二冊読めば元が取れるKindleUnkimited④
月額は980円、本・漫画一冊4、500円もする。
あまり本を読む習慣が無い自分の為に二冊選んで読むとする試みである。
普段少女漫画を読まない。が、それを凄く損なことだと思っている。
同性であるからなのか分からないが、女性の作家の感情描写には底知れない深さがある。
そこまで考えるか?と言えるほど登場人物が抱える感情、理由、心情といったミクロな部分についての掘り下げが、えげつない程の時もある。共感だけでは終わらないのだ。
口論になった時に、女性はその言葉をとっさに伝えることが上手くないと思われる節がある。だからこそこうした文章の「考え方」「何を思っていたか」がまとまった形になっているものは、例え拙かったとしても大いに価値がある。
今回は漫画ではなく小説だが、女性作家の作品を二冊読むことにした。
薄闇シルエット
角田光代の、サブタイトルが章ごとに付いているが話は一つに繋がっている長編小説である。名前は知っているのに何故読んでこなかったのかと思える作家だった。
主人公「ハナ」という女性は非常に天邪鬼であり頑固、他人の気持ちが汲めない上に自分の事すらよく分かっていない性格である。
が、それというのも自分自身に正直すぎるが故に引き起こしている不幸でもある。
彼女を取り巻く古着屋の共同経営者である友人や子持ちの妹、くっついたり離れたりしている彼氏といった人物たちはどこか芯を食っていない性格をしており、それがさらに「ハナ」の気持ちを揺らがせる要因に成り得ている。
母の死をきっかけに、それが家族や自分に転機をもたらしそうであるが、
とにかく葛藤という葛藤ばかりが描かれ続けるのである。
ハナは三十代後半であるが、ずっと若い世代に無自覚に嫉妬していたり、
せっかく創作的に始めた「布絵本」に対して迷いも多い。
文中にある、子持ちの妹が喚きながら訴える少子化対策云々もいまだに机上の空論ばかりであるし、この本自体2009年が初版で、十年以上も前のものにも関わらず全体的に読んでいてとても他人事とは思えなかった。
長編の物語は、成長を描くことがセオリーらしい。
この主人公も果たして成長があるのだろうか?
それが最終的には「百円のコップを買う」というとても些細なもので落ち着く。しかし、この些細な結果に彼女は今までにない純粋な希望を見出しているのである。
だらしない女であるが故に、読む人によってはかなりイラつかされるかもしれないが、この曖昧で意見のはっきりしない人物の思考回路を追うことが楽しめれば、彼女が非常にユニークな性格の持ち主であることが分かる作品とも言えるのではないだろうか。
紙婚式
自分が十代の頃から割と好きな作家である。読んだことがない本があったので選ばせてもらった。
短編集から構成されており、この作家の特徴としては、全体的に登場人物は自己肯定感の低い人間が大半である。
奔放な妹が、仲睦まじい兄夫婦を常に懐疑的な目でいたり、
良く尽くしてくれる嫁が忠誠過ぎて逆に不信感を抱いていたりと、そういった相手の「謎」な部分から物語は始まる。
大概はそうした行動に対しての理由が後ほどに提示されるので、ある意味ミステリー小説としても読める。
現実にありえそうなトラブルや、相手に対する疑心暗鬼といった思考回路のありさまを、激しい絶望とも違うがちょっと現実にありそうな憂鬱で事細かく表わされる。
自分が十代の頃は、大人はこんな憂鬱を抱えているのかとあまり異性のいない環境で勝手に斜に構えた想像をしていたが、現実はまあ分かるような所もあれば拍子抜けするようなこともあるので、これはこれで創作的と言える。
淡々とした日常のやるせなさに浸れる部分もあるので、個人的には卑屈寄りのLo-fiみたいなものだと感じる。
最後に
「男女平等」が飽きるほど長い事囁かれているが、どうしたって性差は埋めることが出来ない。だからと言って、諦めた態度で互いに接してしまえば、どこまでも不毛になってしまう。
こういったことはパートナーに限った話でもないのかもしれない。
ある程度まとまった意見を持ち、考え、それを明示し続ける意義は、長い拒絶期間に身を置いていた自分自身にぶつけられたもののような気がしている。それが社会的な繋がりというものを生み出すことが出来るのならば、きっと嬉しい。