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【司法試験上位1%】が教える、民事科目の鉄壁対策:民法編(論証集付き)
本記事の内容
本記事は民事科目を得意とする担当者が、民事科目の対策方法をまとめます。予備試験民事AAA、司法試験民事AAA(21◯点、上位1%)、短答73/75点、東大ロー入試偏差値80.1を修めた勉強法&答案作成法です。以下の内容はどの教科にも言えることもありますが、今回は民法編です。
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総論
大まかに勉強方法としてのインプット編、アウトプット編、思考過程を解説する答案作成実践編に分かれます。ここではそれらの関係を先にまとめます。
初学者の不安として、まだインプットが完璧でないからアウトプットに移行すべきでないのではないか、というものがあります。しかし、結論としては、インプットが1周でも終わっているのであれば、インプットの周回と並行しつつ、演習でのアウトプットに移行を速やかに始めるべきです。理由はいくつかあります。①アウトプットを経験していない状態でのインプットは、見ている知識を体系や答案のどこに位置付けて覚えるのかイメージできず、効果が半減するため。②初めは手も足も出ないと思いますが、解答を見て、答案の書き方を早めに感じるべきであるため。③アウトプットを経て、「これは整合しているのか」「設例と違って仮にこういう事例ならどうなるか」など、より深い理解につながる疑問を抱けるようになるため。
それでは以下で両者について各々まとめます。
インプット編
通読
どこまで簡単に取り出せるところまで知識が染み付いているかがものを言います。私は伊藤塾を利用していたため、基礎マスターテキストを使用していました。塾利用者でない場合、各予備校のインプット教材、又は市販の呉基礎本シリーズを使用して代替できます。
さて、具体的なインプット方法ですが、どの科目にも共通して地道です。
①まずは教材全体(マーク指定がある方はその部分のみ)のじっくり通読。②そして民法という科目全体のイメージがついてきたら、流し読みのペースでもう一度通読。③この辺りから、自分の中で常識化されて周回するまでもない部分とそうでない部分が出てきますので、後者を教材内に印をつけていきます。ただここは自分に厳しく、大体民法知識の8割くらいには印をつけていました。④次回以降その印の部分のみを周回していき、さらに以降の周回範囲を先述同様絞っていきます。⑤2、3回絞ったあと、再度印の有無関係なく流し読みします。昔は忘れるはずないと思って切っていたところも、案外ド忘れしていたなどあるため定期的に全部見返します。
このように見ると、何周もしていてそんな時間がないと思われるかもしれませんが、周を重ねるごとにペースは勝手に上がり、最終的にはレイアウトまで勝手に覚えてノーストレスで読めます。
ポイントは、1日に一気に進めるのではなく、1日に数十ページ、各自の生活に合わせて毎日キープできる遅すぎず早すぎないペースでしましょう。私は比較的時間に余裕があったので、一日2科目、民法は2週間ちょっとで一周できるようなペースで進めました。また、知識は数日後にもう一度触れると定着するため、例えば2周目が完全に終了してから3周目を始めるのではなく、2周目の4日後に3周目を開始する(2周目と3周目が同時並行になる)などしましょう。
後述の論証との関係ですが、インプット教材の周回を日課としてきちんと続けていれば、それだけで論点に触れることができるため、直前期を除き、わざわざ論証集をまた別で周回する必要はなくなります。
短答知識の扱い
教材には論文で使う重要度の高い知識から、短答でのみ出題されるような細かい知識も記載され、予備校によっては重要度をA~Cでランクづけされています。「はじめはB以上だけで良い」と言われがちですが、個人的にはランク関係なく周回時には触れておくべきだと思います。短答式は全員が必ず経験する以上、必ずどこかで詰め込む必要があり、直前期に一気に詰め込もうとするとその量に圧倒されます。特に予備試験の場合は下4法も加わり、非常に精神的にも時間的にも削られる量です。できるだけ早くから触れることは、短答のハードルを下げ、さらにはメジャーな知識の理解の手助けになることもあります。ですので、最初は大変でしょうが、あまり選り好みせず知識には触れましょう。
論証
民法の論証は非常に多いです。コスパ的にも、論証作りで深入りすることはお勧めしません。論証作成は、インプットで使用した教材だけでなく、アウトプットの教材で初めて遭遇した論点も、全てを一元化して周回できるようにwordに全てまとめましょう。その上で以下を淡々と正確に記憶することに注力しましょう。
