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コロナの残響とカデンツァ

 昨夜、息子は熱で何度も目を覚ました。彼の熱が、まるで一夜限りの熱烈なバリトンサックスのソロのように、家族の心をゆさぶった。私と妻はアンサンブルメンバーだ。しかし、私は疲労から解放されず楽器をもてないでいた。ただ静かに待つしかできなかった。妻が勇敢にも彼と向き合っていた。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 夜が明け、息子の熱は下がった。彼の顔色が回復し、ミルクもしっかり飲んでくれた。その一瞬、我が家のジャズはメロディーを変え、朝日を浴びたポジティブなテーマに転じた。

 だが、実は今日、息子にとって重要なアレルギー負荷試験の日だった。しかし、昨夜の熱を病院に伝えると、試験は延期。次の予約は遥か未来へ。リズムが奇妙な方向へ変化する。これはまるで、コロナの影が残した奇妙なカデンツァ、やり場のないモヤモヤ感のフレーズだ。

 息子を妻に任せ、僕は仕事へ。その日のリズムは、まるで複雑なビートを刻むジャズのように、不規則で予測不能。だが、ジャズのように、僕らはそれぞれのフレーズを探し、それに乗っていくしかない。なぜなら、僕たちは家庭のバンドメンバー。それぞれが担う役割、それが家族のジャズなのだから。

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