イントロダクション 現在、人類が作った最古の貨幣と考えられているのは、紀元前670年頃にアナトリア半島(現在のトルコの一部)のリュディアで発明された「エレクトロン貨」だそうだ。貨幣が発明されてから実に2000年以上経ったが、いまだにそのメインシステムは健在である。現代ではコンピュータが発達し、電子通貨なども普及してきている。電子通貨ではこれまでの通貨(古典通貨とでも呼ぼう)と異なり、複雑な計算をコンピュータに押し付けることができるようになったため、より現代にあった仕組みの貨幣デザインを取り入れることが可能ではないかと考えた。そこで、これまでに経済学者や発明家などによって考案されてきた貨幣デザインを調べてみることにした。
そもそも貨幣とは何か 経済学者のウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズは、貨幣とは何かという問いに対して「欲望の二重の一致 (Double Coincidence of Wants)の困難を解決するものである」と述べている。欲望の二重の一致とは、物々交換時において、自分が持っている財がまさに相手の求めている物であり、かつ、相手が持っている財が自分の求めている物そのものであるという状態のことで、そのような状態はめったに起こらないのである。そのため、誰もが欲している共通のコモディティが導入されればこの問題を解決できると発想するのは自然な考えである。それが貨幣である。
以後、様々な貨幣のデザインについて述べる。
マイケル・リントンのLETS 今日の地域通貨の拡がりは、1983年にカナダのブリティッシュ・コロンビア州ヴァンクーバー島東岸のコモックス地方でマイケル・リントンを中心として始められたLETS(Local Exchange Trading System=地域での交換取引システム)から始まったとされています。 LETSの提唱を受けて、同様のシステムは世界各地で発生し、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、フランスなどで急速に普及することになりました。
http://www.kaikaku21.com/ ロバート・オウエンの労働通貨 ローバート・オウエンが考案した「労働貨幣」(Labour Exchange Notes)は、財の生産に要した労働時間を具体的に示した証書として発行され、労働者が自ら生産した生産物を労働交換所に持ち込み、その労働時間に等しい「労働貨幣」を受け取って自分の欲しいものを購入する仕組みである。この仕組みは価値評価システムに問題があったり、商人に悪用されたりして3年足らずで幕を閉じた。
http://www.kaikaku21.com/ シルビオ・ゲゼルの減価貨幣 また、シルビオ・ゲゼル(Silvio Gesell、1862~1930 ドイツ生まれの実業家・経済学者)がアルゼンチンで提唱した「減価するお金」は、1929年にドイツのヴェーラを生み出し、第1次地域通貨ブームの火種となり大きな影響を与えました。ゲゼルの理論は、ケインズによって高く評価されており、1934年から運用されているスイス・チューリッヒのWIR (ヴィア)経済リングの原点となっています。
http://www.kaikaku21.com/ エドガー・カーンのタイムダラー 1985年には、アメリカ・ワシントンで、弁護士エドガー・カーン氏の発案により、タイムダラー(Time Doller)という、労働貨幣の一種が発行されました。当初は、助け合いの点数(Sarvice Credit)と呼ばれていたこのシステムは、介護・福祉・社会貢献活動などへのボランティアサービスを、「1時間=1タイムダラー」の単位で評価し、お互いの助け合いの精神に基づき会員間で交換するものです。また、時間預託をして自らの介護が必要になったときなどにサービスをうけるという使い方も可能です。
http://www.kaikaku21.com/ 鈴木健のPICSY 上記で紹介したものは、どれもコンピュータの制御が必要ない単純な系のエコシステムであるが、鈴木健が提案しているPICSYは価値が伝播するような貨幣システムを導入している。
なめらかな社会とその敵という本で紹介されているので、詳細を確認されたい。