スパイ訓練施設キャンプXを管理していたBSC、そしてその親玉であるイントレピッド
『キャンプX』のビデオはいかがだったろうか? あれによると、ジェイムズ・ボンドのアクションは本物だ。なぜなら、その原作者と演出家自身がキャンプXで公式マニュアルをもとに訓練されたスパイだったというからだ。
https://note.com/ikuokino/n/na1a12aa7a79d
他方で、うさんくさい、という感想もあるだろう。ドキュメンタリーの言っていることがだ。理由の一つはイギリスやカナダの機密法が諜報関係の文書を非開示にしているからだ。廃棄された文書も多いらしい。むしろ、機密扱いされてきたのに、なぜ知られるようになったか?、と問うべきなのだ。
キャンプXの存在が公然となった経緯は、半世紀以上にわたる情報の漏洩だ。それは伝説と呼んでもよい。ただし、漏洩したのも、されたのもキャンプXというカナダ人好みの伝説ではなく、英帝国のイントレピッドという伝説だった。
イントレピッド、というのは、勇猛な、という意味で、軍艦にもイギリスはこの名をつける。ほかにも例えば、激怒した、という意味のフューリアスという単語が軍艦のニックネームにされることがある。しかし、ここでのイントレピッドはスパイマスターのあだ名だ。コードネームまたは暗号名ともいわれるが、この呼び方が正式なものなのか、それとも本人が気に入っているだけなのか、私は知らない。
イントレピッドことウィリアム・S・スティーブンソンがカナダ生まれのスパイマスターだったのは史実だ。イギリスの諜報機関の元締めとして、ニューヨークを本部にして第二次世界大戦で活躍したという主張も揺るがない。この南北アメリカとカリブにおける組織がイギリス安全保障調整局、すなわちBSCた。だから、BSCは特異体というわけでなく、類似の組織はアジアにも置かれた。
では、なぜスティーブンソンの業績は疑われるのか? それは彼が統括していた諜報当局BSCの事績のうち、秘密諜報部、つまりMI6またはSIS、に関わる文書が開示されないからだ。他の部局が関わった活動は文書で証明できても、SISの活動は謎のままであり、おそらくスティーブンソン本人の情報はそこに含まれて永遠に開示されないことになっている。
さらにうさんくささを増すのは、上で述べた情報の漏洩がスティーブンソン本人によってもっぱら行われたからだ。仕事の時間なので、ここからは次稿で書きたい。