メガネ屋の店員との恋物語の勝敗
普通はみんなが働いている時間の平日の14時ごろ、街に出たくなり自転車を漕ぎ出した。たどり着いたのは、おしゃれなメガネ屋。
コロナの影響もあって相当暇だったのだろう、俺がお店に入った瞬間、店員さんは本当に嬉しそうだった。まるで彼氏の帰りを家で待つ、寂しがり屋の彼女のようだった。
相変わらずゴミみたいな服装をしていたのだが、特に気にせず、まっすぐ店員さんのところへ歩み寄った。
「これ、メガネネジ締めていただけますか?」
今回メガネ屋メインの目的は、これのみ。眼鏡のフレームの部分がそれなりにゆるくなってしまっていたので直してもらった。
俺の心拍数がインフレーションするのはココカラだ!
店員さんは言った。
「このメガネ、レンズはガラスでできているので調整が難しいですね。一度かけてもらえますか?」
かけた。
店員さんが俺との距離30cmくらいで俺をすごい勢いで見つめている (メガネがフィットしているか見ているのだけど)。
この間5秒。俺はずっとその店員さんと見つめ合っていた。
吹き出物がまったくないきれいな肌。年齢は俺と同じくらいだろうか。アニメに出てくるとしたら主人公の友人で、勉強ができるような、美女だった。部活は吹奏楽部に違いない。
「うーん、ちょっと曲がってますね、もう一度調整してきます......これでどうでしょうか?」
かけた。
そしてまた始まった、見つめ合いが。
俺の心拍数のインフレが止まらなかった。店員さんのメガネに、万有引力の法則が働いているようだった。俺はその時は目を1秒も目をそらすことができなかった。このまま心拍数の上昇が止まらず、赤血球の内部で分子のブラウン運動が起き、そのまま俺は死んでしまうのではないか、とも考えた。
「うん、これで良いです。このメガネ、似合ってますね。」
死んだ。俺は死んだ。
手入れをしてもらった眼鏡は壊れてしまったようだ。その眼鏡をかけても、店員さんしか見れなくなっていた。
取り戻せ、俺の頭のネジ
結果的に、メガネはネジを締めてもらい、調整してもらったのですごくフィットするようになった。後は、元々しっかりついていたが、吹っ飛んでしまった俺のネジを締めるのみ。
ただ、おれはここでネジを締めて帰ってしまってよいのか。なにもしなくていいのか。良いわけがない。
ということで、とりあえず
「別のメガネも調整いただきたいものがあって、これと同じ様にしてほしいんですが、店員さんいついますか?」
と聞いた。まじで聞いた。
前述したように、コロナの影響でお店はかなり暇だ。お店の中には俺と、その物理の法則を壊した店員さんしかいない。なので、そこにはそのような会話をしても問題ない空気がすでにあった。
「わたし本来は六本木のバーニーズニューヨークにいるんですよ。」
と店員さんは言ったので俺はこう返答した。
「え!僕職場が六本木なので、ちかいですよ!」
嘘である。
六本木なんてそうそう行かない。どちらかといえば五本木のほうがよく行く。
ただ、その後に名刺を頂いた。
その後は、それに満足し、ひとまず帰ることに。
ああ、もしかするとその場で連絡先まで聞くべきだったのかも知れない。いや、調整してくれた眼鏡で、次は六本木に行こう。(勝敗持ち越し)