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雨がしとしと

れんこんnote 078


雨がしとしと


雨がしとしと日曜日
僕は一人で
君の帰りを待っていた


中学生だった私には
「君の帰りを待っていた」の感覚が
わからなかった
彼女の帰りを待つなんて
ありえなかったから

でも
「雨がしとしと日曜日」の感覚は
わかる気がした

しとしと降る雨で外に出られず
一人 窓の外を眺めていた
早くあしたになればいい
学校へ行けば
初恋の彼女の横顔が見られると思った



雨がしとしと降っても
定時に仕事場へ行き 働いた
雨は鬱陶しかったが
仕事に夢中で
「しとしと」を味わう余裕はなかった


仕事を引退した今
しとしと降る雨は
洗濯物干しで困ってしまう
でも 彼女の帰りを待つことはない
いつも側にいるから

もし 彼女が先に死んだら
雨がしとしと降る日曜日に
どんな思いを抱くだろうか

彼女の帰りをひたすら待っているだろうか


彼女より先に死なないと決めている
彼女に寂しい思いをさせたくないから




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れんこん/奥井
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