5つのコミュニティを運営する“コミュニティフリーランス”長田さんに学ぶ・コミュニティの手引き
近年、『コミュニティ』という言葉をよく聴くように感じます。
いいなあと思う発信をしているひとは、会社とは別の特定のコミュニティに属していることをよく目にしたり、私自身も、コーチとして1対1で関わるだけでなくその人がよりその人らしくあれる場や“コミュニティ”にとても関心があります。
でもどこか捉えどころがない“コミュニティ”という存在。
今回は、コミュニティフリーランスとして5つのコミュニティに関わっている、長田涼さんから『複数のコミュニティ運営に関わっているからこそ見える、コミュニティそのものの概要や、動き、その価値』などについて伺いました。
※こちらはNPO法人greenzの『コミュニティの学校』第4期・第1回のイベントレポです。
▼『コミュニティの教室』開催概要・詳細はこちら
第1回の登壇者は、コミュティフリーランスとして活躍されている長田涼さん。
長田 涼(Nagata Ryo)
1991年に京都府で生まれ、尼崎で育つ。新卒でユニクロに入社、店舗経営を学ぶ 半年後退職し、スポーツイベント会社へ転職 サッカー日本代表戦やプロ野球のイベント制作を担当。 その後、IT企業へ転職し SNSコンサル・日本フレスコボール協会事務局長に就任。
2018年8月から独立し、コミュニティフリーランスとなる 。現在は、コミュニティマネージャーとして、5つのコミュニティに関わり、コミュニティに関する登壇や発信などコミュニティに関すること全般をしている。
好きなものはカレーとサウナとスポーツ フレスコボール日本代表選手もやっている。
(↓長田さんがどのような考えを持っていらっしゃるのか分かるお勧めnoteです。)
==以下は講義内容になります==
1.5つのコミュニティ
改めまして、僕はコミュニティを生業にしているフリーランスとして、
主にオンラインのコミュニティのコミュニティマネージャーをしています。
僕の関わっている5つのコミュニティはこちらです。
①Wasei Salon
②T4 TOKYO
③渋谷をつなげる30人
④mint
⑤ NPO法人greenz
一つずつ簡単にお話ししますね。
① Wasei Salon
「これからの働くを考えよう」というテーマを掲げて活動しているオンランサロンです。2018年4月に誕生し、初めは21人限定のクローズドな空間でしたが、2019年8月にリニューアルしていまは約90名ほどで活動しています。
◆活動内容としては、、、
・オンラインでの対話やコミュニケーション
・メンバー限定のリアルイベント
・オフラインの場として、co-ba ebisuの利用
・コミュニティポイントの活用
具体的にどんなことをしているか少し話すと、「働く」について考える会をしたり、今度も確定申告みんなやる会をしたりメンバーが主体的に活動している場です。
②T4 TOKYO
T4 TOKYOは卓球を「コミュニケーションツール」として捉えて、卓球を通じたコミュニティづくりをしていて、そこのコミュニティ周りのお手伝いをしています。
また、T4 TOKYOは「オフィス×卓球」っていう文脈で商品作りもしています。
こちらは、オフィス用に使える卓球台で普段は商談やデスクとして使え、時には卓球台としても使用することができます。卓球によって、社内、社外のコミュニケーションを活発にしようとしています。
③ 渋谷をつなげる30人
こちらはオンラインのまちづくりコミュニティになります。
(企業)(自治体)(NPO)など、渋谷に何らかしら関わっている様々なセクターの人達が30人集まり、いろいろな視点からまちづくりを考えていっています。
これが今、気仙沼や京都、名古屋に広がっていて、繋がりを通じたまちづくりをしよう!とどんどん広がっていっています。
④ mint
mintは、コミュニティポイントのアプリで、ポイントカードをネット上で作ることができるサービスです。
コミュニティに貢献した人に対して、感謝のしるしとしてポイントを付与し、そのポイントを使ってグッズがもらえたり、イベントに参加できたりする仕組みになります。
⑤NPO法人greenz
「いかしあうつながり」を掲げ、webメディアや場づくり、大人の学ぶ場作りなどをおこなっているNPO法人です。
ぼくはその中で『コミュニティの教室』や2月から始まる『未来のチームの作り方教室』などの教室事業や「持続可能なまちを、木でつくる」ことを目指す『キノマチ会議』などに関わっています。
2.コミュニティとは
僕の関わっているコミュニティについて紹介が終わったところで、『そもそもコミュニティって何なのか』について話していきたいと思います。
“コミュニティ”と言っても、定義が広いもので、個人によって解釈が異なるとおもっているんです。なのでここでは、僕の認識を紹介していきます。
まずこのイラストを見てみてください。
この図にもあるように僕は
コミュニティとは『関係性の集合体』
だと思っています。
