相互依存
関税は商品の代金とは別にかかる費用である。関税をできるだけ下げれば、国境を越えて商品は移動しやすくなる。これが自由貿易の考え方である。自由貿易が行われる国々の住民は、余計な費用をかけずに商品を売ったり、買ったりできるのであるから、選択の自由は飛躍的に増す。これが市場メカニズムの恩恵である。
しかし、同じ商品を国内で作っていた業者にとっては、外国からより低い価格で買えるとなると、自分が作ったものが売れなくなってしまう。輸入を減らして国民の仕事を守れ、という保護主義の要求は、選挙をつうじて政治家に直接、伝えられる。市場メカニズムのメリットが保護主義のそれに勝ることを広く国民に説得するのも政治家の責任であるが、これがなかなか行われない。
今回のテーマは、19世紀中葉、自由貿易がいかなる歴史的過程を経て実現し、またそれが契機となって生まれた相互依存をめぐる言説がいかなる展開をたどったか、である。
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