾なく説明できる仮説群を見つけることが出来ます。
このような論証法で日本建国の歴史を解明していますので、卑弥呼の日食による死は日本建国の物語の中の一コマとして矛盾なく説明できるものとなっています。ですから、現在分かっている史実から考えると、そういうことが起こっていたのは確からしいという結論が得られるわけです。しかし真実は神様しか知りませんので、それが真実だとは断言できませんが、余ほど大きな事実誤認がない限り大丈夫だろうと考えています。もう少し詳しい説明は拙ブログ「古代史の謎を推理する」
https://blog.goo.ne.jp/katumoku10/e/e5f3c79c776262d1ae311988f7e58e3e
をご参照ください。
ということで『個人的な感想だから「日食=天照大神=卑弥呼」の論証としては成り立たない』というご批判は当たらないと考えます。
以上ですが、得られた結論が通説と異なりますので、色々と疑問が起こるはずです。是非、拙ブログにて具体的にご指摘いただけると解明が進みますので、どうぞよろしくお願い致します。
(刮目天一)
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(読者の声3)台湾李登輝元総統の弔問外交で日本のチャーター機とアメリカのアザー厚生長官の専用機が台北の空港で接近遭遇というニュースが「パンドラの憂鬱」というサイトに。
http://kaigainohannoublog.blog55.fc2.com/blog-entry-3536.html
アメリカは737の軍用版C-40ですが、日本のチャーター機は見たことがない機材でエアバスA-318。コメント欄にパチンコメーカーのユニバーサルがカジノのVIP送迎用に購入した機材とあります。
今回の台北松山空港到着時の写真も投稿されています。
https://flyteam.jp/airline/universal-entertainment
https://flyteam.jp/photo/3126476
カジノといえばIR汚職関連で国会議員まで逮捕され、北海道でも中国関連で危ない話がけっこうありました。二階派議員の逮捕やトランプ政権の対中対決姿勢を見れば中国べったりだった企業など先行き真っ暗。ある意味、アメリカに対する恭順の意なのかもしれませんね。
(PB生、千葉)
(宮崎正弘のコメント)いずれも貴重な瞬間を捉えた写真ですね。こういうサイトを発見されるのは、一つの芸域でしょうか。
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(読者の声4)日米英豪印のファーウェイ排除(大統領選挙でトランプ敗戦なら空中分解の可能性も)で、国際決済は現在のアメリカのswift システムとシナのファーウェイが構築するだろう新システムへ2分裂になりそうです。
そのせいか、最近はPAYPALの株価が急騰しました。PAYPALのCEOはトランプ支持派のようです。
歴史上初の大金融緩和と経済成長の大幅鈍化、予想以上のスピードで回復しつつあるが高い失業率。市中のマネーは史上最大規模でドル信認は落ち(DXY)、貿易赤字国の日本円まで上昇しています。また、ゴールドや暗号通貨の上昇も副作用の一つです。マーシャルのkは高水準で仮にトランプが負ければ株式市場は調整入りと見立てます。
デジタル人民元は暗号通貨(資産)とは性質が異なります。いや、別物です。
デジタル人民元とは人民全員がシナ中銀に口座を保有すること。個人情報もひったくれもなしで、個人がどこで何を買ったがすべてシナ共産党にすべて筒抜けになります。日米など個人情報秘匿権利に厳しい文明国では不可能なことです。それを高性能の量子コンピュータで管理します。顔認証システムとあわせてシナはオーウェンの世界そのものの全体主義国家となります。
日本の全銀システムは双方向の世界最高の決済システムで日本の誇りの一つですがメンテ費用が年1000億円。メガバンクはいくら決済手数料を上げても儲かりません。メガバンクは切り離しの方向です。
そうなれば日本の銀行員はリストラの嵐に突入です。現在、メガバンクの一店舗で行員は約100人。AIとインターネットでスマート店舗にすれば半数は要りません。支店数は半減でしょう。
なお日本で日銀に口座を保有できるのは銀行だけです。個人が日銀に口座保有できるはずはないし、ノンバンクも持てません。日銀株は買えますが、日銀の資産は国債やETFで膨れ上がっています。ETF の方は将来、GPIF に移管するという話もあります。国債に満期はありますがETFにはないですから永遠(going concern )だからです。
先週、fslyというナスダック企業の株価が急落しました。理由は業績は予想以上でしたが、決算発表後にCEO が最大顧客はTIKTOKと発表したからです。シナは米株式の大きなリスクです。大統領選次第で世界は大きく変わりそうです。