例えば、FBグループである名目のもと100人集まっていたとして、ただの人の集まりはコミュニティとは言わないと考えているのです。
なぜかというと、「コミュニティは1対1の関係性の集合体」であると思っているから。1対1の信頼関係があり、それが絡み合って、結果として何かが生まれていくものだと認識しています。
3.コミュニティの分類
そんなコミュニティは現在、ますます広がりを見せています。
その一つの分類方法として、コミュニティを「情報」と「つながり」の2軸で考えられる、と考えています。つまり、『メンバーにとって、コミュニティに参加する目的が「つながり」であるか「情報」などであるかということです。
どういうことか、図にするとこちら。
4.コミュニティの例
では、具体的にどんなコミュニティがあるのか、代表的な5つを見ていきましょう。
(1)コアワーキングスペース
(2)地域コミュニティ
(3)オンラインサロン
(4)オンラインコミュニティ
(5)ファンコミュニティ/ユーザーコミュニティ
一つずつ、例を挙げてみていきます。
(1) コアワーキングスペース
例えば、Wasei Salonもリアルの場として使用している、co-ba ebisuやWeWorkなど。ここでは、コミュニティマネージャーが集まっている企業やフリーランスのマッチングなどコミュニケーションを生んでいます。
(2) 地域コミュニティ
地域を拠点としたコミュニティ。前述の「渋谷をつなげる30人」もその一つですし、昔からある「町内会」なども地域コミュニティの一つです。
(3) オンラインサロン
オンラインサロンというと、下記にあるような、インフルエンサーの主催しているものをイメージすると思います。影響力のある人たちと一緒にアウトプットしたり、彼らが掲げた旗にみんなでむかっていったりする場として、2016年くらいから増加しています。
Wasei Salonは上記のオンラインサロンのようにずば抜けたインフルエンサーのような人はいないのですが、なぜオンラインサロンに入れているかと、「オンラインコミュニティ」との比較で分かってくると思います。
(4) オンラインコミュニティ
オンラインサロンはその場に入って、アウトプットを生み出したいという空気感や文化がある集まり。
一方でオンラインコミュニティはどちらかというと、「属していいよと受容してくれる場」、「居心地がいい場」が強いかなと感じています。例をあげるなら、コルクラボやサイボウズ式第2編集部、議論メシなど。
(5) ファンコミュニティ/ユーザーコミュニティ よく知られている言葉で言うと、「コミュニティマーケティング」ともいいます。一つの企業がユーザーといい関係を作ったり、ユーザー同士の関係を作ったりするために使われています。
コミュニケーション施策を取ったり、イベントを作ったり。よなよなエールやことりっぷ。 さらにコミュニティの教室で講義してくださる、牟田口さんのIKEUCHI ORGANICもここに分類されるかと思います。皆さん、ファンの皆さんといい関係性をつくるためにどうしたらいいか日々試作していらっしゃいます。
5.コミュニティの仕事
コミュニティの多様化と同時にコミュニティの仕事もできてきました。ここで、代表的な3つをご紹介します。
① コミュニティ マネージメント(コミュニティマネージャー)
僕のような仕事をしているひと。コミュニティを安心安全の場にし、活性化させていく
② コミュニティ マーケティング
コミュニティをマーケティングに活用し、結果的にブランディングを促進させていく
③コミュニティ デザイン
(昔からあるもの)地域課題に対してコミュニティでのノウハウを使って解決していこうよとしているもの
6.クラウドファンディング
加えて、クラウドファンディングは、コミュニティの本質と凄く似ているなあと感じるので紹介します。
このイラストにあるように、コミュニティは同心円状の図をイメージしてもらえるとよいと思っています。
まずは中心で熱量や愛情を作っていき、そこから全体へと広がっていく。クラウドファンディングも同じことを考えていると感じています。
7.コミュニティテック
コミュニティをサポートしてくれるWebサービスやアプリである「コミュニティテック」。2,3年前から急速に増えた印象です。
(1)コミュニティポイント・通貨: mint, KOU, feverなど
(2) オンラインコミュニティの共同のお財布: Gojoなど
(3) コミュニティツール: OSIROなど
ここでコミュニティツールであるOSHIROについて詳しく説明すると、(スラックやFacebookのような)コミュニケーションツールでコミュニティに特化したものです。
そこでチャットも出来るし、イベントを立てることも、ブログを書くことも出来ます。コミュニティのためのあらゆるツールが入っているとイメージしてもらえればと思います。
今は20個のコミュニティが試験的に使っているところでこれから増えていくところで、「コミュニティの教室」の講義では、OSIROの杉山さんが来てくださるのでぜひ詳しく聴いてみてください。
8.なぜコミュニティが来ているのか?
