謎と疑問とメッセージ③/絵本「100万回生きたねこ」
れんこんnote 105
謎と疑問とメッセージ③/絵本「100万回生きたねこ」
謎と疑問とメッセージの第3弾です。
第4の謎と疑問とメッセージ
第4の謎です。
白ねこは果たして生き返ったでしょうか。
それとも生き返らなかったでしょうか。
白ねこの一生が一回目であったこと以外は、絵本には何も書いてありません。
ですから、答えはありません。
ただ、もし答えがあるとすれば、謎そのものが答えではないかと私は考えています。
つまり、白ねこが生き返ったか、生き返らなかったかを考えることそのものが答えなのだという答えです。
主人公のねこは自分の存在価値を見出して、生き返りませんでした。
これだけですと、私だけの物語です。
白ねこが生き返ったか、生き返らなかったかを考えることで、自分以外の存在の価値も考えることになります。
つまり、私たち、weの存在価値や物語を考えることになります。
もう少し視野を広げてみますと、私たちの世界と相対する世界、彼ら、theyの世界の存在価値や物語もあります。
さらに、weとtheyを合わせた大文字のWEという絶対世界の存在価値や物語もあるのではないでしょうか。
ここには「自分以外の存在のことにまで思いを馳せなさい」というメッセージが隠れているように、私には思えました。
IとYouだけの世界
米国のトランプ大統領やロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席を見ていると、「IとYouだけの世界」になっていくように思えてなりません。
2国間のIとYouだけで交渉して、強い者が自分の主張を通すやり方です。
自分とは異なる価値観を大切にする人々がいるということに思いを巡らさない世界になっていくような気がしてなりません。
これまで多様性を重視するあまり、その対応に追われ、準備に翻弄されてきました。
「みんな違ってみんないい」と言われ、自分の価値観を強く主張できない人の中には、何を大事にしたらよいのかわからなくなった人もいました。
複雑すぎて、何が何だかわからないようになりました。
もっとシンプルに生きたいという人が増え、多様性を忌避する人々が増えてしまったような気がしています。
これから世界はどうなっていくのでしょうか。
weの世界やWEの世界はどうなっていくのでしょうか。
そんなことも考えてしまいました。
ところで、「100万回生きたねこ」の謎と疑問とメッセージを読み解く話は、V高校の卒業式で話したものに手を加えた話です。
卒業式の前年11月に、作家の佐野洋子さんががんで死去されました。
佐野洋子さんを偲んで、「100万回生きたねこ」を題材とした卒業式式辞としたのでした。
第5の謎と疑問とメッセージ
最後に、第5の謎です。
生き返らなかったねこはどこへ行ってしまったのでしょうか。
それでも生き返るという選択肢はなかったのでしょうか。
「100万回生きたねこ」の話は、輪廻からの解脱と読むこともできます。
「無門関」という公案集のなかに「百丈野狐」という公案があります。
「不落因果」、すなわち、「修行のできた人は因果に落ちない」と答えた老人が500回、野狐として生きることを強いられました。
ところが、百丈禅師に「不昧因果」、すなわち、「修行のできた人は、因果の理法を昧まさず、明らかにこれに従って生きる」と告げられて、老人は輪廻から解脱することができたという話です。
老人もない、野狐もない、生き返るも、生き返らないも、どちらも跡形もなく、心にかかるものが一切ない、という世界だそうです。
禅の公案は、言葉で理解できるものではありません。
ここでは、「簡単に理解することのできない未知の世界がある」というメッセージとして受け取っていただければ十分です。
問いそのものを生み出す
さて、「100万回生きたねこ」の話を題材に、様々な謎や疑問を追いかけ、メッセージを自由に読み取ってきました。
いかがでしたか。
問いを生み出す作業に興味を持てましたか。
皆さんには、与えられた問いに答えるよりも、問いそのものを生み出す人になってほしいと願っています。
人類が築き上げてきた「知」を継承し、発展させてほしいと願っています。
人類が直面している「課題」に立ち向かうことを、自分の使命としてほしいと願っています。
皆さんが日本の未来や、世界の未来、地球の未来を創っていくのです。
ワクワクしませんか。
先が見えないから面白い、課題がたくさんあるからやり甲斐があると思いませんか。
どうぞ、自分の持っている能力を全開にして、自分の一生を楽しんでください。
5つのメッセージ
ところで、「100万回生きたねこ」の話から読み取ったメッセージが5つありました。
この5つのメッセージを皆さんの門出を祝う言葉とさせていただきます。
1、充実した人生をつかむチャンスは100万回与えられている
2、それは誰の課題なのかを考えなさい
3、自分の存在価値や使命を見つけなさい
4、自分以外の存在のことにまで思いを馳せなさい
5、簡単に理解することのできない未知の世界がある
この5つを皆さんに贈ります。
改めて、皆さん、卒業、おめでとうございます。
皆さんがV高生でいてくれたことに感謝します。
ありがとうございました。
というわけで、途中から卒業式式辞になってしまいました。
卒業式式辞と後から加えた文章が入り混じっていますが、お気づきでしたか。
お楽しみいただけましたでしょうか。