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SECIモデルと思考地図

知識創造プロセス:SECIモデル

あまりにも有名な知識創造プロセス図なのでご存じの方も多いと思いますが、このSECIモデルは、いかにして人類社会が今日のこの世界を生み出してきたのかを知識創造の観点から図解した、ダイナミックモデル図です。

SECIモデル解説:暗黙知と形式知の絶え間ない変換

知識は「暗黙知」と「形式知」の間の絶え間ない変換によって創造される。個人の知が経験によって身体知として蓄積された、言語化されていない暗黙知である場合、その知はそのままでは他者と共有できない。その知から新しい知識を創造しようとするならば、暗黙知を言語化して形式知に変換し、共有可能にすることが必要である。また、共有された、あるいは新たに創造された形式知は、そのままでは個人が活用することができないこともある。個人が外部から取り入れた形式知を活用するためには、いったん自分の中でその知識を消化して、暗黙知として自分の身につけるプロセスが必要なのである。
こうした変換プロセスを、SECIプロセスと呼んでいる。SECIプロセスは、下記4つの変換モードからなる。

共同化
Socialization
暗黙知の共有
共感知学習した内容を実践する場で、他の人の行動やインストラクターの行動から啓発されるネットワークを通じた従来のグループウェアではこの共同化プロセスが足りないため、アウェアネスへの注目が始まった

表出化
Exteralization
暗黙知の形式知化
概念知(コンセプト)従来からの知識習得を支援していくための具体的なコンセプトコンセプトを上手く伝えていくためには、メタファー、アナロジー、コンセプト、仮説、モデルといった情報の伝え方が重要

連結化
Combination
形式知の体系化
体系知ノウハウ=形式知=コンセプトを生活の様々な場面で実践していけるための組織や社会的仕組み
グループウェア企業文化や総合力としての企業力とよべるもの

内面化
Internalization
学習による暗黙知化
操作知学習そのものを支援する道具
マニュアル、手引き、ノウハウ書行動を伴う学習、学校、トレーニング、知識習得

この知識創造プロセスは、普遍性が高く社会のあらゆる場面で有効です。まだこの本を手にしたことのない方、特に組織や集団においてリーダーシップを取っている方は何はともあれ一読されたら、未来が明るくなることを請け合います。

出典:
「知識創造企業」野中郁次郎+竹内弘高 東京経済新聞社
「ナレッジサイエンス」北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 監修 紀伊國屋書店


このSECIモデルを掲載した「知識創造企業」が刊行されたのが1996年でしたが、それに先立ち1990年代初頭に米国HarvardBusinessReviewで発表されました。

"The Knowledge-Creating Company" (1991, Harvard Business Review): 知識創造のプロセスを詳細に説明
"Dynamic Theory of Organizational Knowledge Creation" (1994, Organization Science): ナレッジマネジメント理論の基盤となる重要な論文。

これらの論文は、ナレッジマネジメントの分野における基礎的な文献として広く引用されており、現在でも多くの研究者や実務家によって参照され、日本企業の持つ個人と集団のダイナミックな知識創造のモデルは世界中ビジネスシーンで学ばれ、デファクト化されていったようです。

ところがこのSECIモデルが世界中の学びに繋がった一方で、日本ではさほどビジネスシーンでは注目されていかなかったのでは?という疑問があったので、ChatGPTに尋ねてみたところやはり、、、
以下ChatGPT
1. 日本企業の創造的ダイナミズムとナレッジマネジメント
1980年代から1990年代にかけて、日本企業はその創造的なダイナミズムと優れた製品開発能力で世界を席巻しました。この成功の背後には、野中郁次郎氏が提唱したようなナレッジマネジメントが大きな役割を果たしていたと考えられます。

2. 日本におけるナレッジマネジメントの浸透とその限界
日本では、暗黙知の共有や共同体的な文化が企業内に根付いていたため、形式知として明文化されることが少なかったという側面があります。このため、ナレッジマネジメントの重要性が日本国内ではあまり認識されず、結果としてナレッジの形式知化と共有が進まなかった可能性があります。

3. 知識の流出とグローバル化
野中氏の理論は、米国をはじめとする世界各国で注目され、取り入れられました。しかし、日本国内で形式知として蓄積されなかった知識やノウハウが海外に流出し、日本の競争力が相対的に低下したという見方もできます。これにより、日本企業はバブル崩壊後の経済的な低迷と重なり、「失われた30年」の要因の一つとなった可能性があります。

4. バブル崩壊後の影響
バブル崩壊後の日本は、経済的な不況に加え、構造改革の遅れやグローバル競争の激化に直面しました。この時期に、ナレッジマネジメントの重要性が再認識されず、知識の体系的な管理が進まなかったことが、経済の空洞化に寄与したと考えられます。

5. 現在の視点から
現在では、ナレッジマネジメントの重要性が広く認識されており、多くの日本企業がその導入と実践に取り組んでいます。しかし、1990年代から2000年代初頭にかけての遅れが、日本の競争力に長期的な影響を及ぼしたことは否定できません。

結論
ナレッジマネジメントの理論と実践は、日本企業の強みを支える重要な要素でしたが、その価値が国内で十分に認識されず、形式知としての蓄積と共有が不十分だったことが、知識の海外流出と経済の空洞化に繋がった可能性があります。バブル崩壊後の経済低迷も相まって、日本の「失われた30年」の一因となったと言えるでしょう。
この視点は、多くの経営学者や経済学者によって議論されており、より詳細な分析や事例研究を通じて、さらなる理解が進められています。