①どの条文のどの要件についての問題なのか、もしくはどのような場面の問題なのか。これが個人的に勉強を進めていく上で実は最重要だと気づいたところです。理由付けや規範に目が行きがちですが、論証の展開すべき場面を間違えてしまい飛びついてしまうと、一気に評価が下がります。論点主義に陥る、などはここに起因すると思います。土台としてそもそも論証が登場する場面を正確に覚えましょう。
②理由付けと規範。これはキーワードだけ押さえれば十分です。
論証集を周回するのは試験の直前1ヶ月くらい、3周程度です。先述の通り平時のインプット教材の周回で論証には触れます。
アウトプット編
演習書
私は論文マスターを使用していました。各予備校の演習教材、または市販のロープラクティスなどで代用できます。
先述の通り、インプットが一周でも終われば、速やかに演習に着手しましょう。初めは全く解けないのが当然です。問題を見て、解答をすぐに見て良いです。ただ、解答の言っている論理をしっかり理解すること、答案の作法や構造を掴むことは意識して読みましょう。
2周目以降解くときは、自力で答案構成を書き切ることを目指します。答案構成時に意識することは次の章をご確認ください。初めのうちは時間無制限で良いですが、最終的には10~15分程度で、脳内で構成できるようにしましょう。問題と解答を覚えてしまうかと思いますが、それは構いません。本番で遭遇する問題は演習の派生版に過ぎないので、網羅的な演習書を覚えてしまうことは、むしろ処理法のストック、パターン化になって本番で活きます。
答案構成の方法(練習編)
どの科目にも言えますが、特に民法では、すべての要件を満たして初めて効果が発生することを意識しましょう。そして答案は以下で構成されます。初見の答案構成での思考過程は後述の本番編をご覧ください。
①条文の選択、②簡潔な各要件の検討、③解釈が必要な要件の論点と事実当てはめ、④条文の解釈でなく事案の特殊性からの論点と当てはめ
一見複雑そうに見える論文試験も、基本的には①と②を繰り返し、必要に応じて③、④を展開するということをするだけです。
ここでの答案構成は後述の本番と違い、あくまで練習ですので、論証もキーワードだけでも理由付けから規範まで書き出しましょう。また、当てはめというのは事実のピックアップと評価です。脳内で構いませんので、後述の本番編を参考に練習しましょう。
要件事実的な書き方が推奨される場合がありますが、あまりお勧めしません。要件事実として何を書くべきかというのは民法の論点を経た先に決まるので、要件事実的思考を先にしてしまうと、得点源たる論点をスキップしてしまう可能性があります。条文に表れているすべての要件を愚直に検討することが確実です。
答え合わせと振り返り
答案構成をした後は、解答と照らし合わせます。「答案構成の方法」の①から④まで適切にできているか、欠けている法律構成はないかを丁寧にチェックしていきます。そしてそれらは必ずメモをとっておきましょう。加えて「これ自分忘れがちだな」といった繰り返してしまう自身の悪い癖や、この先自分が意識すべき点、処理パターンなど、自分が気づいたことを残しましょう。最終的には、それらを一つのwordファイルにまとめて、試験直前に見返せるようにします。実際の統合版メモを掲載します。私自分がわかれば良いという書き方ですので、実施にこれを流用しようとは考えず、あくまでどのようなことをどのように残しておくか、イメージするのに使ってください。
また単純に設問と解答だけを暗記するのではなく、「もし設例と違ってこのような事例だったら?」「これは教科書のあの部分と整合しているか?」など、疑問を積極的に持つようにしましょう。ここでの熟考が大きな成長になります。
処理パターンをまとめること
例えば、何も法律構成が思い浮かばなかった場合や、検討忘れ防止のため、脳内でたどるチェック項目を作成していました。下はいくつかの例です。
所有権に基づく建物明渡しの場合で転々としている所有権の所在が問題
1、前主の権利の有無の検討、解除や取り消しの第三者に当事者が当たるか
2、権利移転の有効化 無権代理:表見代理と761条、
他人物売買:761条
3、有効化以外の保護 無権代理:時効、付合
他人物売買:94条2項、即時取得(193条や194条へ流れる)、時効(対抗要件の論点、背信的悪意の意義)、付合(償還請求へ流れる)
などのように準備していました。特に最後の94条2項、即時取得、時効、付合は忘れがちでしたので、わざわざこのようにチェック項目化していました。
占有権限も似たようなチェック項目でしたが、加えて留置権や法定地上権を忘れないように、と気をつけていました。
担保責任と受領遅滞などは以下のようにまとめていました。
・買主から売主
555条または562条で履行請求、415条で損害賠償請求、541,2条で解除→567条で反対
・売主から買主
555条で代金請求→536条で拒絶→567条で反対、415条で受領義務違反損害賠償、413条で費用請求
抵当権者ができること
抵当権侵害の709、実行、物上代位、妨害排除、
などなど、このように処理パターンをストックしておきましょう。
短答式過去問
