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【詳細】ポルノグラフィティ「サボテン」の歌詞を個人的な解釈で読む
要約編に書いたサボテンの解釈のもとになる歌詞の詳細分析です。
ポルノグラフィティ「サボテン」
作詞:ハルイチ
作曲:シラタマ
何処に行くの? こんな雨の中
→問いかけから曲が始まります。
わざわざ「こんな雨の中」なのに何処かに行ってしまう、おそらく彼女
どんな言葉待ってるの?
→「待っている」という表現を選ぶのは少なからず、出て行く自分を僕に引き留めて欲しい「期待」が彼女の中にある前提の僕
どんな言葉なら君の期待通りですか?
少し上から目線も感じる僕の口ぶり。
今の僕じゃ追いかけられない
瞳を見つめる自信がなくて
→どこに行くの?ということは彼女は知らないうちに出て行ったのではなく出て行くその時を僕は見ていた可能性が高い。
わざわざ僕の目の前で出て行くそぶりを見せる彼女に、引き留めることを期待されていると思うけど、追いかけられない僕の構図。
その理由は後述の歌詞を見るにおそらく、彼女に愛されている自信はあるけど、彼女を愛している自信がないから。
呼びあうように出逢ったのに
→もとはといえば運命的な出会いで結ばれた2人だったのに、それが今ではこんな雨の中に彼女は出て行ってしまう。
「のに」という語尾にどこでこうなった?という後悔のようなニュアンスを感じます。
雨のにおい 冷たい風 不機嫌な雲
窓際の小さなサボテン
→冷たい風の日、雨の「におい」とはそろそろ雨が降りそうな気配のことか、もしくは雨の降り始め独特の湿った匂いのことか。
そんな日はおそらく砂漠の植物サボテンにとって水やりは不要。
こんな日にでも君ときたら水をあげてる
溢れるくらい水をあげてる
→それなのに、彼女はサボテンに溢れるくらいの水をあげている。
明らかに水をやりすぎで、サボテンは枯れてしまうかもしれない。
おそらく彼女は面倒見が良く世話好きで、それは裏を返せば愛情過多、過干渉とも取れる性格。
そんな彼女に対して僕は、「君ときたら」と半ば呆れている様子。
僕もサボテンと同じで、彼女の行き過ぎた愛情にうんざりしていたのかもしれない。
恋人という響きに すべて委ねて
顧ることもなくて
君が側にいてくれることも
惜しみない愛にも慣れていたんだね
→僕は「恋人」なんだから、好きなのは当たり前、愛情を注がれるのも当たり前だと思っていた。
本当は当たり前じゃない彼女の惜しみない愛に慣れきって、行き過ぎた愛情だとうんざりして、おざなりにして傷つけたからこんな雨の中彼女が出て行ってしまったと気づく。
何処に行くの? こんな雨の中
どんな言葉待ってるの?
心深く濡れてしまうだろ
→こんな激しい雨じゃ彼女の傷ついた心がもっと深く濡れて傷ついてしまうと思う僕。
推測の「だろう」ではなく断定の「だろ」という語尾には「だから迎えに行かなきゃ」ではなく、「だから戻って来ればいいのに」というあくまでも僕は部屋から出ないというニュアンスも感じる。
窓を開けて空を仰いだ
呼びあうように出逢ったのに
→窓を開けて雨が降る空を仰いで彼女を案じているようでも、「空を仰いだ」だけで、「外へ飛び出した」気配はない。
寒い雨の日に、雨風がしのげる暖かい窓際で小さな鉢の中に収まるサボテンのように、この部屋で彼女の愛情を当たり前に、さらにいえば少し迷惑そうに受け取っていただけの僕にこの鉢のような部屋から飛び出す勇気はないと思われる。
雨の音は途切れず聞こえている
知らん顔で黙ったサボテン
僕の事をザァザァと邪魔をしてる
君の居場所 かき消して
→匂いだけだった雨にザァザァという音も加わって激しさを増したことがわかる。
彼女の居場所が分からないのは、明らかに彼女を顧みなかった自分のせいなのに、ザァザァと降る雨にかき消されているから、サボテンも知らん顔して黙ってしまって教えてくれないから、と周りのせいにして現実を受け止められない僕の様子が伺える。
会いたいからって 口実に誘った映画を
はしゃいでいた日々を
どうして忘れていたんだろう
馴れあいの関係にウンザリするはずさ
→再び彼女との日々を思い返すと、かつては会うための口実に映画に誘うなど、僕も彼女に愛情を注いでいたことがわかる。
それなのにいつしか馴れ合いの関係になってしまって、デートに誘うようなこともしなくなって、そりゃ彼女もうんざりするはずだとようやく彼女の気持ちを理解する。
僕が触れた指先にそっと
やわらかいトゲが刺さる
→1番のサボテンは、彼女から愛情を当たり前に受け取る僕を表し、2番のサボテンは僕からの愛情を受け取れず枯れそうな彼女を表している。
おそらく日々の中で彼女はその枯れそうな辛さを訴えるなんらかのサインを出していたと思われるが、彼女は優しさや愛情ゆえに、遠回しに、僕に配慮して、決して怒るようなことはせず、「やわらかいトゲ」を刺してきた。
君が見せたささやかなサイン
見落としてしまっていたよ
今ごろ…痛い
→彼女にとってそれは精一杯のサインだっただろうが、僕はそのトゲの柔らかさに惑わされて、刺されたことに気づかなかった。
彼女が出て行って散々考えを巡らせて、やっとそのトゲに気付いて今ごろ…痛い。
とはいえ、それを「ささやかなサイン」と表現するあたり、この期に及んで気付かなかった自分を擁護してしまう僕がまだいる模様。
何処に居るの? こんな雨の中
僕の気持ち見つかった
僕らきっとうまくやれるはず
ほら、薄日も射してきた
→何処に「行くの?」から何処に「居るの?」に代わり、彼女が出て行ってから時間が経っていることがわかる。
この間僕はずっと彼女との日々を思い返していた。
思い返す中で僕がこれまでどれだけ彼女に愛されてきて、どれだけ彼女を傷つけていたか分かった。僕がこれまでどれだけ彼女を愛していたかも分かった。
出て行った時は彼女を愛しているかどうか分からなくて追いかけることが出来なかったけど、今は彼女を愛している僕の気持ちが見つかった。
雨が止んできて、薄日が差してくるのに合わせて、僕らもきっとうまくやれるはず、僕らの未来にも光が差してきたと思う。
小さな花を咲かそう
→僕も彼女も小さなサボテンだった。
お互い小さな鉢の中のサボテンらしく、大きな花ではなく小さな花を咲かせるように愛を育んで行こうと思い直す僕の言葉でこの曲はおしまい。