(R生、逗子)
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(読者の声5)日経新聞の元ユネスコ事務局長M氏の「私の履歴書」を読んでいてまたがっくりしています。
外務省っていったいいかなる性格の人間集団なのかしら?と云う事です。
今月8月に入って今まで以上に米国は中国に対して強硬にその排除策を次々とこうじています。それは単にトランプ政権のみならず民主・共和両党も含めての国家的コンセンサスができていると日本のマスコミでさえ報じています。この米中対立の根本原因は「中国を支援し経済的に豊かすれば、共産主義も徐々に民主国家に変貌するだろう」と期待し、支援すればそれにこたえてくれると思っていたにも係わらず、まんまと中国の隠された戦略にのせられてきた結果であることを米国が気付いたことにある事は、よほど世相に無関心な人でない限り承知の事でしょう。
此処で私が申したいことは、米国が騙されたと言い募りつつ、日本も同じようにまんまと乗せられてきたのが実体であり、尖閣をはじめとする多くの「日中友好
外交」の結果を今見れば、外務省は重大な間違いを犯してきたことを反省すべきであり、その反省を「私の履歴書」に述べるべきはないか!ということ。ところがそれどころか
本日までの「私の履歴書」には、何事もご自分は上手くやってきたといった印象を多く記述され、経済局長として大規模な無償資金協力に貢献したことをトウ小平から喜ばれたとか、ODAの体制強化に貢献したなどなどばかりです。今月末までの「私の履歴書」には日本があれほど中国を支援してきたからこそ、今の中国が諸々の難問を世界に生じさせてしまったという事実と、中国側の「隠された戦略の実態」を外交の現場から開陳していただくよう期待しますが・・・。
(SSA生)
(宮崎正弘のコメント)今回の「私の履歴書」ほどつまらない自慢話はないですね。前回の現代アーチストの経歴は波瀾万丈で面白かったから尚更です。うまいお菓子のあとに腐った洋菓子を食べている観。それより漫画家I女史とのスキャンダルをどう書くのか、スルーするのか?
●宮崎正弘の新刊 ●宮崎正弘の新刊 http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
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◆まもなくソフトカバー新版がでます!
宮崎正弘 v 渡邊惣樹『激動の日本近現代史 1852-1941』(ビジネス社)
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<< 歴史評論シリーズ >>
新刊予告 九月下旬
宮崎正弘『一万年の平和 その日本の代償』(育鵬社)
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『明智光秀 五百年の孤独』(徳間書店 定価1650円)
https://www.amazon.co.jp/dp/B07PWLGXRS/
『吉田松陰が復活する』(並木書房、1650円)
『西郷隆盛 ──日本人はなぜこの英雄が好きなのか』(海竜社、1650円)
『取り戻せ 日本の正気』(並木書房)
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和2年(2020)8月11日(火曜日)弐
通巻第6614号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~<< 読書特集 >>
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桶谷秀明『昭和精神史』(扶桑社)
藤 和彦『人は生まれ変わる』(KKベストブック)
田村秀男v石平『習近平敗北前夜 脱中国で繁栄する世界経済』(ビジネス社)
樋泉克夫のコラム
書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ドルペッグ体制にどっぷり浸かったから中国は成長できた
香港の金融機能がなくなれば中国経済は自滅するが、習近平はそれを理解できない
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田村秀男 v 石平『習近平敗北前夜 脱中国で繁栄する世界経済』(ビジネス社)
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じつに面白い。中国経済の先行きに興味の向きは必読である。期待を裏切らない内容で、有益かつ深刻な状況を了解できるのに、結論は朗らかでもある。
二人の取り合わせも妙である。
