【永久保存版】上位合格者の予備試験対策 論文式試験対策編(各科目の注意点等)
こんにちは、シホシケメイツです。
今回は予備試験対策、論文式試験編です。ロー生活と予備試験の両立シリーズとしても書けたのですが、論文対策は夏休みにあたり、あまり両立が問題にならないので思い切って予備受験生全般を対象にしました。
本記事は、論文式試験も2桁前半順位で突破した構成員が、短答式試験編に沿って勉強をした続きとして、論文対策として科目毎に何を意識していくべきか記載しました。短答前にこれを見てくださっている方も、これらを見据えて短答の時からしっかりインプット周回を怠らないなど、勉強方法の意識を強めてみてください。短答式試験編は以下の記事です。
・学事歴との関係
短答を受け終わると、翌日から期末試験期間が始まります。およそ2週間の試験期間を経るとついに夏休みスタートです。期末試験から解放されてから論文までは約1ヶ月半といったところです。
・タスクの決定
決定方法は短答式試験編と同じですが可処分時間が無限です。ただ実際組んでみるとやはり時間はないです。
・やるべきこと(ざっくり総論)
科目ごとに使う教材は違えど、基本的には同じです。過去問(フル回答4年、残りは答案構成)、演習書の答案構成、インプット教材(基本書や基礎マスターや基礎本など)の周回、論証暗記です。
・過去問
全てちゃんと回答作成している時間はありません。基本は答案構成で、直近数年分だけタイムマネジメントの把握のために書きましょう。理想は全科目1、2年分解いて答案構成にかけられる時間を掴んで、以降は本番で割く時間に沿って答案構成のみ、直前期に再度1、2年しっかり書いて調整します。
答案構成はナンバリング、各要件ごとの認定、論点展開、科目によっては(後述各論参照)事実の当てはめまで意識します。また、論証アウトプットの機会にもなるので、本番はしないですが練習の際は理由づけや規範をキーワードだけでも書く、または口に出すなどしましょう。
これも大事ですが、自分が取りこぼしていた点、誤った理解をしていた点、自分がしがちな癖は答え合わせの時に全てメモに残します。インプット教材に追記したり、これらをWordなどにまとめて、本番で同じ過ちを犯さないように直前に見返します。
・演習書
あまり手を広げず、ロー入試などで使い慣れたものがある場合はそれを徹底完璧にすることを第一にしましょう。ただ予備校の噂などで網羅性に疑いがある科目のみ(会社法、刑法など1、2科目)、事例演習教材等で例外的に補充します。
答案構成方法は過去問と同様です。
・インプット教材
短答の時にしっかりノルマ通り周回できていれば、この時期の周回はとんでもないペースで出来ます。やはりインプット教材の知識が本番を戦う上での核となるので、このルーティンは短答後も死守しましょう。
・論証暗記
インプット教材の通読と重なる部分があるので全くの初見暗記にはならないはずです。また、ロー生の場合、せっかく権威ある教授の授業を受けているので、その授業内容を反映した精度の高い論証を作成してみましょう。その意味で授業の復習を、ざっくりとで構いませんがしてみましょう。
「てにをは」まで一言一句でなく、キーワードだけを覚えるのがポイントとなります。
・やるべきこと(各論)
【公法2科】
2科目とも、本番では参照条文や事実の引用の数がものをいいます。なので答案構成だけするとしても、過去問演習で当てはめの練習まですることが重要になるのが特徴です。
・憲法
人権ごとの答案の型を覚えて、本番ではそれに問題文の事実をとにかく詰め込めば沈まないので、対策にあまり時間はかけないようにしましょう。
・行政法
こちらは演習書でよく出る範囲の処理を掴むこと、処分性や原告適格等の定義(司法試験の採点実感曰く一言一句)とあてはめ方法を覚えることが大事です。また、モデル判例に近い事例が出題されることがありますので、重要判例の処理方法と結論をインプットすることも準備段階で重要になります。
【民事3科】
総じて言える特筆すべき特徴は、「条文が出発点」「すべての要件を充足して初めて効果が認められる」という意識の下で条文の要件検討を抜かりなく行うこと、趣旨や根拠に立ち戻ることが多いためそれらを理解することが重要となります。
・民法
範囲が広すぎるので、新しく教材を追加することが最もお勧めできない科目です。使い慣れたものを完璧にして臨むのが得策かと思います。また、特に「すべての要件を備えて初めて効果が発生する」という意識が重要で、論点主義に陥らず、論点以外の要件も丁寧な認定する癖を身につけましょう。そして演習を通して、典型的なパターン(受領遅滞や、即時取得要件充足後の攻防など)の処理をしっかり抑えましょう。
本番で法律構成に困るときは、生の主張が何なのかを意識して読み取ると、大外しはしにくいです。問題文の最後の方に、「Aは〜を請求した。これに対しBは〜だからと言って応じようとしない」など記載がある事があるので、焦らずそこをヒントに構成しましょう。
