日干し煉瓦と雷雨
☆廻廊コラム☆(4)
水瓶座サビアンシンボル
1度「日干し煉瓦造りの古い伝道所」
2度「予期せぬ雷雨」
上記2度の流れについて、少し補足します。
水瓶座1度:日干し煉瓦造りの古い伝道所
水瓶座1度のサビアンシンボルのジョーンズの原文は以下の通りです。
An old adobe mission.
adobe …というと、もとグラフィックデザイナーとしては、どうしても某社名を連想する単語ですが、もとは「日干し煉瓦」を表す言葉です。
粘土とワラを混ぜて作る日干しレンガや建材は、暑くて乾いた気候に適していて、建築物として永く保てることが特徴です。
ウィキペディアから引用します。
水瓶座1度に「An old adobe mission.」がシンボライズされる意味
サビアンシンボルの各1度は、サインが追求する主題を、もっとも純粋に表すという共通点があります。
そして水瓶座は「維持」を意味する不動宮のサイン。
「古伝道所」は、時代を超えて維持できるほどの堅牢な理想郷を、仲間と協力して築き上げることを示すシンボルです。
堅牢性、時代を超えて理想を伝えるシンボルとして「日干し煉瓦造りの伝道所」が用いられたのでしょう。
宣教師たちが遺したものは
かつての宣教師たちは、彼らの崇高な理想を現実化するために、ジャングルに分け入り、砂漠をさすらい、各地のネイティブアメリカンと命がけのやり取りを経て、故郷と同じやり方で日干し煉瓦の伝道所を建築しました。
現地の人々の土着信仰や事情を無視しての布教活動。確かにそのやり方は強引でしたが、彼らは純粋に、正しいことと信じて、キリスト教を広めようとしていました。
彼らは現地の人々を、同じ「ひと」として、同じ目線で、話し合いをしようと辛抱強く説いていったのです。
その想いは現地の人々の心を打ち、一部は改宗までしました。時間がかかる日干し煉瓦で造られた伝道所は、彼らと協力したからこそ建築できました。そして歴史にも遺る、彼らの理想を形にしたシンボルとなりました。
しかし、悲劇的なことに、派遣した母国と、福音を伝える宣教師である彼らの考えは決定的に違いました。
母国であるスペイン・ポルトガルの真の狙いは現地を植民地化すること。そしてネイティブアメリカンの人々を奴隷化しようと目論むことでした。
母国から現地の人々を保護しようと働きかけた宣教師たちは、後日、母国からの弾圧という形で、各地から引き上げなくてはならない結末となりました。
築き上げた丈夫な伝道所はそのまま残されました。
そして、後に現地の人々が帝国軍との戦いで使った重要な基点となりました。
宣教師たちの「福音」は残らなかったかもしれませんが、もっと根源的な彼らの「魂」のようなものは、伝道所とともに現地の人々に遺ったのでしょう。
それは、自由で自立した精神。
正しいことのためならば、一歩も退かずに戦うという、人とそれをつなぐネットワーク。
まさに水瓶座のスピリットのようなものが、そこに現れていると言えます。
水瓶座2度:予期せぬ雷雨
雨は、その土地に恵みをもたらすものです。
特に乾燥して暑い気候の土地にとっては、雨季の雷雨は、自然からの待望の恵みでしょう。
しかし、乾燥した丘陵地帯での雷雨は、壊滅的な洪水や鉄砲水などの天災を引き起こす可能性があります。
そしてこのシンボルには「予期せぬ」というニュアンスも含まれています。
備えがない状態での、破壊的な天災の脅威も暗示しています。
雷雨に打たれる日干しレンガ
水瓶座1度は、母国由来の理念やモノにこだわり、そのまま世界各地に広げようとしたことを象徴していました。暑くて乾いた土地に適した日干しレンガ。時代を超えて永く維持できます。これもまた、母国の建材です。
しかしその日干しレンガに、突然雷雨が降り注いだらどうなるでしょうか。災害レベルの土砂降りの雨の前では、頑丈なレンガも、泥とワラに戻ってしまいます。
Dust you were, dust you must become.
塵芥であったあなた、塵芥にならねばならないあなた。
ルディアの「Astrological Mandala」水瓶座2度に書かれている言葉です。
水瓶座2度は水瓶座1度の反動です。
人間が持つ可能性と希望を信じて、地球という大いなる自然界に対して「崇高な理念」を広げようとして行動した1度に対して、突然の自然の脅威が、人間の努力や建設的な活動を打ち砕き、無効化する可能性もあることを示唆するのが2度なのです。
この雷雨は、宣教師たちが母国で築いた立場や理念、記憶や栄誉も、全て砕いて無に帰してしまいます。
水瓶座1度にはまだ遺っていた、山羊座サインで築いた「過去の社会構造」を、完膚なきまでに砕くのが2度なのです。
牡牛座1度・2度との共鳴
牡牛座の1度と2度のシンボルである「澄んだ渓流」と「電磁嵐」と、スクエアになる水瓶座の1度と2度のシンボルには、興味深いつながりがあります。
2度には両方とも「雷」が関係していて、似ています。
その違いは何になるでしょうか。
牡牛座のケースでは、1度の個人の自然な発達に関係するエネルギーや活動に対しての、自然界の反応が2度でした。
火と水の摩擦による雷雲の発生と、火の力を地に落とし込む雷雨。
対して水瓶座では、社会的、集団的プロセスが関わります。1度は母国で築いたものを物質ごと世界へ広げようとし、2度でそれが砕けることを意味します。
地で築いた建造物を、風が突然の雷雨を呼び、破壊し飛散させるのです。
牡牛座は個人的で、かつ「地」ですので「物質」に関係するのに対して、水瓶座は社会的で、かつ「風」ですので「理念」に関係するという違いがあります。
双方の2度に共通するのは、前サインの要素を全部破壊し尽くすほどの強い衝撃。それが雷として象徴されているのです。
Mcが「予期せぬ雷雨」!?
全ては無に帰してしまう。塵芥に戻るだけ。
形あるものは、いつか壊れる…
ともすれば虚しさすら感じるシンボル「予期せぬ雷雨」。
実は私のMcです。
確かに私の人生に、破壊は何度も訪れてきました。
しかし、振り返って思います。
私の中に「過去のしがらみと記憶」が遺っていたからこそ、破壊が訪れたのだと。おそらく、この度数の真骨頂は、それらを打ち砕いてからが始まりなのだと思います。
山羊座にいつまでもしがみついていては、2度の意味は永遠に理解できず、虚しいままです。地の角度から見るから虚しいのです。
雷雨が何を伝えようとしているか。それを理解してこそ、次の世界に進めるのだと思っています。
雷雨は、人が地から自由になり、魂を解放することを呼び覚ますもの。
私はその鐘を鳴らす役目を、社会で果たすのでしょう。
ところで…
松村潔先生の授業中、こんな破壊的なシンボルがMc(かつAscは牡牛座)で、どうすれば…と訊いたことがあります。
答えとして、プロジェクトチームを組んで何かを作り、解散を繰り返す、という形態の職種ならうまくいく、ということでした。
そのアドバイスは実際に、グラフィックデザイナーの時に活かすことができました。チームを組んでプロジェクトに取り組み、終わったら解散するのです。その形態なら、社会的にも受け入れられたと思っています。
どんな度数でも、やり方次第だと感心した次第です。