ダークウェブからの流出映像「CAM9-BL5-D7」は本物の監禁動画なのか?
これはDark webにて発見されたとされる映像だ。そこには10代と思わしき一人の少女が部屋に監禁され、ウェブカメラのようなもので監視されている動画である。この動画がネット上に姿を現し始めたのは、Dark web上にあるとされる半ば都市伝説化した「レッド・ルーム(Red room)」が話題になった2010年から2015年あたりだ。Tor(トーア)が一般ユーザーにダウンロードされるようになったことで匿名化が加速し、アンダーグラウンドで非合法なコンテンツやドラッグが売り買いされていた時代でもある。レッド・ルームは、囚われた女性あるいは男性をライブで眺めることができる非合法サイトで、ビットコインで入場料を払った会員にオンラインストリーミングで公開され、ペイすることで監禁された対象に拷問の指示ができるとされるコンテンツのことだ。最終、対象が死亡するまでオンライン上でライブ視聴できる「スナッフサイト」として実在が確認されないまま現在では都市伝説と化した。
これらの亜種の一つにこの「CAM9-BL5-D7」の映像がある。日本でも都市伝説系のYoutuberに取り上げられ、様々な考察がされている。この動画、確かにかなりリアルではあるのだが本物なのだろうか?
「CAM9-BL5-D7」というのは動画の左上に表示されたカメラの番号のことを指す。これらの動画は「Young Girl Kidnapped」などの題名でYoutubeで簡単に視聴することができる。
この動画はさらに日付の表示もあり、どうやら3日間に渡って撮影された映像のようだ。最初はWED/13/AUG 13:53:22、地下室のような部屋から突然に映像は始まる。
どうやら右下に映る寝袋で誰かが寝ているように見える。17:30:03、荷物が積み重ねられた右奥の上部から何か小包のようなものが入れられ、それに驚いて女性が寝袋から飛び起きる。
20:50:01、荷物の中には食料が入っていたのだろうか、それを食べながらノートパソコンを見ている少女が映る。
日が変わり、THU/14/AUG 18:03:21、少女はカメラに気づいたのだろうか、近づいて覗き込んでいる。その姿から中東あるいは南米の出身のような若い女性であることがわかる。
20:41:41、後ろを向いて服を気にしているように見える。
23:36:42、カメラに背を向けて、何かを書いている。
書いていたものを広げ、カメラに向かってメッセージを写す。そこには「I have food for 2 more days There is not water(あと2日分の食料があるが、水がない)」と書かれている。その紙を裏返し、更にメッセージを続ける。
「Anybody gets to see this on internet come find to me,Help me(インターネットでこれを見れる人は誰でもいいので見つけて助けて下さい)」とメッセージを写す。
そして日が変わり、FRI/15/AUG 2:46:42。少女が寝ていると、ドアを誰かが開けようとしているのか、ドア前の荷物が急に動き始める。それに気付き、女性は急に飛び起きる。
少女は誰かが入ってくると思い、荷物や机を必死に押さえ始める。これらはバリケードだったのだろう。
そして、画面右下にあらかじめ作っておいたのか、槍のような刃物のついた棒を構えようとしたり、バリケードを抑えようとしたり、パニックのような行動を取る。
そしてもうどうしようもないと思ったのか、カメラに向かって手を振ったり悲痛な顔で訴え、2:47:13で映像は終了する。これら一連の映像は2分ほどしかない。
少女の行動は非常に真に迫ったものであり、本物だと言われている映像だ。これらの映像はDark web上で見つかったとされている。この映像は本物の誘拐犯によって監禁され撮られた映像なのだろうか。
この2分ほどの映像は時間を見るに8つのカットで構成されている。これは誰かが編集したものであるのだが、3日間、72時間を2分間に編集するのはコマーシャルのような意味を持つのだろうか。
また、監禁していた犯罪者の映像がハッキングなどで流出したとするならば、いまだに完全版が存在していないのが不可解だ。映像が広告として編集されたとするならば、これを公開する事で捜査の手が自分へ伸びることになり、危険だ。そう考えるとこの映像が本物である可能性に関してはかなり怪しげな匂いがしてきた。
そのほかに映像からどんな情報が得られるだろうか。まず、表示されている日付が正確だとするとWED/13/AUG、THU/14/AUG、FRI/15/AUG、これら3日間の日付と曜日が連続する暦を調べると、1997年、2003年、2008年、2014年に適合する。
さて、Tor Projectの歴史を見ると、「オニオンルーティング」のアイデアは 1990 年代半ばに始まりはしたが、1995 年、米国海軍研究所 (NRL) で実際のプロとタイプが作成され、2000年代初頭、マサチューセッツ工科大学の卒業生が本格的な開発に乗り出した。2002年10月にTorネットワークが最初に展開され、Tor Browserの開発は2008年に始まっている。2010年から2012年にかけ一般的に使用されている。この映像はかなりクリアで、そこまで古い時代に撮られたものには見えないし、Torの普及から考えると、Dark webにアップされたのは2008年とか2014年あたりだろう。
さらに調べてみるとこのビデオのアップされた日を解析した強者がいる。そのアップ日は2014年1月29日だと言われており、そして、そのビデオを世界で最初に投稿したのは「CREEPYCORTOS」というペルーのホラー系動画制作のチャンネルであることが判明している。
その動画はチャンネル内で2014年01月30日に公開され、紹介にはポルトガル語で以下の文章が掲載されていた。
そこには、「明らかに未知の何かによって誘拐されている少女の衝撃的なビデオ」とキャプションがつけられており、Deep webで発見されたもののようだ。オリジナルリンクが載せられている上に、ハッシュタグには「誘拐された」「衝撃ビデオ」「残忍な」「スレンダーマン」などの怪奇系の参考ワードが載せられていた。このリンクについては、試しにTorでアクセスしてみたが、存在しないアドレスのようだ。
更に紹介の中のハッシュタグに書かれた「Creepypasta」や「Creepycortos」をFacebookで検索すると、Facebookのページにもこの動画が紹介されていることがわかった。この動画の紹介文にはポルトガル語で「Ingresa a nuestro canal y mira mas cortos asi(私たちのチャンネルに参加してこのようなコンテンツをもっと視聴して下さい)」と書かれており、やはりフィクションのようだ。どうもこの「Creepycortos」はペルーのRoberto Lozanoという映像作家たちによるチャンネルのようだ。
さらに、Facebookのページには、この映像に出ていたらしき女優さんの名前も書かれていた。その名前をX(旧Twitter)で検索すると、大人になったそっくりな女性の顔が表示された。
どうやらこの方は撮影に参加した女性のようだ。本当は医学部の学生などであったのだろうか。同じ顔の方がFacebookでも見つかった。
彼女の名前はLeybel Lujan、注意深くFacebookのページを読むと、彼女と問題の動画の公開後も新たな動画を撮影していたようだ。
おそらく、Dark webへのリンクも存在せず、この監禁映像はホラーのショートフィルムとして撮影されたもののようだ。しかしLeybel lujanさん、すごく演技が上手だ。