お題：手紙

翼へ

先日は、ごめんなさい。動揺して逃げ出すように帰ってしまって。
自分の中で整理がつかなくて、落ち着いて考えて、やっとこの手紙を書いています。

あなたが学生時代からの友人とずっと２人で暮らしていることの意味を、深く考えていませんでした。いえ、気づきたくなかったのかもしれない。
叔母から、あなたのお見合いの話をもらって、いい話だと喜んでしまったの。あなたを苦しめることになってしまって、ごめんなさい。あなただけじゃなく、小泉くんも傷つけてしまった。

あれから、私もLGBTのことを調べてみました。日本でも8％の人がいるって。差別のない世の中になるよう、アライさんって人もいるって初めて知りました。「アライ」（Ally=同盟、味方という意味）は、LGBTを積極的に支援する人なのですね。ほんとに知らないことばかりで、それも自分の息子がそうなのに、あなたの苦しみもわかってあげられなかった。

2人のことを、打ち明けてくれてありがとう。どんなに勇気がいったでしょうね。そして私を信じてくれたのね。
その信頼に答えたいと思った。

あなたは私の唯一の宝。あなたの幸せを世界一願ってる母なんだから。あなたの選択を受け入れる。あなたを悲しませたくない。笑っていて欲しい。好きな人と一緒にいるのが幸せなら、それが一番いいことなんだから。

社会的にはまだまだむずかしいことも多いでしょう。数人しか2人のことを話してないと言ってたものね。でもこれから少しずつ変わっていくかもしれない。
2人の幸せを祈っているよ。

翼、私は何があっても、あなたの味方だから。
それだけは、忘れないで。

母より

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母さんへ

手紙、読んだよ。小泉にも見せた。あいつ、めちゃくちゃ泣いてたよ。

ずっと秘密にしておこうと思っていた。母さんを苦しめるのがわかっていたから。
母さんが、まさかお見合い写真をもってくるなんて、予想もしてなかったんだ。このままでは、これを繰り返すことになる。そのたびに、小泉の顔色が悪くなるのは明らかだ。追い詰められて、カミングアウトしたんだ。

あのときも言ったけど、母さんのせいじゃないから。きっと誰のせいでもない。
母さんに罪悪感はもってほしくないんだ。

それと、すぐにすべてを理解しようとしなくていいから。
オレが話せるまで何年かかったと思う？
母さんが心からオレたちのことわかってもらえるには、まだまだ時間が必要なんじゃないかな。

父さんがなくなった後も、女手ひとつでオレを育ててくれてありがとう。
オレ、今まで生きてた中で一番幸せだから。心から信頼できて好きな人と一緒にいられるから。

心配しすぎないで。体に気をつけて。
また、2人で会いに行くからね。
こんな息子でごめん。ありがとう。

翼

fin

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