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100日目の魔法と冒険

 生後100日目を病院で過ごすなんて、ちょっと気が沈むかもしれない。でも、ジャズの世界では「A Hundred Days, A Hundred Nights」という素晴らしい曲がある。言い換えれば、この"100の夜"には何か特別な魔法があるかもしれない。たとえ、その魔法がウォッシャブルマーカーで描かれた虹かもしれないけれど。

 妻が一時帰宅することになった。明日か明後日だって。家の中が一段と明るくなるだろう、まるで散らかった部屋に突如として掃除機が入ったように。そして妻が言うには、「入院中にはできないこと」をこの期間に詰め込むらしい。まずは整体。僕も参加したくなるほどの魅力がある。次に美容院。これは妻の特権。病院の鏡で見る自分とは違い、美容院後の自分はまるで主人公に変身したような気がする。

 そして、待ちに待った外食。病院食が提供する「文化的に重要な」食事とは一線を画す、魅力的なメニューがそこにはある。我々の選んだのは、タイ料理とクラフトビール。まるで小説の中のような組み合わせ。タイ料理のスパイスがきいていると、クラフトビールのアルコールもきいている。僕たちはまさに、風味豊かな冒険に出発する。

 退院までの日々はまだ続くが、その中にも小さな幸せがちりばめられている。この100日目を神秘的な節目として捉え、美味しい食事とビールで幕を閉じる。いや、正確には「幕を開ける」のだ。これが僕たち家族の新しい「100日間」の冒険のスタート地点。さあ、乾杯しよう。我々の小さな、しかし確実な前進に。そして、これからの100日、いや1000日、1万日に乾杯。たとえその日々が一杯のクラフトビールと一皿のタイ料理から始まったとしても。

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