自分は怠惰のせいで出来ませんでしたが、平時のインプットと並行して、その日に読んだ該当箇所を解くとさらにインプットの質が上がると思います。しかし、時間との関係もあるので、平時のアウトプットは論文式のみにして、短答式過去問は短答直前期に集中するのもありです。
短答式の対策はこちらの記事の該当箇所を参照ください。
論文式過去問
過去問は、出題傾向の把握とタイムマネジメントに使います。他の勉強法共有者のいうほど自分自身そこまで過去問から吸収することはなかったので、あまり特筆すべきことはないのですが、特に司法試験では未知の問題に対する現場思考の処理に慣れる訓練や、現場思考が司法試験になるとこんなにも多いのかというのをただ感じるだけでも十分かと思います。出題趣旨や採点実感も、すべて読んではいましたが、ここまで書けるわけないだろうといつも思って、最低限触れるべきことに触れられていればいいかといった考え方を終始していました。司法試験の場合は気負いせず、守りの答案の意識を持てるようになれば良いと思います。
本番答案作成実践編
ここでは、答案を作成する際に意識している思考過程をまとめます。
事例の読み方
まずは問題を読むところからスタートしますが、どこに下線を引くかどうかから勝負は始まっています。自分の場合、最低限登場人物の各行為には下線を引き、下線だけを読めば事案の概要が簡潔に過不足なく把握できるようにしていました。その上で、「これわざわざ問題に書く必要あるか?」といった、作問者が拾って欲しそうな事実や、問題になりそうな法律構成が薄々勘付いて無過失などその当てはめで使いそうな事実(登場人物の属性など)に下線を引きます。
個人的ではありますが、自分はすべて黒一色で下線を引いていました。色付けをしてしまうとその部分が目立ちすぎて、念の為すべて読み返すときに、他の部分を無意識に読み飛ばして重要部分を見落とす危険があったり、色の交換が面倒だからです。
最後に、最後の問いは、答案を書いているうちに逸れてしまわないよう、何が訊かれているのか赤で囲っていました。
答案構成(本番編)
時間は予備試験も司法試験も20分程度に抑えます。答案構成の仕組みは、答案構成(練習編)通りです。ここでは、思考内容や練習編との差異に迫ります。
まず焦らず当事者の生の主張に耳を傾けます。これは最大のヒントであると同時に、絶対に逸れてはいけないラインでもあり、丁寧に鍵カッコで書いてあることもあります。はっきり書いていない場合は当事者に感情移入して、自分だったら法律関係なしに何と率直に言いたいか感覚的に考えます。「〜だから無効なはずだ、請求を拒みたい」とあった場合、まずは当事者は「〜」という点が不満で使いたいんだな、そして無効にしたいんだな、無効にできる法律構成ってどういうものがあったかな、「〜」は無効にどのように法的に昇華できるかなど落ち着いて考えます。「知らなかった」とあれば詐欺や錯誤であり、それらの取り消しを連想する、みたいな感じです。生の主張に沿って構成しましょう。一見すると当たり前なことですが、限られた時間と緊張の中では、意識的にすることがやっとです。
そして条文が選択できたら、あとは愚直にすべての要件を検討するだけです。必要に応じて要件の論点を展開します。当てはめでは問題文には無駄な事実がほぼないので、すべての事実を拾う勢いで各要件に当てはめます。答案構成段階では事実を箇条書きに簡潔にメモしましょう。
次に、論証集で見たことないけど作問者が問題意識を持って欲しそうな場面に遭っ他場合、現場思考問題ですが、①原則、②例外の必要性と許容性を書くことが多いです。または、機械的適用では条文に当たらないが、条文の趣旨に戻って、事例に当てはめて類推適用するなどもあります。どちらにも共通して言えることは必ず原則や機械的適用の結果を述べて、基本はわかっていることをアピールすること、論理矛盾だけはしないことです。
練習編との差異としては、論証の中身は覚えているはずなのでメモをほとんど取らないことや、逆に当てはめの事実は絶対に書き忘れないようにすべてメモすることです。
答案清書
答案構成に沿って書きますが、清書では特に事実の評価が重要です。当てはめとは、①事実のピックアップと②事実の評価を言い、それぞれに配点があります。まず事実のピックアップは、問題文のコピペで良いです。続いて評価ですが、「〜という事実があるから過失があった」というのは、事実をピックアップしただけで直接要件に結びつけてしまっています。なぜその事実があったらその要件を満たすのか、丁寧に仲介しなければいけません。「〜という事実があり、通常〜であるからそれを怠ったといえ、過失がある」など、間に評価を必ず入れましょう。
また、時間との関係で左右されますが、要件の当てはめでは、明らかに不要なものを除いて、論点化されないものも解釈や定義を書いて、できるだけ法的三段論法を簡易的にでも守りましょう。
最後に、字の綺麗さはだいぶ崩しても良いですので、スピード重視で書きまくって良いです。
論証集 定義集
体裁は整えていないためそのままの流用はお勧めしませんが、ぜひ活用してみてください。