『御伽草紙』の「浦島太郎」の真実/昔話「浦島太郎」
れんこんnote 087
『御伽草紙』の「浦島太郎」の真実
『御伽草紙』の「浦島太郎」
『御伽草紙』にある「浦島太郎」の話のほうが、現代版「浦島太郎」より好きです。
乙姫と浦島太郎が乙姫の故郷である「常世の国」で結婚するってロマンチックだと思いませんか。
浦島太郎はこの世に戻ろうとせず、「常世の国」でいつまでも乙姫と幸せに暮らせば良かったのにと考えてしまうのは、凡人の浅はかさでしょうか。
浦島太郎が帰りたいと言わなければ、昔話として語り継がれることはなかったでしょう。
皆さんに、語り継がれてこなかった『御伽草紙』の「浦島太郎」の真実をご紹介することにしましょう。
浦島太郎が帰りたいと願った理由
『御伽草紙』では、ホームシックになって帰りたいと浦島太郎が言ったようですが、真実は違いました。
浦島太郎は、常世の国で何の不自由のない暮らしをしていました。
しかし、自分の力で生きている実感がありませんでした。
太郎は、自分の力で生きてみたかったのです。
そのことを知ったので、乙姫は「一旦帰ると、もう戻ってこれない」と悲しみつつも、太郎を故郷に帰してあげたのたのです。
玉手箱を渡した乙姫の気持ち
「常世の国」から「この世」へ戻るときには、太郎の世界と常世の世界では時間の過ぎ方が違うので、太郎の時間を封じていた玉手箱を渡さねばなりませんでした。
太郎が「この世」に戻って、玉手箱を開けると、太郎が老人になることを乙姫は知っていました。
だから、「玉手箱を決して開けてはいけません」と言ったのです。
実は、乙姫は玉手箱を開けると老人になることを太郎に話していました。
玉手箱を開けないよう話した上で、太郎に自分の力で自分の人生を生きていってほしいと伝えたのです。
乙姫は浦島太郎を心から愛していたので、自分の人生を歩みたいと言う太郎を「この世」に戻してくれました。
この世に戻った浦島太郎の気持ち
この世に戻った浦島太郎は、すぐに自分が300年後の世界に戻ったことを知りました。
途方に暮れましたが、「自分の力で自分の人生を歩みたい」と言って、乙姫と別れて来たので、太郎は頑張ることにしました。
乙姫との「玉手箱を開けない」という約束がありますから、玉手箱を開けることはありませんでした。
知らない土地で、知らない人ばかりの中で生きている人はたくさんいます。
自分一人が苦しいわけではないと考え、太郎は一所懸命に生きていこうと努めました。
でも、300年という年月の隔たりは想像を絶しました。
魚の捕り方は太郎の知っている方法と全く異なっていました。
でも、この時代の漁師の仕事を覚えました。
一番困ったのは、常識の違いです。
自分が当たり前と思う考え方を周りの人に理解してもらえませんし、周りの人の常識を理解できませんでした。
でも、理解しようと努めました。
些細なことで仕事仲間と喧嘩して落ち込んだとき、乙姫と話がしたいと思いました。
玉手箱を見入ると、乙姫を思い出します。
乙姫が手にした玉手箱を抱いて、乙姫のぬくもりを感じていました。
そんなとき、ふと、玉手箱を開けてしまったのです。
玉手箱を開けて老人になった太郎は、「これでいい」とつぶやきました。
「これもまた自分で選んだ人生だ」と思ったのです。
熟慮の上で決めた人生ではなく、気持ちが揺れ動く中で、ちょっとした瞬間に選んでしまった人生でした。
それでも、太郎は「これでいい」と思いました。
乙姫と出会って楽しいひとときを味わい、自分の人生を生きたいと「この世」に戻り、精一杯努力しました。
乙姫を思い、ふとした瞬間に玉手箱を開けてしまい、老人になってしまいましたが、乙姫に出会ったことや精一杯自分の人生を歩もうと努力したことは素敵な人生だったと思えたのです。
おしまい。