答案は、民事実務基礎で身につける要件事実や攻撃防御方法を反映させると綺麗にまとまりますが、要件事実は法解釈や判例規範という論点を経た後の結果ですので、要件事実が先行して論点を落としてしまうことがないように、条文が出発点であることは常に心がけましょう。
・商法
会社法は分野として新しいので、新しい論点も多く、予備校によってはインプット教材、演習書ともに網羅性が怪しい科目です。追加の教材購入もありかと思います。ただ過去問を見る限り、予備試験では基本的な概念の理解だけで戦える出題だと思いますので、時間がある方だけ追加で良いと思います。
事実の引用評価の量が大事な科目の一つですので答案構成時にはその訓練もしましょう。また、丁寧で複雑な条文操作も求められる科目ですので、見出し部分のみの条文素読で大体の位置の把握をしましょう。
・民事訴訟法
〇〇主義、既判力、諸々の制度などそれぞれの定義と根拠と趣旨を必ず覚えましょう。なぜなら、本番では根拠や趣旨に立ち返って事案を処理することが特に求められるからです。
また、判例学習も重要になる科目です。
【刑事2科】
事実のあてはめが勝負となりますので、答案構成の練習では当てはめまで意識します。
・刑法
刑法事例演習教材は、「司法試験委員会はここからそのまま出題しているんじゃないか」と噂されるほどの優良演習書です。
他の科目に比べて意識すべき点としては、構成要件と、それぞれの定義を必ず押さえて、答案上も明記しましょう。これは口述試験でも最重要になりますのでしっかり覚えましょう。
また、紙面や時間の余裕がないので、論点が多い時のメリハリも意識することが求められます。一つの指標として、問題文中の事実が多いところを厚く論じることを意識しましょう。あてはめの際は、「確かに、しかし」構文で、反対事実にも触れて問題意識や悩みを見せることは忘れずにしましょう。ぶっちゃけ反対事実を拾えれば、結論はどっちでも高い評価がつきますです。
・刑事訴訟法
あてはめ勝負の科目です。あてはめで抑えるべき事実がどのようなものなのか、模範回答などでコツを掴むことが大切です。公法と同じく、答案構成の段階でもあてはめまで意識しましょう。例えば、捜査の分野では往々にして「必要性と不利益を考慮した相当性」の当てはめが求められ、必要性だけでも犯罪の重大性、性質(密行性、組織性)、嫌疑、具体的捜査方法の適合性など、複数の事実に配点が振られています。
また、条文の見出しがないので、演習でよく出てくる条文の大体の位置を覚えておきましょう。口述対策にもなります。最終奥義は、なぜかこちらには見出しがついている刑訴規則から、刑訴法の条文番号を割り出せます。
【実務基礎2科 最重要】
最重要科目です。そして過去問が最重要です。受験生のレベルが低く、2科目分も差をつける絶好の科目です。
・民事実務基礎
要件事実の本は数種類ありますが、大島本一択です。論文突破に必要な要件事実以外にも、大きく配点が振られている準備書面の問題で活きる事実認定などの範囲も押さえられているからです。論文段階ではあまり複雑な要件事実はでないので、まずは入門編(上巻でない新版でも可)で十分です。
準備書面に大きな配点が振られています。証拠構造の明記、文書の性質の明記、そこから真の争点の絞り込み(どの事実の存否か、2段の推定のどこか)、その争点に関する集中的な事実引用を意識します。低い評価にとどまった他の再現答案を見ていると、争点が適切に絞れておらず、その結果引用すべき事実もその評価もとっ散らかっている事がありました。
基礎的な要件事実、民法民訴の知識、証拠構造や文書の種類の扱い、事実の引用の多さが大事です。
・刑事実務基礎
インプットは刑事実務基礎の定石(青い本)が鉄板ですのでそれの通読はマストですが(刑訴の勉強がしっかりできていればすぐ読み終わります)、それよりも過去問が1番重要です。同じ問題が繰り返し問われていますので、過去問でインプットも兼ねることができると思います。罪証隠滅、逃亡のおそれの認定、類型証拠の開示請求のあてはめ、伝聞証拠などは繰り返し問われています。これも、「具体的事実を指摘して」という指示がありますので、事実の丁寧な引用が重要です。
刑法と刑訴との親和性が高く、刑法の構成要件の定義や、刑訴の手続き面の知識が必要です。
【選択科目】
教材や特徴は科目によりますので、選択科目の一般的な向き合い方だけ申し上げますと、優先順位は低めで構いません。他の受験生のレベルが低いので、確かに差をつける戦略もアリですが、不慣れな科目であることには間違いないので、頑張ろうと思ってしまうとどうしても時間が吸われてしまいます。その時間は、他の科目とも親和性のある実務基礎に充てる方が得策です。
終わりに
以上が論文対策として意識すべき点です。各科目の特性を理解することが、効率的な勉強方法と本番での効率的得点回収につながります。ロー生は短答式試験が時間に追われていた分、論文式試験は夏休みを最大限使えるため、チャンスだと思って全力で取り組みましょう。
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