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いざ、鎌倉(別館)へ。          鶴岡八幡宮の横にある美術館

前回の記事の続き。
神奈川県立近代美術館ルポ、後編。
葉山館のあと、鎌倉別館へ向かった。


今回の記事のタイトルは、9月まで放送していた以下テレビアニメに影響された。深い意味はない。歴史モノでも珍しい鎌倉時代が舞台と知り、録画して、一通り見た。

エンディング主題歌で鎌倉を連呼するものの、3話以降最終話まで、舞台はずっと諏訪(長野)。作品そのものは面白く楽しめたが、いかんせん、内容よりもそのギャップのことが、一番印象に残ってしまった。。

もうちょっと鎌倉いろいろ映るかな?と期待していたので。
この点ちょっとツッコミたかった。





▶鎌倉別館まで


美術館までの道中。

鎌倉駅を下車。

天気が良かったこともあり、非常な賑わい。正直人が多すぎて面食らう。
9月下旬のこと。

ここは原宿か???
小町通り。
素敵な名前だとは思う。


駅を降りて一直線、雑踏にへこたれず進む。

非常に幅の狭い、すれ違う余裕など全く無い歩道を進み続けると、やがて大きな看板が現れる。

そうして美術館。

右奥に小さく顔を覗かせている特集展示の看板が、今思うとお茶目。
Kamakura Annex。
「神奈川県立」の部分は、英字タイトルではなきものに。
オブジェの密度が高い庭。
鎌倉別館を見上げる。



▶少し足を止め、神奈川県立近代美術館とは。


ここで少し足(記事)を止め、神奈川県立近代美術館について軽く情報整理する。

神奈川県立近代美術館は1951年11月17日に鎌倉の鶴岡八幡宮境内、平家池のほとりに開館して以来、日本および世界の美術を紹介し、人間の相互理解を深めることにつとめてきました。2016年3月末に鎌倉館が閉館して以降は、1984年7月28日に開館した鎌倉別館と2003年10月11日に開館した葉山館の2館体制となりましたが、その基本となる企画運営方針は変わらず活動を続けております。
 今年は鎌倉別館の開館40周年であり、また葉山館も昨年、開館から20年が過ぎ、節目の時期を迎えています。

鎌倉別館40周年とウェブサイトリニューアルにあたって
https://www.moma.pref.kanagawa.jp/about-us/greeting/
より

ということで、2016年3月までは、鎌倉館が鶴岡八幡宮境内にあったのである。そしてそれが無くなり、残った2館、「鎌倉別館」と「葉山館」という2館が、今現在の「神奈川県立近代美術館」。ちょっとややこしい。年季の入ったアートファンになら、「むかし、鎌倉館があった。」的な語りも期待できるかも。

今、千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館が、閉館・移転・コレクション解体の危機にあるので、大枠としては同種の話題としてどうしても気になってしまう。

詳細は先月書いたnote記事など。
https://note.com/ilmlandylyl/n/n49a7b09fbc62


鎌倉館が閉館を迎えるに際して発せられた、当時の館長水沢勉のメッセージには、非常に惹きつけられるものがある。

「鎌倉からはじまった。」2015年4月 神奈川県立近代美術館館長 水沢勉


閉館にあわせ、鎌倉館の65年の活動(主には展覧会)を総括する同名の展覧会も開かれている。この『鎌倉からはじまった。』展のartscapeレビュー記事が今も読むことができ、面白く、勉強にもなる。

そして同タイトルの書籍も、刊行されている。カテゴリーとしては館史本/記念誌/展覧会図録。こちら、もし図書館などで見かけたら、手にとってみていただきたい。今から見ると「スゴイな」という作家・作品・企画が目白押し。私見だが率直に、東京国立近代美術館とここ神奈川県近代美術館鎌倉館が、1950年から2010年ごろまで日本の近代美術の関東における「正史」を牽引していた(あるいは編纂していた)存在のように思える。


