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二冊読めば元が取れるKindleUnlimited③
月額980円、本漫画1冊4、500円。
ろくに読まない自分のために、二冊選んで読んでみようという趣旨である。
猫が好きと言えば、犬が好きと言って、何故か論争が始まることがある。
逆も然りであるが、不毛な論争であると言える。どちらも愛でればいいので。
そして、昔からある不毛な論争がまた一つ存在する。
村上龍と村上春樹、どっちが好き?という話だ。
いや、いまだに言われているかは正直知らない。
ただ学生であった頃は、ちらほら色々な媒体で聞いていた。
どちらも毛色が全く違うので、そもそも比較する事自体が可笑しな話なのでは、ある。
最近、「村上春樹」という文字をよく見かける気がしたので、
今回は、両者の作品を読んでみることにした。
予定だったのだけれど、KindleUnlimited内で、純粋な小説作品で読める対象が見つけられなかった。
なので関連の、イレギュラーな本2冊という選出になっている。
KindleUnlimitedから選ぶという、言わば「縛り」を自分に課しているため、ややこしくて申し訳ないが、このような形で試させてほしい。
念を押しておくが、これは決して対決というわけではない。
Ⅰ.村上龍と坂本龍一 21世紀のEV.Cafe
対談集である。章によって他ゲスト有り。
2011年の震災後頃に発刊されたものだが、冒頭から、原発関連により起こった企業や国の対応等のストレスから、
「このままでは、日本にもプラハの春が起こってしまう」
と述べているが、十年後の今、世界中でそんな状態になっているとは、自分含め誰も思わなかったのではないか。
また「幸せなインターネットの時代は終わった」の項目においてであるが
「インターネットが従来のマスメディアに近づきつつある。」
という話においても、もうそれを超えつつあるなと。
十年というのは、そういう長さのようだ。
ちょっと衝撃だったのが、村上龍が、二十代の援助交際についての小説を執筆しているが、自分がこんなことを書きたくないという所だった。
これは、当事者こそ書くべきといった主張からから出たセリフであるが、
社会問題や事件等、積極的に取り入れていく姿勢であると、どうにも重圧があるようで。
そしてリアリスト同士であるからなのか、全体的に未来を悲観した姿勢というのか、若干、陰謀論を話しているように聞こえなくもなかった。今どきの若い者は~みたいな話になりがちにも読める。
よく、頭の良さに差があると会話がしづらくなる、という話を聞くのだが、
個人的には、共通認識の量の差から生じるのではないか、と思っている。
共通して知っている事が多い同士であれば、説明する手間が省けるので、会話がより発展的になっていく、というように。
両者の会話の弾み方を読んでいると、そんな気がしてくる。
自分が読んだことがあるのは村上龍だった。「69」という69年頃の時代を反映した青春群像劇の小説である。読むとしたら以前までは「龍」だったと言える。
ただ自分も三十過ぎたからか、少しは変化したようだ。
それが下記の二冊目になる。
Ⅱ.1冊でわかる村上春樹
実は、村上春樹を読んだことがない。
これは自分が、恋愛や青春といったジャンルを無意識に、積極的に読もうとしてこなかったからではないかと思う。
厳密に言うと、J.Dサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の村上春樹訳というものだけ手にしたことがある。
が、その時はあまり上手く呑み込めず、後に野崎孝訳で読んだので、サリンジャーのみ消化した形で終わってしまっていた。
先程の一冊目の途中で休憩して、こちらを読み進めてみたのだが、
思いのほか、食い入るように読んでしまった。
この本は、村上春樹そのものの経歴や、長編作品並びに短編集、エッセイや影響を受けた作家などの紹介がしてある。
始めに小説を読むとき、主人公、あるいは語り手の人物像や状況の把握など、それらを自力で想像していかなければならない。
これが呑み込める時と呑み込めない時では、読むモチベーションも変わってくる。
この本は、まさに自分のような初心者に向けての本だったようで、
人物相関図や、深層意識の図といった絵があるおかげで非常にわかりやすく、どの時期から書こうとしたか、また本人の気持ちの変化といった
実在する作家の人生を、年表として辿っていく所が面白かった。
自分はこの作家の、攻略の仕方が分からなかったのかもしれない。
印象に残ったのは、解説の部分で、
『私たちというのは、それが何であれ、何かについて「気にかかる」ということを生きている証としてしている存在だからです』
文芸評論家 神山睦美氏
なんだかすごくかっこいい事を言っている。ファンの熱量がそう書かせたのではないかと変に考えてしまった。
KindleUnlimitedで検索していた時も、他者の書いた村上春樹についての本が非常に多く、知らない沼を見させて貰えた体験だった。
装丁にこだわりがあるらしいので、ジャケ選び感覚で選んでみてもいいのかもしれない。図書館行こうかな。
最後に
戦後や、学生運動を経験した世代の絶望のスケールが余りにも大きく、
読み応えが十分にあるのだが、体力をかなり奪われたようでもある。
そして外で雀の声が聞こえる。