【横浜FC 2023】第13節A柏戦:ウノゼロで勝てるって当たり前じゃねぇからな!
前節の神戸戦で再び3-0で負けてしまったため、ホーム新潟戦で得た手応えを逃さないために、また敵将・ネルシーニョが6ポイントマッチと言っていたように、気が早いながらも順位表的にも非常に重要な一戦でした。
結果は、林幸多郎がエリア内に上げたクロスを相手DF片山がハンドしてしまったことで得たPKをエース・小川航基があっさりと決めて取った虎の子の1点を、まさに言葉通りの人海戦術で守り切って勝ちました。これでリーグ戦2勝目を挙げ、翌日の試合でガンバが浦和に敗れたことで最下位を脱出することに成功しました。めでたしめでたし。
1.試合を振り返って
スタッツ(スポーツナビより抜粋)を振り返ると、シュート数は9:29、枠内シュートに限れば4:5。意外にもボール支配率は47%:53%。特にポゼッションはびっくりするほど大差はなかったんだなと。しかし、たくさんシュートを打たれたのは事実ですし、ブローダーセンのスーパーセーブもあり、ンドカ・ボニフェイスのゴール前での素晴らしいカバーがあったり、更にマテウス・サヴィオのシュートが右ポストに直撃したりとヒヤリとしたシーンもありましたが、よく守り切ったなというゲームだったと思います。
システムはこの試合も3-4-2-1で、ボランチがユーリ ララと井上潮音という初コンビ、右WBに近藤友喜が復帰し、シャドーには伊藤翔が今季初先発を果たしました。
柏もなかなか開幕から結果が出なかったからなのか、守備意識の高いサッカーでした。特に前半は奪ったらシンプルに最前線の細谷に当てる。そして、細谷がしっかり起点を作ったところに技術の高いマテウス・サヴィオやスピードのある小屋松が絡む。シンプルですが、強力かつ効果的でした。
横浜FCはラインが高かったことで、細谷に上手く収められて起点を作られたり、右サイドの近藤の裏のスペースを小屋松に使われたりでシュートを量産されました。その数、前半だけで20本弱です。
それでも前半45分間を3バックを中心に、粘り強く守り抜きました。ユーリ ララ、小川航基、近藤友喜、前半だけでイエローカード3枚。特に近藤友喜のイエローカードは、あのまま止めていなければ失点していた可能性も高い場面でしたし、小川航基のファールもチームが一丸となって守る中、ロングボールに競った場面でのものであり、攻守両面での球際への高い意識が前半の無失点を呼び込んだと思います。
そして後半、四方田監督はユーリに替えて三田啓貴を投入します。三田と井上潮音のボランチコンビは守備の強度的に大丈夫なのか?と正直思いましたが、結果的に三田の投入はゲームに落ち着きを生みます。キックオフからしばらくは同じように柏のロングボールの攻撃に自陣で耐える展開が時間がつついたものの、指示通り裏のスペースのケアができたことで、細谷に前半ほど起点を作られることがなくなり、少しずつボールが持てるようになりました。
そして、後半24分、件のPKから先制しました。そこから、特に後半35分前後からはとにかく虎の子の1点を、11人で全力で守る展開でした。ピンチも決してなかったわけではないですが、相手がどんどん攻撃のカードを切ってスクランブル的な状況になりました。結果、最前線でボールを収められ苦労をしていた細谷が退いたことや、脅威だったマテウス サヴィオが低い位置で配給役に回ったたことも、横浜FCにとっては追い風だったと思います。
結果的には、最後までしっかりゲームの守り切ってウノゼロで勝利。見事リーグ戦2勝目を挙げたのでした。
2.ウノゼロを完遂できる喜び
このゲームを通しての勝因は、月並ではありますがとにかく「1人1人が良く走り、よく戦った」ことだと思います。
この試合で目立ったスタッツが、走行距離とスプリントの数です。
走行距離が115.414㌔:109.751㌔、スプリントの数が151:126。走行距離にして6㌔弱、スプリント数にして25本上回っています。
更にスプリントについてはそのうち左WBの林幸多郎(23本/90分)と左シャドーの山下諒也(19本/79分)とチームの約3割近い本数をこの2人で、更にここに右の近藤友喜(16本/70分)を加えると約4割をこの3人で占めたことになります。また、林は走行距離もチーム1位です。
この両サイドの頑張りはチームが攻守両面で点を取り切り、また守り切る上で非常に重要だったと思います。※データはすべてJ STATs参照
特に決勝点に繋がったPKを産んだシーン以外にも、林幸多郎と山下諒也の左サイドはスピード、運動量を活かし、カウンターで何度か決定的なシーンを作っていました。また、その豊富なスピートと運動量を守備面でも遺憾なく発揮し、素早い帰陣と球際への強さで守備を支えました。この左サイドのコンビは、今の横浜FCにおいて攻守において武器の一つになってきている言ってよいと思います。