田村氏は早稲田大学で経済学を講じる学者タイプの経済記者だが、日本経済新聞時代には香港支局長の経験があると同時に米国特派員を閲し、ウォール街に通暁し、FEDウォッチャーとしても知られる。
かたや石平氏は、辛辣な中国批判で有名だが、本来は哲学を講じる学者であり、中国の思想史に明るく、孔子孟子老子を語り出せば一晩中、しかも大声でお喋りしているほど歴史に造詣が深い。
そして元中国人であるがゆえに、中国共産党トップの性格、打ち出す手口の心理、その中国人の特性がわかるから、中国の政治権力闘争の舞台裏の状況説明には迫力があり、説得力がこもる。
たとえば、江沢民は習近平の恩人であるがゆえに、冷遇し、つぶしにかかるのだと石平氏は分析するが、その背景説明は、恩人を大切にする日本人には思いつかない発想だ。
前置きはこのくらいにして本書でふたりは何を言っているのか。
結論を先に書けば「暴走する習近平に諫言できる側近が不在、この独裁者の壮絶な賭けは哀れな失敗しかない」のであり、なぜ愚かかといえば、コロナと香港安全法で、世界中を敵に廻しているのに、その自覚がまるっきりないという錯綜、夢想、だからまだまだ暴走する。
いまや中国のお友達は二階某と、フンセンとテドロスだけ。中国と友好関係だった筈のプーチンもジブチもパキスタンもスリランカも、横を向いてしまった。そろそろメルケルも中国への態度を変えそうだ。
田村「人民元にはドルの裏付けがある」
石 「中国経済はじつはドル本位制だった」
田村 「(リーマンショック以後)中国は100%米ドルの裏付けのある人民元をずっと刷り続けてきたからこそ、胡錦涛から今の習近平に到るまで、国家としてたいへんな膨張が出来た」
その状態がコロナ、米中激突、対米貿易黒字激減で、激変した。
ドルが払底したのだ。
田村氏は、ドルとの比率が100%から60%になっている現実をグラフを駆使して明示する。そして、50%から30%台になると、中国経済がどうなるかを理論的に説明している。
高級幹部の資産逃避、海外への隠匿があり、また海外債権が不良債権となったこともあるが、手元資金不如意となったため、せっかく買った海外不動産、企業、映画スタジオを売却し、さらにファンビンビンを「犠牲の山羊」にして、海外に隠したドル資産を強制的に中国に戻させた。さらに年間五万ドルの個人の海外旅行もパスポートを取り上げて、外貨節約に移行するだろうと、石平氏が大胆な予測をする。
このことは評者(宮崎)も一貫して主張してきた。爆買いが唐突になくなったように、中国人の蝗の大群のごとき日本旅行はいずれ「突然死」する。コロナ災禍が明けても、もう戻ってくることはない。
ドルが、それでも足りないとなると、次に何をするか。
財閥から資産を剥奪し、国内の資金を徹底して集めるだろう、と石平は予測する。
「共産党は本能を剥き出しにして、ありとあらゆる方法で金持ちから富を奪う(中略)。これは中国の歴史と伝統であり、国家財政が苦しくなると、金持ちを冤罪で捕まえて殺して、財産を没収する」。
田村「中国は、自爆装置のスイッチに手を掛けてしまっています。それが暴発しかけたときにアメリカとの全面的な対立に発展して、台湾問題が爆発する。日本はそのときに『当事国』になります」
最悪のシナリオへ、あの愚昧の独裁者は舵を切ったようだ。
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~夏の汗、昭和は遠くなりにけり
昭和をかたちづくった日本人の精神はいま何処(いずこ)♪
桶谷秀明『昭和精神史』(扶桑社)
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桶谷秀明氏は昭和七年生まれだから石原慎太郎、五木寛之氏らと同世代になる。敗戦時は、物心ついて、激しく変貌した現実と精神との葛藤があった世代であり、戦後生まれの評者(宮崎)の時代感覚、時代の感性とはやや懸隔がある。
この世代の感受性、時代認識、歴史の見方は、まさに昭和の精神が移ろっていた同時代の感覚によって研がれた。
本書は名著復刻であり、このところ同様な試みが出版界でなされているのは一種の復古ブームが背景にあるのかも知れない。ちなみに評者が解説した林房雄の『神武天皇実在論』もよく売れたようだが、懐古趣味の読者が読んでいるわけではない。名著はかならず古典として読まれるのだ。
本書は平成四年に初版がでた。すぐに買って読んだ記憶だけあるが、四半世紀以上前の読書の感想は歳月の流れによって稀釈されている。
十年前、憂国忌の四十年忌には評者が司会してのシンポジウムがあって、西尾幹二、井尻千男、遠藤浩一氏らとともに桶谷氏にも登壇いただいた。九段会館が満員となった、その席で、氏は三島よりも保田輿重郎を主に語った。
http://mishima.xii.jp/kaiso/yukokuki/22/
