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過疎ってた頃のモブハントの思い出〜その4


人の少ない時間帯を含め何度もモブハントに参加していると、段々よく見かける顔ぶれが分かってくるのだが、その中でもYさんという人はこのサーバでもちょっと有名な人だった。

モブハントをしていると必ず居る人なのである。

昼、夜、平日、休日。割とどんな時間帯でもモブハントの現場へ行くと高確率で会えたのだ。

モブハン開始を待っている間、偶々同じパーティになった人と
「あの人いつも居ますね…」
という会話が出てくる程にそう認知されていた。

そんなモブハンに安定して現れるYさんに対して、モブハンに関わった他プレイヤーは敬意を持って接していたと思う。モブハン進行の流れを淡々とこなし、モブハンのやり方をYさんから学んだプレイヤーも多いだろう。いつでも居るので、自分としては見かける度に安心感すら覚えた程だ。


Yさんはララフェル族で、モブハン時はいつもナイトでタンクを出していたが
詩人のレイド装備を持っていたようなので、タンクがメインジョブという訳では無かったのだろう。

タンクは何かとその場を仕切ったり、バトル全体を把握してないといけない風潮が強い。しかも当時は今よりもヘイトの維持も少し難しかったので、ヘイトが飛ぶと「誰が悪いのだ」とギスギスし出し、仕切らなければならない上にヘイトまで責められたら取り付く島もない、となる。
そんな訳で、ダンジョンでもフィールド上でも全体的に負担が大きく、ゲーム全体を通してやりたがる人口が少ない。

DPS(アタッカー)はほっといても来るし、ヒーラーなら…と出せる人はタンクよりは居る。タンクは一人でも居ればパーティが成り立つのだけれど、その一人が中々来ないなんて事は今でも多い。そんな特有のゲーム環境の中、Yさんは率先してナイトに着替えてモブの前で待機しているのである。


黒魔しかほとんど触っていなかった自分も、そこでようやく他ジョブってどうなんだろうと触り始めた。そしていかに黒魔が、自分のことだけ考えていればいい楽なジョブだったかという事が分かるようになる。

魔法職の装備が一部使いまわせるので、まずヒーラーに着替えた。
『ヒーラーもしっかり攻撃しろ』という風潮を真に受けてガンガン攻撃していると、ナイトをやっているYさんが自己回復を使っている事に気付き
(クレメンシー使わせてすみません…)
と心の中で思いながら、すぐに回復を飛ばした事を覚えている。

そうやって少しずつリジェネを入れるタイミングとか、タンクをターゲットしながら攻撃するマクロを作ったり等しながら、ヒーラーのやり方を覚えていった。

自分自身はYさんと会話をした事も無く、直接怒られたりだとか指摘されたりだとかいった事は無かったが、そんな無言なりにモブハンを通して色々と役割を学んだところから、寿司職人が師匠の背中を見てるだけで仕事を覚える感覚ってこんななのだろうか、と勝手に思っていた。

そうして他ジョブを知るようになって、今では全ジョブいじるようになったおかげで他ジョブの負担も知れたし、気楽に着替えられるので色々な挑戦の仕方の幅を広げられている。

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Aモブミルカ。沈黙を打つ順番を決める「奇数」「偶数」と言うだけの掛け声を事前にしていた。



ところで自分は直接Yさんと会話をほとんどした事が無かったが、唯一のフレンドである同居人は何度か絡んでいたので又聞きしていた。出現条件が曖昧なモブについての情報を細かく教えてくれ、ネット以上に情報が速かった気がする。
その一方、プライベートな話は一切しなかった
そのロールプレイっぷりにも安心感と信頼が置けるのだった。


次回はモブハントがツアー形式になった話からしていきたい。
次で終わりだと思うけど、暁月始まる前に上げたい…。

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