企画の教科書・その0『企画を考える前の準備編』
放送作家という仕事をしていて、毎日のように新企画を考えています。
面白い企画が生まれることもあれば、全然面白くない企画になってしまうこともあります。
ですが、毎日企画を考えていると自分の中でいくつか「企画の考え方」のパターンが構築されてきます。
そのいくつかのパターンを知っておけば、企画がまったく思い浮かばない! という時のヒントになるかもしれません。
ですので、私なりの企画の考え方についていろいろと記事にし、教科書としてまとめていこうと思います。
と、ここまで書きましたがみなさんの中には「別に放送作家になるつもりはない」という方も大勢いるかもしれません。
というか、ほとんどの人がそうだと思います。
ですが、例えばコンビニオーナーだったとしても、中小企業の営業職だったとしても、医師だったとしても、企画力は必ず必要となります。
お店の売り上げを伸ばすためにはどうすればいいのか? 契約してもらえるためにはどうアピールすればいいのか? お客さんに喜んでもらうには? これらは全て、企画次第で改善できるのではないでしょうか?
そう、どんなビジネスにも企画力はなくてはならないものなのです!
今回は初回ということ、企画を考えるまえの下準備編です。
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頭の抽斗を満たせ
企画を作り出すうえで、いくつか準備をする必要があるのですが、その中で最も大事なことを一つあげるとするならば抽斗の中身を増やすことだと思います。
抽斗の中身を詰め込めば詰め込むだけ、企画は生み出しやすくなると言えるでしょう。
抽斗と言っても机やタンスのそれといった物理的なモノでは、もちろんありません。ここでいう抽斗とは、頭の中にある記憶の断片のことです。
あなたは今まで経験してこと、見てきたこと、それらから感じてきたこと。 それらのひとつひとつが、企画を生み出す小さなヒントとなってくるのです。
例えばこんな経験はありませんか?
友達同士で食事に出かけ、ワイワイと楽しい満足なランチタイムを過ごした。お会計は割り勘をすれば自分の分だけで済む。ところが、その中の一人が「ジャンケンで負けた人が奢りにしようぜ」と言い出す。
あなたはこう考える。
「勝てばカツ丼の六百円がタダになるな。しかし、負ければ全員で二千五百円ほど。四人いるから負ける確率は四分の一。うん、大丈夫だ」
こうしてジャンケンに挑むのです。
こういった友達同士のノリは、ほとんどの人が一度や二度は経験済みだと思います。
たとえばこんな経験を、抽斗の浅い部分にしまっていたとします。
他のみんなは抽斗のずっと奥の中に追いやっている中、あなただけが抽斗から簡単に取り出せるようにしまっている状態です。
それから時間が流れ、ある時ふとジャンケンでカツ丼を奢ってもらったことを思い出します。これを企画にできないだろうか?
そのままやっても面白くはならない。
では、逆にしてみたら面白くならないだろうか? 例えば、負けた人が奢るのではなく勝った人が奢るというのは? ジャンケンで勝って奢ってやるのだから、男気があるな。そうだ、この企画のタイトルは男気ジャンケンだ。
これは『とんねるずのみなさんのおかげでした』での大ヒット企画、「男気ジャンケン」の誕生秘話という訳ではありません。
もちろん私の想像です。ですが、誰もが経験したことのある出来事から生み出された企画であることは間違いないでしょう。
これが、頭の中の抽斗の上手な利用法です。
抽斗の中には、あらゆるものを詰め込んでおいた方がいいでしょう。
具体的なやり方は経験に限ります。経験に勝るものはありません。
美味しい料理を食べることも経験ですし、映画を見て感動することも経験です。ミステリー小説を読んでドキドキすることも立派な経験です。人との会話、旅行、恋愛、アルバイト、ギャンブル……。それらは全て経験となり、頭の中の抽斗に入っていきます。
また、できるだけ新しい体験をすることをお勧めします。
いつも通っている中華料理屋じゃなく、今まで一度も食べたことがないタイ料理でも食べてみようかな? そのレベルでいいんです。
もしかしたら、そのお店で奇跡的な出会いをするかもしれないですよね?
そこで何も得られなくても落胆する必要はまったくありません。そんなに毎秒毎秒、新しい出会いがあるはずもないのですから。
大事なのは新しい経験をすればするほど、頭の中の抽斗にモノを詰め込めるチャンスが広がるということです。
とにかくどんなモノでも、詰め込んでいきましょう。
どんどん経験をし、抽斗の数を増やしていきましょう。
抽斗がパンパンになってこれ以上入らない! となることは絶対にありません。
今回のまとめ
経験こそ、最高の企画の種。 経験を抽斗の中に詰め込もう