評者にとっては桶谷氏の『草花の匂う国家』が一番好きな作品で、拙著『西郷隆盛 日本人はなぜこの英雄が好きなのか』(海竜社)を書いた折、参考にさせていただいた。
さて本書が扱うのは昭和改元から敗戦まで。続編は『戦後編』として別途上梓された。
以下、浩瀚な本書を少しづつ、一週間かけて読み直してメモを取った。そのほんの一部を書評替わりに掲げる。
桶谷氏が親友の村上一郎氏と一緒に橘考三郎に会いに行く場面がある。これは意外感があった。橘の『神武天皇論』も最近、篠原裕氏の編集で展転社から復刊された。
「橘孝三郎がここに口ごもりつつ、もどかしげに語る口調にこそ、彼の痛い夢と現実認識の葛藤がこめられている。『国民社会そのもの』をその基礎に支えるのが『家族的独立小農』である」
橘の思想遍歴が若き日のプロレタリア独裁から、その対極の思想にうつっていくのは当然だった。
昭和初期、若者らは、マルクス主義の台頭があり、インテリゲンチャは無批判に飛びついた。一方で国体論が世を風靡し、二・二六事件がおこり、日支事変から日米開戦へといたる時代背景を眺める。すでに「歴史」となった出来事を、客観的に、状況的に解きほぐしていく。
その時代背景を克明に描写しながら、おりおりの日本人の精神を語るのである。
桶谷氏は、伊藤整、武田泰淳、島崎藤村らを論じつつ、自然と重きをおくのは永井荷風であり、小林秀雄と保田輿重郎となると力点が違う。小林秀雄の捉え方も随所にでてくるが、この時代を生きた文芸評論家のひとりが保田輿重郎だった。
彼の浪漫主義にはマルクス主義とドイツ浪漫派と国学という三つの要素があった。
「早くから保田輿重郎の教養となっていたのは国学で、畝傍中学時代、万葉」を熟読していた。そして柿本人麿を取り上げずに保田は山上憶良を論じたと桶谷氏は、その独自性をつく。
保田は満州蒙古から北支を旅して、南京陥落後のシナ人の生態を観察した。満州の地にあって、保田はこう書いた。
「樹木をきりはらって大造宮をつくりあげた漢人と、自然の緑を尊んで細心の人工に自然を生かそうとした我らの父祖の間には異なるものがあまりに大きい。近々百年にして漢人はこの沿線より原住民を追放したのである。それは一切の崇高な事業によってではない。我々はいま理念をもってこれと対抗している。理念は強く美しく、それゆえにいたはらねばならぬ傷み易さをもっている」(『蒙彊』)
保田はまた竹内好の案内で北京を見て歩くのだが、「一般に私は北京で、文化の絶望を味はねばならなかった」と実直にシナ文化の乾燥を綴るのである。
また保田はアララギの万葉解釈を手厳しく批判した。
「それは人麿の古代を現代によみがへらせようとする意図を抱きながら、態度においてまちがっている。アララギの思想は皮相な明治文明開化にたいする一種の自覚を根底としているが、つまるところ文明開化の論理による古代解釈である(中略)。その背後にある精神史を生きようとしない。アララギには歴史の精神が欠落している。」(『萬葉集の精神』)
保田論だけで紙幅がつきた。桶谷氏は二二六事件では、北一輝にことのほか、優しい目を向けている。
北一輝は蹶起した将校たちとは一線を隔し、軍事行動をしそうしたこともないが、思想的影響を与えたという取り調べに弁明もせず、北一輝は慫慂として刑場に消えた。三島由紀夫、村上一郎をつなぐ北一輝は、きっと桶谷氏にとって深い思想的分析を必要としたのだろう。
この復刊版の解説は長谷川三千子氏が丁寧に書いている。
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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~生まれ変わりの科学、日本では顧みられないが欧米では研究が進む
輪廻転生は確実に存在すると実証的な頭脳への挑戦 ♪
藤和彦 『人は生まれ変わる』(KKベストブック)
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副題に「縄文の心でアフターコロナを活きる」とあるように、古代人の智恵にこそ、現代日本人は学ぶべきとする。
生まれ変わりというやさしい言い方。仏教用語の輪廻転生である。現代人はまったく軽視するか、あるいは人生で考えたことが少ないか、オカルトだと誤認しているかである。
輪廻転生は実在する。
ところが団塊の世代が「終活」を迎えると、海洋葬や、森林葬を望む人が増えて、従来のお墓は要らないと考える人が急増している。宗教心の衰えではなく、日本人の「死」の捉え方に劇的な変化がでたのではないかとする。
輪廻転生を基本テーマとして、長い長い物語を書いたのは三島由紀夫『豊饒の海』(全四巻)である。
第一巻『春の雪』の松枝清顕が悲恋の中で夭折し、「また会おう、滝の下で」と言い残した。『第二巻』で清顕は、神風に憑かれた飯沼勳に転生している。そして第三巻『暁の寺』ではタイの王女ジンジャンに輪廻転生したらしいこととなり、第四巻『天人五衰』では、偽物の青年、安永透が描かれ、輪廻転生は曖昧模糊の闇のなかでぷっつんと終わる。