以上ChatGPTのナレッジマネージメントに関するReportでした。

SECIモデルと思考地図

さてSECIモデルの持つ普遍性については書籍を読んでいただくとして、思考地図への影響について、当時を振り返ってみたいと思います。

当時お付き合いをしていたリコーデザインセクションの宇田川さんから、心理学テストで用いられるバウムテストの「空間象徴図式」は思考地図に似ていますね、と紹介され、その頃はもっぱらタテ軸とヨコ軸に挿入する対概念の類似を集める事をしていただけなので、空間象徴図式のようなタテとヨコを統合した概念地図が既に有る事に驚きました。そして「思考地図には普遍性がある!」と勇気をもらいました。
一方で、空間象徴図式は心理学テストに使われているだけに、人間心理を座標に組み込まれていて、下方向に対する意味が退行や敗北といったネガティブな方向として捉えられていましたが、思考地図では上方向の個人に対して下方向は集団や組織といった社会性の方向として捉える解釈を与えていくことにしました。

そして、上下左右を統合的に捉える概念モデルを考えていたときに、SECIモデルに出会ったのです。

SECIモデルは、暗黙知と形式知という軸が表記されていたので、最初は思考地図とは座標が違うのかも、と思って本を読み進めてみるとさにあらず。どうやら暗黙知と形式知の循環モデルの背景に、個人と社会の関係性が含まれていることが分かり、野中郁次郎氏と竹内弘高氏著述の本を探し、SECIモデルの理解を深めていきました。そして同時に、思考地図の中にSECIモデルの概念を組込むみ、SECIモデルとは角度を変えた概念モデルとして組み立てていきました。

思考地図の活用モデル

下記の図は、思考地図をどんな目的や用途に活用していけるかを実践を通じて構成していった「思考地図の活用モデル地図」です。SECIモデルや、前回Noteで紹介した「事業戦略フレーム-新規事業創出論」などを重ねながら、思考地図へと組み込んでいった思考地図版ナレッジマネージメントの統合モデルです。

SECIモデルでは左上が起点でしたが、思考地図では左下から右回りに説明します。(この起点はSECIモデルでもそうですが、どこが起点と捉えるかはその時の状況次第でもあるので、あまり拘ることは無いと思います)

収集/整理/分類
集積的地図

ナレッジは過去に培われた知識の上に成立する。それを辞書といい情報=ビットの時代はデータベースと呼ぶ。様々な視点の思考地図を辞書的に集積し俯瞰する地図が思考世界地図となる。

動向/展開/分析
状況的地図
新聞、ラジオ、テレビ、インターネット、メール、SNS 、 、
私たちはメディアを通じて今という状況を把握しようとしてきた。思考地図では座標の持つ相対価値でイメージを配置することで、物事の動向を分析している。

発想/仮説/概念
創造的地図

発想や仮設が何も無いところから突然やってくる事はなく、何らかの準備が発想の源となる。思考地図では、交差する相対的2軸を操ることによって新しいナレッジを創出している。

組織/戦略/構想
戦略的地図

ナレッジが集合して体系的な価値を創出することで、組織や社会を導くことが可能となる。思考地図では汎用的座標と戦略的モデルを提供する。


知識創造スパイラル-SECIモデルと思考地図の符合

下図に示しますようにSECIモデルと思考地図活用モデル図はほぼ同義ですが、真ん中に配したSECIモデルは、組織における知識マネージメントサイクルとしての4象限、共同化→表出化→連結化→内面化→(再び)共同化、、、のスパイラルモデルが明快に捉えられていることが分かります。それに対して思考地図の活用モデル地図(左右外側)は、4象限における知的活動に求められる機能や価値について提示しています。同時に思考地図の活用ですので、各象限毎に地図としての体裁も提示しており、全ての象限での地図の表出化を合わせ持つという意味において、SECIモデルにおける右上の象限「表出化:暗黙知の形式知化」として位置づけることもできます。

以上、知識創造プロセス:ナレッジマネージメントのSECIモデルの紹介とそれに啓発されて取り組んだ思考地図の活用モデルの紹介でした。

ビジネスフレームとしてポピュラーなスパイラルモデルとしてPDCAがあります。PDCAは品質管理において生まれたモデルですので、物事を間違いなく推進する場面には適していますが、新しい価値を生み出しそれを育てていく創造的な場面には使えません。その点SECIモデルは、日頃のビジネスにおいて新たな価値を創出する場面で有効です。ところが、PDCAがビジネスのあらゆる場面で活用され、万能のスパイラルモデルになっているのは、日本のビジネスシーンが停滞していっている遠因では無いかと危惧しています。何故かというと、PDCAのC:Check評価という視点があらゆるビジネスシーンに潜り込んでいったために、創造的にトライ&エラーしていく場面にまで後ろ向きのベクトルを持たせた価値観が蔓延していったのでは無いか、と思うのです。

PDCAが災害に備える日本人気質に合ったのかもしれませんが、日本が生み出した叡智としてのSECIモデルが、日本のビジネスモデルにおけるデファクトになっていくことを願ってやみません。

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