「午前五時にピアノを弾く」感想・レビュー
steamで配信中の「午前五時にピアノを弾く」のプレイ感想・レビューです。
これを本当に無料で遊んでいいのか不安になるくらいのクオリティでした。
レビューするひと
フリーゲームもノベルゲームも大すき。キャベツの千切りにドはまり中。
■ゲーム基本情報
[タイトル]午前五時にピアノを弾く
[ジャンル]短編テキストアドベンチャー
[ハード]steam(Win/Mac)
[開発]Kazuhide Oka
[販売]Kazuhide Oka
[発売日]2023.5.2
■ストーリー・世界観
彼女が住むこの町では、ときどき、濃い霧が出る。そんな日に出かけて戻って来なかった人もいるらしい。だから、住人たちは濃い霧の出た朝にはあまり外に出ない。
彼女は霧が好きだった。だから霧の濃い朝には散歩に出かける。
けれど、なぜ霧が好きなのかはよく分からない。
よく分からないから、霧の朝は好きじゃない。
曖昧な感情を抱えたまま、彼女は今朝も霧の中へと出かけていく。
■さっくりレビュー
5点満点で4項目、20点満点のさっくりレビュー。
レビュー[総合点:16点]
クリアタイム
END1到達 53分
(全END回収 1時間27分)
設定・ストーリー[4点]
短編のノベルゲームとしては十分な設定とストーリー。どんでん返しのようなものはなく、きちんとしたルートでストンと着地する感じ。
ENDは3つあって、これは分岐ではないので、これだけ雰囲気を作り込んでいるゲームには珍しくかなり丁寧に結末まで描写される。
ある程度までであとは読み手に任せても良いのでは、と思わないでもないけれど、そうすると雰囲気ゲーと言われて終わってしまっていたかもしれないので、きっとこれが正解。
システム・操作感[4点]
難易度GAMEでプレイ。
ゲームパートでは主人公の行動を必ず2択から選ぶことでパラメータと時間経過に影響が起きる。パラメータは規定を超えるとゲームオーバーになるので、ここをうまく調整しながら時間を進めるのが基本システム。
個人的にパラメータのバランスを取るタイプのゲームは大好きなのでめちゃくちゃ楽しかったけれど、ちょっと運ゲーなところもあるので嫌な人は難易度を変更するのがおすすめ。
実際、2回ほどゲームオーバーになると難易度の変更を薦めてくれる。手厚い……!
かなりシンプルで無駄が無いUIだけど、ユーザーが引っ掛かりそうなタイミングではフォローがしっかり入るので、痒いところに手が届きすぎている。すごい。
ゲームパートのテキストが本当に良くて、霧の中という夢と現実の境界が曖昧な感じと静謐な狂気があって素晴らしい。
グラフィック[4点]
ゲーム内は基本的に写真を加工したと思われる画像だけど、かなり強い加工だし、全体の色調を抑えた感じに統一していてかなり良い雰囲気。
ノベルゲームはダークモード的な配色のUIが多いイメージだったけれど、今作は白系がベース。
このあたりもテーマが一貫しているが故にデザイン周りにも迷いが無い印象。
サウンド・BGM[4点]
基本的に登場楽曲は少ない。ただただ優しく静かなピアノ曲が流れる。
怖がらせようとか、不穏な雰囲気を出そうとかそういうわかりやすい演出のための曲が無いので淡々としていて逆に良い。
良かった点
とにかく徹頭徹尾伝えたいこと、描きたいことがはっきりしている。
恐らくみんな年齢を重ねる上で大なり小なり感じてきた、記憶や忘却、離別や変化、成長への恐怖といった要素を優しい物語に綴じた作品。
ほんのり切なくて、とにかく優しい。
悪かった点
個人的には大満足だけれど、やはりテキストアドベンチャーというジャンルのゲームに枠組みされる以上、ゲームパートが評価が分かれる点じゃないかと思う。
これだけ惹き込む力が強い没入感のあるテキストだと、ストーリー自体に直接関係がないゲームパートが嫌われかねない難しさがある。
けど、恐らく作者さんもそれをわかっていてこれだけ細かく難易度設定を用意したのだろうから、大人しくそのご厚意を享受してプレイすれば良いと思う。
その他
個人的には本編はもちろんだけど、ゲームパートの断片的な夢を見ているようなテキストがすごく好きだった。
クリア後にゲーム部分だけを楽しめる「お散歩モード」が解禁されたようなので、楽しみ。