評者(宮崎)、この『豊饒の海』を三回ほど読んだ(拙著『三島由紀夫はなぜ日本回帰したのか』、『三島由紀夫の現場』)が、この名作をまともに論じた文芸評論家も思想家も極小だった。とくに文壇は、『春の雪』だけを名作と褒め、二巻以降は論評を避けた。
輪廻転生が理解できなかったのか、いや二巻の神風連やテロリストに嫌悪感を抱いたのか、そして第三巻は仏教思想議論に唯識からアラヤシキへと発展するため、おそらく咀嚼出来なかったのだろう。
事実、英訳も第一、二巻を翻訳した日本文学者は三巻の翻訳は無理だと嘆いて降りた。結局、第三、四巻の英訳はサイデンステッカーとドナルト・キーンが成し遂げた。
なにを言いたいか。
嘗て日本人の殆どが信じていた輪廻転生が、非科学的、非合理的と言って軽視するという時代風潮、宗教心の希薄さは道徳的衰微と精神の衰退を日本人にもたらした。
死を恐れる。生命尊重だけで良いのかと三島は訴えて諌死したが、あの歴史的な衝撃も現代の感性では現象的に風化した。
著者の藤和彦氏は言う。
「現在の日本は、人類が経験したことがない多死社会に突入しようとしています」。
げんに介護が日本の基幹産業となりケアセンターがあちこちに出現し、看取り士の需要も増えた。
「豊かさや幸せに満足し、いや、それに溺れて、ひそかにその背後に隠れていた『死』について考えることをおろそかにしてきた」。
だから「死について何も知らない」のだ。
そして日本では生まれ変わりの研究が進んでいないという現実がある。
「日本は不思議な国、明治以前には『霊』の存在を当然のこととしてきたのに、今では過去の欧米に追従してこの種の現象をまじめに考えようとしない風潮が特に科学者の間に強くある」(カール・ベッカー京都大学特任教授)
対比的に欧米ではむしろ研究が進んでいるという(本書68p)。
戦後の高度成長は、一方で都市集中をもたらし、農村が寂れ、共同体が崩壊した。死は無という虚無的な死生観がはびこり、いのちだけが大切という刹那的享楽主義が世の中に溢れ、死は遠景に追いやられた。
テレビが死体を映像として忌避していることがなによりも雄弁に、死への距離、そして死への無理解へと繋がる。
明治維新の思想的原動力となった一人は平田篤胤である。平田思想は廃仏毀釈の原動力ともなったが、じつは輪廻転生を信じた。平田は神代文字の研究にも没頭した。和辻哲郎は後年、平田を「変質者」「狂信の徒」と罵ったが、「死者の魂によって現世のわれわれの生は成り立っている」とし、柳田国男ら民俗学に影響を与えている。
平田篤胤については語り出すと際限がなくなるので、この稿では措くが、ニニギノミコトを現世に、オオクニヌシノミコトを幽界のものとし、宣長に強い影響を受けた。平田門下は全国に拡がり「死後の平田門弟」を名乗った。
キリスト教も初期のころは輪廻転生を信じていたし、その前のミトラス教も、イララムのスーフィズムも輪廻転生を信じている。まったくあの世を信じないのは中国人くらいだろう。
この世とあの世を熟考しつつ、本署は生まれ変わりの科学に挑んだ。
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樋泉克夫のコラム
@@@@@@@@ 【知道中国 2114回】
──「ポケット論語をストーブに焼べて・・・」(橘74)
「國民黨の再分裂」(昭和2年/『橘樸著作集第一巻』勁草書房)
△
改めて言っておくが、橘が一連の共産党関連論文を執筆した大正末年から昭和初年における中国の政治状況は変転極まりなく、内外の政治的思惑が奇妙なまでに絡み、縺れ合い、まさに一瞬先は闇そのものだった。誰が敵で、誰が味方なのか。同じ党内においても敵も味方も混然として判然としない。
中国を囲繞する内外状況は日替わり状態で変化するわけだから、橘の論文の字面を追うだけでも、やはり時代背景を押さえておく必要がある。
そこで「國民黨の再分裂」が書かれる前後の動きを、必要最小限の範囲で整理しておく必要がありそうだ。
やはり混乱の根源には、孫文の代名詞である三民主義と晩年に踏み切った連ソ容共の方針が潜んでいるように思う。たとえば三民主義にしても、資本主義から社会主義を経て共産主義まで許容してしまう。鵺のような考えだ。
極論するなら清朝打倒を目指す民族主義は理解できるが、民主主義であれ民生主義であれ、どのようにでも解釈可能だ。総花的で実態が曖昧模糊としている。連ソ容共に至っては、クソミソ一緒で支離滅裂。
であればこそ、孫文死後の国民党が左右両派に分かれたとしても不思議でもなんでもない。誤解を恐れずに言うなら、孫文の曖昧さが蒋介石と汪兆銘の路線上の齟齬を招き、これに宋美齢と陳碧君(汪兆銘夫人)の感情的対立が重なって、やがて汪兆銘の悲劇的な末路に繋がったのではないか。