歴史の振り返りはこれくらいにして、記事を進める。



▶展覧会

肝心の展覧会について。会場に足を踏み入れる。

今回は展覧会を知ってやってきたわけではなく、「葉山館に行ったから鎌倉別館も回っておこう」とやってきたもの。何をやってるか知ったのは、この日葉山館のポスターで。

展示室は横長の1室だけ。葉山館と比べ、小さい。もともとは本館あっての別館(Annex)だったからだろう。

ゴヤ版画展後期、『戦争の惨禍』

https://www.moma.pref.kanagawa.jp/exhibition/2024-a-collection1/
立体作品は一つもなく、ひたすら壁面に銅版画。
ゴヤ『戦争の惨禍』(1863年初版)
60歳を過ぎたゴヤが10年余りをかけて制作したもの。
生前は公開されなかった作品らしい。
そういえば、ゴヤってどんな作家だったか。
作家年表を見ながら、確認する。

※参考※
ゴヤと聞いて私がパッと思い浮かぶのは、
大塚国際美術館にあるゴヤの家「黒い絵」


71. 大衆の利益に反して
* *
どの作品も
非常に過酷な当時のスペインの政治社会情勢を揶揄する
警句的なタイトル


じつは展示室の左右で、別展示。大きく2部構成。
ここからは
特集:1959 --スペインにいった現代日本版画展
ゴヤ作品の日本における受容と、
日本からスペインへの版画作品の海外展示

さまざまなアート・アーカイブ資料で、当時の日本におけるゴヤの受容の様子を伝える。

展覧会ポスターの展示。昔のポスターならではの面白さがある。

現代日本版画展1959の出品作品

海老原喜之助《本を焼く人》1956
村井正誠《女の顔》1956
これの絵葉書やグッズがあったら欲しかった。

ここからは、展示室外の廊下部分で行われた展示。
ここもポスター展示。
昔のポスターって本当に面白いし貴重だと思う。

関連年譜


小町通りのぎゅうぎゅう詰めの人混みとは打って変わった、静寂で落ち着く空間。身近にこういう場所があったら知ってたら、美術館でなくても、気持ちを切り替えられる場所として重宝する。


葉山館と鎌倉別館共通して言えること。ここ神奈川県立近代美術館は、美術情報の提供が、実に丁寧適切。上記のゴヤ展の出展リストも、会場紙頒布だけでなく美術館HPでもPDF頒布。ぜひ下記リストを見てみていただきたい。ゴヤの版画各作品につけられたその皮肉たっぷりのタイトルは、リストで読むだけで(むしろリストで読むことで)、ニヤッとする面白さ。
https://www.moma.pref.kanagawa.jp/wordpress/wp-content/uploads/2024-a-collection1-listofworks-2.pdf


他に神奈川県立近代美術館ついて思ったこと。美術館として歴史が(日本の中では)長く、活動も活発で、それゆえ収蔵作品も16,000件にものぼる(2023年3月時点)。いい作品が沢山あるが、現在の施設である葉山館も鎌倉別館も、常設展示室がない。電子アーカイブでの公開には力を入れているが、実物が基本常時お蔵入りなのは、なにか手立てはないか。これもお金は掛かるが、見学者も受け入れられるタイプの収蔵庫にする(新築か大規模改装になってしまうだろうが)ぐらいしか、私にはアイデアが浮かばない。それも、昨今の建築費高騰で無理かもしれない。ただ、最近国立科学博物館がクラウドファンディングで大規模な資金調達に成功している。意義と価値と結果の分かりやすい案件ならば、そしてファンの層が厚ければ(やってみないと分からないだろうが)、事業企画としてチャレンジしてみる価値はある。もし成功したら、日本美術界はかなり活気づく元気づけられると思う。
。。。書いていたら、話が広がってしまった。これくらいで。



▶帰り道


付近には他にもアート系施設がもり沢山。画廊などもあった。


神奈川県立近代美術館鎌倉別館でピックしたチラシ


鏑木清方記念美術館、ここにあったんだ。行きたかったが、また今度。

地名からして、格調高い。
この日は玄関まで

今やってる企画展。テーマ的にも惹かれる。


鶴岡八幡宮の中にある美術館(宝物館と言うべきか)、名称は「鎌倉国宝館」先述したとおり。2016年までは神奈川県立近代美術館鎌倉館だったもの。現在建築物として重要文化財指定。今そこで開催されている展覧会、「古神宝」展。こちらもいずれまた。


(※2024.10.21追記)
神奈川県立近代美術館鎌倉は、現在は鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム になってる。これも機会あれば見に行きたい。



今回巡れなかったところを巡りに、いつかまた鎌倉を訪れようと思う。


お読みいただき、ありがとうございました。



以 上

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何となくUNIX(いしい)
誠にありがとうございます。またこんなトピックで書きますね。