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河井孝仁「シティプロモーションでまちを変える」
プロモーションといえば、販売行動を促進するための活動。つまり、プロモーションによって、商品を知り、商品を興味を持たせ、買おうかなと考えさせ、最後購入させる。では、シティプロモーションとは何だろうか。まちを知り、まちに興味を持たせ……そのあとはなんだろう。
著者はまえがきの中で考え方を提示している。
シティプロモーションは、地域(まち)に真剣(マジ)になる人が育つしくみである。
私は、飲食店に行くのなら、チェーン店じゃなくて、地元のお店に行きたいと考えている。また、地産地消とかも大好き。もちろん新鮮だからというのもあるけれど、地元の野菜を選ぶことで、地元のお店を選ぶことで、少しでも応援したいと考えるからだ。これも一つのマジになる、なのかもしれない。
私一人が何を選んだからといって、何かが変わるわけではないかもしれない。でもそれでも、そんな選び方をしたいと思うのだ。欲しいものを買って、行きたいお店に行って、少しだけ幸せな気持ちになる。家の中を自分の好きな居場所にするのと同じように、まちの中にお気に入りの場所を見つけるような感じだと思う。
でもそれだけじゃなかった。コロナが始まってから、飲食店応援プロジェクトのクラウドファンディングを開始した人がいた。たくさんの仲間を見つけ、一緒になって行動を起こした。仲間たちも自分ができることを見つけてどんどん頑張って、すごいなと思った。私も自分にできることを協力して、とても楽しかった。
それから、観たい映画があったけれど、地元で上映されてなかったから、上映会をしてしまおうとした人がいた。ただ上映するだけじゃなくて、その世界観を会場全体に作り出しちゃおうという計画だった。それもいろんな仲間が集まって、みんなできることに取り組んだ。途中、本当に大丈夫かなと不安になることもあったけれど、すごく頑張って、短い期間であっという間に形になった。
このまちにはこんなものがなくて残念、と思ったら、自分で作ってしまえばいい、というのはすごいことだ。でもそれが究極の、マジになる、なのだと思う。
たぶん、一人じゃできなかっただろう。でも最初に「これをやりたい」と言って、それを聞いてくれる人がいて、いいねやろうよ、と言ってくれる人がいて、仲間を集めて、その仲間になってくれる人がいて。そういう安心感があって。
そんなにたくさんの人数じゃないかもしれないけれど、このまちには、地域に強く働きかけたい、参画したいという人がいる。ここまでの熱量はないかもしれないけれど、こんなに頑張っている人がいるなら、自分もそこに行ってみたい、それを応援してみたい、誰かに伝えてみたい、という人がいるかもしれない。そして、まちにたいしてありがとうと言いたい人を増やすということもある。河井氏は。そういう人を増やすことがシティプロモーションであると言っている。
本書の中には、様々な自治体の魅力的な事例に加え、河井氏の提案するシティプロモーションの手法を理解するためのワークも用意されているので、やってみたい。