それは毛沢東が示した劉少奇の政治路線に対する拒否感情を、江青(毛沢東夫人)による王光美(劉少奇夫人)に対する嫉妬・嫌悪感が増幅させたであろうことにも似ている。宋美齢、陳碧君、江青、王光美──彼女らは、外柔内剛でなければ外剛内剛。ともかくも共通するのは気の強さだ。
閑話休題。当時、武漢に置かれていた国共が合作した国民政府にとっての大きな課題の1つが、革命遂行上の大難題である農民の取り扱いだった。
1927年3月中旬から5月初旬にかけ国民党では断続的に会議が開かれ、その場で毛沢東ら共産党員の主張に沿って「土豪劣紳や軍閥などから土地を没収し、農村における権力を農民の手に取り戻す」基本方針を定めた。
これと並行して、共産党は武漢で第5回全国大会を開いた。つまり毛沢東ら共産党員は、同じ時期に国民党と共産党の双方にとって重要な会議を開催し、会議をリードしたことになるわけだから、話がヤヤコシクなってしまう。
この時、蒋介石は総司令として国民革命軍を率いて北伐中であり、破竹の勢いで長江流域を制圧し上海に乗り込み、1927年4月12日、共産党が敵視する資本家の支援を受けて「上海クーデター」を敢行し、共産党勢力殲滅に乗り出す。4月18日には南京に入城し、南京に『もう一つ』の国民政府(南京国民政府)を打ち立てた。武漢に置かれた国民政府と国民党による一切の決定を不法とし、併せて国民党左派要員と国共合作によって武漢国民政府に参加している陳独秀を筆頭とする共産党員の総計200人ほどを指名手配した。
これに対し武漢国民政府は独自の北伐を開始する一方、蒋介石を「総理(孫文)の叛徒、我が国民党の敗類(クズ)、民衆にとっての?賊(ゴクツブシ)」と糾弾している。
国民党の分裂によって、国民政府は?介石率いる南京国民政府と汪兆銘をトップとする武漢国民政府に分かれたばかりか、北京では張作霖を筆頭とする軍閥政権が蠢動していた。まさに同時期に3つの政権が存在したことになる。
これからヤヤコシさが増すのだが、中国共産党第5回大会(4月27日から5月6日)終了から10日ほどが過ぎた5月中旬に開催されたコミンテルン執行委員会で、共産党に対し国民党左派(武漢国民政府)との連合に加え武装土地革命が指示されたのである。
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(読者の声1)明日(8月12日)夜放送予定の『フロント・ジャパン』は、ホスト佐波優子さん、ゲスト宮崎正弘さんでお送りします。敗戦記念日を前に、宮崎さんのテーマは「八月や 六日九日十五日」です。
(日本文化チャンネル桜)
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和2年(2020)8月11日(火曜日)
通巻第6613号 <前日発行>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~香港の自由民主の象徴ジミー・ライ(黎智英)を「国家安全法」違反で逮捕
息子二人も拘束、編集主幹ら七名を同時に逮捕。香港の自由は臨終へ
*************************************香港は死んだ、と産経新聞は一面トップ(7月1日)に報じた。死んだのではない。「殺された」のだ。
8月10日早朝、ジミーライ(黎智英)の自宅に踏み込んだ香港警察は、ジミー本人を逮捕し、ふたりの息子を拘束した。またジミーが主催する「リンゴ日報」本社を手入れし、編集主幹ら七名を逮捕した。
ジミーは自由な報道を謳い、言論の自由を呼びかけて闘ってきた。雨傘運動の時から運動の組織化に尽力し、自宅に何回か火焔瓶を投げ込まれても怯まず、自由民主運動を言論で支えてきた。
昨夏、訪米したときはペンス副大統領、ポンペオ国務長官が面会した。
中国共産党にとっては、ジミーとその新聞「リンゴ日報」を目の仇にしてきた。ところがリンゴ日報は香港で一番売れるメディアなのだ。
全人代常任委員会で迅速に可決した「香港国家安全法」を翌7月1日から施行し、この法律によって、外国と共謀した容疑とかで、ジミーを逮捕することになった。
すでに香港政庁は九月に予定していた立法委員選挙を、敗北が濃厚なことから一年延期という奥の手をだし、さらに立候補を予定した黄之峰らを「その資格はない」と意味不明の理由をつけて立候補を受け付けず、さらに外国にいる活動家ら11名を指名手配した。そのうちの一人羅冠総は、事実上ロンドンに亡命しており、直後に訪英したポンペオ国務長官は、ロンドンで羅とも面会している。
中国共産党のポチ、香港政庁の暴挙はこれからも続く。
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~おそるべき「千人計画」の全貌を白日の下にさらす
日本人の優秀な学者やエンジニアが中国の軍拡の手伝いをしているゾ
