解決できない問題を抱えたとき、どうしますか?
れんこんnote 030
解決できない問題を抱え、その問題が心に大きくのしかかったとき、心の扱いはとても難しく、対応に窮してしまいます。
まさに、れんこんnote027「心の扱いに困ったときに心がけていること」の最後にお話しした、「3つの方法で解決しないとき」の状況に追い込まれます。
そうしたとき、あなたはどうしますか?
解決できない問題を抱えたときとは、どんなとき?
夫婦が離婚するのは珍しいことではなくなりました。
多くの夫婦は合意の元で離婚するので、互いに苦しんだり、傷ついたりすることはあるでしょうが、自分で選んだ道です。
自分の人生を自分で選ぶということは重要なことですので、離婚という選択を自分で決断し、自分の人生を歩むという点では良いことだと、私は思っています。
しかし、子どもにとっては、自分で選択した道ではありません。
もしかしたら、解決不能な問題として、心が押しつぶされるかもしれません。
特に、父母が子どもに心配をかけたくないと努力し、子どもの前では喧嘩をせずに仲の良い両親を装っていたとしたら、子どもにとっては解決不能、理解不能な問題として重くのしかかるかもしれません。
また、親の離婚で貧困に陥り、未来を思い描くことができない子どももいるでしょう。
そうした子どもたちは、親には言えず、教師にも言いません。
そんなとき、教師は何をしてあげられるでしょうか。
教師が関わる問題ではないという主張は正しいかもしれません。
でも、苦しんでいる子どもが目の前にいて、何もできない自分を自覚することはとても辛いことです。
その辛さから逃れることもできず、問題を解決することもできません。
そうしたときの心の扱いをどうしたらよいでしょうか。
発達障害で苦しむ子どももいます。
子ども自身では解決できないことです。
苦しんでいる子どもに教師のできることは限られています。
「医師やカウンセラーに任せればよい」で済ますことができれば良いのかもしれませんが、苦しんでいる子どもを目の前にして、教師の心も痛みます。
こうしたとき、子どもの心や自分の心の扱いに困ってしまいませんか。
解決できなくて、逃げることもできないのです。
ネガティブ・ケイパビリティ
解決できないことはわかっているけれども、「解決できないから、仕方ない」とあきらめることもできない、という状況に立たされることが結構あります。
「解決できる」と希望を持つことができず、「解決できない」と割り切ることもできない宙ぶらりんの状態です。
こうしたときの心の扱いには、本当に困ってしまいます。
実は、こうした宙ぶらりんの状態に耐える力を、「ネガティブ・ケイパビリティ」と言うそうです。
帚木蓬生さんの著書に「ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力」という本があります。
その本の中で、帚木さんは「ネガティブ・ケイパビリティ」について次のように書いています。
ネガティブ・ケイパビリティは拙速な理解ではなく、謎を謎として興味を抱いたまま、宙ぶらりんの、どうしようもない状態を耐え抜く力です。その先には必ず発展的な深い理解が待ち受けていると確信して、耐えていく持続力を生み出すのです。
「ネガティブ・ケイパビリティ」を身につけたら、うまく心を扱うことができるようになるでしょうか。
「離婚する」と言い合いながら、離婚しないでいる夫婦
夫婦関係がうまくいかなくて困っているという相談を受けたことがあります。
気が合うのはお酒を飲む習慣だけで、他はことごとく意見や趣味が合いません。いつも喧嘩をしていて、子どもたちからは「いつ離婚するの?」と聞かれるそうです。
どうしたらいいかとという相談です。
私は次のようにお話ししました。
* * * * *
あなた方夫婦は、20年以上も関わり合いを続けてきました。
「離婚する」と言いながら、離婚せずに関わり合って夫婦生活を続けてきましたね。
あなた方夫婦は、これまで時と場を共にしてきましたし、これからもそうしていくと思いますよ。
時と場を共にする相手は、大切なパートナーです。
気が合わなくても、仲が悪くても、時と場をずっと共にすることができたら、それはとても大切なパートナーです。
人生を共にすることで、その人がかけがえのない人になっていくのです。
今までと同じように、上手に喧嘩しながら、奥さんと関わり合い続けていけばいいのではないですか。
もうすでに、奥さんはあなたにとってかけがえのない人になっているのではありませんか。
同じように、あなたは奥さんにとってかけがえのない人になっていると思いますよ。
* * * * *
このご夫婦お二人とも、「ネガティブ・ケイパビリティ」をお持ちの方々ではないかと思っています。
「仲良くする」ことも大事ですが、それよりもっと大事なことは、「ネガティブ・ケイパビリティ」を発揮しながら「関わり続ける」ことでしょう。
心の扱いに困ったときに心がけている4つ目の方法
心の扱いに困ったときに心がけている4つ目の方法については、もうおわかりのことと思います。
4つ目の方法として心がけていることは、「ネガティブ・ケイパビリティ」を高めることです。
でも、どうすれば「ネガティブ・ケイパビリティ」を高めることができるでしょうか。
「謎を謎として興味を抱いたまま、宙ぶらりんの、どうしようもない状態を耐え抜き、その先には必ず発展的な深い理解が待ち受けていると確信して、耐えていく持続力」なんていう力を自分の中に育てるなんて、まったく自信がありません。
歳を取ると、鈍感力が増しますので、そうした力を少しずつ身につけられるような気もしますが、身につくという自信はありません。
自力で「ネガティブ・ケイパビリティ」を高めることができないのなら、他力で高める方法がないかと考えました。
考えついた方法の1つが、宙ぶらりんで苦しんでいる思いを聞いて、受け止めてくれる友人を持つという方法です。
友人は1人で十分です。
高校や大学時代にそうした友人を1人つくれたらいいですね。
友人に話すことで、宙ぶらりんのまま耐えていくことが、一定期間、可能になります。
ずっと耐えていくことはできないので、耐えられなくなったら、また友人に話を聞いてもらいます。
そうしながら、耐え続けていくのです。
もし、話を聞いてもらえる人がまったくいないなら、別の方法があります。
最近、私が活用している方法です。
人通りの少ないところに立っている大きな木で、ちょっと心惹かれる木を探します。そして、その木に語りかけ、話を聞いてもらうのです。
木に話を聞いてもらうと、少し気持ちが楽になります。それを繰り返しながら、宙ぶらりんの状態を耐えていきます。
木が好みでない人は、空や雲に語りかけるのもいいかもしれません。
追伸
現在、学校は、課題発見や課題解決の学びを取り入れようと悪戦苦闘しています。
とても大事なことなので、進めていくべきだと思っています。
でも、子どもたちが抱える課題の多くは、解決することができません。
私たちが抱える課題の多くは、解決できない課題ばかりです。
なぜ、解決できないのか。
それは、自然や地球、宇宙のことを、私たちがほとんど知りえていないからではないかと、私は思っています。
ですから、解決できなくてあきらめられなくて苦しんでいるとき、自然や地球、宇宙に、話を聞いてもらうことが一番良いのではないかと思います。
そうしたことを、子どもたちと一緒に考えてみるよ良いと思うのですが、いかがですか。
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