また、逆サイドの近藤も、前半は裏を取られるシーンも目立ちましたが、攻めては高い位置でロングボールのターゲットとなり、守っては低い位置まで戻ってファールを辞さない守備で攻守にチームを支えました。終盤、近藤に変わって入った山根永遠も終盤、苦しい時間に激しい守備でボールを奪い、そのまま陣地を回復するドリブルを見せました。
こうした両サイドの選手の献身的な頑張りが、場面場面でCBを中心とした中央での守備に余裕を与え、この少しずつの余裕の積み重ねが守備の集中を生み、ウノゼロの勝利に繋がっていると思います。
ウノゼロの勝利。簡単に口にしていますが、J1の舞台で1点差を逃げ切ることが、どれだけ難しいことか。横浜FCのサポーターならよく分かっていることと思います。
2021年、それこそホーム三ツ沢での柏戦もそうでしたが、ラスト数分での失点でどれだけの勝ちを引き分けし、どれだけの引き分けを負けにしてしまったことでしょうか。あの時、こぼれ落ちた勝ち点があれば…色んな意味で未来は変わっていたと思います。
そもそも、伝統的に試合のクロージングが得意ではないお家柄の我軍です。
「ウノゼロで勝てるって当たり前じゃねぇからな!!」
タイトルにしたこの言葉は某バラエティ番組の名場面のオマージュですが、いつも防戦一方でもウノゼロで勝てるなんて大間違いだぞ!という警鐘でもあり、一方で同時に今のチームはしっかり走って、戦って勝ち切れているからこそ言える言葉でもあります。
決して対外的に美しいサッカーとは言えないかもしれませんが、泥臭く走って、戦い終えた選手の汗にHAMABLUEのユニフォームはよく映える。試合後にゴール裏に来た小川航基の笑顔を見て、そう思いました。
中立な立場で見れば褒められた内容ではない。承知の上です。
それでも、今、出来ることを必死でやった結果、サッカーの神様が微笑んでくれて勝つことができた。それはそれで立派な勝利です。サッカーの神様を微笑ませたのは、運や付きを呼び込んだのは、1人1人がサボらずに走り、ひたむきに戦ったからなんですから。
6ポイントマッチを勝ったんだもの、選手たちを称えさせてください。
3.求む!小川航基以外のゴールゲッター
そして、最後に次節の川崎戦は小川航基とユーリ ララが累積警告で出場停止になります。
ボランチは恐らく三田啓貴、和田拓也、井上潮音の中から2名がチョイスされることになると思いますが、ポイントになるのは開幕から不動の小川航基のポジションです。
札幌戦こそサウロ ミネイロが最前線で先発し、小川航基がシャドーに入りましたが、今シーズンの殆どのゲームで小川航基は最前線で出場しています。その小川航基の代役、果たして誰が出場するのでしょうか。
筆頭となるサウロは、ゲーム勘さえ取り戻せばポテンシャルは折り紙付きの選手です。今の戦術であれば、自慢のスピードも活かすことが出来るでしょう。この試合がキッカケになって、フォームを取り戻してくれればこんなに頼もしいことはありません。
しかし、長谷川竜也のコンディションが整いつつある今、伊藤翔を頂点に、長谷川竜也と山下諒也のシャドーという選択肢もあるかもしれません。プレッシングとブロックで構える守備の使い分けが重要な今の戦術において、スピードを生かしてガンガン食いつく嫌いがあるサウロではなく、戦術理解度の高いベテラン2人を同時起用し、サウロをジョーカーに使うのも良いでしょう。
そして、大穴はマルセロ ヒアンでしょう。昨年の最終盤、彼の活躍がなければ、恐らく横浜FCはJ1にいないでしょう。高さ、スピード、強さ。すべてを兼ね備えるスケールの大きいプレーは、必ずや必要なときが来るはず。昨年、鮮烈デビューを果たした町田戦の衝撃を私は忘れられません。今季はなかなか出場機会を得られず、コンディションも良くないのかもしれません。ただ、昨年からここぞという時は思い切った選手起用の目立つのも四方田さんです。それ以外でもサプライズ起用がある可能性も否定できません。
小川航基はチームの柱。これは誰もが認めるところですが、長いシーズン彼が不調なときもあるでしょう。そんなときに彼以外に点が取れる選手がいることで、チームの戦い方のバリエーションはグッと増えます。今後のためにも、次節のFWの選手にはぜひ頑張ってほしいところです。
そして次節を前に、こうして誰が出るのか前向きに思考を巡らせる事ができるチーム状態になってきたことが何より嬉しいです。
5月に2勝、そんな目標を前半で達成できるなんて3週間前は、少なくとも思っていませんでした。しかし、四方田さんが試合後に言っていたように、まだまだこれで満足してよい成績ではありません。
次節の相手は川崎。難しい試合になることでしょうが、また一丸となって、瀬古くん(率いる川崎)に正々堂々と戦いを挑みましょう。