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佐々木類『日本復喝──中国の静かなる侵略を撃退せよ』(ハート出版)
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「復活」ではなく「復喝」である。日本にカツをいれている。
佐々木氏の文章はテンポが速く、読みやすいが、文体に熱気が籠められている。愛国心からくるパッション。だから書いてある中身は暗鬱な状況報告だが、読んでいて元気がでてくるのだ。
直近でも7月31日にトランプ大統領はTICTOKの使用禁止を大統領専用機のなかで言いだし、命令書にサインするとした。政府職員が政府が支給する通信機器においてはTIKTOKの使用禁止であり、一般ユーザーともいきなり遮断する訳ではない。
しかし個人データが中国に集約される懼れがあり、国家安全保障上重大な懸念があるからだ。
TIKTOKの親会社は中国のバイトダンス、すぐさま米国子会社を完全に分離してマイクロソフトか、ファンドへ売却するとした。
この重大ニュース、日本でも大きく報じられてはいるものの、多くは無関心である。ファーウエイもOPPOも、ともかく中国のスマホがまだ日本で売られている。
中国の日本侵略は静かに巧妙になされたかとおもえば、公然とした恐喝があり、軍事的威嚇になり、飛んでもない開き直り、その強弁、詭弁、詐弁のかずかず。しかしまだ中国の騙しに引っかかっている手合いが多い。騙されていることに気がつかないほど、日本人の戦後の平和惚けは脳幹を壊した。
イタリアも似たようなものだった。
気がつけば中国人が不法滞在を含めて40万人、武漢コロナは忽ち伊太利亜全土に感染を広げ、いまではアジア人とみると、「中国へ帰れ」と怒鳴られる。日本人は間違えられやすいので、日の丸バッジをつけて歩くべし。
日本へ来る中国人観光客が激減したのは大いに結構なことではないのか。
インバウンドの現場は悲鳴を挙げている。旅行代理店各社は、日本政府の推進する「GO TO」キャンペーンでV字回復を狙ったものの感染がまた増えて、この計画も破産寸前だ。
さて、本書は様々な手法、手練手管で日本に浸透している中国のあくどさ、悪さを指摘しているが、もっとも重要な中国の手口のひとつが甘言、高給など特別待遇で引っかける「千人計画」の存在である、とする。
「日本人も例外ではなくリクルートされている」と佐々木氏は声を大に警告する。日本からの「頭脳流出は、中国による『静かなる侵略』を利する、利敵行為になりかねない」と。
中国の公文書にしっかりと書かれている文言は「世界中の英才をあつめて起用する」と、露骨に目的がのべられている。本書145pに写真入りで紹介されている。
「ハイレベル人材の訪中を奨励し、一般人材は制御し、低レベル人材は制御する」。
なんとも露骨であけすけな差別だろう。役に立たないエンジニアなど要らないと明言しているのだ。
「外国ハイクラスレベル人材は中国の経済社会発展のために早急に必要な科学者、科学技術分野の優秀な人材、国際起業家、専門的な特殊人材等」であり、永久居住署や数字ヴィザが発給される。破格の待遇を受ける。
A、B,Cにランク付けがあり、対応のやり方も細かく、相手によってなされている芸の細かさがある。
そしてどうなったか。
現物の資料やフロッピーがなくとも、頭脳のなかに貯蔵された知識、ノウハウ、そして膨大なデータへのアクセスが可能となり、中国はいとも簡単に西側が巨費を投じて開発し、育て、訓練し、優秀な頭脳に仕立て上げた人材。その巨費を投入してきた研究開発の成果を人材ごとごっそりといただくことになる。臓器狩りではない、「頭脳狩り」だ。
武漢からチャーター便が五次にわたり、帰国した日本人の大半がエンジニアだったことをわすれないほうが良いだろう。
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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~明治三十年に成立の「伝染病予防法」が1999年に廃止されていた
だから緊急事態を宣言しても強制力のない、自粛要請しか出来なかった
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茂木誠『米中激突の地政学』(ワック)
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米中激突の構造を本書では基本スキームとしてキリスト教vs中国五大思想の対立があり、米中の覇権争奪戦争には必然性があるとしたところに特色がある。そしてコロナが覇権争いに火をつけた。
地政学に関しては、ほかの人も言い尽くした観があり、この稿では触れない。
疫病と覇権に関して、本書では二つの有益な指摘がある。