上記のようにコミュニティやコミュニティツール、コミュニティ的思考などは、急速に広がりを見せています。
それには次のような理由があるんじゃないかなと考えています。
① 情報過多な時代
情報が多すぎて、マスへの発信だけでは通用しないため、1人に届けることや「誰からの発信か」ということも求められている。
②これまでのコミュニティに対しての安心感が薄れている
会社や家族という昔からのコミュニティに対して安心を感じなくなってきている。
③SNSの普及
誰もが気軽にコミュニケーションが取れ、繋がりやすい環境が整っている。
④信用経済の到来
信用が可視化され、経済圏が回る時代に。人との関係性がより重要視されている。
これに加え、ある研究を紹介させてください。
ハーバード大学の教授が70年間『幸福論の研究』をした結果です。
この研究から
「人生を幸福にするのは、お金、名誉ではなく、良好な人間関係である」
ということが分かったのです。
つまりコミュニティの価値は、良好な人間関係であるともいえると思うのです。
また、コミュニティを大事にしている関係者だけではなく、世界にもこの動きが広がっているという例を2つ、ご紹介します。
①世界幸福度ランキングにおいて7年連続でトップ3に入った国、デンマーク。その秘密は
国民の95%が『いざという時に頼れる人がいる』
と答えたことをあげています。
②英国では『孤独担当大臣』という役職が就任したようです。
孤独には1日に20何本喫煙するのと同等の害があると言われており、対策を打たないといけないといわれているそうです。
これらの事例からも分かるように、「孤独」への問題意識が高まっています。
すなわち、コミュニティが今の社会において必要とされているのは、人間社会にとって本能的な部分であるとも言えるということです。
9.コミュニティ運営で大事な考え方
最後に、コミュニティ運営において大事な考え方を4点お伝えします。
① コミュニティ運営には入口設計が肝
・入り口のハードルをつくることで純度の高いメンバーが集う
・Twitterや2ちゃんねるが炎上するのは誰でも使えるから
・ハードルをちゃんと設計することでコミュニティ運営が楽になる
「誰でも参加できる=コミュニティとしては弱い」と思っていて、クローズドであればあるほど、排他性を持てばもつほど、コミュニティでの安心感、安全性が生まれやすく、そこでの関係性が活発になり、新しいものやコミュニティの価値が生まれるのだと思います。
そのため、入口設計をどれだけ考えぬけるかがとても大事だと考えています。
例えば僕がコミュニティマネージャーをしているWasei Salonでは大きく3つの入口設計があります。
(1) 事前登録
(2)アンケートフォーム記入
(3)イベント参加
ここについて詳しく話すと、
(1) 事前登録
まず、Wasei Salonのアバウトページ長くて1万字くらいあります。読むのだけでも10分くらいかかる。
でもこれは意図的に設計していて。読んだうえで、そこに共感した人が来てくださいというのが私たちの意思です。
そのページの一番下に、事前登録をしてもらうページがあるとう形をとっています。
(2) アンケートフォーム
Wasei Salonでしたいこと、参加する理由を書く場所があります。参加して、こういうことをしたいという気持ちがあるとすらっとかける。
また、(アバウトページを)読んでくれたかの確認であるし、私たちはその人たちの意思を聞きたいです。
そのうえでマッチしたらこちらも入っていただきたいと思っています。
(3) イベント参加
オンラインだけで完結しないようにしています。Wasei Salonで主催するイベントが月に1,2回やっていてそこへの参加も条件にしています。
その理由は、オンラインで分かった気になっていることも多いと思っていて。目で見て、フェイスtoフェイスでこんなことを大切にしている場所ですよ、とお互いに伝えあえることが必要だからです。
参加者さんの様子を見てもらうこと。お互い大切な価値観をすり合わせていることが大事だと思っています。
このように、他のオンラインサロンと比べてめちゃくちゃ入口設計をしていると感じています。でも本当に価値観に共感した人が集まってくれているからこそ、良いコミュニティが築かれると実感しています。
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② 文化醸成を初期に着手
・コミュニティの土台となるのが「文化」
・人数が少ない初期に密な文化を醸成していく
・カルピスの原液をつくる
「クラウドファンディング」のところでも話しましたが、コミュニティでは、まず中心部分熱くするということが大事です。
言い換えると、土台となる文化をまず作りましょう、ということ。カルピスの原液を作って、薄めても同じ味のものが出来るように、濃い文化が築かれいたらメンバーが増えても同じ文化が保たれていく。
いきなり100人で文化醸成をするのは難しいので、初期の人数少ない段階が一番作れます。
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③ コミュニティの価値を信じぬけるか
