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人生は変えられますか?/昔話「花咲か爺さん」

れんこんnote 047


隣の老夫婦が歩んだ人生

 花咲か爺さんの昔話から100年ほどたったころのお話です。

 怠け者で欲張りな隣人夫婦の孫の孫に当たる人がいました。
 彼の話によると、彼の家には代々語り継がれてきた門外不出の話があるのだそうです。
 その家の当主だけに伝えられてきた話です。

 こんな話です。

 花咲か爺さんは大名からもらった褒美の金銀財宝を近所の人たちと分け合ってしまいました。
 怠け者で欲張りな夫婦ももらったのですが、欲張り爺さんは面白くありません。

「あいつは持って生まれた性格がいいんだ。
 おれは生来欲張りでひねくれた性格を持って生まれた。
 あいつを見ろ。
 褒美でもらった財宝をみんなに分けてしまった。
 どんな理不尽にも明るく前向きに立ち向かって、最後には幸せになる。
 それに比べて、おれは不幸せのままだ。
 持って生まれた性格は変えられないし、人生も変えられない。
 おれも花咲か爺さんみたいな性格に生まれたかったよ。」

 その話を聞いた寺の住職が花咲か爺さんの過去を話して聞かせてくれました。

「花咲か爺さんは昔、盗賊の頭をしていたんだ。
 金を巡っての騙し合い、殺し合いの毎日だったそうな。
 あるとき、心やさしい娘に惚れ、それまでの暮らしに嫌気がさした。
 そこで、足を洗ってこの地へ流れてきた。
 それから、惚れた娘のためにどんなことがあっても和やかな顔でやさしい言葉を使い、人に親切にすると決心して、続けているんだよ。
 心のほうは変えられないので、行いだけを変えているんじゃ。
 今でも、我慢ができなくなったときには、ワシのところに来て話して帰るんじゃよ。」

「お前さんも人生を変えたければ、行いを変えてみることじゃの。」

 住職の話を聞いた欲張り爺さんは、こう思ったそうです。
「この年では、人様に何と言われるかわからんから、行いを変えるなど恥ずかしくてできん。
 人様に知られなければいいんだが。
 ともかく、花咲か爺さんには礼だけは言っておこう。」

 その後、欲張り爺さんはそれまでとあまり変わらず、人に嫌みを言ったり、欲張りなままでしたが、死んだときには安らかな顔をしていたそうです。

 門外不出の話とは、2つあったそうです。

 1つは、花咲か爺さんの過去の話です。

 もう1つは、村のはずれを流れる川の土手に植えられた何1000本も桜の木の話です。

 この桜の木は欲張り爺さんが人知れず植えたものだったのです。
 欲張り爺さんが死ぬとき、婆さんと息子に
「桜の木を植え続けてくれ。
 しかし、そのことは誰にも言わんでくれ」
と頼んでいったのでした。

 という話があったのですが、門外不出であったため、全く知られていません。

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