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 妻が一時帰宅した5日間。その間に、彼女はとにかく食べた。タイ料理、クラフトビール、さらに寿司とカレー。まるで「食べログ観光」をするかのような猛スピードで楽しんだ。病院の空気は微妙なバランスで維持されている。カレーの匂いなんて、その微妙なバランスを壊しかねない。だから、妻は病院でカレーを遠慮していた。でも自由の土地で、遠慮なんて要らない。カレーは、ただのカレー。そんなに複雑な存在ではない。

 そして、リフレッシュを終え、妻は病院に戻った。何かしらの前進が感じられる。とくに、息子から送られてきた動画がそう感じさせる。その動画で、息子は寝ている。そして、寝ながら「ムニャムニャ」と口を動かし笑っている。

 これは一体何を意味するのか?そんな疑問が浮かびながら、ふと仮説に思い至った。息子が、きっと美味しいミルクを飲んでいる夢でも見ているのではないか。その夢の中で「ムニャムニャ」と笑っているのだ。僕も、美味しいビールを飲む夢を見たら、きっと笑いながら寝るだろう。 そう考えると、この動画が示す「ムニャムニャ」は、実は一つの希望の象徴なのかもしれない。新しいミルクの濃度にも順応して、ちゃんと成長している。それが「ムニャムニャ」から伝わってくる。

 タイ料理も良い、クラフトビールも良い、寿司とカレーも素晴らしい。しかし、そのすべてを超える喜びは、この小さな「ムニャムニャ」に集約されている。 妻も、息子も、そして僕も、それぞれの場所で少しずつ前進している。この連鎖が途切れない限り、きっといつかは全員で、心置きなく「ムニャムニャ」できる日が来るだろう。それまで、一日一日を大切に過ごしていこう。さあ、次は何を食べようか。

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