・コミュニティ運営者はコミュニティの価値を信じ抜けるかが問われる
・反対意見にも負けない自分が信じられるコミュニティの価値とは
「コミュニティを仕事にしたい!」人に良く言うのが、『コミュニティの価値を信じぬけるか』ということです。
多くのプロフェッショナルや価値を継続的に生み出しているひとがしていることは、いろんな反対意見がある中でも、取り組んでいることの価値を強く信じていることだと思います。
「コミュニティお金なんないでしょ」と言われても信じてやり続けた人が価値を生み出していく。「コミュニティって良いらしいね」ではなくて、「コミュニティにはこういう価値があるんですよ」といえる人がいいコミュニティを作っていくんだと信じています。
例えば、「コミュニティには居場所、自己実現、学び、繋がり」という価値があるよと自分の言葉でに語れることだとか。そいうことが、コミュニティを運営する人に求められるんだと思います。
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④ コミュニティの関係人口を構築する
これはコミュニティの初期ではなくて、運営を終えて価値を高めていきたい人がやるものです。ネクストステップ。
コミュニティでは、その中のひとや出来事・物事を見ていくけど、時には外を見ないといけないと思っています。閉鎖的な空間なので、よどんだ空気にならないように。
どういうことかというと、他のコミュニティと接点をもって、コラボイベントを開いたり、メンバーじゃないけど興味がある人もいらっしゃったりするので、関係性を作っておいたり。
すぐに花開かなくてもいつか開くときがくる。企業やコミュニティに足を運んで関係性を作るのも自分の仕事だと思っています。
(質問)外部と関わる目的は、自分のコミュニティに入ってほしいということですか?
(A)そういう目的ではなくて、①外の人と関わることで『自分たちらしさ』に気づいたり②自分たちでできることって限られているから別のコミュニティと、お互いのいいところを尊重してプラスアルファを作っていこうとしたりということです。
10.『文化醸成』
(幾つもでた質問の中で印象的だったものを一つ共有したいと思います)
ℚ.『文化醸成』とは具体的に何をやったんですか?
A①:安心感を感じられるコミュニケーション
即レスをする、相手を否定しない、悩みがあれば受け入れていこうという行動をとる。言葉で言うというよりは、自分たちの背中で見せるようにしていました。 オンラインサロン=全部ログが残っていってコミュニケーションが可視化されるんですよね。こういう場なのかと見れば分かるようになっているのもいい点かと思います。
A②:みんなで作る
運営が一方的にこれをやりましょうっていうものではなくて、みんなからアイデアが出てきて一緒に作る場所であるという空気づくりをしていました。
A③:共通言語を作る
例えば、Wasei Salonでは“神輿を担ぎあう”という言葉。簡単に言うと「助け合いをする」ということなんですけど、一人がクラウドファンディングをしたら、ただ言葉で「応援してる」っと言うのではなくて、本気で助け合う。 成功するために、イベントをしたらいいのかなとか、noteで書いたらいいかなとか。これは今でも残っている文化ですね。Wasei Salonらしさといえば○○だよね、とか共通言語があればみんなも話しやすいかなと思っています。
(写真は長田さんのSNSから拝借しました。)
==講義内容はここまで==
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。!!
長田さんの講義を通しコミュニティの概論や運営において大事な考え方など勉強になりました。
noteでも今回話されたコミュニティに関する内容も更に詳しく書かいていらっしゃいます。
また、数日前に始められたラジオもコミュニティについて学べ、加えて、まったりとした南国のような音楽と穏やかな長田さんの声も魅力で勝手に推しています。
11.おまけ
「コミュニティの教室」第1回目としてスタートした今回。講義後に交流会などもありました。その様子をいくつか紹介します。
参加しているメンバーはみんな、現在それぞれがコミュニティ運営に関わっています。
長田さんの講義だけでなく皆さんが実施されているコミュニティでの活動も興味深いものばかりでした。
今回の長田さんのコミュニティ概論を基軸に、今後は登壇者の皆さんや受講生の皆さんがそれぞれのコミュニティで実践されていること・課題などを聴き、議論し、実践し、学びを深めていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします!!
最後まで見てくださって、ありがとうございました。!!
~2020年4月追記~
コミュニティの教室、第5期の募集をしています!
今期は、全編オンラインで開催し、オンラインコミュニティの育み方にも着目していきます。
コミュニティ最前線にいるゲスト、そして仲間と共に、今求められるコミュニティについて、探求しませんか?