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書評 世界はなぜ地獄になるのか


#世界はなぜ地獄になるのか
#橘玲

ドリルを売りたいなら穴を売れ。
免罪符を売りたいなら地獄を売れ。
世界はなぜ地獄になるのかを知りたいなら、この本を買え。

地獄とは、全人類に高理解度を要する社会主義の軋轢なのかもしれず、一歩踏み違えると大衆の狂気から成る怒涛のキャンセルという地雷を踏む可能性を孕んだ現代の一側面ではある。

しかしその地獄ゲームを敷いているのも人間で、そこから逃れる為のリテラシー(免罪符)もまた、人間によって用意されている。

それは結局資本主義社会のマネーゲームで、
そんな事で人の思想が左右されるのはどうなんだろうか?と辟易。

じゃ、歩くのやーめた!
となるのも無理はないし、触らぬ思想にキャンセル無し、臭いものには蓋、見たくないものは見ない。

それでも人は一人では生きていけないから、
最低限の接触は不可避であり、そうなると免疫だだ下がりの丸腰で世界を歩まねばならず益々無理ゲー、ピーナッツ避けるからピーナッツアレルギー理論。

「ピーナッツを悪例として出すって、それピーナッツに対する差別じゃない?」
「ピーナッツにも自由に生きる権利がある」
「ピーナッツレイシストは落下せい」
「ピーナッツの塩茹では正義」
「お前にピーナッツの何が分かるってんだ」

ピーナッツの塩茹で、略してぴえん、
それも通り越してジエンド。

おいおい、ちょっと待ってくれ、
アニマルライツの次はプランツライツかい?

一寸の虫にも五分の魂なんて昔から言われてるし、植物にも何分かの魂がある。なら当然権利だってあるはずって主張は分からなくもない。

いや、そもそも言葉のあやというもんで、
アメリカで実際にあった事例を踏まえたものの例えでしかなくて、ピーナッツに対する差別視は無かったんだが。

「ってことはお前は無意識のピーナッツレイシストだ。よりタチが悪い」
「どうせお前みたいな奴はミックスナッツに入ってるピーナッツを避けて、カシューナッツやジャイアントコーンを優先して食べる奴だろ」
「柿の種のピーナッツをもっと敬え」
「TENGAはピーナッツの殻から発想を得てる」
「チャーリーブラウンに謝れ」

・・・そうして、ピーナッツィストたちの糾弾にあった僕は、職を追われ、反ピーナッツィストである柿の種派からは支持されたものの、それがどうということもなく、これからは一層慎ましく生きようと心に誓っていた。

雨後の筍のように次々と非難を浴び疲れた。
次からは物言わぬ貝にでもなりたい。

「おい、今のタケノコに対する侮辱じゃないか」
「こいつ、さてはキノコ派の人間だな」
「チョコ脱いじゃった!とか正気の沙汰じゃない棒だけのカスを高値で売りつけるカルト宗教だ」
「貝に対してもそうだ。貝にだって貝の声がある。貝の声を無視し、貝の言論の自由を軽視してる」
「ふざけてやがる、全くとんでもないレイシストだ」

もう何を言ってもレイシズム。
至る所地雷だらけ。
口は災いの元。

いやいや、
マイクロアグレッションだし過敏過ぎない?

それってあなたの主観ですよね?
な文脈を無視した字面だけの反応に、人が人を裁く権利はあるのか?

世界に複数のコードがあり、高度なコードも低度なコードもある。
それは良し悪しだ。
だが、コードを強いる。自分の土俵に勝手に立たせることは違うんじゃないかと思う。

フェアも平等も、歴史と環境で構築されたアイデンティティの要素を払拭することは出来ない。

世界は平等に不平等なのだから、窓枠を固めた理想論はプロクルステスのベッドになりはしないだろうか?

全人類丸抱えで合意できて遵守できる大規模なコードは、結局無形の虚無への対立構造、ノーダメージヘイト受けの創造くらいしか思いつかない。

それはつまるところ神の対極、悪魔、ヴェノムの類になるだろうし、レイシズムの根本構造は変わっていない。
手垢つき過ぎて効力なさそう。

だったらそう、もう僕たちは、
地獄ばかり見るのでなく、
"天国は本当にある"と"一繋の大秘宝"(この場合、無形の全人類共通のコードの事の比喩)を目指して、ありったけの夢を掻き集め、探し物探しに行かなければならないのかもしれない。

分かっちゃいました。

天国とは、
皆んながピーナッツを食べることにより、
タケノコのように伸びていった先の地平、
それは冒険の果ての次元上昇で、
地獄の喧騒も聞こえない。

そう、それが、それこそが、
天国なのです!

さぁ皆様、お手にピーナッツを!

ピーナッツを、食べるのです!

・・・こうして天ピー教の教祖となった僕は、
A国やB国など全国津々浦々を巡り、たまにその様子を点Pとして式で表されたりした。

天ピーでエゴサしようとすると、「天ピー 動くな」「天ピー なぜ動く」などとサジェストが出てきたりした。辛かった。

もしかするとピーナッツじゃなくて、タケノコを食べるべきだったのかもしれない。

そんな疑念が頭をよぎったが、それでは今ついてきてくれている天ピー信者に申し訳が立たない。

一度主張した事を撤回するのは容易ではなく、しかし疑念を抱えたまま、D国まで辿り着いた。

天ピー信者が案内してくれて、
たまたま立ち寄ったタケノコ屋でタケノコを口にした時、天啓が走った。

逆だったかもしれねぇ・・・・・・。

その日、私は決心し、信者に打ち明けた。

ピーナッツではなく、タケノコを食べるべきだったと。

信者は激怒し、キノコ派も一緒になって私を磔にして、ピーナッツを投げつける。殻ごと。

額から出た血は、点Pのように動いていく。

「やはりお前はピーナッツレイシストだ」
「タケノコ派に寝返りやがって、それでケツでも塞いでおけ」

罵詈雑言が私に飛び交う。

そしてその言葉の暴力は、
私を焼き尽くし、身を焦がし、
心を焦がした。

そこから見た景色を見て思った。

世界はやはり、地獄だった。

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