拙著(宮崎正弘『WHAT NEXT(コロナ以後大予測)』、ハート出版)ならびに『「コロナ以後」中国は世界最終戦争を仕掛けて自滅する』、徳間書店)でも指摘しておいたことだが、疫病対策は嘗て内務省が主管官庁であり、疫病対策と国家安全保障を直結させていた。初代の内務卿は大久保利通だった。戦前の官僚制度におけるスティタスを言えば、今日の財務省より遙かに権限が強く、エリートは内務省に行った。
さて本書は明治三十年に成立の「伝染病予防法」という法律があり、その第十九条の第二、第三項が次の条文であることを紹介している。
すなわち、
「地方長官は伝染病予防上必要と認むるときは左の事項の全部または一部を施行することを得。
二、市街村落の全部又は一部の交通を遮断すること。
三、祭礼、供養、工業、集会などの為人民の群集することを制限し若しくは禁止すること」
このようにロックダウンを強制力で可能だった法律は、1999年に廃止され、もっと弛緩した、おざなりの「感染症法」に替わった。現代医学の発達は、過剰防衛的な「伝染病予防法」を必要としないという誤断があった。
コロナ戦争勃発で、日本では自粛要請しか出来ない法しかないことを諸外国は驚きとともに見た。つまり戦後日本が蔽われた平和惚け、国家安全保障への無関心が、コロナ災禍において適切な対応の遅れをみたということである。
いまひとつ有益な指摘は、紀元前五世紀からのペロポネソス戦争に溯り、「ツゥキディデスの罠」という歴史法則は、覇権国は新興国の台頭を望まず、必ず戦争に
なるとするものだが、スパルタはアテネに戦いを挑み、三度の戦争でともに疲弊して、一応がスパルタ勝ったもの、別の新興国ローマが台頭するという歴史のイロニーはよこに置いて、ツゥキディデスその人も戦争の過程を記録しながらも、疫病で三分の一のアテネ移民が死んだこと。自身も罹患したこと。戦争指導者のペリクレスも罹患し、死亡したこと。このときの疫病はペストと言われてきたが、どうやら天然痘らしいことが、ツゥキディデスの症状の記述からみてとれること。
疫病が覇権国の交替をうむのは歴史上、よく起きた。
予言はないが、習近平の退場となるのか、トランプか?
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(読者の声1)日食と天照大神(再反論)
日食と天照大神の投稿に対して反論がありましたので再度見解を申し上げます。はじめに、前の投稿には誤りがありましたので、訂正し、お詫び申し上げます。
前の投稿で、「太陽は月に比べて46万5千倍明るいため99%欠けてもその明るさは満月の4万6千500倍も明るく、日の出前や日没直後程度の明るさはあります」としましたが、桁を間違えており、正しくは、「太陽は月に比べて46万5千倍明るいため 90%欠けてもその明るさは満月の4万6千500倍も明るく、99%欠けて皆既日食に近くても、その明るさは満月の4千6百50倍も明るく、日の出前や日没直後程度の明るさはあります。」と訂正致します。
つまり、たとえ99%の部分日食でも満月の4千6百50倍の明るさがあり、薄暗くはなっても神話が示す状況とは程遠いことには変わりありません。
刮目天一様の反論の中で、247年の日食が北部九州では皆既食または皆既に近い部分食であったという研究があることをご教示頂きました。この点は御礼申し上げます。しかしながら、福岡市以南では最大限修正したとしても、皆既ではなく99%程度の部分食であるように受け取りました。
先に述べましたように、この神話は皆既に近い部分食であったとしても、満月の数百倍から数千倍程度の明るさはあると考えられ、これでは真っ暗闇とは言えず、また、劇的なダイヤモンドリングは見られませんので、この日食を記紀神話の日食と見ることはできないと思います。
念のため、記紀が示す天照大神の岩戸隠れ神話を検証しますと、日本書紀本文や一書、また、古事記などによって多少のニュアンスの違いはありますが、明るい時間に起こり、真っ暗になり、また元どおり明るくなる、という時間の経過に伴う変化の状況は共通しています。
このことから考えれば、夕方日没前頃の日食では、終わって明るくなることはなく、そのまま夜になってしまい。神々が寄って岩戸を開けて再び明るくなる神話と結びつきません。
従って、247年の日食は部分食であること、夕方に始まりそのまま夜になること、の二点で岩戸隠れ神話と結びつけるのは無理であると述べさせて頂きます。
また、刮目天一様は「海に沈む深い食の異様な夕日を見たはずです。とても不吉な現象だと感じたと思います」と述べられていますが、これは記紀神話とは無関係な個人的なご感想であり、そのようなご感想をお持ちになることはご自由であり、また独創的な推論に敬意をおはらい致しますが、「日食=天照大神=卑弥呼」の論証としては成り立たないと考えます。
(高柴昭)
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